現実
時はほんの少し遡る
まあ所謂説明パートだ。ネタばらしだ
簡潔に説明しよう
有川湊はソヴィトヴィーニアと雨の元を離れた後、雪と合流し時間通りに行動、敵を殲滅した
だがそこからが並々ならぬ動きだった
殲滅した後、すぐに雪は上の階へ上がり湊の変装をした陽と合流。
そしてそのまま負傷者のフリをして屋上まで行く
その間湊は下の階へ行き、岳に用意させておいた屋上へ行くためのワイヤーの元へ行った
そして岳は地上で、上空からは岳が前もって仕掛けておいた超小型カメラで月が敵の動作を監視していたのだ
雪と陽がトヴァニコフに出会ったところを岳と月がタイミングを見計って湊に知らせる
そして湊はワイヤーで一気に屋上へと上がり、丁度両ヘリの後部へと音を立てずに着地する
そしてすぐさま攻撃ヘリに慎重に乗り込みサプレッサー付きのハンドガンで乗員を即座に全員射殺
時は数十分が流れ
雨とソヴィが屋上に来た。その瞬間攻撃ヘリの中に居た湊は音を立てず周りに気づかれず慎重に慎重を重ね、輸送ヘリの後ろへと張り付く
元々、雪と陽が輸送ヘリを奪取する予定だったが、敵にばれたことを攻撃ヘリの中に居た湊に発信機で知らせた故の行動だった
そして案の定敵が雪と陽を輸送ヘリから連れ出し、トヴァニコフの元へ歩ませたと同時に
湊が中へ乗り込みとある人物を除き、同じく乗員全員を射殺。
後は知っての通りだ
因みに岳は既に退去し、日本へ帰国途中だ
月は元々日本でオペレートしているので問題ない
湊の部隊は少数精鋭だ
基本どこかへ篭って完璧で確実なオペレートしてくれる月
敵を欺き、姿を隠すのが上手い陽
事前準備とその設置、さらに不測な事態にも対応できるように予備も準備することが迅速に出来る岳
近接戦を得意とする雪
遠距離戦を得意とする雨
さらにもう一人臨時で雇っている天
そして全ての指揮官である湊こと水
勿論名前は偽名である。由来は本人達の名前から適当に取っているに過ぎない
これら7人で基本的に上からの任務をこなしている
・・・そもそも何故そんな部隊に居て、そんなことをしているのか
それは語るまい。いや語れまい。
各自思うことがあり、自らこの世界に身を投げたのだ
誰にも止める権利も資格もない
以上、説明終わり
その後、俺、ソヴィ、雨、雪、陽、そしてトヴァニコフを拘束し輸送ヘリへ乗り込む
操縦は陽と雨がし、雪はトヴァニコフの応急措置
そして俺とソヴィは静かに座って待機だ
・・・何を言えばいいのかお互い解らない
そんな張り詰めた空気が2人にあった
でもそんなことを言ってられるのも今のうち
「・・・・これで当分は大丈夫かしら。足の出血は止めておいたから何とか話せると思う」
「解った。それは今から試してみる」
立ち上がり、横になっているトヴァニコフの元へ行く
ここからはロシア語だ
「・・・話してもらおうか。お前がプラウダ家にしてきた全てを」
「私の、家?」
ソヴィが反応する。当然だ、自分の家が話しの本筋に絡んでいるのだから
最もそれを聞くためにここまでしてやったのだから、絡まなければ困る
「話せるんだろ?まさか、身に覚えが無いとでも言うつもりか?」
「・・・・・お前らは、どこまで知っている?」
ここで銃を撃たれてから初めて言葉を発した
どうせ死ぬのなら、何もかも話してもいいだろうと思ったのだろう
墓場で持っていくことをやめた
・・・いや、違う。もしかしたら知る権利がある人間が居るのかもしれない
ここに、すぐ傍に。ソヴィトヴィーニアが居るのだから
「俺が知る知らないは関係ない。どちらにせよ、全て残さず話してもらうからな。因みにソヴィは何も知らない」
「なるほど、まあいいだろう・・・」
「話す気になったのならこちらから質問していこう。お前はそれに応えればいい」
「ああ・・・」
掠れた声で反応する
諦めと後悔の顔を浮かべながら
そして俺は問いだす。ソヴィの父、ヴェルニクス・フォグロム・プロウダのことを
「・・・・ヴェルニクス・フォグロム・プロウダは何故殺されることになった?」
「・・・・・・・・・・・・」
ソヴィは黙って聴く
恐らくは精神面で限界が近いのだろう
この数日間。まともに休めることが出来なかったのだから
精神面でも、身体面でも
「アイツは、危険だった。幾つモノ戦争を潜り抜け、しかも多大な戦果を上げいつも帰ってくる。そいつが来れば戦争に勝てる。そう思わせるほどに・・・」
だが、と言葉を続ける
「それを良く思わない連中だって多かった。その力はいずれ組織の根本的な部分すら変える。それは必ず阻止しなければいけないことだ、と。・・・いつの時代だって、優秀すぎる人間には優秀故に周りの人間からの嫉妬と怨みがある。そういう連中が、ヴェルニクスを殺そうと計画を立てていたのだ。元々"プラウダ家"と言ったら歴史ある一族だ。ある時代では英雄と称され、ある時代では殺戮者と疎外されていた。だから上層部を丸め込むのには簡単だった。そしてロシア軍を護るという大義名分の元に動き出した・・・それが、10年以上前だ」
・・・よく喋るな。コイツ
足動かないというだけで別に上半身は健在なのは確かだから話せるのは当たり前なんだが・・・なんだ、こう一気に話されると色々と不安になるな
それか、懺悔するように開いた口が閉じないのか
それとも語らなければいけない使命でもあるのか
これもまた必然だと妥協したのか
いや、それより内容だ・・・・10年以上
「・・・つまりヴェルニクスを殺すのに10年掛かったのか。軍、政府の力を持ってしても」
「人望が沢山あった。だから反対勢力の力も強かった・・・」
「どうやってヴェルニクスを殺すつもりだった?」
「最初は事故や暗殺だ。だが全て避けられ阻止された・・・だがそんなことを続けていたら、ある好機が生まれた」
「・・・・ヴェルニクスの母が死んだこと、か」
「そう、だ」
「ーーーー・・・・母さんが」
反応がなかったから聞いていないと思っていたがそうでもないようだ
・・・図太い精神をしている
「その妻が死んだことで、周りの人間は一旦こっちの仕事から外そうと考えたんだ。疲れを癒せないということで、説得した。そしてヴェルニクスの家族は平和な国で、その妻の両親が住んでいる国である日本へ渡った」
「・・・それが、チャンスだと。だが、日本の警備だって甘くない。どうやって殺そうとした?」
「・・・このことで誰かが、家族が死ねばあの優秀で冷徹な人間だって来るものがある。なら、周りの家族から殺して精神的に追い詰めたところをロシアに引き戻し、殺す。そう計画を立てた」
「・・・え、ちょっとまって。ならーーーーーーー」
ソヴィが立ち上がる
驚愕と焦りの顔をして
当然か、ここまでくれば厭でもわかる
解りたくないのに、解る
"アレ"が、必然に起きたってことが
「・・・そして、お前たちは数年後、準備が出来たからヴェルニクスの娘を・・・・殺した」
「・・・・そうだ」
「・・・・・・・・・ッ」
「ーーーーそれは、お前が指示したのか?」
声が、震えてしまう
手が、震えてしまう
今でも、怒りで狂ってしまいそうな
そうあの時、美樹が傷つけられ暴走した時のように
いやそれ以上にーーーーーー
・・・・・駄目だ、落ち着け。冷静になれ
あの時は畸形が活発になってしまったのも原因にあった
だが、今"あの畸形共は居ない"
事実を受け止めろ。ソヴィだって今そうしている
驚愕し、絶望していても、今でもこうして耐えている
ソヴィの手前、部下の手前、恥ずかしい思いはしたくない
だがーーーーーーーー
「・・・いや、違う・・・・俺が殺した。上の命令で、娘を一人トラックで轢いーーーーーーー」
ーーーーーーーッ!!!
重い音が、機内に響き渡った
それは俺が無意識にこの男を殴ったからだ
まさか、コイツが俺が生まれる事になる原因だったとはな
因果応報だな。自分で殺した女の子が原因で生まれた俺に今、こうして生かされているのだから
もう一発殴りかかろうとした瞬間、
気づけば雪が俺の身体を抱き止めている
「・・・隊長、冷静になって」
優しく、耳元で囁く
その一言の説得で我を取り戻すことが出来た
「・・・・・・・・・・・悪い」
・・・そうだ、冷静になれ
抑えろ、まだ聞きたいことは済んじゃいない
「悪いな途中で止めて。話せるか?」
「ーーー・・・ペッ、ああなんとかな」
口が切れたのか、床に血を吐く捨てた
文句を言ってこない
いや、言わない
言えば殺される、そう思っているからだ
いや、思っていたらむしろ言うだろう
そして殺してもらえば楽になる
だがそれをしなかった。つまり、話したいのだろう
どういう意図があるのかは解らないが
「・・・それで、その娘を殺してどうなった?」
「さあ、な。俺は上からの命令でやっただけだ。後のことは知らないし教えてもくれない・・・それについてはそこの嬢ちゃんが知っているだろう」
「だろうな。で、問題はその後だ。お前たちは数年置いてプラウダ家をロシアに引き戻した。その後どうしようとした?」
「・・・やっぱり、と言うべきか。殺すことは出来なかった・・・そしてそれを予見していたのか既に別の計画が上がっていた」
「その内容は?」
「孤立させ、反逆罪という濡れ衣を着せ、さらに"別の国"にこの男を始末してほしいと頼む」
「なるほど。その"別の国"への報酬は貸しってことか。それで今でも割と友好的な関係を築かせている、と。」
「そう、だ。それが上層部への説得の種だった」
「で、どうだい?そのロシアから裏切られた感想は?」
「・・・・そうか、お前はこの国からの依頼で来たのか」
「俺にとってそれはついででしかねえよ」
「・・・お前、もしかしてーーーーーーー」
「それ以上はいい。・・・最後に聞かせてくれ。お前は何か裏切られる原因でも上に言ったのか?」
「・・・・ああ、言った。」
「それは、聞かせてもらえる内容か?」
「いいや、いえないな。こればっかりは・・・。言わなかったら殺すか?」
「いや、察しはつく。だからお前は自分の罪に懺悔しながら裁かれろ」
「・・・・・・ハッ、その年齢で聡い男だ」
これで聞きたいことは全て聞いた
「ーーーー・・・ソヴィ、まだ大丈夫か?」
日本語で話しかける
「・・・ええ、彼方が殴ってくれたおかげでまだ正気よ。それで、まだってことは次があるのかしら?」
「ああ、安心しろ。次が最後だ。恐らく、これが最もお前にとって辛いことだろう・・・それでも、聞きたいか?」
「ーーーーーーー・・・・・ここまで来たら、全て知りたい。どんな現実があっても」
「・・・・・わかった」
お前の覚悟理解したよ
そしてこれは俺には関係ないこと
だから、お前が聞くんだ
残酷な真実をーーーーー
その結末をーーーーーー
色々と疲れてきた




