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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第一部 空想上の物語
14/74

昔からの友


「・・・・・湊!・・・・・・湊!!!」


刹那ーーーーーーーーーー


その呼び声に反応したのか


それとも、それ以外のことが関係しているのか


それは分からなかった


でも、結果としては湊の首を絞めていた両手はふっと力を失った


ここまではいい


だが、全力で掬い上げるような体勢であったソヴィは・・・


「ーーーー・・・・・キャッ!?」


勿論湊の両手を掴んだまま後ろに倒れこむ


掴んだまま・・・


つまりは、湊の身体と一緒に


そして


「ーーーーーイッタタ・・・・・・・ん?・・・・・えっ!?」


ソヴィは何があったのか、現状を把握しようとした


勿論こうやって後ろに倒れこんだのだから湊は手の力を緩めたのであろう


そんなこと、分かりきっている


だが、そんなことすら考える余裕が無かった


何故なら、自分の身体に何か乗っかっていることと、頭の左側に何かあることを感じ取り


それを確かめる為に、その違和感のある左側へ首を向けるとーーーーー


そこには湊の顔がすぐ目の前にあったからだ


ほんの数ミリ近づけばキスするような距離で


「ーーーーーーーーッ!!?!」


湊のベッドには囲い込む柵が無い


なので後ろに倒れこんだソヴィは上半身の半分が外に飛び出すような体勢になってしまい


それに覆い被るように湊の身体が乗っかっている


・・・なんてことに構っている余裕が無く


「ーーー・・・え?、あっ・・・えぇ!?」


戸惑い、動揺、焦り、羞恥心


そんな思考が入れ混じり、混乱した


流石のソヴィもこんな経験は無かったから


どうしたらいいのか


どれが正解か


とにかく混乱していた


冷静に物事が見れるソヴィが何故こうも混乱するか


それは、有川湊だからである


今まで、他人は他人と一区切りにして一線を引いていたソヴィ


他人だから、適度の距離を保つことが出来た


だが、どうだろうか


有川湊


たった1週間だが、一緒に暮らし、一緒に支えあった赤の他人の存在


その存在は今までのソヴィの価値観を揺るがすに十分なものだった


だから動揺する


湊の裸を見た時とは訳が違う


本来、本当に赤の他人がこんなにも接近していたら


ソヴィは冷静に回避行動を取るか、武力で薙ぎ払うかのどちらかだったのだ


それが出来ない相手


それをしない相手


だから、混乱する


「ーーーー・・・ゴホッ、ゲホッ!」


そんな混乱を彼の咳で一瞬で打ち砕いた


「み、湊!?大丈夫?」


「・・・・あぁ、お前か。」


どうやら意識を取り戻したばかりらしく


現状把握に専念している


「・・・なんでこんな体勢なんだ?」


「いや、あははは」


苦笑いしか出ない


「まあ、お前が手助けしてくれたのは確からしいから、そこまで言うつもりはない」


むしろ、と言葉をつなげる


「・・・ありがとな」


「ーーーーーーーーー」


信じられない言葉を、すぐ隣から耳にした


この1週間で、有川湊がどんな人間かぐらいは解っているつもりだった


彼は何事にも効率が良い


効率重視


だから普段余計なことは話さないし


必要なことは1から100まで全部一気に言う


つまりは普段は愛想が無いのだ


仏頂面


そして効率重視の湊は絶対、とは言わないが9割失敗を起こさない


だから、助けはいらないのだ


「・・・・・なんだよ」


「えっ?あっいや・・・」


ーーーーああ、私


今、凄く嬉しいんだ


初めてだ、こんな感覚


父に褒めて貰った時とは、また違う感覚


他人だから、他人じゃない他人に言われたから


こんなにも凄く嬉しいのかもしれない


全く、ここに来て初めての出来事を経験することが多いなぁ


それが今、本当に楽しいと感じれるこの生活が何より愛おしい


「ーーーー・・・そ、それよりそろそろどいて欲しいんだけど・・・」


動揺を隠すように別の話題に路線を変える


「・・・・・・」


湊は少し身体を動かそうともぞもぞするが


すぐに動きを止めた


「・・・・どうし、たの?」


「・・・・・力、入らない」


「ーーーーえ」


その後、この厳しい体勢から湊を元の位置に戻すのに、結構力を使った


その所為で、ほんのりと顔が赤くなっってしまった


・・・うん、そうだ。そうに違いない







「ーーーーあ、湊。おはよう」


「・・・おはよ」


「流石に今日はいつもより遅いね。ああ、安心して。家事はやっておいたから」


「そりゃどうも」


朝、昨晩のせいで起きるのに時間を要したのいつもより遅くおきてしまった


身体は癒えても精神はすぐに回復しなかったのだ


それに、考えることが山ほどあったので、寝るに寝れなかった


「もうすぐ出来るから、リビングで待っててね」


「ああ、わかった」


必要なものをテーブルに置き、朝食が出来るまでテレビを観る事にする


それから約5分


「いただきます」


「・・・頂きます」


いつものように無言で食べる


だが、今日の湊はいつものようにとは行かなかった


「・・・なあ」


「なに?」


「今日の夜、時間作ってくれ。昨晩のことで話しがある」


「・・・・わかった」


そう、結局あの後原因を話さなかった


話せる余裕はあった


力が出なかったのはほんの数分の出来事


その後は普通に身体が動かせるようになり


気分爽快するために、一走りしてきたのだ


だから、話す余裕はあった


話せた


だけど、それをしなかった


迷っていたからだ


だが、こうして一連の出来事を目の当たりにされてしまい


さらには手助けさえしてくれたのだ


話すしかあるまい


その結論に到ったのは寝る直前だった


それまでどう誤魔化すかずっと考えていた


が、まあ無理だろうと判断


(まあ・・・仕方ないよな)


そう思い出しているうちにお互い朝食を食べ終わり


食器を片付けた後、学校へ行く準備をした


準備の為に部屋に戻り着替えていると・・・


ーーーーーーピンポーン


チャイムが家中に響き渡る


着替え終わっていたので誰か確かめるために部屋を出ると


丁度ソヴィも着替え終わったらしく制服を来て部屋から出てきた


「私が出るよ。湊はもう少しゆっくりしていて」


と言い残し1階へ降り、玄関へ向かった


(変に心配されてるな・・・死ぬ寸前の苦しみなんて、今までどれだけ味わってきたか)


そう、昨晩の事は湊にとっていつものことなのだ


故にその程度で低下する精神は持ち合わせておらず


さらにはそれ以上の苦しみを知る湊だ


首を絞められるくらい、畸形に蝕まれるくらいいつものこと


だから平然としていられる


(それを含め、一度話し合ったほうがいいかもしれないな)


誤解されるのはいい


だが心配なんてされたくない


心配されるほど、柔な身体も精神も持っては居ない


そう努力してきたのだ


だからその辺も含め、しっかりと話しておきますか


「ーーーーーーえっ!?」


玄関からソヴィの大きな声が2階にまで聞こえてきた


・・・このまま1階に降りたら面倒事に巻き込まれそうな気がしたが


生憎と、そろそろ出る時間だった


「・・・はぁ」


部屋からカバンを持ち、身だしなみを整え、学校へ行くべく玄関へ向かう


すると・・・


「・・・・レツオ!なんであなたが日本に?」


「転校してきたんだ、色々な事情が重なってね。それで、どうせなら君が居るこの町にこようかと思ってね。ビックリしたかい?」


玄関には金髪で短髪の蒼い目をした美青年が居た


恐らく、会話の流からするにソヴィの知り合いだろう


こんな朝から何の用なんだと思ったら、その青年は制服を着ていた


その制服には覚えがあった。それは九条峰の制服だ


つまり、この青年は九条峰に転校することになったのだろう


・・・まあ、俺に厄介ごとを持ち込まないのならどうでもいいんだが


あ、なんかデジャビュ


「ソヴィ、日本での暮らしは大丈夫かい?昨日メールしたが返信がなかったから心配したよ。もしかしたら何か嫌なことでもさせられてるんじゃないかって・・・」


「相変わらず心配性だね・・・日本は長らく居たからそんなに心配することはないよ。それに同居人は凄く優しいから安心して暮らせるし」


心にも思ってない気持ち悪いこと言うな


「同居人・・・それはーーーーーー」


そこで、玄関に到着


そして対面


「・・・同居人ってのは君かい?」


「そうだが・・・」


なんだコイツ


初対面なのに敬語も使わないのか?


それともロシアじゃ礼儀ってのを学ばないのか?


それなら仕方ないが、ソヴィでさえ最初は身分を弁えてたのに


「なら君の両親に合わせてくれないか?ソヴィが快適に暮らしていると言う事だからお礼がいいたい」


うっわ、今度は保護者面か?


なんてキザなヤツ


それとも本当に彼氏なのか


どっちでもいいか


俺にはそこまで干渉するつもりは無い


「両親はこの家には居ない」


「ーーーなっ!・・・まさか、君とソヴィの2人暮らしなのか!?」


「そうことになるな」


適当に答える


質問に答えながらしっかりと靴を履くために座り込む


(面倒臭い・・・・)


「・・・ソヴィ、それはあまりにも無防備過ぎないか?」


「私も最初はそう思ったけど・・・」


そう言いながら苦笑する


まあそりゃ思うよな


むしろよく暮らす気になったものだ


まあ、事情は知っているから何とも言えないが


「・・・それじゃあ先に行くな。後のことはコイツから聞け。見たところその制服、つまり一緒に登校するためにわざわざ俺の家にまで来たんだろう?。だったら後は当の本人に聞け。それじゃ」


そういい残し、そそくさと自転車置き場まで行き、学校へ向かう


「・・・何なんだい?彼。あまりにも無愛想じゃないか」


「まあ、あまり気にしないで。それより、さっき湊が言ったとおり、レツオは九条峰に転校してきたんだね」


「そうだよ、どうせなら君と一緒が良くてね。今日転校初日だから日道を覚えると同時に一緒に登校しようかと」


「分かった。もう少し待ってて。準備してくるから」


「勿論さ、急に押しかけて済まないね」


う~ん、これは予想外な展開だなぁ


どうして急に日本に来たのかは後で色々と聞くとしよう


しかし、まだ1ヶ月と経っていないのに随分と久々に感じる


この少しうざいところが懐かしい


・・・それほどまでに充実していたのかな


この日本で、この町で、この家で暮らしてきた一週間は


「・・・まあ、悪くは無いかな」


そう、悪くは無い


知らないことばかりで毎日が新鮮だ


だが知ってしまえば新鮮味なんて無い


でも、知らなければいけないようなことだってある


(湊・・・)


彼方が過去に何があったのか


何をしてきたのか


その全てを話してくれるわけではないだろう


だけど、せめて、美樹たちと何があったのかは絶対に聞かなければいけない


私にとって大切な友達だから・・・・









昼休み


私は美樹と美月、そして龍川に中津にレツオを交え、雑談をしながら教室で食べていた


何故龍川と中津がいるのかというと、朝声を掛けておいたのだ


まあ、湊と私の秘密を知られたからには出来る限り私の目の行く場所に留めておきたかったからである


人と深く信頼するには、秘密の共有が一番濃厚だ


つまりは、知られたのならこれから良い関係を築きたい訳だ


「へ~、レツオ君はソヴィと幼馴染なんだ」


「まあね、彼女がロシアに居たころは随分と遊んだものだ」


「日本語結構上手だけど、勉強したのかしら?」


「ああ、元々両親は日本と交友があったから自然と僕も覚えるようになったんだ」


「なぁなぁ!ロシア人ってかなりの白人美人が多いって聞くけど実際どうなの?」


「白人かどうかは、生まれで違うから何とも言えないけど、ソヴィを見れば分かるとおり美人は多いよ」


「海・・・少しは自重しなさい」


「いや、ほら。男からの意見って大切じゃん・・・すみません」


「ソヴィについてどう思う?」


「純粋に素晴らしい人間だと思うよ。ただ残念なことにまだ異性には興味を持たないらしい」


「ホント勿体無いよな~。ああでも、今ソヴィちゃんの家にはーーーーーー」


その発言は不味い!


まだみんなには言ってないことだから


というか湊から口外しないって約束してなかった!?


とにかく止めないと・・・


「なか・・・・・」


「ーーーーーー海」


言おうとした矢先、龍川も察したのかすぐに止めに入ってくれた


「・・・あ、わりい」


それを見て不自然と思った3人


はてなマークを浮かべている


しかし、これで口外されずにすんだ


と、そっと安心した瞬間


「ああ、そういえばソヴィ、君と住んでる彼は本当に大丈夫なのかい?なんなら僕の家に来た方がいいと思うんだが・・・」


レツオおおおおお!!


「住んでる・・・彼?ねえソヴィ、それって誰?」


「話の内容から察するに、ソヴィはその彼と二人暮らしのようだけど・・・そこのところどうなの?」


察し良すぎだから!


「いや・・・それは・・・・」


「ね、ねえ皆。知ってると思うけど今晩この町の花火大会があるけど、みんなはどうする?」


龍川がとっさにフォローに入ってくれた


本当に気が利く男だ


そりゃ彼女も出来るはずだ


目でありがとうと訴える


それに対してどういたしましてと笑顔で答える


「そうそう、それ私も聞こうかと思ってた~。美樹とソヴィは行く?」


「私は・・・そもそも花火大会があること事態知らなかったよ。でも皆行くなら私も行こうかな」


「私も・・・・そうね」


美樹がハッキリしない様子


何か不味いことでもあったのだろうか


「なあ、それ俺たちも一緒に行っていいか?」


そこで中津が割り込む


「ホラ、男がいると用心棒になるじゃん?だからどうかな~って」


「確かに居たら便利だけど、耕哉はどうするの?彼女と一緒に行くんじゃないの?」


「えっ?!龍川君彼ーーーーーー」


大声で騒ぎそうだったので美樹が咄嗟に美月の口を手で塞いだ


「まあね。でも彼女、今日忙しくて花火大会行けないらしいから皆とどうかなって」


「えー、そこは彼女も行かないなら自分も行かないとか言う場面でしょ~」


「でも彼女から遊んでおいでって言われたから・・・それでどうかな?」


「そういうことなら。皆居るなら安心できるから賛成かな。レツオはどうする?」


「僕も行くよ。この地域を知るには持って来いの舞台だ」


「よし!段々増えていくねぇ~。後は・・・・」


「・・・・・ん?何かしら?」


「いや、さっきから黙っていたからどうしたのかな~と思って。」


「美樹ちゃんも一緒に行くよね?」


「え、ええ勿論よ。私だけのけ者にされたら流石にショックだわ」


歯切れ悪く答える


何かあったのだろうか


「それじゃあ決まり!集合場所は分かりやすく九条峰駅でいいよね。そこから近いし」




こうして、私たちは花火大会に行くことになった


そして、そのイベントこそが、有川湊の根本的な部分。即ち人間性を知ることになる


そう、ソヴィは何も知らない


海も耕哉も両親も知らない


知ることが無いはずだった


だけど、知ってしまう


これで、有川湊を知る人間は3人になる


少なくとも、これで有川湊は劇的な変化が訪れるであろう


さて、何故こうも花火大会に行くとあっさり決めたのか


それは昼休みに入る前に湊からメールが来ていたのだ


内容は『帰りは遅くなる。適当にしていてくれ』


なので丁度空いた時間だ。あまり無下にしたくなかった


なので花火大会に参加することにした


季節はずれの花火大会


それは昔、一度だけ来た事があった


家族と、一緒に


キザな奴は嫌いだ

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