第四話 初めての依頼
初めての冒険者ギルド、登録試験、そして初依頼。
リリアは採集を楽しみながら、思いがけず強力な魔物まで倒してしまいました。
次はどんな出会いが待っているのでしょうか。
「ここが冒険者ギルドですか?」
私は目の前にある大きな建物を見上げた。
石造りの建物は、街の中でもひときわ立派だった。
入口には剣や杖を持った人たちが出入りしている。
あの人たちも冒険者なのかな。
「そうだよ。ここで冒険者の登録ができるんだ」
街の人に教えてもらい、私はギルドの扉を開けた。
「いらっしゃいませ!」
受付にいた女性が笑顔で出迎えてくれる。
「冒険者の登録をしたいんですけど……」
「はい。では、こちらへどうぞ」
私は受付へ向かった。
すると、受付の女性は私の姿を見て、少し困ったような顔をした。
「……ええと、お嬢さん?」
「はい?」
「冒険者登録をご希望ですか?」
「はい!」
「……ご両親はご一緒ではありませんか?」
「いませんけど……」
「そうですか……」
受付の女性は困ったように眉を下げた。
「申し訳ありません。冒険者は危険な仕事ですので、まだ小さなお子さんを登録するわけには……」
「……?」
私は首を傾げた。
「私、成人してますよ?」
「えっ?」
「十四歳です」
「……十四歳!?」
受付の女性が目を丸くした。
「この国では十四歳から成人ですよね?」
「そ、そうですが……」
「だから、冒険者になれます!」
私は胸を張った。
……ちょっとだけ。
受付の女性は私の顔をじっと見つめた。
それから、背負っている大きな剣を見て、もう一度私を見た。
「……本当に成人されているんですね」
「はい!」
「ええと……それでは、登録試験を受けていただきましょうか」
「登録試験?」
「はい。冒険者登録の際には、実力を確認する試験を受けていただきます」
受付の女性は説明を続けた。
「試験に合格できなかったからといって、登録できないわけではありません。試験の結果によって、最初の冒険者ランクを決めるためのものです」
「ランク……?」
「冒険者にはE、D、C、B、A、Sのランクがあります。初めて登録する方は、基本的にEランクかDランクからのスタートになります」
「なるほど……!」
「試験は魔力測定と模擬戦です。魔力測定では水晶に手をかざしていただきます。模擬戦では試験官と戦っていただきますが、相手を殺害することは禁止されています」
「分かりました!」
私は頷いた。
試験かぁ。
師匠との修行を思い出す。
あの頃は、毎日剣を振って、魔法の練習をして、山を走って……。
……うん。
きっと大丈夫。
***
「では、まず魔力測定を行います」
案内された部屋には、大きな水晶が置かれていた。
「この水晶に手をかざしてください」
私は言われた通り、水晶に手をかざした。
すると。
ふわっ。
水晶が淡く光り始めた。
「……?」
光は徐々に強くなっていく。
「えっ……?」
受付の女性が驚いた声を上げた。
水晶の中に、光が満ちていく。
そして、部屋全体が明るくなった。
「こ、これは……!」
試験官も目を見開いていた。
「……魔力の反応が、かなり強いですね」
「そうなんですか?」
私は首を傾げた。
「はい。これほどの反応は、なかなか見られません」
「へえ……」
師匠からは、魔法を使うときは魔力を無駄にしないように、と教わっていた。
だから、魔力が多いかどうかはあまり気にしていなかった。
「……では、次は模擬戦です」
試験官が少し気を引き締めた表情で言った。
「こちらへどうぞ」
***
模擬戦の場所は、ギルドの訓練場だった。
そこには何人かの冒険者が集まっていた。
「おい、あの子が試験を受けるのか?」
「子供じゃないか……」
「大丈夫なのか?」
そんな声が聞こえてくる。
私は少しだけ不思議に思った。
……十四歳って、そんなに小さいのかな?
「では、試験を始めます」
試験官が木剣を構えた。
「いつでも来てください」
「はい!」
私は剣を抜いた。
師匠からもらった剣は、試験用の木剣よりずっと大きく、重い。
でも、私にはいつもの剣だった。
「……始め!」
試験官が踏み込んできた。
私はその動きを見て、少しだけ身体をずらした。
剣が空を切る。
その瞬間、私は試験官の懐へ入った。
「……っ!?」
試験官が驚く。
私は剣を振る。
試験官の木剣が弾き飛ばされた。
「そこまで!」
試験官の声が響いた。
……あれ?
もう終わり?
「……すごいな」
試験官は弾き飛ばされた木剣を拾いながら、私を見つめていた。
「剣技も身体能力も、かなり高い。魔法も使えるのか?」
「はい!」
「……なるほど」
試験官は少し考えてから、受付の女性に向き直った。
「初期ランクはDでいいだろう」
「……Dランクですか?」
受付の女性が驚いた。
「はい。新規登録者としては、十分な実力です」
「分かりました」
私は二人の会話を聞いて、嬉しくなった。
「これで冒険者になれますか?」
「はい。リリアさん、あなたは今日から冒険者です」
「やった!」
私は思わず笑顔になった。
冒険者。
ついに、なれたんだ。
***
「では、初めての依頼を選んでみましょう」
受付の女性が依頼書を並べた。
「最初は採集依頼がおすすめです。危険が少なく、冒険者としての活動にも慣れやすいですから」
「……採集?」
私は依頼書を見た。
薬草採集。
素材採集。
森の果実の収集。
……戦う依頼はないのかな?
「討伐依頼は、まだ受けられないんですか?」
「Dランクですから、受けられるものもあります。ただ、初めての依頼ですし、まずは採集から始めてみてはいかがでしょう?」
「……分かりました」
少しだけ残念だった。
せっかく冒険者になったのに、まだ戦えない。
でも。
「採集も、楽しそうですね!」
私は依頼書を手に取った。
***
森に入ると、いろいろな植物が生えていた。
「これは……?」
見たことのない草。
綺麗な花。
小さな実。
「わあ……!」
私は夢中になって採集を始めた。
依頼に必要な薬草を見つける。
それを採集する。
すると、近くに別の薬草があった。
「これも採れるのかな?」
依頼書を確認する。
……対象の薬草だ。
「じゃあ、これも!」
私は採集した。
さらに歩いていくと、珍しい植物が見つかった。
「これは……すごい!」
依頼書には載っていないけれど、見た目からして珍しい。
「持って帰ったら、喜んでもらえるかな?」
私は採集した。
その後も、見たことのない素材を見つけるたびに、採集を続けた。
気づけば、籠はいっぱいになっていた。
「……あれ?」
依頼に必要な数は、もうとっくに集まっている。
でも、まだ珍しい植物が残っている。
……もう少しだけ。
そう思って、私は採集を続けた。
***
「……あっ!」
森の奥で、突然大きな音がした。
振り向くと、巨大な魔物が立っていた。
鋭い爪。
大きな牙。
全身を覆う硬い毛皮。
「……わあ!」
私は思わず目を輝かせた。
初めて見る魔物だった。
魔物は私を見ると、低い唸り声を上げた。
「……もしかして、怒ってます?」
魔物が飛びかかってきた。
私は剣を抜く。
一瞬。
剣を振る。
魔物は地面に倒れた。
「……?」
あれ?
もう終わり?
私は魔物を見下ろした。
「……強そうだったのに」
少しだけ残念だった。
でも、魔物の素材は採集できる。
「これも持って帰ろう!」
私は魔物の素材を採集し、籠に入れた。
その後も、森の中を歩いて採集を続けた。
***
「ただいま戻りました!」
ギルドに戻ると、受付の女性が笑顔で出迎えてくれた。
「お帰りなさい。依頼は達成できましたか?」
「はい!」
私は籠を受付に置いた。
「……え?」
受付の女性が籠を見た。
「……これは?」
「採集したものです!」
「……ええと」
受付の女性は依頼書を確認した。
「リリアさん、今回の依頼は薬草を十本採集するだけだったのですが……」
「はい!」
「……これは、十本どころではありませんよね?」
「えっと……楽しくて、つい」
私は少しだけ恥ずかしくなった。
「……それに、この素材は?」
受付の女性が魔物の素材を指差した。
「ああ、森にいた魔物を倒したら、落としました!」
「……倒した?」
「はい!」
「……どんな魔物ですか?」
私は魔物の素材を見せた。
受付の女性の顔が、みるみる青ざめていく。
「……これ、上位冒険者でも苦戦する危険種じゃないですか!?」
「そうなんですか?」
私は首を傾げた。
「採集の邪魔だったので、倒しちゃいました」
「……」
受付の女性は言葉を失った。
周囲の冒険者たちも、私の籠を見てざわざわし始めた。
「おい、あの子……」
「初依頼であれを倒したのか?」
「しかも採集品の量……」
私は不思議に思いながら、受付の女性を見た。
「……あの、依頼は達成できましたか?」
「……はい。達成です」
受付の女性は、なんとか笑顔を作った。
「採集報酬に加えて、討伐報酬もお支払いしますね」
「ありがとうございます!」
私は嬉しくなった。
これで、また美味しいものが食べられるかもしれない。
「……冒険者って、楽しいですね!」
私は笑顔で言った。
ギルドの中では、まだ冒険者たちがざわついていた。
けれど、私はそんなことを気にせず、次の依頼書を眺めていた。
……次は、どんな冒険が待っているんだろう?
私は胸を弾ませながら、依頼書を手に取った。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
次回もリリアの冒険をお楽しみに。
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