第八話 質問攻めと模擬戦
ギルドでの模擬戦!
リリアの強さが少しずつ知られていきます。
「リリアさん、昨日の依頼のことなんですけど!」
ギルドに入った瞬間、冒険者の一人に声をかけられた。
「え?」
「森の魔物を一人で倒したって本当か?」
「あ、はい!」
「しかも、あの数を?」
「はい!」
「……すげえな」
冒険者は感心したように呟いた。
その声を聞いた周囲の冒険者たちも、次々と集まってくる。
「おい、あの子が例の新人か?」
「なんかすごく強いらしいぞ」
「魔法も使えるんだって?」
「どこで剣を習ったんだ?」
気づけば、私は冒険者たちに囲まれていた。
「えっと……」
質問が多い。
どう答えたらいいんだろう。
「剣は師匠に教えてもらいました!」
「師匠? どこの流派だ?」
「流派はないです!」
「えっ、我流なのか?」
「はい!」
「魔法も使えるって聞いたけど?」
「使えます!」
「何属性だ?」
「全部です!」
「……全部?」
「はい!」
冒険者たちは顔を見合わせた。
「全属性ってことか?」
「いやいや、そんなことあるか?」
「でも、本人が言ってるぞ……」
なんだか、どんどん質問が増えていく。
「師匠ってどんな人だったんだ?」
その質問に、私は少し嬉しくなった。
「とっても優しくて、強くて……いろんなことを教えてくれた人です!」
「へえ、すごい師匠だったんだな」
「はい!」
師匠のことを思い出すと、自然と笑顔になった。
「……なあ、リリア」
「はい?」
「ちょっと、手合わせしてみないか?」
冒険者の一人が、訓練場の方を指さした。
「手合わせ、ですか?」
「ああ。どれくらい強いのか、ちょっと気になってな」
「いいですよ!」
私はすぐに頷いた。
模擬戦なら、師匠ともよくやっていた。
◆
ギルドの訓練場。
冒険者たちが周囲に集まり、私と対戦相手が向かい合う。
「よし、それじゃあ始めるぞ!」
相手は木剣を構えた。
私も木剣を持ち、軽く跳ねる。
いつでも動けるように、足をほぐしておく。
「準備はいいか?」
「はい!」
「それじゃ、始め!」
その瞬間。
私は一気に踏み込んだ。
相手の木剣を弾き飛ばし、喉元に木剣を突きつける。
「……え?」
相手は目を見開いた。
周囲も静まり返る。
「えっと……私の勝ち、ですか?」
「……あ、ああ」
相手は呆然としたまま頷いた。
「ま、待て待て!」
少しして、相手が声を上げた。
「今のは本気じゃないだろ!?」
「え?」
「もっと本気でやってみろよ!」
「本気……ですか?」
「そうだ! 今のじゃ全然分からん!」
周囲の冒険者たちも頷く。
「確かに、まだ余裕ありそうだったな」
「俺もやってみたい!」
「いや、次は俺だ!」
いつの間にか、訓練場は大盛り上がりになっていた。
◆
その後、模擬戦は何度も続いた。
一戦目と同じように、あっという間に勝負がつくこともあれば、少し長く続くこともあった。
「くっ、速い!」
「今の攻撃、どうやって避けたんだ!?」
「もう一回! もう一回頼む!」
挑戦者が増えるたび、周囲の冒険者たちも熱くなっていく。
「次は俺だ!」
「いや、俺が先だろ!」
「リリア、まだ大丈夫か?」
「はい! まだまだいけます!」
気づけば、訓練場のボルテージは最高潮。
見物人も増え、ギルド職員まで様子を見に来ていた。
「……あの子、何者なんですか?」
「さあ……」
受付嬢も、少し困った顔で笑っていた。
◆
「次は俺が相手をしよう」
そう言って前に出てきたのは、鉄の鎧を身につけた冒険者だった。
周囲の冒険者たちがざわつく。
「おっ、グレイグさんが出るのか!」
「さすがにあの人なら……」
「リリア、こいつはかなり強いぞ」
私は相手を見上げた。
「よろしくお願いします!」
「おう。俺も遠慮なくいかせてもらうぞ」
相手は木剣を構える。
私は少し考えた。
今までの模擬戦では、身体強化魔法を使っていなかった。
師匠との修行では、もっと強い相手と戦うこともあった。
「……じゃあ、少しだけ本気でやってみます!」
「おう、来い!」
私は身体強化魔法を発動した。
身体の内側から力が湧き上がる。
足元の感覚が鋭くなり、周囲の音がはっきりと聞こえる。
「……お?」
相手が少し驚いたように声を漏らした。
「その魔力……」
「それじゃ、始めます!」
私は一歩踏み込んだ。
その瞬間――
ドンッ!!
凄まじい衝撃が訓練場を駆け抜けた。
相手の鉄の鎧が大きく割れ、木剣が弾き飛ばされる。
さらに、衝撃波がそのまま訓練場の壁へと突き抜けた。
バキィィン!!
壁が大きく破損する。
「…………」
「…………」
訓練場が静まり返った。
私は壊れた壁を見つめる。
「……あ」
相手も、割れた鎧を見下ろしていた。
「……今の、何だ?」
周囲の冒険者たちも、口を開けたまま固まっている。
「鉄の鎧が……」
「半分になってるぞ……」
「壁まで壊れた……?」
私は木剣を下ろした。
「えっと……私の勝ち、ですか?」
「……ああ」
相手は呆然としたまま頷いた。
◆
「リリアさん!」
受付嬢が慌てて駆け寄ってきた。
「訓練場の壁が……!」
「ご、ごめんなさい!」
私はすぐに頭を下げた。
「修理費は……」
受付嬢が書類を確認する。
「こちらになります」
差し出された金額を見て、私は固まった。
「……え?」
「訓練場の壁の修理費です」
「……そんなにするんですか!?」
思わず声が出た。
冒険者になってから、依頼を受けて少しずつ貯めてきたお金。
まだDランクで、報酬もそれほど多くない。
「せっかく貯めたのに……」
私はしょんぼりした。
「……私のお金」
その様子を見て、周囲の冒険者たちが顔を見合わせた。
「……あれは、さすがに俺たちも悪いよな」
「本気出せって煽ったの、俺たちだし」
「リリアだけに払わせるのは違うだろ」
「よし、みんなで出そうぜ」
冒険者たちは受付嬢に声をかけ、こっそり修理費を集め始めた。
リリアに気づかれないように。
◆
「リリアさん、修理費の件ですが……」
受付嬢が私に声をかけた。
「はい……」
「冒険者の皆さんが、一部を負担してくださることになりました」
「えっ!?」
私は驚いて顔を上げた。
「いいんですか!?」
「はい。皆さんのご厚意です」
「……ありがとうございます!」
私は何度も頭を下げた。
「助かりました……!」
周囲の冒険者たちは、何事もなかったように笑っていた。
「気にすんな!」
「また手合わせしようぜ!」
「今度は壁を壊さない程度にな!」
「はい! 頑張ります!」
私は元気よく答えた。
……でも、今度はもう少し加減しないと。
◆
ギルドを出る頃には、すっかり夕方になっていた。
今日はいろんなことがあった。
たくさん質問されたし、模擬戦もたくさんした。
そして、訓練場の壁も壊してしまった。
「……でも、楽しかったな」
私は小さく呟いた。
師匠と二人で暮らしていた山では、こんなにたくさんの人と一緒に過ごすことはなかった。
みんなと話したり、一緒に戦ったりするのは、とても楽しい。
「また、手合わせしたいな!」
私は笑顔で歩き出した。
新しい出会いが、また一つ増えた。
そして、ギルドの冒険者たちの間では、リリアの名前が少しずつ広まっていく。
ただし、彼女の本当の実力を知る者は、まだ誰もいなかった。
今回も読んでいただきありがとうございます!
リリアの冒険はまだまだ続きます。
これからも彼女の旅を見守っていただけると嬉しいです!
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