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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
43/74

悪夢

ーーーーーーーー5日後



「・・・・・・・」


夕方、学校から帰宅して部屋に戻り一人机でメモ帳を出しそこに今までのことを考えながら重要な部分を記していくことにした


この作業はよく作戦や陣形を考えるときに使うものだ


メモ書きするのとしないでは天と地の差があるから


さて、ここからは所謂回想と思考タイムだ


如月の家に行ってから5日が経った


その間何事も無く過ぎていってしまった


・・・いや、付け加えよう


俺達には何事も無く過ぎていってしまった


そう、麻薬の被害は増えていく一方である


そろそろ本格的に学校側も動き始める頃だが


俺達の修学旅行も後3日だ


急遽変更になった割りには予定通り行われるらしい


個人的にはもう少し延期して欲しかったのだが、まあ仕方ない


因みにソヴィにはある程度のことは話しておいた


具体的には如月が月だという以外のことを


被害が大きいのは諏訪原だ


故に戦力は多いほうがいい


動くとしたらここからなのだが、今のところやはり後手にしか回れない


手掛かりが増えたといえば増えている


手ごたえが合った手掛かりは被害者の共通点。


これは女性が大半であることと、2,3年が3割を占めていている。そして運動部では無く基本的に生徒会の手伝いなどを行うことが出来る文化部なのが2割ぐらいだということ


この生徒会というのがキーワードだ


何故なら、九条峰で被害に遭った中に同じ文化部で2,3年で生徒会に関係していた人間が1割居たからだ


・・・・解っている。こんなのはただの偶然だと切り捨てることができるくらい


1割だの3割だのと、そんな少なすぎるし信憑性の薄い共通点考えるだけ無駄というもの


だが、どの道手掛かりは多くない。ならばこの少ない共通点に賭けてみるほかないのだ


「・・・・女性、生徒会、文化部、2,3年。これだと犯人は男と考えて間違いなのだろうか」


メモ帳に記しながら、犯人像を考える


(だが、女という線も捨てがたい。やり口が巧妙だし、こういう器用なことは女性が得意とするものだ。それに女性の嫉妬は怖いと聞くし、恨み辛みからくる復讐というのも考えられる)


しかし、男性という線も捨てがたい


もしかしたら白昼堂々と行っている可能性もあるからだ


そんな大胆なことは男性の方が上手く出来る


・・・・まてよ、犯行が複数だとしたら?


複数人で行っているとしたら?


だが、大人数で行うことも出来ない


となると2,3人が限度だ


「・・・九条峰と、諏訪原」


二つの学校、複数人による犯行


二手に分かれて行っているっていうのか?


そして少ない共通点、これを最低限数に入れて麻薬をばら撒いている、と


・・・・・これ以上考えても仕方ない


台所に行って麦茶でも飲むか


そう思い立ち上がり部屋の扉を開けると違和感に気づく


・・・そう、気づけばこの家が騒がしいのだ


話し声が聴こえる。二階に居るのに


だがソヴィの部屋からではない


主に1階から多人数の声が聞こえる


それも女、そして黄色い声で喚き散らしている


何ともうるさいことだ。だがこれはソヴィの友人では無いだろう


アイツは友人を選ぶ才能があるからな


と、なると・・・


(千里か・・・)


思えばクリスマスの時もガラの悪い餓鬼共に絡まれていたな


ソヴィに反して千里は才能が無さそうだ


それでも孤独が怖い、だから手放したくない


千里の心情が手に取るようにわかる


これも血縁だからか、それとも単に愚かだからか


どちらにせよ、一回忠告したほうがいいかもしれない


一階へ降り、台所に向かおうとすると案の定千里の友人らしき人物が見受けられた


・・・まあ、今時のギャルって感じだな


とにかくキャピキャピしていてる。俺にとって一生関わりたくない人種だ


「ーーーーーーー」 「ーーーーーーーー」 「ーーーーーーーーーー」


「ーーーーーーーーーー」 ーーーーーーーーーーー」


リビングから台所は見ようと思えば見れるので、恐らくだが今千里の友人達が俺の姿を見て千里に質問しているのだろう


「ーーーーーーーーーーーーーーーー」 「ーーーーーーーーーーー」


今この一瞬を持って外界からの音を掻き消す


言うだけなら簡単だし、文字に表すと思春期男子が考えそうな言葉だが


つまりは、周りの音を総て雑音に変えようということだ


ではどうやったらそんな芸当できるか


単純だ。何かに集中すればいい


全神経をすり減らすほどの集中力を持ってすれば可能だ


俺はそういうのは長けているほうなので造作も無い


ではここで問題になるのはl何に集中するかだ


頭の中で考え事をするのもいいが、効果的なのは作業に集中するということだ


勿論これには個人差がある。考え事をするほうが集中できる人間も居れば、手作業などをするほうが集中できる人間も居る


そして俺の場合、両方だ


考えながら手作業をする。通常の何倍も疲れることだが、こと今に関してはこのぐらいが丁度いい


と、いうことで俺は今「飲む」作業に集中する


麦茶を飲むことに


コップに注いでどのぐらい入ったのかを計算し、手に持つ力を1として何か別なものを持った時と比べながら一口一口味わい、一飲みする度にどれだけ減るのかを考えながら時間を掛けずに飲む


こんなことを知らない人間が見ればただ麦茶を飲んでいるだけだが、こんなくだらないことを考えながら飲んでいると知っていれば何ともシュールな絵図だろうか


とまあそんなことをして喉を潤し、目的を果たしたので再び二階へ上がるため廊下を歩く


再びチラリと千里たちを見る


・・・・やはり一度忠告して置いたほうがい良いかもしれない


千里みたいな内気な性格が、ああいう人種に関わると後ほど後悔することになる


それが千里だけなら良いが回りの人間にまで迷惑を掛けてはいけない


特に家族である俺やお袋さん、そしてソヴィにな









「ーーーーーーーーッ!!!------ッ!!!」


目を凝らされる。瞬きを許されず、身動きを固定され、口は布を詰め込まれ叫ぶことも出来ない


絶体絶命、一言で表すならこの言葉が相応しい


だがそんな絶対絶命も既に2週間が経過している


最も体感的にだ。実際はどうなのかもわからないし解りたくも無いだろう


要するに監禁されている、ということだ


精神が、身体が衰退していく中監禁した男が姿を現す


「ーーーーーーーーーー」


言葉は聞こえない。もう聞いていられるほど余裕がなくなってきたからだ


そんな姿を見て、その男は拘束具を緩めて来た


目は瞑るようになり、口も声を発せられるようになった


だが、何も出来ない。強いているなれば寝ることぐらいだ


そして日に一度の必要最低限の水分と食料を分け与えられる


そう、そんな衰退した姿を見たから拘束具を緩めたのではなく、最低限死なせないために緩めたのだ


そんな日が、ずっと続いていた


そんな牢獄に、永遠に閉じ込められていた


ずっと汚されていた


綺麗だった私は既にみる影も無く、ずっと汚され続けていたのだ


心も体も、総て総て何もかも全部この男に持ってイカレタ


この男の欲望のためだけに私は総てを失ったのだ


女性という尊厳も、人間という己も


ただの家畜と成り果ててたのだ


私だけじゃない。周りにも同じような女性が何人も居る


日によって慰めてもらう家畜を変えて、今日も男はやってくる


そして、私の番ーーーーーー


いつもいつも、この男は最後にこういう


聞きたくなく、聴こえないはずなのに私の頭には響いてくる


ーーーーーーーーーー愛している、と









「ーーーーーーーーーーーッッ!!!!!」


"また"だ、またあの夢だ


眼を移植したときから見続けている悪夢


細胞記憶。つまりこの夢はこの眼の持主の女性の味わった実体験だろう


でなければこんな生々しくない


「あ、はぁ・・・・・はぁ・・・うっ、ぐ・・・・」


私はずっとそれに魘されている


大体2ヶ月以上か。その間、週に5回くらいのペースで視続けている


夢は見ない。だが悪夢は見る


でもこれも覚悟していたことだ、だから我慢する。耐えてみせる


そう思っていたが、やっぱり厳しい


ストレスが溜まっていく一方だ


「・・・2時」


手元にある時計を目視する。そこには2時15分くらいを指していた


ロクに眠れない日がずっと続いている


学校でバレないように寝ているが、このままではそっちが主体になりかねない


(・・・・・眠れるわけが無い)


誰にも言い訳できない、自分で決めたこと


それがこの日本で暮らすための条件なのだ。受け入れるしかない


湊は・・・・


湊はいつもこんな地獄を見てきたのだろうか


いつもいつもこれに抗ってきたのだろうか


だとしたら、やっぱり強いなぁ


たった2ヶ月で限界を感じてきている私よりよほど強いよ


視ているものが違う、そういわれれば言い訳できるけどそれも単なる逃げだ


でもこのままというわけにも行かない。特に明後日には修学旅行だ


こんな姿を部屋を共にするクラスメイト達に見られるわけにはいかない


余計な心配をかけたくない。だけどどうする?後2日。どうやってバレないように出来る?


ーーーーーーーストレスを溜めている時人と話すのが一番だって天音が言っていたな


いつか湊が言っていた言葉だ


この言葉の意味は恐らく秘密の共有


誰にも伝えていないことは、時を経て限界が来る


誰にも伝えていないから、誰かに伝えたい衝動に駆られるのだ


そう、秘密にしているということさえストレスとなる


だから誰かにぶちまけてやろう。全部話してやろう


なら誰に話すか?・・・・・決まっている







甘える場所は弁えろ。愚痴を言う場所は考えろ


かつて私が決めたことである


つまり、総てを曝け出して悔いが無い人物に甘え愚痴を言えるんだ


そしてそんな人物はこの世に一人しかいない


ということで


「・・・・・・勢いで来ちゃったけど」


さて、どうしようか


時刻は2時過ぎ。当然目の前には湊がベッドて寝ている


こんな時間に起こすと迷惑になるし、嫌われてしまうかもしれない


そんなのは厭だ。ならば自室に戻り再度寝てみるか?


・・・いや、結果は同じだ。また悪夢を見る


それでは意味が無い。・・・なら、嫌われても良いから一度起こしてみようか


・・・・・・・・あれ?私は今何を思った?


嫌われてしまうかもしれない?そんなのは厭だ?嫌われてもいいから?


何を言っているんだ私は、湊に嫌われることなんて無いはずなのに


彼は滅多に人を嫌わない


というのは語弊があるが、要は嫌うような人物は初見で見抜き、少なからず知り合っても害は無い人物とは普通に会話をする人物なのだ


そしてこと家族や親友に関しては絶対的な意思を持って助けようとする


そんな人物じゃないか。そして私と彼は家族だ


ならば嫌われる心配なんて無いのに、一体どうしたんだ私は


ストレスが溜まりすぎて、気が滅入っていて、弱気になったのか?


病気にかかった子供じゃあるまい。もっと自分に自身を持たなくては


なので・・・・


「・・・・・・よっと」


布団の中に潜り込んでみた


・・・・いや、だっていくら嫌われなくても流石にこんな時間に起こすのは非常識だし、だからといってまた自室で寝るのは意味が無い


なので試してみたのだ。ならば別の場所で寝てみてはどうかと


ということで湊のベッドだ


さて、何か変わるか・・・・・・な


「・・・・・・ぁ」


・・・・・・・って何湊の顔を凝視しているんだ私は!


あーあもうやだ。メルヘン脳も大概にしろよ


私はただ、異性と添い寝したら悪夢が収まるのかなと思い・・・・


ーーーーーーーーーーーーーー


「ーーーーーーーーッ!!!」


"異性"


その単語はあの悪夢を思い出させる


眼を移植する際に生前の彼女の病状を色々と見させてもらった


そしてその中に男性恐怖性という単語があった


当たり前だ。あんなモノを味わったのだ。それで普通で居られるわけが無い


だが、今、湊を異性と意識した瞬間


"恐怖"した


震えてしまう。身体が今すぐ逃げろと訴えてくる


それでは意味が無い。いやむしろこのままじゃ事態は悪化してしまう


湊すら避けるようになってしまったら私はーーーーーーーーーッ!!!!




「・・・・・・人の布団に潜り込んで来た癖に寒いのかよ。日本じゃもう梅雨の時期だぞ」




「・・・・・え?」


気づけば湊は眠そうな横目で私を視ていた


「起きてた、の?いつから?」


「お前が部屋に入ってきた時からだ。俺は元々睡眠は浅いほうだからな」


「・・・・それは、ずっと悪夢を見てきたから?」


私は湊が悪夢を視ていることを知っている


何せ実状を見たのだから、魘されて自分の首を締め付けているところを


「そうだ。あんなモノを毎日見ていたら寝たくなくなるからな」


「・・・そんな状況で、どうやって耐え抜いたの?」


私が今一番知りたいことを聞いて見る


彼なら答えを知っているんじゃないか、と思い尋ねる


「・・・・・・・・・・原因によると思うが、俺の場合は湊が残したモノが原因だったからな。そいつらはずっと俺を侵し、取り込もうとしてきた。だから俺はそれに抗った。つまりは攻撃してきたからそれに対抗した。それだけだよ、別段特別なことなんしていない」


対抗した、か


はは、やっぱり凄いなぁ


「そっか。やっぱり強いね、湊は」


私はただ逃げるために、見たくないために策を模索していただけだ


それに比べて湊は逃げるわけでもなく、策を講じるわけでもなく、抗い戦ったという


なんとも勇ましいだろうか。たとえ自分の世界での出来事だとしても早々出来るものじゃないだろう


素直に、憧れる


「・・・・・・・聞くか聞かないか迷っていたが、聞く事にした。・・・・・・お前、何で俺に"恐怖"している?」


「ーーーーーーーーーーーえ?」


どうして・・・・


「隠せると思ったのか?俺はお前に言ってあるはずだがな。俺は感情を読み取るのに長けているって。・・・で、何故俺を怖がる?」


「それは・・・・・」


そうだ、湊は感情を視てきたが故に他人の感情を読み取ることができるようになってしまったんだ


忘れていたわけではない、ただ考えに至らなかったんだ


そこまでの余裕が、無かった


「さっきからの会話から察するに、お前も悪夢を見るようになったのか?それで目が覚めて同じ境遇の人物にやってきたと。添い寝してくる理由は不明だが」


「・・・・・・・・」


当たっている。図星だよ


「話したくないなら話さなくていい。だけど、これだけは覚えて置けよ」


一旦間を置き、そして静かに口を開く


「・・・・・俺はお前の家族だ。俺がお前の敵になることなんて無い。・・・だから俺を恐れる必要なんか無いんだよ」


・・・・・・ああ


この男はどこまでも純粋なのだろうか


家族は味方だ。という普通の思考ではなく


この男にとっては家族は護るものなのだ


普通なら一家の大黒柱の父親が受け持つ役目を、この男は未成年でありながら抱いている


それが責任であり、贖いであり、何より昔からの確固たる意思であるがために今もずっと護り続けているのだ


「ああ、でも疑うことはやめるなよ?誰に対しても疑い続ける。それが俺達だからな。この生き方は今更変えられるものじゃないだろ」


「・・・・・そっか」


ならば恐れる必要なんか無い


だって家族なんだから。私に唯一無二の家族なんだから


異性という間柄なんて、当の昔に超えているんだから


「そうだ・・・・ってなんで腕にしがみついて来るんだよ」


「コレが私の抗い方だよ。だから手伝ってね、家族なんだから」


間違っては居ない


彼女の男性恐怖性が流れてくるんだから、私はそれに抗わなければいけない


ならば、手っ取り早く対抗するには男の近く居るのが一番だ


そして家族だからって湊は男で、私は女だ


さらに家族といっても一緒に居る時間なんて普通の家族からすれば微々たる物


だからまあ、これが一番かな~と思って


「・・・そうかよ」


こんなことをされても動揺せず、無愛想な物言いは変わらない


でも避けることなく、それを肯定して認めてくれる


「・・・・ねえ、湊」


「何だ?」


半分寝言のように、だが今なら聞けると思い質問してみる


「私は、湊を支えることが出来るような・・・人間に、なれるかな?」


「・・・・・・・・・・・お前は、自分がーーーーーーーーー」


ああ、ダメだ。目蓋が重く、とても起きていられない


結局眠気が勝ってしまい、最後まで聞き取ることが出来なかった


でも、不思議と心地よい


傍に居るだけで安心できる


聞けなかったことを後悔するが、今は久々の安眠を楽しもう


この一瞬の安息をーーーーーーーーーーー

主人公を主人公らしくしないと

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