第五話 街でのお買い物
初依頼の報酬を手に、街で買い物を楽しむリリア。
冒険者としての道具だけでなく、初めて可愛い服や小物も選びました。
次回は、再び冒険へ出かけます。
「……リリアさん、少しお話があるのですが」
冒険者ギルドの受付で、女性が私を呼び止めた。
「はい?」
「昨日の依頼についてです」
昨日。
薬草採集の依頼を受けて、森に行ったこと。
そして、採集の途中で魔物を倒したこと。
「……あの魔物の素材ですが、かなり貴重なものだったようです」
「そうなんですか?」
「はい。討伐報酬も含めて、かなりの金額になります」
そう言って、受付の女性は報酬の入った袋を差し出した。
「こちらが今回の報酬です」
「ありがとうございます!」
私は袋を受け取った。
中には、たくさんの金貨や銀貨が入っていた。
……すごい。
こんなにお金をもらえるなんて。
「リリアさん、これからも冒険者として活動していくんですよね?」
「はい!」
「それなら、装備や道具を揃えておくといいですよ。街には鍛冶屋や道具屋もありますから」
「……鍛冶屋!」
私は思わず目を輝かせた。
そういえば、街に降りてきたときに、剣を見てくれたドワーフのおじさんがいた。
あのお店に行ってみよう。
「行ってみます!」
私は受付の女性にお礼を言って、ギルドを出た。
***
鍛冶屋に着くと、金属を打つ音が聞こえてきた。
カンッ!
カンッ!
店の奥では、ドワーフのおじさんが作業をしていた。
「こんにちは!」
「おう、嬢ちゃんか」
おじさんは私を見ると、手を止めた。
「冒険者になったんだってな」
「はい! 昨日、登録しました!」
「そうか。そりゃよかった」
私は背負っていた剣を見せた。
「それで、今日はこの剣を見てもらいたくて」
おじさんは剣を受け取ると、じっと眺めた。
「……やっぱり、ただの剣じゃねえな」
「師匠からもらったんです」
「師匠?」
「はい。私に剣を教えてくれた人です」
おじさんは剣を確かめながら、少しだけ目を細めた。
「……大切にしなよ。こいつは、嬢ちゃんにとって特別な剣なんだろ?」
「はい!」
私は頷いた。
「とっても大切な剣です」
「なら、今のところ新しい武器はいらねえな」
「そうなんですか?」
「嬢ちゃんの剣を見れば分かる。今の武器を大事に使えばいい」
「分かりました!」
私は笑顔で答えた。
武器はもうある。
それなら、次は道具屋に行ってみよう。
***
道具屋には、冒険に使う道具がたくさん並んでいた。
薬草を入れる袋。
水筒。
ロープ。
ランタン。
見たことのない道具もあった。
「これ、何に使うんですか?」
「それは魔物避けの香だよ」
「へえ……!」
私は店主のおばさんに教えてもらいながら、必要な道具を選んだ。
それから、食料も買った。
パンに干し肉。
木の実。
水筒に入れる飲み水。
これで、次の冒険に出かける準備ができた。
……と思った。
***
街を歩いていると、女の子たちが楽しそうに話しているのが見えた。
みんな、可愛い服を着ていた。
綺麗な色のワンピース。
ふわふわしたスカート。
髪に飾ったリボン。
「……可愛い」
思わず呟いた。
山で暮らしていた頃、私は動きやすい服ばかり着ていた。
剣を振るうときに邪魔にならない服。
山を走っても破れない服。
だから、街の女の子たちが着ているような服は、あまり見たことがなかった。
「……私も、着てみたいな」
そう思って、近くにあった服屋さんに入った。
「いらっしゃい!」
店員さんが笑顔で出迎えてくれた。
「何かお探し?」
「えっと……可愛い服が欲しいです」
「可愛い服ね。じゃあ、こっちはどう?」
店員さんが、淡い色のワンピースを見せてくれた。
胸元には小さな飾りがついていて、裾には花の刺繍が施されている。
「わあ……!」
私は目を輝かせた。
「試着してみる?」
「はい!」
私はワンピースを受け取って、試着室に入った。
そして、着替えてみる。
……けれど。
「……あれ?」
袖が長い。
裾も長い。
ぶかぶかだった。
袖から手が出ない。
裾は床につきそう。
「……大きいです」
試着室から出ると、店員さんが私を見て固まった。
「……あら」
「……?」
店員さんは私の服を見て、少し困ったように笑った。
「ちょっと大きかったね」
「はい……」
「ごめんね。うちのお店、子供服はあまり置いてないのよ」
「……子供服?」
私は首を傾げた。
「私、成人してますよ?」
「えっ?」
店員さんが目を丸くした。
「十四歳です」
「……十四歳!?」
店員さんは驚いたあと、私をじっと見つめた。
それから、優しい顔になった。
「……そう。山で暮らしていたんだものね」
「はい?」
「大変だったでしょう?」
「……?」
何のことだろう。
私は首を傾げた。
店員さんは、私の袖を少し折ってくれた。
「ちょっと待ってね。こっちなら、もう少し小さいサイズがあるかもしれないから」
そう言って、別の服を持ってきてくれた。
今度は、淡い青色のワンピース。
星のような小さな刺繍が、裾に散りばめられていた。
「……わあ!」
私は思わず声を上げた。
「これ、可愛いです!」
「そうでしょう?」
私は試着してみた。
今度は、さっきよりも少しだけサイズが合っていた。
まだ少し大きいけれど、袖を折れば大丈夫。
「……どうですか?」
店員さんは、私を見て微笑んだ。
「よく似合ってるわ」
「本当ですか?」
「ええ」
私は嬉しくなった。
「これ、買います!」
「はいはい。じゃあ、包んであげるね」
***
服を買ったあと、私は小物のお店にも立ち寄った。
そこには、髪飾りやネックレス、ブレスレットなどが並んでいた。
「……あっ!」
その中に、星の形をした髪飾りがあった。
小さな銀色の星。
光を受けると、きらきらと輝いている。
私はそれを手に取った。
……綺麗。
師匠と一緒に見た、あの星空を思い出す。
あの日、空いっぱいに広がっていた星。
師匠は、あの星を見ながら言っていた。
『世界には、まだまだ美しいものがたくさんある』
私は髪飾りを見つめた。
「……これも、ください」
「はい。お嬢ちゃんに似合いそうだね」
私は嬉しくなって、髪飾りを受け取った。
これから旅をするとき、身につけていこう。
そう思った。
***
買い物を終えて、私は冒険者ギルドに戻った。
「お帰りなさい、リリアさん」
受付の女性が笑顔で出迎えてくれた。
「はい!」
「何か必要なものは揃いましたか?」
「はい! 服も買いました!」
私は嬉しそうに答えた。
「……服?」
受付の女性は、私の新しい服を見た。
それから、少しだけ微笑んだ。
「よく似合っていますね」
「ありがとうございます!」
私は笑顔でお礼を言った。
「ところで、リリアさん。次の依頼はどうしますか?」
「……次の依頼?」
受付の女性が依頼書を並べた。
その中に、森の奥にある素材を採集する依頼があった。
「これ、面白そうです!」
私は依頼書を手に取った。
「……また採集ですか?」
「はい!」
私は頷いた。
採集は楽しい。
知らない植物を見つけるのも、珍しい素材を集めるのも。
それに、森にはまだまだ見たことのないものがたくさんある。
「……次も、頑張ります!」
私は笑顔で言った。
冒険者としての生活は、まだ始まったばかり。
これから、どんな景色が見られるんだろう。
どんな人たちと出会えるんだろう。
私は胸を弾ませながら、次の冒険へ向けて準備を始めた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
次回もリリアの冒険をお楽しみに。
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