第六話 森の奥に眠るもの
森の中で見つけた、初めてのダンジョン。
リリアの冒険は、少しずつ世界の奥へと広がっていきます。
街の外には、まだ見たことのないものがたくさんある。
そう思うだけで、リリアの足取りは自然と軽くなった。
「今日は採取依頼! いっぱい集めるぞー!」
ギルドで受けた依頼書を手に、街の門を抜ける。
依頼内容は、森に自生する薬草の採取。
必要な量はそれほど多くない。けれど、リリアは依頼書に書かれた薬草の名前を確認すると、嬉しそうに頷いた。
「師匠と山で暮らしてたときにも、似たようなの採ったことある!」
薬草の見分け方も、毒のある植物の特徴も、師匠に教わった。
もちろん、街の外で採取するのは初めてだけど。
「よーし、頑張るぞ!」
森へ入ったリリアは、さっそく薬草を探し始めた。
木々の間から差し込む光。
風に揺れる草花。
鳥のさえずり。
どれも山で見ていたものと似ているようで、少し違う。
「わあ……綺麗な花!」
採取の途中で見つけた小さな花に、リリアは思わず足を止めた。
師匠と暮らしていた山にも、たくさんの花が咲いていた。
けれど、ここにはここだけの景色がある。
それが嬉しくて、リリアはしばらく花を眺めていた。
「……あっ! 薬草!」
目的の植物を見つけると、丁寧に根を傷つけないよう採取する。
一つ、二つ、三つ。
必要な数を集め終わっても、リリアは森の探索を続けた。
「せっかくだし、もうちょっと見ていこうかな!」
そんなときだった。
森の奥に、ぽっかりと開いた洞窟が見えた。
「ん? あれは……」
入口の周囲には、奇妙な魔力が漂っている。
洞窟の奥からは、かすかに魔物の気配も感じられた。
「もしかして……ダンジョン?」
リリアは目を輝かせた。
冒険者ギルドで聞いたことがある。
ダンジョンは、龍脈に流れる魔力が一定以上に集まった場所に自然発生することがある。
洞窟や地下迷宮のような形で生まれるらしい。
「わあ! 本物のダンジョンだ!」
リリアは嬉しそうに入口を覗き込んだ。
依頼書に記載されていた危険度は、Dランク相当。
新米冒険者でも十分に注意すれば探索できる程度のものだ。
「ちょっとだけ見てみよう!」
そして、迷うことなく中へ入っていった。
◆
ダンジョンの内部は、石造りの通路になっていた。
壁に埋め込まれた魔石が、淡い光を放っている。
「わあ、明るい!」
リリアはきょろきょろと周囲を見回した。
そのとき、通路の奥から魔物が現れる。
大きな牙を持つ狼型の魔物。
普通の森にいるものより、身体が一回り大きい。
「おっ、魔物!」
魔物は唸り声を上げ、リリアへと飛びかかってきた。
けれど。
「えいっ!」
リリアが剣を一振りすると、魔物はその場に倒れた。
「……あれ?」
少し拍子抜けした。
もっと強い魔物が出てくると思っていたのに。
「まあ、先に進んでみよう!」
その後も魔物は次々と現れた。
巨大な角を持つ獣。
硬い甲殻に覆われた虫型の魔物。
身体から炎を噴き出す小型の魔物。
どれも通常の個体とは違い、強い魔力を感じる。
「なんだか、みんな強そう!」
リリアは楽しそうに剣を振るった。
魔物たちの攻撃を避け、時には魔法で足止めし、時には剣で一気に倒す。
まるで、師匠と山で鍛えていた頃のようだった。
「次はどんな魔物かな?」
そんな調子で、リリアはダンジョンの奥へと進んでいった。
◆
一方、その頃。
街の冒険者ギルドでは、職員がダンジョンに関する報告書を確認していた。
「……あれ?」
報告書に記された魔力反応の数値を見て、職員は眉をひそめる。
「このダンジョン、魔力が増えている?」
調査員から届いた情報によれば、周辺の龍脈に流れる魔力が増加しているらしい。
ダンジョンは龍脈から魔力を吸収して成長する。
そして、蓄えた魔力が一定量を超えると、内部の構造や魔物が変化することがある。
「まさか……進化しているのか?」
職員は慌てて、ダンジョンの危険度を再確認する。
以前の調査ではDランク相当。
しかし、現在の魔力反応はその数値を大きく超えていた。
「これは……Aランク相当の可能性があるぞ!」
ギルド内がざわつき始める。
すぐに調査隊を派遣するべきか。
それとも、周辺の冒険者に警告を出すべきか。
職員たちが対応を検討している、そのとき。
「すみませーん!」
受付に、見覚えのある少女がやってきた。
「採取依頼、終わりました!」
小柄な少女――リリアは、採取した薬草をカウンターに並べる。
「ええと……こちらが依頼分で、こっちは余った分です!」
「……リリアさん?」
職員は目を丸くした。
「はい!」
「あなた、どこで採取してきたんですか?」
「森の奥です! あと、ダンジョンにも入ってきました!」
「……え?」
職員の顔が固まる。
「ダンジョン?」
「はい! 魔物がいっぱい出てきて、楽しかったです!」
職員は慌てて報告書を確認した。
「そのダンジョン、今はAランク相当の危険度になっている可能性があるんです!」
「えっ?」
リリアは首を傾げた。
「でも、そんなに強くなかったですよ?」
「……え?」
「魔物もいっぱい出てきたけど、みんな倒せました!」
職員は言葉を失った。
Aランク相当のダンジョンを、たった一人で攻略してきた?
しかも、本人は採取依頼のついでに立ち寄っただけらしい。
「……リリアさん」
「はい?」
「ダンジョンの最奥まで行きましたか?」
「はい! 大きな魔物がいたので倒しました!」
「……ボスまで?」
「ボスだったんですか? あの魔物」
リリアは不思議そうに首を傾げた。
職員は頭を抱えた。
「すぐに調査隊を派遣します……!」
◆
その後、ギルドでは大騒ぎになった。
進化したダンジョンが、すでに攻略されていたのだ。
しかも、攻略した冒険者は登録したばかりの少女。
本人はというと。
「えへへ、ダンジョンって楽しいね!」
報酬を受け取りながら、満面の笑みを浮かべていた。
そして、ふとお腹を押さえる。
「……あっ、お腹すいた」
今日の夕食は、何にしよう。
街にはまだ、食べたことのない料理がたくさんある。
リリアの冒険は、まだまだ始まったばかりだった。
今回も読んでいただきありがとうございます!
リリアの冒険はまだ始まったばかり。
これからも彼女の旅を見守っていただけると嬉しいです!
よければ感想やブックマークで応援していただけると嬉しいです!




