ソヴィと美月
まーた過去編らしき内容になってしまった・・・
・・・・・あー思い出した
あの名前は覚えていたんだが、それ以外忘れていたとは・・・どうなってんだ?俺の記憶の応力
都合よすぎやしないか?かといって自分で自分の脳の中身を視ることはできないから、天音に痴呆によく利く薬でも手配してもらおうかな
そしてまあ、当然のことながらデバイスの中身視てないな
一応型を作ってもらうと同時に頼んであるが、特殊な端子だとかで作るのには時間が掛かるとか
とはいえ既に数ヶ月経っている。流石にもう出来ている頃だろう
というより、頼んでおいて忘れるとか・・・完全に俺に非がある。見積もり以上に支払わないとな
岳とはメールやチャット、というより直接話すことは無いから逐一端末で確認しなければいけない。既に完成したという方国のメール着ていると思うから、後で確認しておこう
・・・まあ、原因は解らないけどあいつ話せないから仕方ないんだけどね
言葉を発することが出来ないらしい。トラウマか、それとも潰されたか
必要以上に関わらないほうがお互いのためだと思いこの話題をしたことはない
だからアイツはいつも裏方に徹している。手先はかなり器用で冷静な判断能力も持っているが故にサポーターとして活躍している
遠隔型サポーターの月と、現場型サポーターの岳。優秀な人間が身近に多くて楽でいいなぁ
とはいえ、月、陽、岳、雨、雪、そして俺こと水。この6人で行った任務はソヴィ奪還が初めてなのだが、最初にしてはいいチームワークだったと思う
・・・いや、チームワークとは少し違うか。各々やりたいようにやっていただけだったからな
一応の指示は出したがやり方は総て任せていた。ならば結果は上々というものだろう
元々は結構な大所帯だったのだが、まあ俺が親父さんを殺してから天音と俺含んで7人で活動している。
このぐらいが丁度いいのは確かなんだがな。増えても俺には親父さんみたいに要領よく纏めることが出来ない
いや、むしろ少し多いんじゃないかって思うこともある。
その上しかも・・・・
「・・・・どうして何も話さないの?」
「これといった話題なんて持ち合わせてないからな」
刹莉ことソヴィまで加わって8人。一番扱いに困っているのはコイツだってことは言わずとも解るだろう
立場としても、部隊の一員といしても、そして身近に居る存在としても
一番扱いにくい存在だ
「・・・・・はぁ」
時々、自分を見失うことがある
月としての自分、美月としての私
別に多重人格者って訳じゃない。単純に使い分けているのだ
あの時、無力で護れなかった自分を悔やんで
偽りが本物になるくらいの仮面を身につけたあの時から
「私は、ソヴィを護れなかった」
部外者だから、といえばそれまでだけど、それで納得できるほど心は広くない
友達だった、最初は言葉が解らなかったけど言葉が総てじゃないことを教えてくれた
私の唯一の親友。だから助けたかった、一緒になって戦おうとした
ーーーーーー見失うことのないよう、私は今夜もこうして回想する
浅い過去を思い出し、喜劇的でも悲劇的でもない過去を思い出す
私が、心奮え人生を見つけたあの時をーーーーーーーー
彼女が苛められていたのを、私は止めることが出来なかった
立場として、私は明るく元気で活発な女の子だったから男子からも女子からもウケがよかったのだ
故に仲間はずれにされることは全く無かった。ソヴィと一緒に登下校してもそれは無かった
そんな自分でも、私はソヴィを助けることも護ることも出来なかった
・・・・いや、そんな想いは後になって全くのお門違いだってことを思い知らされたのだ
小学校卒業間際、ソヴィがそのままロシアに帰ってしまうことを私は知っている
私だけが知っていた。その時には既に有る程度ソヴィは日本語が話せるようになっていた
だけど、学校ではあえて話そうとしなかった。当時の私には何故かはわからなかったがずっとロシア語のままで過ごしていた
もしかしたら、もう3年生の時ぐらいには話せるようになっていたのではなかろうか
姉であるミーシェさんが死んで半年以上経った時、知らずソヴィの雰囲気が変わっていることに気づいた
恐らくあの時だろう、あの時から既に日本語をマスターしたのだろう
そして準備していたのだ、あの惨劇のためにずっと
卒業式4日前
「美月はみんなと仲いいよね」
総てはこのとき始まったのだ
いや、もう終る直前という方が適切か
これこそソヴィトヴィーニアの恐ろしさと気高さを感じざるを得ない現実の幕開け
「確かにそうだけど・・・今更それがどうかしたの?」
「ううん、確認だけ。あっでも一つだけお願いがあるの」
ーーーーーーー明日のお昼、屋上開いていることをみんなに伝えて欲しいんだ
その理由を教えてはくれなかった
だけど、その言葉を言ったソヴィの顔は今でも忘れることが出来ない
笑み
微笑みというものじゃない。笑みだ
笑っていた。でも私がいつも遊んでいる時に魅せる笑みとは全くの別物
そして直感した。ああ、それが本当のソヴィとーーーー
私は言う通りに情報を流した。上手く情報の出所を隠しながら何とか同学年全体に隠れて伝えることが出来たのだ
それを聞いたみんなは面白がって屋上に行こう!と集まりだす
私は言うとおりにしただけだ。その放課後、それを報告すると
「спасибо!(ありがとう)美月!あっ、言い忘れてたけど美月は屋上行かないで教室で先生と話してをしててくれると嬉しいかな」
私は、言うとおりにしか出来なかった
何を企んでいるのかは解らなかったが、ソヴィは一人で総てを終らそうとしていたのだ
その時の私には、それを止めることも聞くことも出来なかった
そして、迎えた翌日
私はずっと教室に居た。活発な私がずっと教室に居るのを不思議と想った担任教師は近くに来て雑談をし始めたのだ
その時既にお昼休み。そしてソヴィも隣に座って聞いていた
とっても優しい先生だ。それと同時に生徒のことを信じきっている哀れな先生でもあった
そしてジェスチャーでソヴィが私に「トイレ」と伝えその場から立ち去る
私は余計なことを考えないようすっかり先生と話し込んでいた
気づけば総てが終っているとも知らずに
午後の授業が始まるが・・・・教室に生徒が半分以上いない
グラウンドを見ても居ない、かといって町へ出た形跡も無い
目撃証言だと上に行ったという
上、私達6年生は最上階の3階に位置する。そしてその上とは一つしかない
・・・屋上で何人もの生徒が悶え苦しんでいる光景は当時の私からしたら地獄絵図としか言い
ようが無かった
特に男子生徒は腕やら足やらがあらぬ方向へと曲がっているのだから
気持ちの悪いことこの上ない
そして否応なしに生徒は全員集団下校。そのまま身支度して帰宅することに
話せない状態だったのでとにかく救急車と警察を呼び、対応する
不審者が現れた。そう判断するしかない。こんな現状、普通の子供に出来るわけが無いのだから
だが私は直感していた。これはソヴィの仕業だと
そしてそれを確かめるべく下校途中、私は言う
「ソヴィ・・・私に手伝えることない?」
父親の職業の関係で当時からコンピュータなどといった精密機器を触り得意としてきたことはソヴィも知っていた
だからソヴィは渋々だが了承してくれた。危険なことだから巻き込みたくなかったのだろう
それにソヴィはもうすぐ海外へと帰ってしまうが、私は日本に残る。これがバレたら危険なのは私だと。だが私はそれでもここでソヴィと離れるのが厭だった
故に、私が出来ることを尽くす
3~4年間の虐めの音声データと若干のムービーデータ
これらを痕跡無しでマスコミや自治体に送りつけること
そしてそれらは卒業式前日に行われた
夜中、データを焼いたCDとDVDを封筒に入れ少し遠い人気の無いポストのある場所へ行く
周りに人間が居ないことを確認して、ソヴィと私はそこに入れる。勝利を確信して
翌日、卒業式
卒業式といえど、卒業生は約20人以上いないが予定を遅くすることも出来ないらしくそのまま続行し、卒業式自体は普通に終った
そして、それが起こったのは午後だ
マスコミは報道、自治体などの慈善団体は学校へと直接乗り込み
その騒ぎの中、丁度飛び切り惨い映像のデータが学校に届き大人たち全員に見せられる
被害に遭った「外国人の女子生徒」というのが明るみに出ただけで、ソヴィの名前は報道されなかった
しかし、あの時の小学校の教師達は怨んでいるだろう
まさに災害だったろうに。しかし今までわかっていて放置した奴等が悪い
・・・ソヴィがロシアに帰る時、私は母と父を連れて空港まで見送りに来た
思った以上にソヴィの顔が憑き物が落ちたようにスッキリとした顔で少々恐怖したけど
それでも、いいやそれこそがソヴィトヴィーニアの本当の顔なんだろう
そんな存在と、私は同等に歩いてみたい
私は結局お手伝いしか出来なかったから、無力で情けなかったから
かといって私は力が弱い。だからーーーーーーーー
「ーーーーーー・・・・お父さん、お母さん。私に、仕事を手伝わせて」
「・・・・・月」
ああ、綺麗だ。部屋の窓から見るだけでもこんなに綺麗だとは
今日は三日月かな?それともまだ細いから既朔なのだろうか
この山の中で見る空は最高に美しい
私がいるあの日常は、空を見ることも見る余裕も無い
だから今新鮮で、とても心地いい
そして・・・・
「今頃どんな顔しているんだろう、湊君は」
ほんの少しの悪戯心
あの仏頂面が少しでも砕けてくれれば最良だ
「如月、衣更月、そして美しい月。・・・わが母親ながら洒落ているネーミングセンスだ・・・」
夜空に一つ、地上を照らす巨大な明かりの元、同名の彼女はそのまま眠りにつく
夢を視ず、現実を視ず、ただ空を視ながら眠り耽る
「なら私から話題を提示してあげる。・・・美樹を泣かしたのは湊?」
よりにもよってまさかそこに触れてくると
とりあえず事実だけ述べて内容は口にしないように話すか
「そうだ、それについての理由は俺に聞くな。どうしても知りたいなら美樹に直接ーーーー」
「内容は大体察しつくよ。美樹が告白して、湊が振った。違う?」
いや当たってるよ。というかどうして解るんだよ
「あのままだと美樹は海とくっ付くのかな~。なんだかんだで二人とも気が合いそうだから、それはそれで喜ばしいことでもあるんだけど、湊にとっては複雑なんじゃない?」
「むしろそれでいいとも思っていたんだよ。それに、今更俺に構ったところで何も変わりはしないんだから」
「恋愛感情自体よく知らない私が言うのもなんだけど、男女の関係に友達や親友、なんていう言葉はないらしいよ。結局そのまま付き合うか、それとも別れるのか。それは本人達が決めることだけど、どっちにしても異性として意識するんだろうなぁ」
「だったら恥らえよ。男の俺が先に風呂に入っているとわかっていながら、タオル一枚の素っ裸で入ってくる女がいるかよ。前隠せ前」
何で身を隠すためのタオルを頭の上においてんだよこのロシア人は
「銭湯じゃこうするのが普通なんじゃないの?」
「少なくても、男が目の前に居るなら普通そのタオルで前を隠す」
現在ソヴィは横に居るのだが・・・まあ、普通に見えるところまで見えてしまう
現実の湯気さんは仕事しないからなぁ
「半年以上前は俺の上半身見ただけで恥ずかしがっていたクセに・・・何だ?男慣れでもしたのか?」
「別に無暗に入ってきたわけでも、身体を見せ付けたいから入ってきたわけでもないよ。・・・ただ、実験したかっただけ」
「実験って・・・・」
そういや若干だが小刻みに震えているのが解る
流石に真正面から見るわけにはいかないから読み取ることはできないが、さっきの会話で色々と察することは出来る
「そういやあの夜も震えていたな。それに今実験とも言った。・・・ようするにあの夜俺の布団に入ってきたのも、今もこうして真っ裸で俺の隣に居るのもお前にとって何かを試しているってことか?」
流石にこれだけヒントを与えられればわかる
だがその理由が解らない。いや明確じゃない
男嫌いになったのか?レツオの一件があったからな、そうなっても可笑しくはないと考えれるが
この女がその程度でここまで怖がるか?
だったら、嫌う以上にもっとこう・・・「男の存在」そのものに恐怖しているという事になる
なら考えられる原因は・・・・・
「・・・その話は、また今度かな」
はぐらかされた、というより今はまだ弱音を吐く時じゃないと判断したのだろう
だから俺を使って色々試して解決策を見出そうとしている
それもソヴィが決めた覚悟であり、努力しようとしている証なのだろう
ならば、俺から言うことなんて何も無い
「お前がそれいいなら構わないが、気づいたら限界でしたなんて展開だけはやめろよ?それは周りの人間を大いに巻き込むことになる」
かつて俺がやらかしたように
我慢の限界を利用して、畸形達を騒がせ暴走したように
しかし、そのおかげで加減というものを掴めたのも確かだ
ならばいっそ一回ぐらい好きなようにしてみたらどうだとも思ってしまう
・・・それで自殺とかは流石に目覚めが悪いが
「・・・うん、解った」
そう了承し、再び沈黙が流れる
だが不思議と悪くない沈黙だ
気まずい雰囲気でも無いので、心地よく浸かれる
・・・だがそろそろいい時間じゃないだろうか
恐らくだが1時間ぐらいは経っていると予想できる
これ以上は長風呂になる。こんな状況で逆上せて倒れる、なんていう最悪な状況になりかねない
「ーーーーー俺はそろそろ上がらせてもらうぞ」
そういいながら俺はタオルで前を隠して出入り口へと向かう
「ーーーー・・・湊!」
後ろから少し大きめな声を掛けられ、咄嗟に後ろを向く
すると真剣な顔をしたソヴィの顔を見受けられた
・・・・だからとりあえず前を隠せって
「・・・あぁごめん、やっぱりなんでもない」
「・・・・・そうか」
何を言おうとしたのかは解らなかった
もしかしたら何かとんでもないことを言おうとしたのか、それとも冗談を言おうとしたのか
今となっては解らない。だけど、その時見せた顔だけは真剣であり真面目な顔であったことは確かだ
恐らく、その言い損なった言葉を俺は近いうちに聞くことになるんじゃないかと予感する
そしてそれは、お互いの関係にヒビを入れること言葉なのかもしれない
お互いの関係それはつまりーーーーー
家族という、日常に・・・・
今回は話が進んだから良しとしよう




