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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
42/74

それぞれの思惑


どこかは解らない薄暗い闇の中、女性は何も考えずただただ酷く哂っていた


「・・・、ア・・・・ァ・・・・」


哂っている女性の目の前には泡吹いて尿を垂れ流している女性が気絶している


制服を来ているため、学生であることは間違いない


それを見て、哂う、哂い続ける


「ふ、はは・・・増えていく・・・・もっともっと増えていくゥ!・・・視て、私を視てッ!!」


何かを抱いたその瞳は、狂気なまでに満ちている


何を持って彼女をそうさせたのかなんて、誰にもわからない。誰にも理解できない


常人には絶対に・・・


「は、ハハ・・・・アッハハハハハッ!!大丈夫ゥ、私は神の申し子なのだから。出来る、出来るわッ!もっともっと増やして私と"同じ"にしないとォ!!」


そこに正気は無く、その言葉は嘘偽り無い言葉であると誰もが理解出来る


理解出来るほどに正直で、真意で、まっすぐなまでに狂った祈りだと解る


「もう、孤独は厭なのよ・・・だからァ、貴方の強力しなさい。そのために貴方は居るんだからぁ」


気持ちの悪い動きをしながら陰に隠れた人物にそう命令する


その陰は何も言わずにただ立ち去る。それを見てまた哂う


哂って、哂い続ける。それが今の彼女の快楽と言わんばかりに嗤い続けている


「さァてーーーーーー次は誰にしようか」


女性が90度向きを変えると、そこには高校生であろう顔写真が壁に張ってある


具体的にそれは、諏訪原と九条峰に通う一部の高校生たちの顔写真だ


そこに手に持つナイフを適当に投げると、狙い済ましたように女性の顔写真に当たる


「・・・次は君か」


次のターゲットを決め、再び狂った女性は目的を成すために動き出す


止まらない、止まることの無い気持ちの昂ぶり


身が捩れるほどの快感は止まらず、彼女は発情し続ける


どこまでも、貪るように求め続けいくーーーーーーーー








18時頃、最寄のデパートにて



「ーーーーー刹莉が居てくれてホント助かったよ。ありがとう」


「ううん、こういうのは一人じゃ決められないもの。仕方ないよ」


現在、刹莉ことソヴィは駅前のデパートにて仁多実香乃と二人で買い物中だ


目的は主に衣服


折角の修学旅行、そしてさらに班が同じとくれば何かと気軽に相談しやすくなる


故に仁多実は刹莉に衣服について声を掛けたのだ


端的に彼氏を魅了するために


そしてその目的も終えて、今フードコートにて二人で休憩中である


荷物は4人用テーブルであるため隣の席を使い置かせてもっている


「ああ、でも一つ気になっていたんだけど、香乃には姉や妹はいないの?普通こういう買い物って姉妹が居るならそっちを優先すると思うのだけれど・・・違ったかな?」


それは限りなく短い期間、一緒に暮らしていた姉のことを思いながら尋ねていた


刹莉も小学生低学年だったが、衣服を選ぶ時姉の意見を参考にしていた頃があったからだ


「・・・・姉が、居るの。凄い優秀な姉が」


それだけでピンと来てしまった


「・・・もしかして、その優秀な姉といつも比べられているから苦手だったりする?」


核心的な部分の質問をしてみる


そして表情でわかる。図星であることが


「な、なんで解ったの?まさか刹莉もーーーーー」


「うん、姉が"居た"んだ。その姉も凄い優秀だったからさ、香乃の口ぶりからしてもしかしたらと思ったの」


「・・・そう、だったの」


"居た"という単語に察してくれたらしくそれ以上は追及してこなかった


なにやら辛気臭い雰囲気になってしまった


これでは折角の楽しい放課後が台無しだ


どちらにせよ、この話題は振るべきじゃなかったが、ここまで来たら聞いておきたいところもある


なので・・・


「香乃のお姉さんって、どんな感じ?」


「私の?う~ん・・・去年の生徒会長だったよ。諏訪原の」


一言で表すならそういう人間だったのだろう。世間的にも内面的にも


「・・・それはまた、一年の時は苦労したんだね」


「ホントよ。姉が生徒会長だったからそれだけでプレッシャーだし、親からも色々と言われていたから勉強は特に頑張らなきゃいけなかったの。日夜勉強してやっとの思いで学年トップ10に入っていたんだから。」


「・・・そこまでしなきゃいけないほどお姉さんは優秀だったの?」


「優秀よ。身内贔屓なしに天才と呼べるほどに。小学生の時から絵のコンクールやピアノのコンテストじゃいつも金賞。特別努力していなかった様子だから、天才肌ってああいう人間のためにあるんだな~って思ったよ」


そう愚痴を言い終えると手元にあるジュースを思いっきり飲む


これには流石に苦笑いしか出来なかった


ふと、思ってしまった


ミーシェも今頃存在していたら、そんなような人になっていたんだろうなと


でも、もういない


ならば、今私が香乃にアドバイスが出来る言葉があるとすればそれは・・・


「・・・香乃、どれだけ妬んでも現実は変わらないよ。貴方はきっと今まで皆の期待に答えるよう努力してきたんでしょうね。時に姉を怨みながら、妬みながら。でもね・・・・」


でも、それでもだ


「貴方にとっての姉はただ一人で掛替えの無い存在なんだよ。だから逆に、そんな姉を持っている私って凄いって誇りに思えるようにならなくちゃ。そのぐらいの度量、香乃には在ると思うけどな」


我ながら余計なお節介だ。


でもこのことは、誰かに言われないと気づかないことでもあるんだ


私は失ってから気づいてしまった。だからあんな思いを貴方にさせたくないって思ってしまった


だからこんな説教してしまった


私は言って後悔しそうになってしまった。ああ、嫌われたなと


偉そうにベラベラ喋るなと、そう言われても仕方のないことを言ったのだから


「・・・何知った風に語ってるのよ。貴方に何が解るのよ。」


当然だ、解るわけが無い。解るはずもない


それなのに勝手に解釈されて説教されたんだ。言われたほうは溜まったものじゃないだろう


「・・・なんてね、刹莉以外にこんな説教言われたらこう言っていたと思う」


「ーーーーーー・・・・・え?」


驚いた。罵声の一つぐらい掛けて帰ってしまうと思ったのに


「刹莉の言葉には、それだけの重みがあったってこと。・・・今ここで掘り返すのもアレだけど、刹莉にはお姉さんが"居た"。いたってとことはつまり・・・」


「うん、もういないよ」


「だからなんだろうね。今の説教、凄い真剣に言ってくれているんだなって感じたんだ。ふざけている訳でもなく、からかっているわけでもなくね。喩え嫌われても伝えなきゃいけない。そんな熱意があったの」


「ーーーーーーっ!い、いややめてよ、そんなこと真顔で言われると流石に照れるって」


「・・・うん、私も言ってて恥ずかしかった。でも言わなきゃいけないと思ったんだよ。言葉にしなきゃ伝わらないんだから」


解る、解るのだが恥ずかしいものは恥ずかしいのだ


誤解されたくないのなら恥なんて捨ててしまえ


つまりはこういうことなのだろう


「全く、青臭いこと言わないでよ。・・・・でも、ありがとう。伝わってくれてよかった」


青臭いことを言ったのは自分もだと気づくが、まあいっか。偶にはこういうことがあっても


それにしても、些か伝わりすぎなのでは?と思ったけど私はどうやら感情が顔に出やすい性質なようなので不思議に思うだけムダである


「誇りに思う、か。・・・うん、頑張ってみるよ。今まで以上に努力してみる価値はありそうだからね」


仁多実香乃


彼女を一言をで表すならこの言葉こそ相応しいだろう


"努力家"


つまり、ソヴィや湊と近い存在


姉が天才として存在し、その妹は凡人として存在してしまっていた


故にどちらかが妥協して努力しなければいけなかった


姉が天才という座から降りるか、それとも妹が姉と同じ位の存在になるか


どちらも険しい道だ。そしてこの姉妹は妹が努力することになった


そして今までそんな片鱗を見せず、陰で努力し回りからの期待に答えてきた


それが仁多見香乃という女性だ


何とも強く、なんとも勇ましいのだろうか


これは・・・


「これは、磯波君が惚れるのもわかるなぁ」


「なっ、何でそこで伸也が出るのよ!?」


その言葉に、いやその単語に香乃はあからさまに顔を赤くしてテレていた


「・・・そういう刹莉こそ、有川君のことどう思ってるのよ?」


・・・・・ん?


「どう思うも何も、家族だよ?」


「う~ん、端から見たらそんな感じでもないんだけどなぁ」


「いやいや、そんなこと・・・」


「この際だからぁ、包み隠さず言ってもいいんだよ?」


「いやだから、湊とはそういう関係じゃないからっ」


・・・・・・・・あ、でもキスはしたか


いやしかしあれは成り行きというか何というか・・・


ああ、もう!考えれば考えるほど解らなくなってくる


「で、実の所どうなの?」


なんで女性って、他人のそういうところには深く聞いてくるんだろう


・・・・いや、男性も一緒かな?


まあそれだけ異性との関係というものは不可解で、それでいて第3者からすれば面白いものなのだろう


はぁ・・・そういうものに鈍感で知らない私にとっては返答に困ることだなぁ







そんな感じな雑談をこの後も続け、ふと時計を見ると19時になろうとしていた


「・・・まあ雑談はこの辺にしてそろそろ行きましょうか。荷物多いから早めに帰ったほうがいいと思うし。香乃は北側方面だっけ?それじゃあここでお別れだね」


そういうと、お互い身支度をして席を立つ。香乃は片手には今日買った衣服がしっかりと握ってあることを確かめているようだ


その確認をし終えると


「刹莉は南方面か。解った、それじゃあまた明日。・・・ああ、今日は本当にありがとうね。色々と相談に乗ってくれて」


色々、とは衣服のことと姉のことだろう


「あれぐらいならお安い御用だよ。じゃあね、また明日」


「うん、また明日~」


香乃が背を向けたことを確認し、私も南側の出入り口へと足を運ぶ


道中、デパートゆえに人が多く押しのけることも出来ないので避けながら一歩一歩歩み続ける



ーーーーーーーーーー・・・・・・刹那



「ーーーーーーーーーーッ!!!!」


見覚えの在る髪をした人がソヴィの隣を横切った気がした


即座に後ろを向き、眼を凝らし確認するが・・・


「・・・・いない。いや、当然か」


そう、当然だ。いないのが当然なのだ


何せ今頃死んでいるか、厳重な警備の元監禁されているかのどちらかなのだから


それに、金髪って結構多いから単なる見間違えというの大いにありえるのだ


でも・・・・


(でも、今何か異常な人が通ったのは間違いない)


ソヴィの右目には統合失調症だった女性の目が移植されている


ソヴィが考えるに、その女性が視ていたものは人間の欲望だったんじゃないかと考察していた


負の感情が視れる人だっているんだ。ならば、人の欲望を変な形で視ることぐらいできるんじゃないかと、そう考えた


実際に見ていけばそう感じるようにもなっていたので、暫定的にだがそう仮定している


湊が視ているような畸形、というほど歪な形をしていない


それは人によって様々だ。でも、時には歪と呼べる程の形をした欲望も居る


それが今、横を通ったような気がしたのだ


でも辺りを見る限りそんな形は何処にも無い


(・・・帰ろう)


まあ、こんな所で立ち尽くしていても仕方ない


通行の邪魔になるだけだし、帰ろう


今現在家には誰も居ないが、それでも我が家が一番落ち着けるので早く帰るのが一番だ


・・・・そういえば前に湊も同じようなことを言ってたっけ?


段々思考も似てきているなぁ。これも精神疾患者にあるあるなことなのだろうか?


今度聞いてみよう





同時刻 如月宅



「ーーーーーーーなるほど、それじゃあお互いの情報を簡潔にまとめようか」


今俺達の町で起こっている学生を狙った麻薬流出事件


それに関して持っているお互いの情報をとりあえず話してみて、今まとめに掛かる最中だ


「被害者は高校生、その中に中学生も居るけどこれは撒き沿いと思ってもいいだろう。そして8割ぐらい女子で、今のところ被害は少数」


「麻薬は九条峰と諏訪原を中心に出回っているね。私のところは本当に少数だけど、貴方のところは恐らく既に多くの被害が出ていると視て間違いない。調べるに、今現在欠席している女生徒は既に被害に遭ったと思っていいでしょう。今まで休んだことの無い健康な人間もここ3日間欠席しているからね」


「だが、それを今表沙汰にするわけにもいかない。何せ修学旅行を間近に迫っているし、何より犯人が解らない。もしかしたら被害者が自発的行ったことなのかもしれない。その場合逮捕すれば良い話だが、発見された被害者は一向に目が覚めない。医者の見立てじゃ1,2週間もすれば起きるらしいが。警察も動いているには動いているが手掛かりはなし、か」


「でも、確実に増えていっている。だから早急に誰かが止めないといけない。そうしないと・・・」


「俺達の友人にまで、被害が被ることになる」


そう、俺達は聖人でもなければ神様でもない。


力を持っていても限度がある


だからこそ、使い道には深く考えることにしている


その末に導き出された結論は、せめて大切な人だけは護ることだった


そして力を持っているが故に、俺達は非力であるという現実にぶち当たる


俺はこの身体が、月は天才と呼べるその頭脳が、そう至らせた原因だ


出来ることならこれ以上被害を出したくないが、それは警察が仕事でやることだ


俺達はあくまで俺達の欲望で動く


俺は耕哉や海、そして家族である千里にソヴィに平穏な生活を送って欲しい


月は親友を傷つける事象をできるだけ取り除く


利害の一致


それが今の俺と月の関係だ


仕事や立場ではなく、そこにあるのは私情のみ


多くは望まない。望めば望むだけその分見落としてしまう


だから、今はアイツらのことを第一に考えよう


その上で情報を集める、そういう結論に至ったのだ


「・・・ああ、天音からの情報だが犯人は精神異常者の仕業が濃厚らしい」


「そう考えるのが当然ね。じゃないとこんな芸当できない。その犯人自身麻薬をやっていることは無いだろうから、その犯人をここまで落とした原因がある。先天性か後天性かは解らないけど、人の精神を異常化させるのに妥当の原因が・・・」


ああ、それととさらに月は言葉を繋げ意見を発する


「行動パターンというものがあるけど、調べた結果今回のやり口はどうしても今までの犯人のそれとは当てはまらない。独特、つまりオリジナリティに自信があるのか。それとも、悪いことをしていると思ってないからこその行動か」


「・・・悪いと思っていない、か」


「ええ、精神異常者にはよくある行動よ。悪霊が取り付いていただの、天使がそう囁いただのといった非現実的な妄想、幻想の類を心底信頼しているから自分は悪いと思っていない、なんてね。でも、だからこそ一層性質は悪い。・・・貴方はその逆だったらしいけど」


当たり前だ。そんなもの、現実に存在してたまるか


ミーシェだって、きっと俺の妄想で湊が作り出したモノだという認識の方が強い


あれが本物だったら・・・なんて考えていたけど、やっぱりどうして信憑性が薄い


俺はずっとそういうモノを視てきたから、それをずっと疑い嫌っていたから


あのミーシェが生霊だった、といわれてもそれを素直に納得出来るほど愚直じゃない


「まとめるとこんなものか」


「そうね、なら次は今後の方針についてーーーーーーーー」





試行錯誤してシュミレーションするが、どの道こっちが後手に回るのが現状だった


なので次どう動いてくるか、被害者が誰になるのかを想定して構えるしかない


ということで話し合いは終了


時間は・・・現在19時ぐらいか


帰るのは20時になりそうだが、まあ構わないだろう


「話も一段落ついたし、そろそろ帰ることにするよ」


「ん?そうだね、なら玄関まで送るよ」


月・・・いや、部屋を出た瞬間如月に戻っていた


玄関までの道中、居間の横を通る時如月の祖母から晩御飯を食べていくか?と誘われたがそういうのは遠慮する性質なので丁重に断った


そして外に出て、ここからの帰りの順序を如月に教えてもらう


近くにバス停があるらしい。そこから駅まで一直線とのこと


どうやらそれの道が如月が九条峰に通うための通学路であるので詳しいのも当然だった


「・・・なあ、お前どうして猫被ってるんだ?」


ふと疑問に思った


勿論外なんで迂闊なことは話せない


たとえ周りに誰も居なくても警戒しなければいけない


なのでかなり濁して質問したのだが、真意には気づけたかな?


「・・・・・私は、普通の女子高校生だよ?猫の一つや二つ被るものだって」


どうやら気づけていたらしい。やはりこの女は頭の回転がかなり速い


猫を被っているのかなんて本来なら今更問う必要はないだろう


仕事を友人に知られたくないし、知らせてはならないものだから


知って得するようなことは何も無いし、むしろ後悔しかないからだ


だから俺も月も、それに他の連中も絶対に誰彼構わず話すことは無い


ならどうして聞いたのか


その理由は、如月が家の中でも、つまり祖母の前でも猫を被っていたからだ


家族の前でも猫を被っていたから少し不思議に思ったのだ


そして・・・どうやら月はやはりというべきか、かなりの秘密主義者らしい


家族にまで言っていない


なのに俺には話した


ソヴィを助けたから


つまりソヴィは如月の家族よりも大切な存在になる、ということになる


・・・・んなわけあるか


相手が家族なら、最も大切な存在だからこそ隠しておきたいということだろう


現に、俺もそうだから


「じゃあな、また後日連絡させてもらうよ」


「うん!今度はより強い刺激的なモノを待ってるよ♪」


最後までからかう口調のまま、か


だが、それが無い如月など想像できない


そして何よりそのおかげで場は盛り上がるんだ。いい事尽くめじゃないか


・・・最も、隠すことがいいこととは一概には言えないが


少なくとも、知らないほうがいいことは無理に知らせなくて良いと思う


余計は混乱を招くだけだからな





狂った女性って書くの難しい

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