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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
48/74

優しさ

遅れてしまった・・・

ーーーーーーーーお前は、俺の■■じゃない。だけど、その程度で迷うな。俺を殺す程度で狼狽えるな。真実を、己の道を知り・・・・何を成すために生まれてきたのかを理解しろ。それが、人間だ。


ああ、解っているさ


ーーーーーーーー・・・こんな仕事やらせてしまった俺が言うのも何だが、無情にはなるなよ、無関心になるなよ。無感動になるなよ。人間の尊厳を失ってはいけない。その上で、欲を果たせ。俺から言えるのはこれぐらいだ


いや、十分だよ。俺はその言葉を一生忘れることは無いだろう。それが、俺の中でアンタが生きた証にもなる


ーーーーーーーーそうか


アンタが命を掛けて護りたいモノ。命を掛けて変えたいモノ。・・・心身痛み入るよ。でも今の俺には理解出来ない。それに、残された人間のコトも考えたほうがいい


ーーーーーーーー女房あいつは強いよ。だから俺は惚れたんだ


男としてどうかと思うが


ーーーーーーーーハハッ、違いねえ。・・・・最後くらい、■らしく出来たかなぁ、俺は


・・・・俺には、解らない。結局そういうのは自己満足でしかないからな


ーーーーーーーーそう、だな。あいつらを、そしてあのバカを宜しく頼む。出来れば命は奪わないでやってくれると嬉しい


・・・・・・・・・・・・


ーーーーーーーーありがとよ。そして、悪かった


謝るな。もう、慣れた事だ




ーーーーーーーー尊べよ、若人。無像を捨て、唯一の存在モノを勝ち取れ。


そんな存在、出来たらいいな




今でも忘れない。忘れることは出来ない


その言葉だけは生きている限り忘れることなんかできるわけが無い


自分のやった罪くらい、自分で把握している


その責任はいつか必ず何倍にもなって俺に圧し掛かる


だけど、それでいいと思ってしまった


後先考えずに、今この瞬間のみを考えてきたから


だからこそ後悔しない。その時、その瞬間、それが一番最善だと考えたから


それでも失敗はする。ミスを犯す


ならば、もうそんな過ちはないようにこれからを生きるしかない


偽ることなく、虚勢を張らず


歩んでいくほか無いのだから







「ーーーーーー・・・ん?あれ美樹じゃないか?」


前に居る耕哉が徐に声を上げる


話は中断したが、しかし確かめなくてはならないので近づきながら皆して前方を凝視する


するとーーーーー


「ああ、やっぱり美樹だ。・・・いやでも」


確信づいた耕哉がそう言い零す


それに反応して美樹がこちらに振り向く


美樹だけが・・・


「おい美樹、湊はどうしたんだ?」


「・・・耕哉達。湊は・・・なんか急に頭痛いっていって先行っちゃった」


呆れ顔と不満そうな物言い


それはまあ、当然か


何せ折角好きな人と二人きりだっていうのに相手が勝手に姿を消したのだから


「・・・・ま、まあなんだ。とりあえず進もうか」


紳士の耕哉も流石に言葉が見つからなかったのか、とりあえず行動を起こすようにしたらしい


友人として湊がどうなったのか、とか私個人確かに急にどこかへ行ったという湊を気になっていないといえば嘘になるが


(私は、一体何を言おうとしたんだ・・・・?)


私は一言も、話すことが出来なかった


ついさっき、ほんの数分前、私は何をいおうとしたのか今になって解らなくなったのだ


さっきまでは解っていたような気がしたのだが・・・


勢いに任せたのか?私が?・・・それはあまり考えたくない


いや、しっかり考えたはずだ。刹那に考察し結論を見出したはずだ


なのに、今となってはそれが理解出来ないナニカに変わっている


・・・・・・・・・・・なんだこれは、不愉快極まりない


その後も、一人この不可解なモノについて自問自答し続けて答えを見つけようと無駄な努力をする


そしてその結果、気づいたら肝試しは終っていたという、何とも間抜けは失態をしてしまう


だが、良かったのかもしれない


おかげで結論に辿り着くことができた


私が何を言おうとしたのか


何を思ったのか


その答えは、決して一人では答えが出ないということが解ったのだ


だから、聞きに行こう


一人でダメなら、誰かに相談しよう


なら誰に相談するか?・・・決まっている、それこそ愚問だ


相談できる相手なんて、今の私には限られているのだから








「ーーーーーーどうしたんだい?こんなところで」


「・・・・海か。貴方こそどうしたの?こんなところに」


「偶然だよ偶然。ちょっと静かになるところに行きたいな~って裏に行ったら美樹ちゃんが居たんだよ」


裏とはここ、宿泊施設の裏側を指す


私も一人静かで風が気持ちくてすぐ近くの場所を考えた結果ここに来たのだ


「そう・・・だったら私は別のところ行くから」


「いやいや待てって!ちゃんと聞いてきたんだからそう邪険に扱わないでくれよっ!!」


「・・・・・聞いて、きたんだ」


「知りたかったんだろ?まあそれ以外にも用件があるからついでって感じで終っちゃったんだけどね」


美樹は感づいていた、というより誰がどう見ても不思議に思うだろう


湊とソヴィ


この二人の関係は理解しがたいものだ


一見から察すると恋人同士と思うだろうが、少し話しただけで解るのだ


この二人はおかしい


何がと聞かれればなんだろうと答えるしかないのだが


それでも、感覚的に解る


だからそれを聞く為に海に相談して頼んだ


こういうのに関して耕哉は向いてないから


紳士ゆえに根掘り葉掘り聞けないのだ


ならば何故海に相談したのか?


それは以前美樹が湊に告白するのを迷っている時に海に相談したからだ


そしてその時、海は無意識かどうかは解らないが


美樹の深層心理の感情を見抜き自覚させたのだ


その時海は一つ一つ質問していき核心たる部分へ徐々に自覚させていくテクニックをみせた


だからこそその能力を買って今回海に再度頼み込む


海は快く引き受けてくれた、何故ならその理由はーーーーー


「その様子じゃそっちも聞いてきたんだろ?結果は・・・まあ察するよ」


「・・・あともう少しだったのにアンタたちが来たんじゃない!」


「睨まないでくれよ、こっちだってあと少しで聞き出せたのに耕哉のヤツが見つけちまうんだから」


「・・・あのバカ兄貴」


「まあまあ、それでも収穫はあったよ。知りたいんだろ?いいや、美樹は知らなくちゃいけない。じゃないと、未練が残っちゃうもんね」


「その言い方、まるで今から死ぬみたいじゃない」


「でも合ってるだろ?留学するんだ。早々に帰って来れないんだから今のうちに後悔はないようにしないと。・・・人間、数年数日でガラっと変わっちゃうからさ」


美樹は既に海外の大学へ留学することが決定している


それは先月の5月に決定したこと


勿論これは美樹が望み、美樹が手にしたかった夢でもあるからだ


そしてこれは卒業後などという規定期間は無い


既に向こうは受け入れる準備が出来ているとのことだ


つまり、行ける時行けるということ


故に焦ったのだ


何せ美樹は湊に惚れているのは今も昔も変わっていないのだから


別れても、それで恋心が消えることは無かった


あんなダメで根暗で無愛想な彼を好きになった気持ちは失うことは無かったのだから


だからこそ焦る。突然やってきて一緒に暮らして、しかもかなり親密になっているソヴィトヴィーニアこと有川刹莉


要は嫉妬であり、独占欲から来る衝動に他ならない


時間は限られている


ーーーーーー湊の本意を確かめたい


だがソヴィが居る以上、美樹と湊が二人きりになるのはかなり難しい


だから二手に分かれるように仕向けた


そのための肝試し。裏でこっそり提案したのは他ならぬ美樹だった


「・・・で、どうだったの?ソヴィの方は」


「・・・あー、なんていえばいいんだろう。とりあえず聞いてきたことを一つ一つ教えるね」





「・・・・・・・・・・」


流石に絶句した


「流石に驚いたよ。まさか、湊に好きとか嫌いとか愛しているとか、そういう当たり前に抱く感情をソヴィさんはどうでもいいと言ったんだから。・・・冗談っていう雰囲気でもなかったからあれが恐らく本心なんだろうな。ただ恋心に初心って訳じゃなさそうだったよ」


「・・・なんなのよ、それ」


理解出来ない、訳が分からない


「そう、俺たちには解らないことだよ。・・・結論を出すのは湊の話を聞いてからだ。次はそっちの番だよ」


湊の話、いやまあもう解っていると思うんだけどね


あえて口に出して言わせる辺り酷いものだ


「・・・フラれたわよ」


「えっ! 告白したの!?」


「今しかないって思ったんだもん。・・・でもハッキリフラれたわ」


「それはまた・・・てっきり湊とソヴィさんの関係を聞くだけかと思ったら、予想の斜め上いったね~」


「茶化さないで。こっちは至って真剣だったんだから」


でも、あれは傷つくよ


話題変えなかったら泣いていたかもしれない。というか半分涙目になっていたかもだし・・・


思い出したらまた泣きたくなってきた


「ソ、ソヴィさんと湊の関係はどうだったの?」


・・・こういうところは空気読むんだよねぇ昔から


「・・・家族っだって。まあそれ以上に突き詰めてみたけど、急に頭が痛くなったとかで先行っちゃったの」


「都合の良い頭痛だ。でも湊はそういうのから逃げないと思うから、本当に頭痛だったんだろうね」


「でしょうね。・・・それでも、ハッキリ分かったわ」


結論が、出てしまった


故にもう後戻りは出来ない


総てはあの時、あの事件の時から終っていたのだから


今更始めようだなんて、いくらなんでも虫が良すぎるだろ


そう分かっていた、分かっていたけど・・・・・


理解したくなかった



「・・・・今の私は、湊の害悪にしかならない」



現実を受け入れたくなかった


それでも微かな希望があると信じていた


でも、やっぱり現実は現実だった


何も変わってはくれなかった


私が変わろうと、湊が変わろうと、その変わるきっかけは変わってはくれなかった


「これ以上私が湊の傍にいたら、きっと湊がダメになってしまう。昔の私のように、私が湊に依存していたように。湊はそれを分かっていたんだ。あの時、あの事件の時に。だから私を遠ざけた。私の成長にとって湊が害悪だったのなら、湊にとって私が害悪だったから・・・」


だから私を拒絶した。私の告白を受け入れなかった


今の貴方にとって、あのぬるま湯に浸っていられる時間はなくなったんだね


・・・・ああ、そうか


私は彼に優しくし過ぎたんだ


そして彼は私に優しくし過ぎた


彼にとって優しさは害なのだ


ソヴィが居なくなって帰ってきたとき、私は彼を包んだ


だけどそれは彼にとって救いであったと同時に恐怖を抱く対象でもあったんだ


ずっとその優しさに包まれたい。そう思ってしまうのが普通の人間であり普通の感情だ


でも彼にとってそれが"厭"だったんだ。それが怖かったんだ


つまり、私の成す事やる事総て裏目に出ていたってことだ


・・・・は、はは。なによそれ、害悪どころか存在そのものが邪魔でしかないじゃない


恋を抱いていた私、恋を抱いた私に恐怖していた彼


釣り合うわけが無い。成り立つわけが無い


彼と共に歩むなら、それはきっと恋なんていう余計な感情を持っていない人間でなければーーーーーーー


「・・・・・ああ、だからソヴィなんだ」


好きになってしまえば、自ずと好きになった相手に優しくしてしまう。どうやったら喜ばせることが出来るのか考えてしまう


それをしない、それをやらない相手


それこそ湊と共に歩むことが出来る"最低条件"


・・・全く、面倒な男だ


そして、そんな面倒な男を好きになってしまった私は愚かだ


好きになってしまえば、それでお終いなのに


一度芽生えた片思いの恋心は、時間が経つにつれ失っていく


でもそれはその時間分彼を見ない、彼に会わない、彼のことを考えなければの話だ


もし私が湊とどうしても一緒にいたいと本気で考えるのであれば


それはきっと、この恋を失くして友達としてでしか成り立たない


それは・・・あまりにも酷な話だ


そしてそんなこと・・・・・


「無理に、決まってるじゃない・・・・っ!」


「・・・・美樹」


弱さは罪じゃないといった


でも彼にとって優しさこそ罪なのだ


「私はただ、湊のことが好きなだけなのに・・・その好意自体、湊は嫌っている。過去に一度だけでも付き合ったあの時間は、奇跡に等しかったんだっ!・・・・ああ、もう・・なによ、これ。最初から叶うはずのない恋なんて、あまりにも酷すぎるよ・・・」


ああ、惨めだ。こんな有様決して表に出したくなかったのに


でも、我慢できない


「・・・・うっ・・・く・・・あ・・・・っ!」


その場で蹲り、嗚咽し、叫びを堪え、でも涙流してしまう


ソヴィに取られて悔しいから泣いているんじゃない。恋が実らなくて悲しいから泣いているわけでもない


ただ、そんな残酷な現実を、運命を認めたくない。だけどそんな現実も運命も変えることが出来なかった自分の無力さに後悔しているのだ


海はそれを見て、何も言わず、ただ肩を支えてくれる


そのせいで、私は気が緩んでしまい、堪えるのをやめてしまい、泣き叫ぶ





深夜 某所 マンションの一室



「・・・・・やっぱりこうなったんだな」


「やっぱりって・・・隊長は予見してたんですか?」


「可能性には入れていたが・・・しかし本当になるとは思わなかった」


美樹に答えを言う前の刹那に、その時連絡用の携帯に連絡が入ってきた


こっちの連絡用の携帯は基本非常事態の時に掛けられるもの


故に焦り、その場で嘘を吐き美樹の元を離れてしまった


・・・嘘は、嫌いなんだがな


でも必要なら吐く。私情より現状を優先するのが俺だ


「急に呼んでしまって申し訳なく思っているんですが、こういうのはどうしても自分の目で見てもらわないと、こっちの判断は出来ませんので」


「いいよ、解ってる。それで雪、他に俺がこっちに戻っている時何か動きはあったのか?」


「現状はまだ。ですがあの様子じゃ明日には動くと思いますよ。・・・それで、どうするつもりですか?」


「・・・・・・・現状維持だ」


「・・・・やっぱり、いいんですね?それで。後悔しても知りませんよ?」


「ああいいさ。折角の手掛かりなんだ、ここで手放せばより被害が出る」


「でしょうね。まあいいでしょう、私は貴方のそういう無情の部分は嫌いじゃないですし」


だろうな、父親を殺しておいて今ものうのうと生きている俺だ


こんな俺に付き従ってくれる物好きはお前達ぐらいなものだ


「それじゃあよろしくな。・・・ああそうだ、今陽のヤツ何処に居る?」


「恐らく買出しに出ていますが・・・何かあるんですか?」


「・・・帰りの電車、無くなったからあいつのバイクに乗せてもらって戻ろうかと」


「まあ朝までに戻るとなるとそれしかないでしょうね」


「後で戻ってくるならその時言えばいいか。・・・その間、シャワー借りるな」


「勿論いいですよ~」


さて、今の俺の決断が吉と出るか凶と出るか


どちらにせよ、後悔は無い


折角掴んだ手掛かりだ。たとえ非情だろうが無情だろうが、軽蔑されようがそれでこんな面倒事収まるならそれでいい


・・・まっ、ソヴィに嫌われるのは確定かな


だがこれは良い機会かもしれない


俺という人間がどういう存在なのか


それを見極めさせることが出来る最初の機会


それで嫌われて、軽蔑されたら・・・俺からあいつらの前から姿を消そう


遅かれ早かれそのつもりだったんだ


だから俺はむしろ、嫌われることを望んでしまう


長くなっても必ず書き終える

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