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星追いの少女、世界を旅して無双する  作者: 宵月
冒険者ギルドとベテラン
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第三十二話 迫りくる絶望


宵月「今回は、ついに龍との本格的な戦闘です!」


リリア「うん! アリシアさんと力を合わせて頑張るよ!」


宵月「最初はいい感じに戦えているようですが……?」


リリア「えっ?」


宵月「相手も、ただ黙って攻撃を受けているわけではないみたいですね」


リリア「……なんだか嫌な予感がする」


宵月「そして、街にも異変が伝わって……?」


リリア「ええっ!? どうなっちゃうの!?」


宵月「それでは、第32話をどうぞ!」



 ギィィ……。


 ゆっくりと扉を開けたリリアとアリシア。


 その先に広がっていた光景は


 焼け焦げた冒険者たちの遺体。

 そして、その奥に佇む巨大な龍。


「…………」


「…………」


 バタンッ!


 二人は無言で扉を閉めた。


「……ねえ、アリシアさん」


「……はい」


「見間違いじゃないよね?」


「……見間違いであってほしいです」


「だよね……」


 二人はしばらく扉の前で固まっていた。


 しかし、いつまでもこうしているわけにはいかない。


「……もう一度、確認しましょう」


「うん……」


 リリアは恐る恐る扉に手をかける。


 ギィィ……。


 扉が開いた、その瞬間だった。


 龍の喉元が赤く輝く。


「――っ!」


「リリア様!!」


 直後、龍の口から凄まじい炎が放たれた。


「《魔法障壁》!!」


 リリアは咄嗟に魔力を練り上げ、二人の前に巨大な障壁を展開する。


 ゴォォォォォッ!!


 轟音とともに炎が障壁へと激突した。


「くっ……!」


 凄まじい熱量が周囲を包み込む。


 だが、それ以上に厄介だったのは、炎に混じった黒い魔力だった。


 障壁の表面が黒く染まり、少しずつ崩れていく。


「なっ……! 防御魔法が腐食されている!?」


「そんな……! 魔力を注いでも、壊されちゃう!」


 炎が収まった頃には、障壁の一部が消失していた。


 リリアは残った障壁を解除し、龍を見据える。


「……いきなりすごい攻撃だったね」


「油断できません。リリア様、私が前に出ます」


「うん。私も援護するね!」


 アリシアが剣を構え、龍との距離を詰める。


 リリアもその後ろから魔法を放った。


 《炎弾》!


 複数の火球が龍へと飛んでいく。


 龍は身体を少し傾けて回避するが、避けきれなかった一発が翼に直撃した。


 続けてアリシアが踏み込み、剣を振るう。


 ガキィンッ!


 硬い鱗に刃が弾かれる。


「硬いですね……!」


「なら、こっち!」


 リリアは地面を蹴り、龍の頭部へと跳び上がった。


 狙うのは目。


 しかし――。


 バサァッ!!


「きゃっ!」


 龍の翼が大きく羽ばたく。


 発生した強風に押し戻され、リリアの身体が空中で大きく流された。


 なんとか体勢を立て直して着地する。


「うーん……。顔に近づくのは難しいね」


「翼の風が厄介ですね。近づこうとするだけで押し返されます」


「じゃあ、翼を狙おう!」


 リリアは再び魔法を放つ。


 今度は翼の付け根を狙った。


 炎が直撃し、鱗の一部が剥がれる。


 だが、龍の身体から魔力が流れ込むと、傷ついた翼がみるみるうちに修復されていった。


「……回復魔法まで使えるんだ」


「厄介ですね……」


 それでも、二人は攻撃を続けた。


 リリアの魔法で龍の動きを制限し、アリシアが隙を見て斬り込む。


 連携は悪くない。


 龍の攻撃も何度か回避できている。


 このまま攻め続ければ、勝機はあるかもしれない。


 ――そう思った。


 しかし。


 龍の動きが、少しずつ変わり始めていた。


 リリアが魔法を放つ直前に身体を動かす。


 アリシアが踏み込む方向へ、先回りするように尻尾を振るう。


「っ!」


 アリシアは剣で受け止めるが、衝撃に押し戻される。


「アリシアさん!」


「問題ありません!」


 龍は二人を見つめていた。


 まるで、二人の動きを観察しているかのように。


 そして、再び翼を広げる。


 先ほどと同じ強風。


 だが、今度は風の向きが変わった。


「えっ!?」


 リリアの放った魔法が風に流され、狙いから大きく外れる。


 その隙を突くように、龍の尻尾が迫った。


「リリア様!」


 アリシアが割って入り、剣で受け止める。


 ドォンッ!!


 凄まじい衝撃。


 アリシアの身体が後方へと弾き飛ばされた。


「アリシアさん!」


「……っ、大丈夫です!」


 アリシアはすぐに立ち上がる。


 しかし、先ほどまでとは明らかに違う。


 二人の攻撃が、通用しなくなり始めていた。


「……どうして?」


 リリアは龍を見つめる。


 こちらの攻撃を覚えている?


 そんな考えが頭をよぎった。


 そのとき。


 龍がゆっくりと顔を上げた。


「……?」


 次の瞬間。


 龍の身体から、膨大な魔力が溢れ出した。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


 黒い魔力が立ち上り、部屋全体を覆い尽くす。


 地面が揺れ、空気が重くなる。


「――っ!?」


 リリアは思わず息を呑んだ。


 今まで、ほとんど感じられなかった魔力。


 それが今、目の前で膨れ上がっている。


「な、何……この魔力量……」


 アリシアも剣を構え直す。


「リリア様……。これは……」


 龍の瞳が二人を捉えた。


 その視線には、先ほどまでの観察するような雰囲気はない。


 まるで、目の前の獲物を仕留めると決めたかのようだった。


     ◇


 その頃、グランベルの冒険者ギルド。


「――っ!?」


 突然、街の空気が変わった。


 ギルドにいた冒険者たちが、一斉に顔を上げる。


「な、なんだ今の魔力……!」


「どこからだ!?」


 建物の外でも人々が足を止め、異常な魔力の発生源を探していた。


 そして、一人の冒険者が気づく。


「待て……。あの方向って……」


「どうした?」


「あっちには、リリアたちが行ったダンジョンがあるぞ!」


「なにっ!?」


 その言葉を聞いた瞬間。


 ギルドの奥で椅子に座っていたグレイヴが立ち上がった。


「…………」


 先ほどまでの気だるそうな雰囲気はない。


 鋭い目でダンジョンのある方向を睨みつける。


「……チッ!」


 グレイヴは武器を手に取った。


「お、おい、グレイヴ!?」


「どこに行くんだ!?」


「決まってんだろうが!」


 そう言い残し、グレイヴはギルドを飛び出した。


 普段は面倒そうに歩いている男が、今は全力で走っている。


「グレイヴが走ってるぞ……!」


「嘘だろ……あいつが!?」


 周囲の声など聞こえていない。


 グレイヴの頭に浮かんでいたのは、二人の姿だった。


「だから言っただろうが……!」


 忠告を聞かなかったことへの怒りはある。


 だが、今はそれどころではない。


 また、仲間を失うわけにはいかない。


「間に合え……!」


 グレイヴはさらに速度を上げた。


     ◇


 ダンジョン最奥。


 リリアとアリシアは、龍を前にしていた。


 先ほどまでとは違う。


 龍の魔力が、肌に突き刺さるように感じられる。


「……アリシアさん」


「はい」


「これ、ちょっとまずいかも……」


「……ええ」


 リリアは剣を握り直す。


 勝てると思っていた。


 けれど、今は違う。


 目の前の存在は、自分たちが想像していたよりもずっと強い。


 そして、ここはダンジョンの最奥。


 逃げ道などない。


 龍が大きく口を開く。


 喉元に、これまでとは比べものにならないほどの魔力が集まっていく。


「……っ!」


 リリアは防御魔法を展開しようとする。


 だが、先ほどのブレスを思い出す。


 炎と闇。


 魔法障壁すら腐食する、あの攻撃。


 今度は、それを上回る魔力が込められている。


「リリア様、私の後ろへ!」


 アリシアが前に出る。


「でも……!」


「早く!」


 龍の口元が、眩いほどの赤と黒に染まった。


 次の瞬間。


 轟音とともに、巨大なブレスが放たれた。


 ゴォォォォォォォッ!!


 視界を埋め尽くす炎。


 逃げ場はない。


 防ぎきれるとも思えない。


 リリアの身体が強張った。


「……あ」


 怖い。


 初めて、心の底からそう思った。


 師匠と過ごした山での日々が、頭をよぎる。


 もう会えない師匠。


 あのときのように、誰かに助けを求めることもできない。


「……師匠」


 リリアは、ぎゅっと目を閉じた。


 ――そのとき。


 視界の端に、かすかな光が走った。


 青白い雷光。


 それは、迫りくる炎の中に一筋の線を描くように現れた。


 そして――。


 バリィィィンッ!!


 何かが、龍のブレスを切り裂いた。



アリシア「……あの龍、想像以上の相手でしたね」


アリシア「リリア様と連携しても、徐々に対応されてしまいました」


アリシア「それに、最後のブレス……。あれを正面から受けるわけにはいきません」


アリシア「ですが、最後に見えたあの雷光は……?」


アリシア「次回、どうか無事に切り抜けられますように」


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