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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第一部 空想上の物語
27/74

虚実で在れと


湊が勝手にトヴァニコフとの会話を終わらせた


・・・いやホント勝手だよ。自分だけ話して自分の中で解決しちゃうんだから


しかし、私も聞きたいことは大体聞けた


それでようやく合点がいく箇所があることを思い出す


不自然な父の動き


そして違和感のある遺体


周りの反応


思い返せば色々と不自然だった。勿論すぐに動こうとしたが、無暗に動くのは危ないと判断した


結果それは正しかったのかもしれない。


でも・・・・・


(姉さんの・・・仇・・・)


そう、何を隠そう私の当初の目的とは姉を殺した犯人を見つけることだった


父の遺書に姉は何者かに殺されたと書かれていたときには驚いたものだ


それが決定打となり、日本に渡ることになったのだから


しかし、見つけたとは言えどうしたものか


ここで敵討ち、つまり殺せば確かに私は満足する


だがそんなことで姉が満足するとは思えない


まあ、色々とおかしい姉であったが、おかしい故に慕われていたのも確かだ


ここは、この人達に任せよう


「・・・待って、その真実とやらを知る前に私にこの人と話させて」


「ん?ああ、いいよ。どうせ時間は余っているからな」


湊が向かいの座席に座る。するとすぐに目を瞑った


さて・・・


「・・・なんだ、俺にまだ聞きたいことがあるのか?」


「ええ・・・・・」


あまり聞きたくはなかった


だけど、聞かざるを得ない


今更過去を検索しても何にもならない


だけど、それでも知らなければならないことだってあるのだから


だから私は問う


自分の過去を、振り返りながら


「・・・貴方は、確か父の友人だったよね?私がまだ幼い頃、よく家に遊びに来ていたはずだと思うんですが」


そう、私はこの顔に見覚えがある


まだ小さい頃、ロシアに住んでいたころ


その時、よく父と一緒に夜来て酒を飲んでいたはずだ


「・・・それはお前さんの記憶ちがーーーーーー」


「私は記憶力には自信があるわ。いえ・・・それよりもこういったほうがいいかしら・・・。ラーセおじさん?」


思い出す


過去を思い出す。連想されるように、次々と思い出す


そうだ、この人はあのいつも活発で優しかったおじさんだ


人見知りが激しかった私が唯一懐いていた人だ


だがそれももう10年以上前


まだロシアに居たころだ。物心がついて間もない頃


忘れていたのも当然か


むしろこのタイミングで思い出したことが奇跡に等しいだろう


「ーーーー・・・・・・・ッ!?、覚えているの、か?」


「ぼんやりとだけどね。でも昔、小心者だった私に唯一優しくしてくれた人だから、ここまで覚えているのかもしれないわ」


その様子じゃあ、やっぱり私のことは知っていたんだね


知っていて私を拉致した


だけど、でも、それにも理由があるはずだ


私は疑いたくない。この人だけは疑いたくない


疑ったら、過去のあの姿すらも嘘になるからだ


そんなのは、嫌だから


「・・・お、俺は。」


トヴァニコフの、ラーゼおじさんの声が震える


もうそれで察した


ああ、この人は嫌だったんだ


友を、知人を、親友を殺すことが


そんなの当たり前だけど・・・


それが叶わなかったのが現実だ


それを今、おじさんの一言が物語っている


「・・・いいんだ、おじさん。解っている。仕方なくやっていたことを。まあそれが本当かどうかは分からないけど・・・。」


実際私達を追い詰めた時は割と愉悦に浸っていた顔をしていた


戦闘を、戦争を好むのは父と似ている


「私はそれを責めるつもりはない・・・。だって私は死んでないもの。例え貴方が家族の仇でも、私には貴方を殺すことは出来ない。だって、あの優しかった貴方が怨み辛みで私の家族を殺しただなんて信じられないから・・・」


そう、私は怨めない


それに、私には怨むことが出来ない。それは殺された人が思う感情だ


だから私は問う


「だからこれだけは聞かせて欲しい。貴方をそこまで追い詰めた人間は誰?私が許せないのは、殺したいと思うほど憎んでいるのはそいつだって、今確信したから・・・。教えて欲しい」


・・・ああ、久々だ。この感覚


人をこんなにも恨んだのは何年ぶりだろうか


憤怒したのは何年ぶりだろうか


「・・・・・それは、解らない。明確な人間は解らない。だが、今回俺を雇いお前を拉致しようと企てた人間なら知っている」


「それはーーーーーー」


「そこからは後にしてくれ」


後ろから湊が指示を出す


「それは、これから着く場所で話してくれないか?」


「・・・このヘリはどこに向かっているの?」


「中継ポイントよ。そこから先、貴女と隊長は私達と別行動になる」


隣の雪さんが説明してくれる


「・・・解ったわ。ならその時話をする」


まあ聞きたいことが先延ばしになるだけだ


大して変わらないだろう


「ーーー・・・今更許して欲しいとは思わない。俺は君の父と姉を奪った張本人だ・・・。君には、俺を殺す権利がある」


「私は人殺しにはならない。例えその罪を周りの人間に背負わせても、私はこの手を血で染めたりしないって決めたの。」


殺しはしない


殺しはね


半殺し程度には傷つけるけど


「・・・・そうか」


「そうだよ。だからおじさんはその罪を背負いながらこれから生き続けて・・・。生きて、罪を償って欲しい」


私が求めるのは殺した本人ではない


殺すことになったその原因たる人間だ


この憎しみは絶対にその人間に向ける


憎しみは誰彼構わず向けるものではない


だから正直言って、その道中の人間に構ってる暇などないのだ


それももしかしたら、もうすぐわかるんじゃないかと


そう直感する


「・・・・・・」


それを聞いて、満足したのか


おじさんはゆっくり目を瞑る


・・・私も少し休もう


向かいの席、つまり湊の隣に座りここ数日のことを思い浮かべる


(・・・・・・・疲れた)


まさにこの一言で全て片付く


それでも疲れた甲斐はあった。父のことも知れたしおじさんにも逢えた


こんな出会い方はしたくなかったけど、それでもそれが運命だったのだろう


(・・・結局湊のことは聞けてないなぁ。後で聞いてみよう)


有川湊


その実、本来の人格である有川湊という存在の抜け殻から生まれた別の人格


つまりは二重人格だろう


ある事故をきっかけに本来の人格が深層心理に潜りこみ、代わりに今の湊が出て来たと


それが原因で医学的に言う統合失調症という病気を持ってしまう


視界に映る奇抜な生き物。湊にしか見えない醜い存在


だから他人を見たくないし、触りたくない


そこにはその存在が居るから


そして本来の人格が望んだ「強さ」を求め、今まで鍛えてきた


心身共に、強くなろうと努力してきた


それが私の知っている湊


そして何かがきっかけで、本来の人格である有川湊と入れ替わると察し


その前日にこんな感じで説明してくれた


説明して、私達の前から喪失した


その後は本来の人格、私達が言う「湊君」がその身体の持主になり数週間行動していたし、これからそうなるんだろうと思っていた


それが、正しいと。それが正解であり当然なんだ。だから受け入れて欲しいと私達に説得して湊は消えたのだから


・・・そして、今。彼は戻ってきた


今、私の横にいる


そっと横目でチラっと見る


仮眠を取っているのだろうか、目を瞑り静かに呼吸している湊がそこにいる


いつも無表情で無愛想。別なことを考えていて人の話をあまり聞かない


だけどいつも他人のことを考えて、行動している


自分に"無欲"な存在


ああ、そうだ。貴方はいつも他人のことを考えていないフリをしていつも考えている


初対面である私を受け入れてくれた時だってそうだ


ほんの少し縁があったってだけで、あそこまでしてくれた


私に居場所をくれた。


私は・・・そんな貴方が・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・








・・・肩になにやら違和感のある重みを感じ、ふと目が覚める


(・・・知らない間に、少し寝ていたのか)


あまり人前では寝ないようにしていたのだが


仮眠程度だったので不測に事態にも対処できただろうと妥協する


さて、目が覚めた原因を確認しよう


「・・・・・スゥ・・・・スゥ・・・」


なんてことはない。右隣にソヴィが座っており、俺が寝ていたから私も寝ようと睡眠に入り、機内が揺れたのか、それとも自然と体が楽なほうへと動いたのか、今ソヴィの頭は俺の右肩を枕にしている


寝息が聞こえるほど近く


「・・・・はぁ」


普段の俺なら退け払うだろう


許可無く身体を触れさせるのは嫌だからだ


畸形が、いたからだ


だがその畸形も今は居ない


いや、厳密には居なくなったのではなく程度数が少なくなったのだ


それでも気味が悪いのは変わらないが


「あっ、起きましたか?隊長」


雪が目覚めたばかりの俺に声を掛ける


「ああ、どのぐらい寝ていた?」


「そうですねぇ、1時間くらいですか。もうすぐ着くらしいですよ」


「具体的には?」


「後十分ちょっとって所かな?」


なるほど、ならもう起こしてしまうか


「解った・・・・ソヴィ」


寝ているソヴィへ声を掛ける


すると、ソヴィも仮眠だったのかすぐに起きた


トヴァニコフは元々起きていたのか、横になりながらも薄っすらと目を開けていた


「・・・・着いたのかしら?」


「後十分ぐらいで着く。だから・・・目覚めたところ悪いがそろそろ時間だ。心の準備は出来ているか?」


「・・・ああ、そうだったわね。首謀者のことは着く時に聞くことになっていたわね」


「ーーーーー・・・隊長、もう着きますよ~」


コックピットから顔を出し、陽が教えてくれる


「解った・・・・なら時間だな」


俺は後ろの方へ向かう


ずっと後部へ隠していた人間の元へ


そう、首謀者のところに


「・・・出ろ」


後ろの棚に隠しておいたソレを無理出す


そしてーーーーーー


「・・・・こいつが、首謀者だ。お前を拉致しようと考え、トヴァニコフを従わせていた存在。お前の敵だ」


ソヴィの目の前に突き出す


そいつをーーーーーー


手と足、そして口をガムテで塞がれた状態のーーーーー


彼女を拉致しようとした、こいつをーーーーーーーーー


ソヴィの前に、放り投げたーーーーー


「ーーーーーー・・・・・冗談、だよね?」


「俺は冗談を言わない。元々そういうキャラじゃねえからな。それはお前も知っているだろ?・・・それにこんな悪質な冗談、笑えねえだろ?」


「・・・・ええ、そうね。その通りだわ・・・。こんなの、笑えない。」


考えなかったことではないだろう


だが、それでも、違うと


信じていたから、信頼しあっていたから


仲が良かったから、過去を疑いたくないから


そうやって現実から逃げても、何も変わらない


変わってくれない現実が今、ここにあるのだから


「ーーーーーーーーー・・・レツオ。レツオ・イーメステト・オルマセアッ」


もうすぐ終る・・・と思いたい

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