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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第一部 空想上の物語
21/74

【ソヴィ 過去編】家族と復讐から

ソヴィトヴィーニアは俗に言ういじめられっこであった

それには色々な理由があるが、大半は姉との差だ

姉は天性の天才と呼ばれるほど頭がよく、カリスマ性もあり、そして優しい。

愛に満ち、愛を与える存在であった

そんな姉と比べると、ソヴィは頭は悪く、陰気で、何を考えているか解らない

だが、あの年代の女の子の中ではかなりの力はあった

特に鍛えているの訳ではなく、こちらも天性の才能だったのだろう

だが、それを行使するほどの精神は持っていなかった

精神面は弱かったのだ。ずっと姉と比べられ精神が疲れ切っていた


日本には、ソヴィが小学生2年生の頃にやってきた

それは母が病気で他界し、父の精神を癒すため

母は日本人だった。死んでしまったことにより、父は落ち込んでしまった。

そこで、母の祖父がこちらで疲れを癒さないかと申し出て、お願いしますと頼んだのだ

仕事と失った母で身体は強くても精神面では結構きていた父はそこで数年暮らすことにした

・・・・・だが、これが間違いで、結果的に正しかった


異国の人、外国人であったソヴィとその姉は小学生の日本人からは格好の的であった

だが、姉は持っている天性の才能で回りに認めてもらい、むしろ慕われていた

しかしソヴィは違った

転校して一週間はよかった。だがそこからいじめが始まったのだ

何せソヴィは日本語がわからなかった。それもそのはず。つい最近まではロシアにいたのだから

髪は銀髪、目は碧眼。これだけで日本の小学生にとっては異質で不可解な存在だった

だから疎外視された。され続けた

男にも女にも

盗まれることなんてざらだ。ロッカーに、靴箱に異物を入れられるのも日常

水を掛けられたり、意味無く蹴られたり、殴られたり、髪を引っ張られたり

理科の実験の時は特に酷かった。火を使う実験あれば手で火を消せだ、熱湯飲めだと

掃除の時は掃除用具に入れられ外からドカドカと殴られたり、服を雑巾にしろだのと

小学生というものは加減を知らない。そして抵抗しなければますますヒートアップする

勿論ここまでされて文句を言わないソヴィではない。

だが、悲痛の嘆きも、憤怒の言葉も、通じないのだ。言語が違うから

それでまた罵られる。嘲け、笑われる。それの繰り返し

でも、そんな中希望はあった

それは美月の存在だ

家が近所でよく遊んでいた、美月

言葉はわからなくても、ジェスチャーで通じ合える

それを知ったきっかけが美月だ

でもそれは美月だけだった。他の人間は解っていてやめない

そして生憎とクラスは違った。だから登下校しか会えない

そんなことをされ続け早1年

そう、小学3年生の時だ。


姉が、死んだのだ


男の子を庇って死んだのだ

その男とは父が日本で仕事をしていた時、同じ職場であり友達とも呼べる存在の男の息子であった

父はその男の子に激怒しなかった。私はその男の子を恨まなかった

差を比べられ、周りから罵倒されても、姉のことを嫌いになることは無かった

むしろ大好きだった。優しすぎる姉さん

だから、男の子を庇って死んだと聞かされたとき、私は必然のようなモノを感じていた

もし目の前で男の子が事故で死にそうになった時、姉さんなら身を捨ててまで助けるんだろうなって

優しすぎるから、他人を愛して止まないから。そしてその男の子のことはよく姉さんが話題にしていた子だということを察した

恐らく姉さんはその男の子に恋をしていたのだろう

本気の恋。小学生の本気の恋。

恋愛に年齢は関係ない。そして無垢で無邪気な小学生の本気の恋は途轍もなく熱烈なものだったのだろう

自分の身体を捨ててまで助けたいと思うほどに

だからこそ小学生は単純にして極端な生き物だ

0か1じゃなくては厭なのが小学生というものだ

その結果死んでしまった。満足に、死んでしまった

しかし、助けた男の子は意識不明の重体らしい

目を醒ますのに5日掛かったと聴く


そして、私。ソヴィトヴィーニアは

いつもと変わらずいじめられていた

姉が死んだショックを受ける暇も無く、学校ではいじめを受けていた

いや、変わらずは違うかな。変わっていた。いじめる内容が変わっていた

姉が死んでなんでお前みたいなクズが生きてんだよ、とかそういう内容で

それは今までクラス内だけであったのに、姉が死んでから上級生にまで嫌がらせを受けることなったのだ


(・・・なんで・・・私ばかり・・・)


姉が死んだ理由はみんな知っているはずだ

なのに何故私に飛び火が来る

それはあまりにも不条理で不平等じゃないか

身も心もボロボロな私

これから生きていても仕方がないと思うほどに追い詰められていた

いや、もうとっくにその段階まできていたのだ

だがよくここまで自殺しようと考えなかったと褒めるべきだ

しかし・・・・・・それにも限界があった


(姉さん・・・私も、今からそっちに行くね)


深夜1時

若干高めの歩道橋

その手すりを跨ぎ、足元を1cmでも前へと進めばあの世行き

そんなところに今、ソヴィは居る

死ぬために、死にたいがために

希望がない。生きる意味なんて無い。生きていてもしょうがない

死んだって誰も悲しまない。悲しむ人間が居ない

ああ、父がいたか。でもあの人は私がこんな状態でもいつも通りだった

つまりは見捨てたのだろう。いや、それとも母に続き姉の死が応えたか

・・・そうだとしてもあの父がこんなにも立ち直るのが遅いとは考えられない

だから、まあ、どうでもいいか。もう考えるのも面倒だ

もしかしたら父と祖父が悲しんでくれるかもしれないが、それ以外は無いだろう

だって、姉の葬式の時に涙を見せた小学生達は、絶対に私の死では涙を流さない

むしろ喜ぶのではないだろうか。笑うのでは無いだろうか

・・・いや、むしろ笑っているのは今の私か

乾いた笑いしか出ないが、それでも笑っている

笑うことしか出来ないから、笑っている


さて、そろそろ死のうか

これ以上目立ってはいけない

もしかしたら止めに来る偽善者が現れるかもしれないからだ

それは避けたい。偽善者なんかに助けられたくない

・・・まて、今のはおかしい

助けられたくない?それじゃあまるで誰かに助けて欲しいみたいじゃないか

止めて欲しいみたいじゃないか

まだ、未練が残っているのか。

この世に、なにか希望でもあるというのか

あれが現実だろう。あれが日常だろう

小学校であの惨状。なら中学も高校も大学も会社も似たようなことが起こるだろう

それのどこに希望がある

それの・・・・・どこにッ!!!


「ーーーー・・・なんだ、お前今から死ぬのか?」


不意に、後ろから幼い男の子の声がした

私は振り向かない

振り向きたくない

振り向いたら、いけない

だからこのままの体勢でその声に応じるとしよう


「・・・うん。どうせ生きていたってしょうがないもの」


「・・・・何を視て来たのか、何を感じてきたのかは知らないけどさ」


男は笑った

笑ったのが解った


「どうせ死ぬなら、死ぬ前に何もかも全部ぶちまけたいって思わないのか?」


「ーーーーー・・・・えっ?」


「お前が自殺しようって考えた原因は、恐らく虐めだろう。ならさ、どうせ死ぬならそのいじめた奴等に今までの痛みを返してから死ねばいいじゃん。その方がスッキリして満足に死ねると思うが・・・どうだい?」


「・・・・・・・・・・」


流石に言葉を失った

私はこのままひっそりと死んでもよかった

誰にも見取られずに、死んでもよかった

・・・でも、それでいいのだろうか

このままやられっぱなしでいいのだろうか

ーーーー・・・一度くらい、復讐したい

私の中に、私がまだこの世に希望と呼べるものあると無意識に感じていたのはこれか

そうだ、死ぬ時くらい周りに迷惑掛けてから死のう

どうせ死ぬなら、そのぐらいしてもいいだろう

だって死んだ後の現世なんて私には関係ないのだから

・・・そんことをしてあの世に行ったらきっと姉さんと母さんから凄い怒られるんだろうな

でも、それでも・・・


「・・・・そう、だね。それはいい考えだ」


振り向きながらそう応えていた

なにか吹っ切れたような、久々に気持ちのいい顔で


「いい顔になったな。んじゃあ精々頑張りな」


男の子はそのまま去ろうとする


「ーーー・・・まって!」


気がつけば私はその男を呼び止めていた

それはいくつか気になる箇所があるからだ

その呼び止めに男の子は応じ、足の歩みを止めてくれた


「いくつか質問、いいかな」


「・・・いいよ。どうせ暇だし」


「・・・こんな時間に、どうしてこんな場所に居るの?」


「散歩だよ。悪い夢にうなされて散歩していて、気がつけばこんな遠くまで来ていたんだ」


「どうして私に声を掛けたの?」


「気まぐれだよ。俺と同じぽかったから声を掛けてみた。」


「・・・これが一番の謎なんだけど・・・・どうして私の言葉がわかるの?」


そう、私の言語はロシア語だ

それなのにどうしてこの男の子は初見で私が使う言語が解ったのだろう

いやそもそもこの男の子はどうしてロシア語が解るのだろう




「・・・・前の奴がさ、ロシア人の女のことが好きだったらしいんだよ。そいつはロシア語を必死に勉強した。だから俺にもある程度は話せることが出来るんだ」




「・・・・・?」


「無理に理解しなくていいよ。どうせ本当かどうかわからない記憶だ。・・・それにどうせ俺達は大人になっていくに連れて子供の頃の思い出なんて薄れていく。だから気にするな。お前はお前で必死になって生きていけばいいよ」


それを最後に男の子は去っていった

言葉の意味は解らなかったが、恐らく彼と私はどこか似ていたのだろう

だから彼は私に声を掛けた。同じ人間と話してみたかった

その結果彼は満足した。だから帰った


ーーーー・・・そして、私も・・・もう少しだけ生きる意味が出来た


・・・復讐する

絶対に復讐する

私を笑った、私を殴った、私を貶し惨めな姿にさせたアイツ等を

絶対に許さない


ソヴィはここで、「怒り」を覚えたのだ

母の血があったため、ソヴィには「愛」と「優しさ」が殆んどだった

故に根暗と呼ばれ、いじめられ、次第に「愛」と「優しさ」はなくなってった。

完全になくなったのではない。単に忘れてしまったのだ

だが今、「憤怒」と「怨み」を覚えた

そのきっかけをあの男の子は教えてくれた

ああ、今私は始めて感謝した

教えてくれてありがとう、道を示してくれてありがとう、選択肢をくれてありがとう

ああ、なんて気分がいいのだろうか

生まれ変わったような気がする

あんな、他愛も無い会話でここまで変わるなんて

案外私は、簡単な女なのかもしれない

そしてコレほどまでに、復讐するということは生きている実感をくれるのか

死ぬことなんて後回しだ。生きることなんて二の次だ


月を見る。風が靡く。髪が揺れる

だが、私はこの足を前へは進ませず、超えた柵をまた跨ぎ、歩道橋へ戻る



ああ、私は今ようやく生きていると実感しているんだ


過去編の方が書きやすい

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