【後日談】 シゾフレニア
これで、完結です(投稿日)
↑
完結にしようと思いました(3月18日)
前に話したよな、ミーシェは車に轢かれたって
確かに結果的は轢かれたんだよ。
だが、お前の察しの通り過程が違う
そして、まあこんな話3行で済む話なんだが
それでもお前には出来る限り具体的に話したいと思う
それがお前の望みなんだからな
ああ、前もって言っておくが俺も状況しか説明できない
俺が直接視たわけじゃないからな
そこは理解して欲しい
・・・さて、こんな話部屋でするものじゃないな
外は肌寒いが、少し歩きながら語るとしよう
お前の姉、ミーシェの最後をーーーーーー
有川湊とミーシェはいつも通り一緒に帰ろうと二人きりで細い道路を歩いていたんだ
和気藹々と言葉を交わしていた。嬉しくて幸せな時間なんだろうと第3者でもわかるくらいに
すると、前方から一台のワゴン車が迫ってくる。狭い路なので俺たちは端に寄り避けようと思った
しかし、ワゴン車は俺達の目の前にいきなり止まると勢い良く扉が開き中に居た大人数人が降りてきたんだ
「ーーー・・・・お嬢ちゃんが、ヴェルニクスの娘だね?」
「・・・おじさん達は、父のーーーーーーー」
ミーシェは言葉を最後まで発せられなかった
何故ならその瞬間、大人たちはミーシェを捕らえ気を失わせたのだから
「ーーーーーーミー・・・・ッ!!」
湊はこの現状があまりにも非現実的過ぎた
だからこそ判断が遅れ叫ぶのが一瞬遅かった
湊も最後まで言い切れずに一人の大人から思いっきり殴られ、壁に頭を強打し気絶する
気がついた時には、そこは地獄だった
ロープかなにかで身動きが取れず、口は布で巻かれていて言葉が発せられないように施されていた
視界が霞んでいたが何とか現状を把握しようとしてしまった
・・・どこかの工場か、それとも廃墟か
古びていた建物なのは間違いなかった
ここで拉致られた事を理解し、あの大人たちを眼で探す
右、左・・・・そして前方
そして・・・数メートル先には4人の男性が何かを囲んでいるのを目視すr
眼を凝らす。凝らしてしまう
何をしているのだろうと気になってしまう
男と男の間を、注視する
ーーーー信じたくなかった
ーーーー視たくなかった
ーーーーそれが現実だと、認めたくなかった
ーーーー俺達の日常はもう戻ることはないと確信してしまった
ーーーー何故なら、そこで行われていた光景は
ーーーーーー男達4人が、ミーシェの身体を弄んでいたのだから
悲鳴は聞こえなかった。湊の耳が一時的に聴こえなくなっていたのかと思ったがそうじゃない
「ーーーーーーーーッーーーーーーーーーーッーーーーーー」
ミーシェは必死に堪えている
それを視て、男達は面白がり、弄ぶ
背中をライターで火炙りにして酷い火傷を負わせて
空いている箇所には刃物で切り刻まれて
髪の毛を引っ張られ、殴られ傷つけられ
足や腕の肉の皮が薄く削ぎ落とされる
そしてそんな中、ミーシェは虐められていた
酷く、惨く、視るに耐えない光景が繰り広げられていた
「ーーーーーー・・・・・ッ!!」
眼を逸らす。目蓋を閉じる
視たくない、見たくない、観たくないッ!!!
夢だ、こんなのは夢だ
「ーーー・・・・あ?おい、その餓鬼目を醒ましたぞ」
一人の男が野太い声でそう告げる
・・・解ってしまう。ロシア語を勉強していたから
解る故に恐怖する。僕も同じように痛めつけられるのだろうかと
「なんだぁ?彼女痛めつけられているのを視るのが厭だから逸らしてんのか・・・・なら
」
一人の男が俺に跨り、髪の毛を乱暴に掴み顔を上げさせられ、目蓋を無理やり抉じ開けられる
「オラ、よく視てやれよ。観客が居ないと盛り上がらねェんだからよ」
嗤いながらそう告げる
それを耳にしたのか、ミーシェが光が失っている目を一瞬だけこちらに向け、すぐに眼を逸らす
「ーーーーーーッ」
ーーーー・・・・堪えているんじゃない
既に、壊れている
身体が、精神がもう完膚なきまでに犯されていたんだ
叫びたい、助けを呼びたい。それを許されない
自由を許されない彼女は、それからもずっと弄ばれる
俺はそれをずっと無理やり見続けられる
寝ることも、気を失うことも出来ないまま
眼に、焼き付けられる
最悪で、狂気的な光景をーーーーーー
・・・それが数時間続いたのか。体感だから具体的な時間はわからない
ミーシェがいつまで経っても叫ばないので、男達はいい加減飽きていた
そして、ボロボロになったミーシェの髪の毛を引っ張りワゴン車の二台に適当に入れられる
「ーーーーー ーーー ------ 」
もう、男達の言語が理解できなかった
理解しようとも、頭が正常に働かなかった
何せ、湊も既に壊れていたのだから
身体を持ち上げられ、後部席に男達と並んで座る
・・・・・それから時間が経ち、急に止まり扉が開く
そこに俺は放り出される
最初の時と同じように壁に衝突するが、どうでもよかった
・・・気づけばその場所は拉致された場所であると理解する
空は夕方。つまりは大体一日ぐらい繰り広げられていたのだろう
あの地獄は・・・
そして、彼女も雑に掴まれ道路の真ん中に放り投げられ、その場に座り込む
するとすぐにワゴン車はその場から去って行った
ーーー・・・地獄は終わったのだろうか
彼女はピクリともしない。死んでいるのか生きているのかすら解らない。解りたくない
「ーーー・・・ミー、シェ」
霞んでいる声で呼ぶ。それでも動かない、反応しない
手を伸ばす。届くはずのない距離、だけど伸ばさなければいけない
終わったんだ。もう終わったんだーーーーーーーー
もう、楽にしていい。君が生きている限り、僕はずっと支えるからーーーーーー
君を一生護るからーーーーー
這いずりながら、彼女の元へと向かう
重い身体を引きずりながら、腕の力でジリジリと動く
あと、もう少しーーーーーー
彼女を死なせたくない
彼女を失いたくない
どんなに汚されても、僕は彼女を支え続ける
あと、5mーーーーーー
それが、僕の責任であり罪であり、贖いだから
何より君のことを、心の底から愛しているから
僕の総てを賭けて、君を幸せにして見せるからーーーーーーーーー
ーーーーーーー刹那、徐々に迫り来るエンジン音を耳にした
左から、エンジン音が・・・そう、車の走る音が
気づく、そして一瞬で理解してしまう
あいつらは去ったんじゃない。方向転換して戻ってきたんだ
何のために?もう一度拉致するために?それともまだやりのこしたことがあるからか?
・・・違う。そうじゃない。気づいているんだろう、有川湊
その車の勢いはさらに増す
ーーーーーこれで解った。辿り着きたくない結論に辿り着いてしまった
この細い道、夕方誰も通らないことを調査した上での犯行
ならば、奴等の目的は最初からーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー走る
重い身体を立ち上がらせて、踏ん張って駆ける
ほんの5mの距離が永遠に長い距離だと錯覚するほどに遠かった
それでも・・・・間に合う。これなら間に合う
思い切り彼女を突き飛ばせば、それで彼女だけは生きることが出来る
突き飛ばした先には子供でなければ通れない細い道。そこに上手く入ることが出来ればーーーーーー
瞬間、彼女に触れるその瞬間。彼女を、ミーシェ突き飛ばすその腕はーーーーーーー
「ーーーーーーーーーー・・・・・・え?」
・・・届かなかった。いや、触れることが出来なかった
何故なら、それをミーシェは拒んだからだ
あろうことか当たるはずの右腕を避けて、ミーシェは両腕で湊の身体を突き飛ばしたのだ
その力は今の彼女からは、いや普段の彼女からも想像つかないほどの力だった
何せ勢い良く来る男の子の身体を同じくらいの力で突き飛ばしたのだから
そんな力、弱りきっている彼女から発せられたなんて考えもしなかった
だが、現実それは在った。現に湊は突き飛ばされた
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
その刹那、彼女は言った
最後の最後で、光を取り戻したその目で湊に伝えた
言いたかった言葉を、伝えたかった言葉を、残したかった言葉を
慈愛に満ち、誰にでも笑顔を魅せ幸せを絶やさなかった彼女だが
その中で、真実の愛と恋をしてしまった男の子。特別で唯一無二の存在へ最後に捧げる遺言を
ーーーーーーーーーーありがとう、と。ただその一言を残して小学生の彼女は目の前で木っ端微塵に跡形も無く無残に、そして残酷に消えた
「・・・・・・・それが、湊が最後に見たミーシェだ」
気づけばどれぐらい歩いただろうか
話しながらだと時間を忘れるな
もうすぐ深夜ぐらいの時間帯になるか
それでも、来たかった場所には来れたから構わない
「ここはな、ミーシェと湊の最後の思い出の場所なんだ。一番濃く記憶に残っていた思い出の場所。花火大会、あっただろ?それを二人でこっそりここまで登ってきて仲良く眺めていた」
ここ・・・つまりは美樹たちにも目撃された近くの山の高台
町全体が見渡せることが出来る光景が今目の前に広がっている
夜だっていうのに、やはり都心に近いからか未だにビルなどの明かりが無数に存在していた
「・・・・そっか」
この話を聞いて、ソヴィはそう答えた
怒らず、憎まず、哀れむことも泣くこともせず
ただ、そう呟いた
そこには感情が篭っていない。ただ返事をしただけ
いや、何も考えることが出来なかったんだろう
何も答えることが出来なかったんだろう
恐らくそれが正常の反応だ
こんな話、現実味が無く、ロリコンの妄想かって言われてもしょうがない
「・・・・ついでに、さ。湊の話も聞かせてもらえない?」
え、まさか今の話を流したのか?
確かに現実味が無いが、そこまであっさりされると話した甲斐が無い
もしそうならお前どんだけメンタル強くなったんだよ
・・・それはさておき、コイツが"湊"と呼ぶ時は俺の事を指し、君付けの時は今は無き本来の人格の方ということは今更説明しなくてもわかるだろう
と、いうことは・・・
「・・・俺の、何をだ?」
「今の話。それが湊誕生の話でしょ?なら、その次だよ。湊は"何を視てきて何を自分にしてきたのか"」
何を自分にしてきた、か
畸形についてはざっくりと説明しただけだから、中途半端なのが嫌いなのだろうか、全部知りたいと思うのは解る
だが、何を自分にしてきたのか
その問いを出すということは・・・もう気づいてるんじゃなかろうか
「・・・そこまで気づいてるなら今更語ることも無いだろう」
「ある。今だからこそ語ってほしい。今の話だって大切で気持ち悪い話だ。でも、悲しいことに知って今更どうこうできる話でもないでしょ?だから、その話は私の胸に秘めておく。未来永劫忘れないことを誓うよ」
でもね、と言葉を続ける
「私が今本当に知りたいくて気になっているのは、湊がどんなモノを背負って生きてきたかなんだよ。姉の死で、湊君の死で、貴方は何を背負って生きてきたのかを・・・私は知りたい」
まっすぐに、片目で俺の目を見てそう告げた
俺もその目をしっかりと捉え、こいつがいかに真意であるかを確認する
・・・コイツの総てを、俺は知った
なんて図々しいく思うことはないが、少なくとも普段言わない過去を俺は知った
何を持って生きてきて、どんな覚悟でここまで戻ってきたのかを知らされた
確かにコイツの言う通り俺は色々なモノを背負いすぎているのかもしれない
だからって、今更その荷をばら撒くわけにはいかない
この苦痛を解らない人間に話したって意味が無いからだ
・・・・いや、今なら一人いることにはいるのか
「・・・なら、ここで私の最後の秘密を教えてあげる。だから湊も等価交換で湊のことを教えてほしい」
「これ以上何隠してんだよ。ここで余計なことだったら張り倒ーーーーーーーー」
張り倒すぞ、そう言おうとした
だけど、言うことが出来なかった
俺が話している途中で、ソヴィは隠れている片目を手でかき上げ、その前髪の下には眼帯が隠されていた
そして、その眼帯を取り外すとーーーーーー
在りもしないはずの現実がそこにあった
「・・・・なんだよ、それ」
「これが実験動物の役目だよ。さっきまで話していたのはあくまで天音の欲を満たす為の行為で、これは違う。これこそ私が日本で暮らすための最低条件だった。・・・だって、理由はどうあれ私は死んでいるんだから。死んだ人間を生き返らすんだから、それ相応の存在価値が必要でしょ」
確かにそうだ。その通りだ
死んだ扱いになったってことはその人物に存在価値がなくなったと同義
なら死んだ人間を生き返らすには言ったとおり「死」を塗りつぶすほどの存在価値が必要だ
だからって・・・・
「ーーーー・・・お前は、それで満足なのかよ」
「・・・胸張って満足とはいえないけど、それでもこれ便利だよ?天音が言うには、この眼を扱うにはかなり高い動体視力が必要らしい。常人ならまず移植されたところで視る事ができないし、スポーツマンでも軍人でも視る事がやっとだって。そんな中私は上手く適合して自由に扱えるようになったから、今私は日本にいることが出来るの。」
それがちょっとだけ誇らしいかな?と乙女チックに付け加える
見た目とは裏腹に
そんな説明、いらねぇよ
そんなこと聞きたくねえよ
「人間の所業じゃない・・・・」
「いつだって時代を、文化を、科学を進化させてきたのは実験と犠牲だよ。それに、私からしてみれば、人殺しの方が人間の所業じゃないかな。」
「・・・その眼、どの"動物の眼"なんだ?」
「猫だよ。色々と調整して、細工して、人間と繋げることが可能になった貴重な猫の目」
そう、その眼は明らかに人間の眼じゃなかった
周りは暗いが、はっきり解るほどのに違う
「ただ難点は視力が悪くなったところなんだよねぇ。動体視力は上がったけど視力が落ちたから隠しているの。どうも慣れないから」
いきなり片方だけ視力が落ちればそりゃ不安定になるだろ
全く、どこまでこいつは馬鹿なんだ
・・・だが、これで改めてこいつの覚悟を思い知ったな
確かに価値観は人それぞれだから何とも言えないが
"自分の眼を犠牲"にしてまで日本に帰ってきたかった
その覚悟、その意志の強さ
強すぎるだろ・・・メンタル強すぎるだろ
一つの死線を乗り越えて、いや実際に死んだから生き返ってきたからこそ持てる自信
憎しみでもなく、屈辱でもなく、恨みでもない
そんなマイナスな糧すらも塗りつぶすほどの出来事だったからこそ今のソヴィがそこにいる
・・・俺には、自分の身体を売ってまで戻りたい場所は無い
だから純粋に羨ましいと思う。凄いと尊敬する
まあ、どの道死んでいた身体だ。一部ぐらい失って戻ってこれるなら安いものだ
なんて考えた結果なんだろうがな
そんなことを考えて居ると、ソヴィは再び眼帯を着けヘアピンで隠す
さて、どうするか
俺のこと、ねぇ・・・
話すといっても、どうしようか。どれを話すのが正解かわからん
「・・・そういえば、どうしてここに連れてきたの?」
「特に理由は無いな。強いて言うならここがお前の姉と過ごした唯一幸せだったと感じる思い出の場所だから、お前にも教えておこうかと思ったわけだ。」
「・・・え、惚気?」
「違ぇよ。俺のじゃねえよ。湊のだよ」
「ふ~ん・・・・」
んだよその眼、疑ってるのかよ
第一この頃俺はまだ生まれてないってことぐらいわかるだろ
「ならもう用は無いね。そろそろ寒くなってきたし、戻りましょうか。・・・帰り道も、湊の過去話教えてもらいながら」
「湊の」の部分が強調されていたことは聞き流そう
といってもコイツがそのまま引くとは思えないし、後々何言われるかわからん
俺とソヴィ。他人には言えない過去があるからこそ、それを言いふらしたりしないと確信できる
だから、まあ・・・話してもいいんだか
ホント、何話せばいいのか解らん
いや、ならさっきの後日談的なものでも話すか
「・・・はぁ、解ったよ。なら、その後俺が目を醒まして統合失調症との戦いの物語を話してやるよ」
俺は話した。語った。自分の過去を、自分の自分自身との戦いの話を
ここでまとめよう。俺の統合失調症の本性
統合失調症、その原因は精神面が大きい
過去のトラウマや悲しい出来事、特別な出来事
端から見れば中二病だとかキチガイだとか、はたまた薬打ってるとか思われても可笑しくはない病気だ
さて俺の場合はというと
その正体、先に話したミーシェの悲惨の最期が原因だ
その時の恨み、辛み、悲しみ、憎しみ、絶望に自己嫌悪やらと、まあ色々な負の感情がこの身体に刻み込んだからこその結果であり、畸形だ
身体に刻み込んだ。大体察していると思うが、それは言葉通りでもある
あの悲劇を忘れないために、精神に刻み、身体に刻んだ
故に俺は無意識に自身の身体を傷つけた
あの時のミーシェと同じ傷を
喩え人格が入れ替わっても、これだけは忘れてはならないことだと有川湊はそう訴えたのだ
自傷行為。首を絞めたところをソヴィに見せてしまったが、つまりはそういうことだ
お前が見た俺の身体は、ミーシェが傷つけられた身体と同じように傷つけてある
・・・話を戻すか
記憶喪失、記憶欠落・・・まあ色々と呼称してきたが今じゃ人格転換と言ったところか
そんなことが自身の中身に起きても、この身体そのものに刻み込まれているが故に、その感情が視えてしまう
そしてそこに、精神世界から生まれた俺がこの身体の持主になったが故に既に視過ぎていたからこそ他人の感情すらも感覚的に読み取ってしまう
そして、それを無くすために色々なことをしてきた
昔感情が暴走したことがあってな、そのせいで耕哉を傷つけてしまった
それ以来、俺にとって何が大切で何を護るべきかを思い知ったよ
友人をこれ以上傷つけたくない、そして傷つけさせない
だから天音のところへ行き、治療を施してもらおうと試みた
その結果、得られたのは感情を暴発する前に、暴発する原因であるストレスの発散だった
内容は具体的には話さない。それはこれからお前が知ることだ。ネタバレは犯罪だからな
ここで、お前に逢う前に受けた任務の内容を話しておこう
その内容は、ヴェルニクスの始末だ
因みにあの時は俺はまだ隊長じゃない。隊長なのは俺の父だ
その父に渡った任務、ロシアの地に赴きヴェルニクスを殺すことに専念する俺たち
そして、父がヴェルニクスを殺そうとした瞬間だ
その手を、止めた。引き金を引かなかったんだ
それは即ち、俺たち隊員達にも危害が広がった
父が殺さなかったせいで、仲間が何人も殺された
皆一斉に幻滅したよ。リーダーがそんなことするなんて重いも寄らなかったからな
理由を聞いた。そしたら、昔の友人だから殺せないと言い出した
任務は任務だ。そこに私情を挟むとどうなるかぐらい父は解っていたはずなのに
殺せるタイミングで殺さなかった
それは、仲間に死ねと言っている様なモノだ
それをすぐに天音に報告し、その結果下された判断は
ーーーーーーリーダーを交代しろ
その意味を俺は瞬時に理解した
だから、瞬時に手に持つハンドガンの引き金を引いた
・・・・父に向けて
そして俺がリーダー権を握り、すぐに体勢を立て直す
父はヴェルニクスを殺したくないと言った
父は知らなかった。あの場所を
俺は以前天音からちょっとだけ聞いていた
だから、まあ。遺言通り、俺はヴェルニクスをその地へ追いやることにして、成功したって訳だ
「・・・後は知っての通り視ての通りって訳。謎は解消されたか?」
「ーーー・・・まあ、この上なくスッキリと」
さて、もうすぐ家だ
時刻は・・・・げ、既に22時回ってる
・・・少し、語りすぎたか
いや、知られても困るようなことは話していない
今のコイツに話したところで、何も気にすることは無い
既にコイツはこっち側の人間だからな
「色々と、やってきたんだねぇ。そっちも」
「お前ほどじゃねえよ。俺は結局、最近まで湊がいつでも戻ってきても良い様に動いてたに過ぎないからな」
それを変えたのが、お前だよ
お前と逢ったから、家族が出来たから無欲は欲を持った
人間だということを認識させられた
知らなかったことを知った
自分と向き合えた
良い事尽くめ、ということでもないが俺自身いい方向へと変わったと断言できる
お前を巻き込んだのは悪いと思っている
俺が居たから、なんて言われても仕様が無い
だが、コイツはこういった
家族だから支えたいと
全く、敵わないなぁホント
強すぎるだろ、いくらなんでもポジティブに色々と捕らえすぎだよ
「ーーーー・・・・おーい!湊っ!!」
家が見えたところで、大きな声で呼ばれる
その方向を視ると、俺の家の前に数人の影がある
声から察するに・・・
「ーーー・・・海?」
返事をすると、その数人の影が一斉に近づいてくる
その影は月明かりにより姿が次第に露になって行き
そこには、海を始め美樹、美月、悠木、そして耕哉がそこに居た
そして・・・それを認識した時には既に俺たちを囲み、夜道だっていうのにガヤガヤと騒ぎ始める
「本当に帰ってきたじゃんかっ!いやーやっぱ流石湊だぜ!!」
「ソヴィ・・・っ!本当にソヴィなんだねっ!?」
「そ、そうよ。そんなに泣かないで美樹。ちゃんと帰ってきたから」
開口一番騒ぐ海、そして嬉し涙を流す美樹や悠木
いやいや、ちょっとまて
「お、おいなんでソヴィが帰ってきたこと知ってんだよ、お前ら!」
俺でさえついさっき知ったって言うのに
どっから情報手に入れやがった
「そんなこといいじゃねぇかよ!・・・・ほら、耕哉。言うこと言えって」
俺の疑問は一蹴された
そして海が耕哉の背を押し、俺の目の前に顔を俯いた姿を現す
さて、なんていえばいいか・・・
「・・・久しぶりだな」
とりあえず挨拶からと思い声を掛ける
「・・・・済まなかった!!言うだけ言って殴り飛ばして!!」
そんな挨拶には返さず、すぐさま頭を下げ謝ってきた
「いや、別に気にしてねぇよ。どうせ美樹に慰められてたり状況説明とかしてもらったんだろ?お前が昔美樹にしたようにな」
「それは、・・・まあ」
やっぱり兄妹だな、コイツら
「だったら俺から言うことはないな」
「それでも・・・・・」
「くどいぞ。これ以上情け無い姿を彼女の前に晒す気か?」
「まあまあいいじゃねえか!耕哉は謝って、湊は許した。それで解決で仲直りしたんだろ?だったらまたこれから3人ツルむことが出来るなっ!!」
と、ここで海の言葉で俺たちの仲は修復された
あっちじゃ予想以上に泣いている悠木と美樹を美月とソヴィで宥めている
「・・・はぁ、とりあえずお前ら俺の家に入れ。こんな夜に外で騒がれたら近所迷惑だ」
その言葉をしっかり聞いてくれたのか、全員俺の家へと足を運んでくれる
そんな姿を、俺は後ろから眺める
・・・ああ、ようやく全員揃ったんだな
そう実感する。そう体感する
俺たちの日常、やっぱり誰一人として欠けてはならなかったんだ
今まで、微妙な関係が続いていた
主に俺と美樹が原因で
それも解消されたが、今度は俺が居なくなり
戻ってきた時にはソヴィが居なくなり
そして今だ。現在だ
これこそ、皆が望んでいた光景だろう
知ってしまったからには忘れられないから
ソヴィが帰ってきて、よかったと心底思う
「ーーーー・・・ソヴィが帰ってきて良かったね、湊君」
いきなり後ろから腕を首に回され、そう耳元で呟かれる
「・・・如月?何だよ急に」
というか、いつの間に後ろに
さっきまでそこで美樹を支えていたじゃないか
「いやぁ、嬉そうだな~って」
「・・・そりゃあな。そこまで捻くれていねぇよ」
正直に答える。嘘偽る理由がなくなった今だからこそ、こう言える
「結局俺は何もできなかった。ここまで戻ってきたのは、ソヴィ自身の力だ」
「でも、あんな姿になってまで帰ってきたいと思わせるような場所を創ったのは・・・湊君の力だよ」
「・・・そりゃどうも」
「おや、褒められるのは苦手なようだねぇ。これはこれからからかい甲斐があるなぁ~」
「この野朗・・・」
と、ここで疑問に気づいた
あんな姿になってまで?
眼のことを、ソヴィは話していないはずだ
それがどうして今コイツは・・・
「まあでも、お礼くらいは言わせてくださいよ」
そう言うと、如月はさらに俺に耳に口を近づける
といか、近い近い近い近すぎるって
なんだよコイツ、俺はこんなことをされるまで如月の好感度を上げたつもりは無いぞ?
まあいい、聞くだけ聞いて早く引っ剥がそう
こんな所を美樹に視られたら後で何言ってくるかわからんからな
「ーーーー・・・・・私の親友を助けてくれてありがとう。"水隊長"」
その声は先まで和気藹々と嬉しそうにはしゃぐ女の声とは全くの別物で
凛々しく、そして低い声だがそれでいて耳に残る声をしていた
そして、俺はその声を聞いたことがある
いや、ずっと聞いていた。任務で、軍で、戦場で
「ーーーーーーーーーーーお前」
「それじゃあ今後とも宜しくね。"湊君"♪」
・・・・いやはや、まさかこんな近くに居るとは思わなかったよ
謎に謎を包んだサポーター
声しか解らなかった俺の部隊員
・・・今日は驚くことが多いな。多すぎる
でも、まあ・・・・偶には悪くないか
「・・・もう俺は十分に幸せだよ。だから、お前が心配することなんかなくなったぞ」
ーーーーーーー僕のことを考えてくれるのはうれしい。だけど、それは君自身幸せになってくれた後でも構わない。・・・・・僕は、君が幸せになることをずっと願うよ
それが、湊の最後の言葉
そして・・・・・・
(・・・そう、なら私が精神世界に居る理由はなくなったわね)
ああ、もうお前は必要ない
もうお前が心配するようなことは何も無い
ソヴィは俺が支え続ける。あいつが俺を支えてくれるなら、俺はその分返してやる
だから、アイツのことは任せろ。もう二度と死なせはしない
(そっか、それなら姉としては安心だよ。今までなんだかんだで護ってきたけど、それも終わりかぁ。ちょっと寂しいかな)
でも、お前がいつまでもここにいたら湊のヤツが寂しがる
早めに逝ってやれ。というか帰ってやれよ。アイツの支えるのはお前しか出来ないんだから
(そう、だね。ならここでお別れだ)
ああ、俺が今この瞬間生きているのはお前のおかげでも在る
お前が居たから俺は畸形に囚われずに済んだんだ
だから、今までご苦労様。死んでも尚、守り続けてくれてありがとうな
(こっちこそ、彼を救ってくれてありがとう。また逢うのは何十年後か解らないけど、向こうで待ってるね。未来の弟君)
喪失感が唐突に俺を襲う
・・・ああ、お前はようやく成仏したんだな
湊が作り出したミーシェは成仏した
いや、結局のところあのミーシェは本当のミーシェなんだろう
生霊とでも言うべきか。それが俺の精神世界に住んでいた
ミーを通して俺の世界へと侵入し居座ったってところだろ
何ともファンタジーな話だ。
・・・だが、悪くない話だろう
ご都合主義が過ぎているかもしれないが、それに見合う分の苦痛をあいつらは味わったんだ
これぐらいの奇跡、安いものだろう
「ーーーー・・・・湊」
歩むのが遅かった俺に気づいたのか、ソヴィが俺の様子を見に来る
「どうして、泣いてるの?」
「・・・・さあな、何でだろうな」
知らない間に涙を流していたのか、情けない。女々しいことこの上ない
すぐに手で拭い、正気に戻る
「・・・・・姉さん、元気だった?」
「ああ、元気だったよ。元気に逝ったよ」
「・・・そっか」
気づけば、ソヴィは眼帯を取りはずし俺を両目で捕らえ微笑んでいた
・・・コイツが一体何を視たのかは知らないが、俺は正直に答えた
「ほら、皆先に家に入っちゃっうから早く行こっか」
「・・・そうだな、勝手に何されるか解ったもんじゃない」
ソヴィと足並み揃えて再び歩み始める
刹那に思う
これから先、俺たちの人生には多くの死線を越えることになるだろう
時には残酷に、時には非人道的なことをすることになろうとも
今は、一人じゃない
隣にはソヴィがいる。支えてくれる家族がそこにいる
帰る場所があり、帰ってきたいと思う居場所がある
それは恐らく大人になろうとも変わりはしないだろう
守りたい、大切にしたい、救いたい存在が居るだけで力になる
喩えそれ以外を捨ててでも、護りたい存在
今までのような負の感情を糧にするのではない
変わったとは言ったが、何も総てが変わったわけではない
考え方、生き方、そして言葉に行動
それはもう変えられる物じゃない
そんな自分すら受け入れてくれる存在が隣に居るから、俺は歩み続けることを止めない
湊とミーシェのおかげで、なんて間違ってでも言えないけど
俺は今、色々な人に支えてもらったから生きているんだ
だから、それに恥じないように、護る通して魅せる
「ーーーーー・・・・・ねえ、湊」
「なんーーーーーーーー」
唇と唇を合わせる行為が、人によって色々の意味を持つだろう
そう、例えば俺たちの場合はーーーーーー
"共に、生きていくことを誓う"
愛だの恋だのと、そんな安っぽいモノでは測ることが出来ない繋がりだって、そこに在ると俺達は、知っているーーーーーーーーー
それでも世の中は嘘偽りの幻で塗り固められているけどーーーーーーー
俺たちの繋がりには、幻聴も、幻覚も、幻影も、そして統合失調症すら干渉することが出来ないと確信できるからーーーーーーーー
"信じれるものは自ら歩んできた経験と自身の身体のみ"
ーーーーー・・・ああ、そうだその通りだ。だけどそれ以上のモノも存在するのか
でも・・・・不思議と悪くないな
表現が甘いところが多いので気が向いたら随時編集していくつもり




