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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
47/74

中津海

"幸せ"


私にとって程遠いモノだと思っていた


母が死んで、母性というものが解らず生きてきた


姉が死んで、途轍もない喪失感を味わったまま生きてきた


父が死んで、孤独というものを知った


だからこそ、これからの人生を乗り越えるために覚悟した


どんなに不幸に苛まれ様とも


どんなに幸福から拒絶されようとも


例え絶望の淵に立たされて、一瞬先に何も無くても


それでも、足掻き耐えてみせる


生きるのをやめない、生きていくことをやめるつもりはない


そう誓った、そう再認識した。あの夢で、もう二度と見ることが無いあの夢で


私は幻想の前で誓った


ーーーーーーー奪い返してやる


そして、一つの強欲を手に入れた


総て奪い返してみせる、家族も、友人も、幸福も


人並みの幸せを奪い返してみせる


恋しいから、愛おしいから、求めたいから、儚いから


だからこそ、その一瞬を私は求める








「どうよ刹莉さん。新学期湊と同じ学校で楽しいか?」


「う~ん・・・普通だよ。でもやっぱり九条峰の皆がいないから寂しいかな」


「そうか?俺たちと居てもいつも誰かを気に掛けていた様子だったけどなぁ」


「鎌を掛ける相手を間違えてるよ、海。そういうのが利くのは目の前の彼女みたいな人だと思うよ」


「ーーー・・・悠木ちゃん、かなりの怖がりだったんだな。耕哉の腕に思いっきり抱きついてるよ・・・羨ましい」


静寂に包まれているはずの夜の森


しかしながら今日だけは違い、今現在私達の4人組は暗い道の中、携帯のライトで足元を見ながら歩いていた


前には龍川耕哉と悠木冬香が、そして私の隣には中津海が居る


道幅はそこまで広くないので、距離を取らずまとまって進んでいる最中だ


「ーーーーーー刹莉さん、ちょっと興味本位で色々と聞いてもいい?」


「どうしたの、突然」


「いやさ、こうやって話すことって今まで無かったから丁度いいかな~って」


「・・・まあ、下ネタじゃないなら別に構わないけど」


「ああ、大丈夫大丈夫・・・今の俺、そんなにふざけれる気分じゃないから」


「・・・・・・・・?」


なんだかいつもと様子が違うような・・・


「それじゃあ早速質問していこうかな~。あ、特別考えなくていいから、思ったことをそのまま言って欲しい。・・・諏訪原そっちの学校は楽しい?」


どうやら一問一答形式で行われるようだ


ゴールまでの道中暇で時間もあるようだし、それに乗ってみるのもまた一興


次にお化けが出てくるのは大よそタイミング掴めたからその時中断すればいいか


「楽しいよ。こっちの学校も個性溢れる人多いから」


「そっちの湊はどんな感じ?」


「九条峰の時と一緒だよ。まあ貴方達がいない分より目立ってないけど」


「なるほどー。・・・んじゃあ次、何で髪の毛切っちゃったの?」


「う~ん、邪魔だったからかな。動く時とか」


「でも、前髪は伸ばしているんだ。それは何で?」


「何でって・・・向こうに行った時の事故で殆んど見えなくなったからって言ったでしょ?」


「向こうというのはロシアに行った時の?」


「ええ、そうよ」


「そっか~・・・ロシアで何があったの?」


「テロよテロ。私が泊まったホテルがテロリストに乗っ取られて、その時ホテルの一部を爆破した時その破片が私の目に突き刺さったの。・・・これ、前にも説明したと思うんだけど」


そう、確かあれはこっちに戻ってきてすぐの時だ


眼の色が変で、前髪伸ばして片目隠しているのだ


誰だって気にするに決まっている。だから私は色々と誤魔化しながらそう伝えた


・・・言える訳が無い。あんなこと、言える筈が無い


言ったところで何も意味が無いのだから


「ああいや、確認したかったんだ。・・・・それで、そこでレツオに何があったの?」


「・・・テロリストに捕まって、見せしめに殺されたわ」


あっ、今思ったけどこの説明。まるでテロリストが湊たちみたいだ


ま、まあ深く考えないで置こう


「ふ~ん・・・。んじゃあ話を変えて。湊の家で居候する時どう思った?」


「どうって・・・日本に滞在することが決定した時、日本には父の友人がいるからそこでお世話することにーーーーーー」


「どうして滞在することが決定したんだ?」


「・・・・海、いい加減しつこいよ。いつもの貴方以上に」


確かにいつもの彼らしくない。こんなに根掘り葉掘り聞いてくるような人間じゃなかったはずだ


そんな彼がどうして今日、この瞬間、このタイミングでしつこく聞いてくる


何か、理由があるのか?


湊の友人で、周りの人間を賑やかに楽しくさせる素質があるスポーツ青年


それが、なんだ、これは。この感覚は


知っている、何度かあったことがある。一度助けを求めたことも


まるでーーーーー



耕哉達に聴こえないくらい小さく、そして私に聞こえるくらい突き刺さるような


声で私に放つ




「・・・その父親が死んだからか?」




まるで、"天音"だ




「ーーーーーッ!!」


忘れていた、彼があの天音の弟だということを


「湊の親父さんの死んだ時期と"ソヴィトヴィーニア"の親父さんの死が奇跡のように一致している。二人の親に何があったのかは知らないけど、これを偶然と切り捨てることは出来ねーよな」


「・・・・どこまで、知っているの?」


「俺ができるのは精々情報を抜き出すくらいだよ、"姉"からね。・・・だから、正直言って本当に申し訳ないと思うよ。今にも罪悪感で押しつぶされそうだよ。・・・・本当に、ごめん。ソヴィトヴィーニア、君の目はーーーーー」


「それは違う。これは私が望んでやったことだよ」


今の海が、天音側の人間なのか、それとも普通の青年なのかわからない


いや、解ることができない


本心が見えない。天音同様に、湊同様に・・・・


そして、私同様に



暗闇に覆われた木々の中、透き通る風が私達を横切る


その横切った風は、まるで境界線だ


私達と、耕哉達の、交わることの無い境界線



「・・・もう一度聞くよ。どこまで知ってるの?」


「ソヴィトヴィーニアがロシアで起こったことくらいだよ。姉がその辺の資料を纏めているところを、俺が抜き取った」


「そう・・・じゃあ私のことも」


私の家の過去も、知っているのか?


「いや、ソヴィトヴィーニアについて知っているのは来日の原因と、姉が仕出かした君の目だけだ。・・・湊についても、似たようなレベルしか知らないけどね」


・・・そりゃそうだ。私は天音にそこまでの情報を提供していない


私の過去に何があったのかなんて、彼以外に誰も伝えていない


私と彼の共通の過去を


共通の、分岐点を


「・・・天音の資料が本当だったって知って良かった?」


皮肉にも、意地悪にそう言ってしまう


「最悪な気分だよ。でも、姉について少し知れたのは良かったかもしれない」


「・・・・どういう意味?」


「俺はさ、姉について殆んど知らないんだよ。一緒に暮らしてはいるけど、何も解らないんだ。どんな趣味なのか、何が好きなのかとか。精々職業くらいだよ。医者をやっている、専攻は心理学。それだけだ、父も母も何も言わない。いや、もしかしたら何も知らないのかもしれない。俺がお前達の資料を見つけれたのは軌跡と言っていい。興味本位で得たいの知らない姉の部屋に入って、すぐ手元にあったのがそれだった。だから、本当に俺はコレだけしか知らないんだ」


・・・・・いいや、それだけ知っているだけで要注意人物だ


天音の弟、私が最も警戒すべき人間は海だったのかもしれない


天音の部屋に入った?しかも資料を見つけただと?


この男はそれがどれだけ大変かわかっていないのか?


いいや、もしかしたらそれこそが彼の生まれ持った素質なのだろう


それか天音は唯一家では気を許しているか


それでも彼女のことだ。カメラなり何なりで監視しているに決まっている


・・・流石に決め付けはよくないか。あれでも私の身元保証人だ


「悪い、折角の修学旅行なのにこんな話しちまって・・・」


「いいよ、私にとっては最重要なことだったから。・・・だから海が罪悪感を覚えることはないよ」


私が、私や湊が独断で決断しただけだ


天音を止められなかったことで海が気負う必要なんか無いんだ


「・・・・いや、恐らく姉ちゃんは・・・・」


これ以上はやめよう。これ以上話をしたところで意味なんて無い


海は書類上で私達を知っている。それだけ解れば十分だ


「・・・それより、もっと楽しい話題はないの?そんなだから彼女の一人出来ないんだよ?」


「なっ!!・・・痛いところを。あー・・・じゃああれだ。湊のことどう思ってんだ?」


「・・・どう、とは?」


これはまたえらく抽象的な物言いだ


「ほら、刹莉さんが日本こっちに戻ってきても未だに居候させてもらっているんだろ?だから湊のことが気になっているんじゃないかって思ってさ」


確かにあの時、別に湊の家にまた住むことも、況してや家族の一員になる必要もなかった


言えばその辺のマンション辺り借りれることだって出来ただろう


それをしなかったのは何故かと海は言っている


「・・・それは、湊について色々と確かめたかったの」


「色々って?」


「それはいえない」


何せ本当に色々なことだ。一言でも二言でも語ることは出来ない


湊の本心や今までの言動。それにそれ以外にも私は湊の部隊に所属することになったのだ。だったら一緒に居たほうが都合がいいだろう


隊長としての新人教育といいったところか


だがそんなこと話ても無意味なので、誤魔化すことにした


「なら具体的なことはいいや。・・・・湊のこと、好きか?それとも嫌いか?」


「・・・・・」


そうきたか。いや、元々こう聞いてくるつもりだったのだろう


好きか、嫌いか


・・・いや、嫌いなわけが無い。嫌いだったら一緒に住んでいない


ならば、二択なのなら私は彼のことが好きなのだろう


しかし、恋愛には程遠い人生を過ごしてきたが故に私は理解できない


まあ、なんだ。単純に初心だということなんだろうが、一言では表せないな


それに湊だってそういう感情を抱いたことなんてないはずだし


・・・・いや、確か姉さんに恋していたんだっけ。でもそれは湊君のほうだから、いやでも湊だって湊君なんだからその感情を味わったことだって・・・・


・・・・まあどうでもいっか。とりあえず私のことだ


「好きか嫌いかで言えば好きだよ。嫌いな人間の家に住むことなんて私には出来ないし」


「それじゃあ、どんな風に好きなの?」


「・・・え?」


また抽象的なことを


「いや、好きって言っても色々とあるじゃん。友人として好きなのか、それとも女として男を好きになったのかとか。刹莉さんの場合家族としてってのも入るな。まあ、あれだ。ライクとラブどっちかなって」


「ライクと、ラブ・・・・」


好きか愛しているかってこと?


・・・・なんだろう、それはかなり難しく感じる


でも、ああ解ったこともある。言われて初めて理解できた


正直に言おう。その問いの答えを



「ーーーーーーー心底どうでもいい」



これが私の答えだ


そうだ、愛だの恋だの、好きだの愛しているだの、そんな安っぽいものは必要ない


そんな、いつか必ず壊れてしまう感情は持ってはいけない


それ以上に、私達がそんな幸せに感じる感情を持ってはいけないのだ


人間として成り立つには様々な犠牲を払っている


食べ物で言うなら魚、草、鳥・・・数えれば切りが無い


その上で人間は生きている


だけど、私達はもう一つ、通常の人間が持ち合わせない犠牲の上で成り立っているのだ


それは"人間"


前提として家族全員の死が、そしてあの小さな戦場で必死に足掻き抵抗したが故に今を生きている


生きているのを、許されている


それだけで既に奇跡であり幸福と言ってもいいのに、どうしてこれ以上の幸せを求めることができるんだろうか


それはあまりにも傲慢だ。貪欲で強欲だ


「・・・恋をしている、訳じゃないと?」


「うん、そんなものはどうでもいいんだ。そんな程度のモノで測れるような関係じゃない」


恋より深く、愛より重い何か


それが私と湊を繋ぎとめている


男女の関係はそれだけじゃないはずだ


特に私達のように常軌を逸脱している狂った人間にとって、それは邪魔でしかない


現に私はそう想ってきたしこれからもそう想うだろう


・・・考えても見て欲しい。私は今まで人と接することを避けてきたのだ


いや、避けてきたというより疑ってきたが適切か


他人も、友人も、家族も、全部全部疑ってきた


いつも最悪な状況に備えるために身につけたものだ


それが私だ。他ならぬソヴィトヴィーニアだ




それが何なのかくらい、ここまで考えれば解ることだ


「私と湊の関係を表すなら、それはーーーーーーーーー」

折角作ったキャラを目立たせていかないと


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