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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
57/74

見極める

ごめんなさいの一言です

投稿ペースは相も変わらず遅くなりそうです



「―――――って話聞いてる?」


「・・・ああ、聞いてたよ」


聞いちゃいないけど、ここはそう言っておこう


今の症状をこいつに話したところでまた病院に連れていかれそうだからな


「聞きたいことはこれで全部だってことらしいけど、本当にもう帰っちゃうの?つまらないな~」


「ああ・・・アンタにこのことを伝えるのは筋違いなんだろうけど、妹が行方不明なんだよ。修学旅行から帰ってきたら誰一人家には居なかった」


「そんな緊急事態の時にどうして君はこんなところに来たのよ!?」


「そうは言っても修学旅行からまだ二日しか経ってない。明日から学校だから戻ってくるだろ、ガキじゃあるまい。そう決断したんだよ俺たちは」


「家族なのに冷たすぎない?」


「じゃあ何だ?どこに行ったのかも分からない状況でこのだだっ広い町の中大声上げながら探せって?やるのは構わんが、だったら学校が始まる明日まで様子見みるほうが妥当だろ」


まあ明日までに戻ってこなくてもやらないけどな


その前に警察に届けを出すことのほうが先決だ。あてにはできないけど


というか、大方の目星は付いているからそこまで気にすることじゃない


問題は、今あの妹がどんな状態なのかだ


「それは・・・でも、心配じゃないの?」


「だから、アイツだってもう高校生なんだ。何がよくて何がダメなのかぐらいの区別ができるはずだ」


「とかいいながら、内心心配しているんでしょ~」


「ともかく俺はもう帰るからな。もし明日までに戻ってこなかったらを考えていろいろと準備しておかないとな」


学校や警察の報告。それか・・・まあ色々


「おい刹莉。俺はもう帰るからゆっくりしていけよ。具体的には夜までな、飯ごちそうされていけ」


後ろに振り向き、ドアの向こう側の盗み聞きしている刹莉に声をかける


するとそれに反応してそっとドアを開け、刹莉は顔を出し


「・・・何か分かったら、教えてね」


「分かればな」






大したことのない身支度を済ませ、早歩きで出口へと向かう


その途中―――


「・・・これは」


玄関にある靴箱の上に丁寧に置いてある3枚の写真


そのうちの中央に違和感を覚えふと手に持ち凝視する


そこには笑顔に寄り添っている二人の少女とオバサンが居る


背景から察するに公園か、真ん中を陣取っているのがオバサンで、その両隣にいるのが・・・


「何々?気になる??気になっちゃう???」


何故かオバサンがうきうきと嬉しそうに後ろから追ってきやがった


「この両隣にいるのは?」


「えっ、湊クンまさかロリコンなの・・・」


「年収低そうな顔してんじゃねえよ」


むしろ俺が幼女好きになったらそりゃ最早リョナ好きじゃねーか


そんな特殊な性癖持ち合わせちゃいねえよ


「左が香乃ちゃんね。それで右がお姉ちゃんの鏡香ちゃん」


「鏡香・・・ああ、生徒会長だった人か」


生徒会長、ねえ


役職として一番最悪、というより生徒たちから見ればそれほど重要でもない、どうでもいい存在と感じるが


教師からの重圧は高く、生徒たちからの熱望は低い


そんな表舞台は用意されているが大抵が裏方の仕事をよくやる気になるよホント


「そそ、今じゃ大学へ進学して元気にやってるよ~。もう帰ってくると思うから気になるなら話してみる?」


「機会があったらな」


そう話に区切りをつけ、写真を元あった場所へとそっと置き玄関の扉に向かう


「湊クン」


いざ帰ろうと靴を履きドアノブに差し掛かった時、後ろから名前で呼ばれた


「忘れ物だよ、はいこれ」


差し出されたのは茶色のどこにでもある封筒


どこにでもある、普通の封筒だ


そう特別なものなんかなにもない


これは単純に俺が前もって頼んでおいたものなのだから


いやはや、危うく忘れるところだった。これはもう痴呆が始まったとしか言えないなぁ


「・・・悪いな」


その封筒を素直に受け取り、半分に折り畳み右ポケットに無理やり入れる


「そのくらいどうってことないよ。・・・色々と辛い時期なんだろうけど、自分を見失わないよう気を付けて」


「ああ・・・わかってるつもりだよ」






「全く、二人して来た思ったら、有川湊の奴私のお母さんに会いに来たとか・・・。なんなの!?」


「湊に人妻好きの趣味はなかったと思うけど・・・。というか一部始終話盗み聞きしちゃったから理由は分かるじゃない。」


「た、確かに患者と看護婦って関係は分かるけど・・・普通患者の方から会いに来るのかなぁ?」


「余程お世話になったってことだと思うよ。とりあえず、これ以上の詮索はなしだ。気にはなるだろうけど盗み聞きした僕たちが全面的に悪いからね」


湊が帰った後、私たちは香乃の部屋で湊の話題で持ち切りになった


そもそも何するのか、何を話すのか全くの不明だったので、そういう意味ではいい話題提供だと思う


(いや、そもそも湊は私達が盗み聞きしていることを最初から分かってたと思うけど・・・)


となれば、何か目的があったのだろうか


私たちに聞かせることで、何かメリットがあったのだろうか


・・・取り敢えず今はあの話を忘れないでおこう


いつどこで役に立つかわからないからね


「・・・分かったわよ。んじゃあ本題に入りましょうか!刹莉、有川湊と今どんな感じなの?」


よくもまあ嬉しそうに聞いてくることで


というか、湊から離れてない辺り何かしらの悪意が感じるんだが


「どうもこうもないよ。一緒に暮らしているだけだって。二人とも何を期待しているの?」


「いや、僕は別に・・・香乃、あまり人のプライベートに首を突っ込むのはやめたほうがいいよ」


「気になるものは気になるの。刹莉には色々お世話になってるから、相談も兼ねてね」


「・・・はぁ、なら一ついい?」


「いいよいいよ!どんどん言って!」


嬉しそうと楽しそう二つの感情が混じった何とも清々しい顔をしている


だったら一つ、ぶっちゃけてみますか


「・・・最近一緒にお風呂入ったことがあるんだ。その時湊は、私の身体を全部見ても動揺も勃起もしなくて、冷静に対応してきたんだけど・・・・どう思う?」


まあ私も冷静に平常心を保って対応したわけだが


とはいえ自分のトラウマを克服しようと必死だったわけなのでそんなところまで構っていられなかったのが事実だ


さて、これに対して二人の反応は・・・


「「・・・・・・」」


沈黙である


まっ、これを狙っていたわけだが二人とも何とも面白い顔をしている


いつも余裕に満ちた表情をする香乃と、穏やかで冷静さを欠かせない磯波君が苦虫潰したような顔をしていると・・・ギャップで笑えてくる


「か、彼は・・・その・・・・ほ、ホモなの?」


流石女子、真っ先に腐へと持っていくか


「それは失礼だよ香乃!!もっとこう・・・具体的な・・・そう病気、病気なんだ。EDなんだろきっと」


ホモだった場合を考えて必死に否定するイケメンの姿もなかなか見ないなぁ


「それか、私が女として見られていないってことになるよね・・・」


「それはないでしょ」

「それはないかな」


そこだけは口をそろえて反論する二人


分かっている。湊は女がどうとか男がどうとか、そんなどうでもいいことは意識しない人間だ


だからといってあれ程までに無反応だと・・・


いつ以来だったか・・・そう、初めて有川家に来た時湊に主夫力を見せつけられた時のような敗北感に陥ったのだ


意識してほしいわけじゃなかったしそんな余裕はなかった


だけど気にはしてほしかったのが本音だ、女心としてはだが


・・・いや、そう考えれば確か前を隠せだのと指摘されたか


一応、私が女であるという認識あるということだな、うん


「気になるんだったらもういっそのこと聞いてみれば?『私の体・・・ど、どうだった?』って」


「そんな意味深なこと言えるわけないでしょ!?」


本人にそんなセリフ言ったら、人の心配なんかしない湊が本気で心配することになる


それはそれで見てみたいが、自分がもの凄い惨めになるから絶対言わないと決意しよう


―――――ただいまー


扉を挟み、玄関から誰かが帰宅したであろう声がした


「・・・あ、鏡香姉さんだ」


鏡香・・・察するところ以前話題に出た香乃の姉のことかな


「挨拶したほうがいいかな?僕会うの初めてだし・・・」


「いいよいいよ、ほっといて。どうせすぐに出かけると思うから」


それでいいのだろうか。確かに苦手ということは私は知っているし、磯波君だってわかっているはずだ。


でも、だからってそこまで露骨にアピールしなくても・・・


「それに・・・」



「―――・・・香乃ー、彼氏と友達連れてきたんだって?」



「こうやって図々しくも邪魔をしてくるから」


香乃の後ろに位置する居間に繋がるドアが中途半端に開き、その人物が顔を出す


それについて香乃は呆れた顔をしながら振り向き


「ノックぐらいしようよ、鏡香姉さん」


「ごめんなさいね、母様かあさまから聞いて気になってしまったからつい・・・」


・・・想像していたより少しばかり茶目っ気がある綺麗な人だ


それと同時に、何か気持ちの悪い人だ


一目見ただけで分かる。この人とは反りが合わない


「そちらが彼氏さんとお友達?初めまして、わたくしは仁多見香乃の姉である仁多見鏡香です。これからも妹のことをよろしくね」


そう言いながら右手を差出握手を求めてくる


「は、はい!磯波ですっ、こちらこそ・・・」


最初は磯波君に、ぎこちない態度で彼は対応する


・・・これが普通の男の反応だよねぇ


美人さんが初対面に積極的にを挨拶求められたら、そりゃ一般男子はこんな態度になっちゃうでしょ


「そちらの外人さん・・・というのは失礼だね。下手をすれば差別と捉えられてしまう」


「・・・どっちでもいいよ。細かいところは気にしない性質だから」


・・・だめだ、作れない


どうしてもどうしても苦手だ。理由は分からないけど、何かこう・・・私の芯に訴えてくる信号がある


今までだって会って数秒で嫌う人間なんかいなかった。それは元々私が他人を信じていなかったからだ


信じていなければ好きも嫌いもない。ただただ平等に接し平等に別れる、それだけだった


そして今では他人を信じないから男性に恐怖するに変わっているわけだが


なんでだ・・・彼女は女で、天音でもないただのどこにでもいそうな綺麗な社会人だ


それなのにどうしてここまでこの人を・・・


「そう?もしかしてハーフなのかしら。まあそれは些細なことね、ごめんなさい」


すると香乃の姉は磯波君同様に私に向けて右手を伸ばし握手を――――


「―――――」


ああ―――――


そうか、そういうことか――――


湊に、男性に恐怖していた?


近づけば彼女から流れ出てくる記憶が私を蝕むから?


――――違う、そうじゃない


分かっていたはずだ。少しは考えていたはずだ


私が最も憎悪していたこと、彼女が最も恐怖したもの


それは不思議と合致していた


あの時、デパートで香乃と別れた帰宅途中に既に確信していたはずだ。それを憶測だの根拠がないだのと理由をつけてい逃げていただけだ


私が恐怖していたもの


彼女が憎悪していたもの


それこそ争いの原初であり根源。動物的本能の象徴


――――"強欲"


「――――――ッ!!」


渇いた音が一つ、女性らしい陳家な部屋に小さく響く


―――払い除ける


その差し出された、強欲に満ちたその右手を思い切り否定する


無論、やられたほうはきょとんと呆ける


というより何をされたのかという現状を把握するので必死のようだ


(―――・・・拙い)


衝動に駆られないよう全力で抑えていたのに


こんな場所でそんな醜態を晒してしまうとは・・・


ここはひとつ、苦しい言い訳だが


「・・・すみません、私右利きなので左の手で宜しいでしょうか?」


至って冷静に、そして何事もなかったのかのように振る舞う


・・・うん、無理がある。限りなく失礼だ


―――まっ、嫌われたからなんだという話ではある


仲良くなりたいだなんて思えないからね


それは恐らく、この人が勘の良い人間なら解っているはずだ


だからそう・・・合わせてくるはずだ


「―――分かったわ。ごめんなさいね、気が利かなくて」


そう言いながら座っている私に向けて左手を差し伸べる


私はそれを軽く掴み、握手するを交わす


偽りの握手。ぎこちなさがハンパない上っ面だけでの会釈


こんなものに意味はない。むしろ今お互いが確認しあっている


見極めている


この人間は、自分にとって害悪かどうかを―――

・・・がんばろう

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