思い出の場所
「いやーやっぱ祭りは楽しいねえ!」
「だねー!テンション上がりっぱなしだよー!」
海と美月が人ごみの中を先人切って前を歩きながら叫ぶ
こうしてみるとこの2人は結構気が合うんじゃないだろうか
もしこの2人が同じクラスだったら・・・っとふと想像するくらいに
「「2人ともはしゃぎ過ぎだ・・・」」
龍川兄妹が口をそろえて告げる
流石にこの人ごみの中、横一列で移動するのは迷惑なので
2人一組の形で縦で移動している
配列としては
海 美月
耕哉 美樹
レツオ ソヴィ
という順だ
勿論こうするように言い始めたのは海である
「どうしたんだい、ソヴィ。浮かない顔して」
「そうかな?結構楽しんでいる積もりだよ。数年ぶりの日本の祭りだから」
・・・察し、というか私のこと見すぎでしょ
そう、浮かない顔をした原因は湊だ
考えてしまう
感じてしまう
何で、ここに湊が居ないのか
「さて、そろそろ花火の時間だけど、どこで見る?」
耕哉が提案する
「どこかいい見晴らしの場所あるのかい?」
「う~ん、無難な場所なら思い当たるんだけど、多分もう人で一杯かもしれないな~」
「確かに、少しブラブラしすぎたね」
「ゆっくり出来るスペースが欲しいよなぁ。誰かいい場所知らない?」
海がこの場に居る人に聞く
私は勿論、レツオは知りもせず
耕哉と美月も考え出すが、すぐに答えが出ないようす
「・・・ねぇ」
「ん?美樹どこか良い場所知ってるの?」
「うん、少し歩くけど見晴らしはかなり良い場所なら知ってるよ。でも茂みの中歩くから嫌だったらいいけど・・・」
「このまま考えても良い案は出無さそうだし、そこでいいんじゃないかな?」
「美樹が言うくらいだから期待せざるをえないな!」
レツオと美月が賛成する
「俺も賛成ー。このまま立ち往生していてもしょうがないし」
「私もいいよ。それにここに居る皆は茂みくらい気にしないよ」
それに続いて私と海も同意する
が・・・
「・・・いいのかい?美樹」
「いつまでもこのままって訳にはいかないわ。私も、変わらなくちゃ」
耕哉が妙に神妙な顔する
その会話の内容は周りの雑音でハッキリとは聞こえなかったが心配している様子だった
「それじゃあ行きますか!美樹ちゃん。先陣ヨロシク!」
美樹と耕哉ペアが海と美月ペアと交換し、誘導する
茂みがあるってことは森に近いのかな?
ともかく楽しみだ
「ごめんなさいね。折角の祭りの日に呼び出しちゃって」
この町の住宅街の隅寄りの小さな道
その道を格好良い蒼い車が走る
車には海の姉である天音
その助手席には湊が座っていた
「それは何度も聞いたし、気にしていない」
何故天音の車に乗っているのか
それは以前申請してくれと天音に頼んだことで
問題があったからだ
何故依頼を断るようにしたのか
もしかしたらそれほどまでの傷を負ってしまったのか
その疑問を晴らすために、わざわざ湊が本部に出向いたのだ
面倒臭いことこの上ない
一応それらしい理由と、身体に何も異常がないことを見せつけ
渋々承諾してくれた
「元々俺が言い出したことだからな・・・そこを右」
「はいはい・・・・まあ向こうもこれで数ヶ月は大人しいだろうから君は安心して過ごしてくれ。勿論私の実験には付き合ってもらうが」
「分かっているよ。いちいち確認するな・・・・・そこ左に曲がった後すぐに右に」
「随分と狭い道を行かせるねぇ。どこに行かせるつもりだい?」
「ただの暇つぶしだ。」
「山にかい?それはまた随分と普段の君とは真逆でアウトドアなことで」
「まあな。たまには山に行って静かに過ごしたいんだよ」
「花火でうるさいと思うが?・・・ああ、花火を観に行くのか。誰かと待ち合わせでもしているのかい?」
「・・・いや、ただ毎回行ってるからな。習慣っていう奴だ・・・・・この辺でいい」
「はいよ」
狭い道だが出来るだけ端に寄せつつ車を止める
車を開け、無言で外へ出る
「ーーー湊」
少し歩くと天音が俺を呼ぶので振り向く
「恐らく、これから君は変わっていくだろう。だけど、変化を恐れるなよ。恐れたらそれまでだ。君はそのままでずっと生きていくことになる。君のいう自然で不自然な死が来るまでな。」
「・・・なんでそんなこといきなり言う」
「女の勘だ。もうすぐそんな時が君に来ると感じたので忠告がてら伝えてみただけだ。信じるかは君次第だ。だが、その胸に刻んでおいて損はないと思うが」
「安心しろ。俺はいつだって変化を求めている。この病気を変えてくれる変化だけだがな。だから今まで様々なことを試してきたんだ。片っ端からな」
「分かっているならいい。それじゃあ私はこの辺で。夜道は気をつけなよ」
そういい残すとすぐさま車を動かし立ち去る
「・・・余計なお世話だ」
さて、こんなところで暇を潰している時間は無い
天音の車が見えなくなった後、すぐに俺はある場所へ向かうため歩き出す
・・・ああ、女々しいことこの上ないさ
彼女との初めての思い出の場所
もう来ることは無いはずの彼女を、思い出しながら俺はいつもその場所で花火を見てる
その場所を教えてくれたのはーーーーーー
「・・・貴女が生きていれば、もしかしたら俺は普通に日常という奴に居たかもしれませんね」
普通に日常、そのために必要な要素は
普通の友達、普通の家族、普通の学校生活
普通の、恋人
いいや、貴女の所為にすることは無い
所為にしてはいけない
俺は貴女に命を救われたんだから
それ以上のことをいまさら求めはしない
むしろ心から感謝しているから
だから、この普通じゃない日常でも
「・・・俺は生き抜いて見せますよ。自分から死ぬことは、絶対にしませんから安心してください。■■■■」
ーーーーミャー
入り口付近でネコの声がした
その声の持ち主はミーのものだった
「・・・待っててくれたのか?」
ミャーオと返事する
ミーを抱きかかえ、目的の場所へ向かう
ーーーーーードォーンッ!!
「・・・始まったか」
花火が上がる
地上から数百メートル離れた空中で爆発し、町全体に鳴り響く
その音をBGMにしながら目的の場所へ向かうため、軽い石段を登る
雑草を掻き分ける、獣道を歩く
目的の場所
ミーを拾った場所
■■■■との最後の思い出の場所
そして、彼女との甘い思い出の場所へ
「・・・・・・・・・・・」
暗闇の中、アンダーアーマーにフル装備した大人数人が
ジェスチャーをしながら指示し、行動に移していた
その数人は半数に分かれ、お互い迂回しながら例の人物を追跡する
この大人たちはプロフェッショナル
その名の通り、行動には慎重に慎重を重ねながら行動していた
何のプロか。見た限り、軍に関係する人物だということは分かる
では何故追うのか
軍人は独断や偏見で行動しない。するときは上司からの命令か、依頼された時ぐらいだ
前者か後者か。いや、両方ということもありえる
そしてその真実はすぐに明らかになる
ーーーーードォーンッ!!
「おー始まったー!。確かに凄い景色だ!!」
「ここなら誰も来ようとは思わないからいいね!」
「ああ、凄いな」
「・・・綺麗」
「большой!(素晴らしい!)」
各々花火の感想を零す
海と美月は興奮して柵の前まで行く
その勢いで柵から飛び出さないか不安になったのか、耕哉が傍に寄る
私たち3人は簡単なベンチに座ったままだ
美樹が案内してくれた場所は
近くの山だったのだが、思いのほか獣道や雑草が多かったので人気が無かった
その先にあったのが数メートルの崖で、町全体が見渡せて
その崖にはしっかりと柵が設置してあったのだ
さらには、丸太を半分にした簡単なベンチらしきものをあり
花火を見るにはうってつけの場所だった
確かにこんな場所、知らなければ来ようとしないだろう
・・・そういえば、美樹はどうしてこんな場所知ってたんだろう
「・・・美樹」
美樹と耕哉が何も言わないので居るだろう美樹のほうへ顔を向ける
しかし。美樹は花火を見ているのではなく、この柵の隅を悲しそうな目で見ていた
「・・・・まだ、ーーーーーーそれとも、ーーーーーーー」
花火の音で全部は聞こえなかったが、何かを気にしている様子
「美樹?どうしたの?」
「・・・え?ああ、なんでもないわ。それより楽しみましょ。折角の花火大会なんですから」
「・・・そうね、その通りね」
一発、また一発、そして複数
綺麗な花火が目の前で休むことなく上がっていく
私たちは全員この光景に目を囚われていた
ーーーーーーーー刹那
・・・ミャー・・・・・
「・・・・・?」
どこかでネコの声がした
と、思う
まあ山の中だからネコの一匹や二匹居てもおかしくは無いか
そう思いながら、なんだかんだで周りを見渡して探してみたりする
なんだ、居ないじゃない
と思ったが
ーーーミャー!
「ーーー・・・・え?」
その声は真後ろで聞こえた
思わず振り向き、声がしたであろう下を見る
すると------------
「・・・ミー?なんでこんな所に・・・」
白キジのネコであるミーが綺麗に座りながら私を見上げていた
この時間はいつも家に居るはずだと思っていたが・・・
いやしかし、いくらネコが自由な動物だからってこんな場所に
ピンポイントで来ることは無いだろう
考えられることは、この場所に誰か連れてきたぐらいしか
でも、それじゃあ誰が・・・
・・・誰が?そんなの、決まってる
このネコを一番溺愛している人間
このネコの飼い主である人間
即ち、その人間は・・・
ーーーー・・・・ガサッ
何かが近づく音がした
その音はミーが来た道であろう方角から聞こえる
ーーーガサッ・・・ガサッ・・・
雑草をかぎ分ける音は段々近づいてくる
そして、その音を出していた存在が花火の明かりで姿を現す
「ーーー・・・湊」
その存在の名前を私はボソッと呟く
その呟きは隣に聞こえたのか、
呟いた瞬間、美樹が微かに反応した
しかし、そこにいる湊はいつもと雰囲気が明らかに違った
あのナンパ男に絡まれたときとはまた違う雰囲気
その雰囲気は、いやその瞳は儚げなモノを見るかのような瞳をしていた
悲しい過去を思い出すかのように
過去は壮大なモノほど面白い




