望み
本編は進まず、今回は語りの部分です
主人公とはいつも何かを護る為に動いている
家族を、友人を、仲間を、恋人を護る為に感傷し、行動する
されど、それを視た敵役は得てしてこういう
"護るものがあるから弱い"と
しかし結果は必ず護る物がない敵が負ける
それはどういうことか
単なる作中あるあるの主人公補正だ、といえば結論つけることが出来るが
ここはあえて現実的に考えて欲しい
普通なら守りながら戦う、なんていう面倒なことはしないだろう
非効率的で、それでいて弱点が多すぎるからだ
負ければ死ぬような戦いなら、尚更捨てておくべきモノだ
だが主人公というものは、守りながら戦っているのにも拘らず、敵の猛攻から守りきることが出来る。死なずにな
それが美徳だと言わんばかりに
しかし、モブがそれをやると自分が死んで守りきるか、または皆死ぬかのどちらかだ
ならばこうは考えれないだろうか
"自分以外を護ることが出来るだけの力が有り余っていると"
つまりは余裕なのだ
力が無いように見せかけたトリック
弱い弱いと、必死に傷つきながら守りながら戦う主人公を見て油断する敵の隙を突く巧妙なテクニック
こう考えると、主人公とは何とも意地汚い人間なんだろうか
・・・でも、それでいい。いや、むしろそれがいい
自分の欲のために、考察し、計算し、行動する
そうでなくては人間味が無い。正義感に溢れる誰でも彼でも救いたいヒーローなど怖気が走る
しかし、憧れる。讃え興奮し尊敬出来る正義だ
・・・だけど、憧れるだけであって実際にはなろうとしない
何せ結局痛い目を見るのは自分であるからだ
見返りは最高で感謝か金か。その代償は最悪己の命
釣り合うはずが無い。天秤に掛けるまでも無い
そして何より通常の日常生活ではまず無いシチュエーション
故に空想であり妄想の類なのだ。大切なものを護りたいから戦うという姿は
しかし、そう思うのはまだ学生という子供の枠内に納まっている人間ぐらいなものだ
事実、それはどんな形であれ存在している
犠牲は自分自身、それは変わらない
だけど、見返りと敵役は違う
敵役は社会
見返りは小さな幸福
具体的に言うなれば、一家の大黒柱の父親が家族のために仕事に奮闘する物語だ
野原ひろしみたいに、汗水たらして、上司に怒鳴られ、それでも尚頑張り妻を子をペットを家を護らんとするその姿
誰もが憧れ、好意を抱く理想の家庭
普通の日常という枠内ならこれが限度だ
自分の命に引き換えてでも護りたいものを護る姿
それが格好いいかって?ああ、格好いいさ。人なら誰もが憧れるシチュエーションだ
それが美しいかって?ああ、美しいさ。それこそが美徳であり理想だ。
でも、しかしだ。理想は理想だ。現実はそう甘くない
理想を掴める人間なんてものは数が限られている
何せ、誰もがその理想、つまりは夢を追うのだ。結果、欲と欲の争いになり、醜い闘争と化す
しかしまあ、このことに関しては一概には言えないな。数が少なかろうと多かろうと、理由が有ろうと無かろうと、奪い競い合うのが世の常なのだから
・・・・それは見ている人間の心が汚いって?まあ確かにそうだな
例えば、欲と欲の争いというのを現実的に考えに美化して具体的に述べるのであれば・・・三角関係とかどうだろう
一人の男を取り合う女性二人。ドラマなんかじゃよくあるが、現実にだって無くは無いものだ
それは一見ドロドロとした醜いものだが、中々どうして美しく面白いものでもあり、同時に人を人らしく成長させる姿でもある
独占欲とは、素晴らしく人間らしい欲望ではなかろうか
でも、いつだって本当の欲望は、本当の願望は、大抵手に入らないようになっている
護る護らない、助ける助けない。そんな安っぽい願望など生憎持ち合わせては無い
そんな、死ぬ気で頑張った程度で手に入る姿が視える願望であればどれだけ楽か
絶対に出来ない、絶対に無理。絶対に不可能。そんな絶対的に不利な状況すら覆せるモノ
それこそが、願望というものだと私は思う
・・・・・・10年だ。10年掛けて、それでも手に入らない、成せない祈りがあることを私は知っている。身に染みている
だから、ああもうヤケだ。何もかも犠牲にしてでも、軽蔑されようと、法に背くことをしても
絶対に私の願望を叶えてみせる
生きている限り、それを追い続ける
無駄かもしれない、意味の無いことなのかもしれない
だけど、それでも。私は求める
たった一つの希望がそこにあったんだ。
家族が家族を助けないで、誰が助けるんだ
故に私は救ってみせる
あんな姿を、二度とさせたくないから
これは最早執念という呪いだ
どんな結果になろうと、今はただ、この願望を叶えることだけは考え行動する
誰を巻き込もうと知ったことか、誰が死のうと知ったことか
彼以外は有象無象に他ならない。利用するだけの舞台装置でしかない
・・・・願望、願い望むこと、か
最早そんな段階、とっくの昔に超えている
熱望し、切望し、そして今となっては心の底から望んでいる
感情というものは結局のところ単純なものだ
彼は複雑怪奇といったが、私からしてみればこれほど単純なものはないだろう
だから彼だけは必要なのだ。救うためには彼の助力が必要不可欠なのだ
故に手放したりなんかしない。お前は彼を救うまでずっと縛られる運命なんだ
理解してくれよ、欲を持たない人間の形をした感情
感情でありその意識であるくせに、自分の身の真実に辿り着いていない哀れな傀儡
ーーーーーー・・・ねぇ、湊。貴方はずっとそのまま生きていくつもりか?ソヴィが来てから変わったと貴方は言ってたけど、私から見れば何も変わってなんか居ない
欲を持てよ。護る護らないじゃない、助ける助けないじゃない
そんな安っぽい欲なんてものは君には必要ない。そんなレベルで留まるな
もっと強い欲を、ソヴィみたいに総てを奪い返すという突拍子の無い強欲を
貴方もそれぐらいのモノを持てば、視えて来るでしょうね
虚飾と無像で塗り固められた世界から、現実と冷酷の世界を
私はそれを知っている。でもあえて言わないことにしている
意地悪というかもしれないけど、コレばかりは自分自身で辿り着かないと意味が無いものだと思うから
故に私は傍観しよう。かといってノーヒントじゃ無理そうだから、少しだけヒントを与え、傍観しよう
貴方の成長こそ、彼を救う鍵になるのだから
さあーーーーーー綺麗に踊って魅せてくれ
これ以上は、有限の時間が許してくれない
ここまでお膳立てしたんだ。これで、成果無しのデメリッしかない有様・・・なんていう結果だけはよしてくれよ?
「・・・願わくば、誰もが好ましい世界に居られるハッピーエンド、とか言うつまらない結果にだけはならないで欲しいかな。私も、お前もーーーーーーー」
一人、研究所の私室にて、薄暗い部屋の中呟く
それは虚空に向かって話しているようで、湊とはまた別のモノを視ている様だ
己の意思の覚悟を確かめ、行ってきた総てを思い出し、そしてさらに駆け上がる
それこそ人間が持つ可能性の一つ。強欲にして執念の先にあるもの
その後のことを考え、その先を推測し、ルートを構築し揃えれる材料をかき集め、自らの望みを叶えるべく一歩、また一歩踏み外していく姿はまさに自殺そのもの
だが、それでいい。狂気でなくては成せないこともあるのだから
そしてそれが出来る人間は、狂気になれる人間は、最初からその素質があったという話だ
それゆえに、ソヴィと湊は似ていて、天音と湊は同じなのだ
「・・・根本的に壊れていた人間なのだから。そんな結末は相応しくない」
それゆえに迷わない。迷う必要が無い
目的は決まっている。計画は練ってある
だからこそ、この自信は失うことは無い
だからこそ、彼と彼女は壊れていく。既に壊れているのにも関わらず、さらに壊れ、狂気に満たされていく
それが当然の如く、彼女は止まらない
もし彼女を止めることが出来る人間が居るのであれば
それは同じく狂気に満たされている人間だけなのだから・・・・・
そろそろ物語りを進めたい




