第三十一話 静寂のダンジョン
宵月「今回はついにダンジョン探索! 三階層のダンジョンに挑むリリアたちですが……?」
リリア「ダンジョン! 冒険って感じがしてわくわくするね!」
宵月「そうだね。でも、今回のダンジョンには少し不穏な噂があって……」
リリア「大丈夫! アリシアさんも一緒だし!」
宵月「その自信はどこから来るんだ……」
リリア「えへへ!」
宵月「それでは、第31話をどうぞ!」
街を出てしばらく歩いた先。
リリアとアリシアは、目的のダンジョンへとたどり着いていた。
「ここが今回のダンジョン……」
目の前には、岩肌にぽっかりと開いた大きな入口がある。
周囲には木々が生い茂り、人の往来もない。入口の周辺には、かつて冒険者が調査に訪れた痕跡がわずかに残っていた。
「思ったより普通の入口ですね」
「うん。もっと大きな建物みたいなのを想像してた」
「ダンジョンの形状は様々ですからね。自然の洞窟のようなものもあれば、人工物のような構造を持つものもあります」
「へぇー!」
リリアは興味深そうに入口を覗き込んだ。
「それでは、入りましょうか」
「うん!」
二人は警戒を怠らず、ダンジョンの中へと足を踏み入れた。
◇
内部は薄暗く、壁や天井には淡く光る鉱石が点在していた。
その光のおかげで、視界を確保することはできる。
「綺麗ですね……」
「本当だね。洞窟の中なのに明るい!」
リリアが壁の鉱石に目を向けていると、前方から小さな物音が聞こえた。
「リリア様」
「うん。分かってる」
二人はすぐに警戒態勢を取る。
物陰から現れたのは、数体の低級モンスターだった。
受付嬢が説明していた、入口付近で確認されたものと同じ種類だろう。
「まずはこいつらですね」
「任せて!」
リリアは剣を抜き、モンスターたちへと向かう。
数は多くない。二人が連携すれば、危なげなく対処できる相手だった。
ほどなくして、モンスターたちは全て倒された。
「これなら、確かに低ランクのダンジョンって感じだね」
「ええ。ですが、油断は禁物です」
「分かってるよ!」
二人は再び奥へと進んでいった。
◇
しばらく進むと、広い空間に出た。
その奥には、重厚な扉が一つ。
「もしかして、ここがボス部屋かな?」
「おそらく。ダンジョンの構造としては珍しくありません」
アリシアが扉を確認する。
ダンジョンには様々な構造があるが、階層ごとにボス部屋が設けられているものも存在する。
その場合、ボスを倒すことで次の階層へ続く道が開かれる。
「それじゃあ、行こう!」
「はい。お気をつけください」
二人は扉を開いた。
中にいたのは、これまでに遭遇したモンスターより一回り大きな魔物だった。
しかし、特別な強さを感じるわけではない。
「いきます!」
アリシアが先に踏み込み、魔物の注意を引く。
その隙を突いて、リリアが一気に距離を詰めた。
数度の攻防の後、魔物は床に倒れ伏した。
「終わったね!」
「はい。思ったよりも早く片付きましたね」
すると、部屋の奥から低い音が響いた。
ゴゴゴゴゴ……。
「わっ、何の音?」
壁の一部が動き、床に階段が現れる。
「これが次の階層へ続く道ですね」
「すごい! 本当に出てきた!」
リリアは目を輝かせながら階段を覗き込んだ。
◇
第二階層。
第一階層と同じように、壁には淡い光を放つ鉱石が埋め込まれていた。
しかし、進んでいくうちにリリアは少しだけ違和感を覚えた。
「……ねえ、アリシアさん」
「どうしましたか?」
「ここ、静かすぎない?」
確かに、先ほどからモンスターの姿が少ない。
何度か遭遇はしたものの、数はわずかだった。
「確かに、不自然ですね」
「モンスターが少ないダンジョンなのかな?」
「その可能性もありますが……」
アリシアは周囲を見渡す。
少なくとも、冒険者が何組も失踪するような場所には見えなかった。
それがかえって不気味だった。
「気を引き締めて進みましょう」
「うん!」
二人は慎重に奥へと進む。
やがて、第一階層と同じように大きな扉が現れた。
「ここもボス部屋みたいだね」
「ええ」
扉を開くと、そこには第二階層のボスと思われる魔物が待ち構えていた。
第一階層のボスよりも体格が大きく、力も強そうだ。
だが、二人にとっては十分に対処できる相手だった。
「リリア様、援護します!」
「ありがとう!」
アリシアが魔物の攻撃を受け流し、リリアが隙を突く。
連携は見事に噛み合い、戦闘は長引くことなく決着した。
そして、再び地響きが鳴り響く。
ゴゴゴゴゴ……。
床に階段が現れた。
「これで最後の階層かな?」
「おそらく。下に魔力を感じないので三階層のダンジョンかと」
「じゃあ、あと少しだね!」
リリアは階段を下りていく。
アリシアもその後に続いた。
◇
第三階層。
そこは、これまでの階層よりも広く、天井も高い空間だった。
壁に埋め込まれた鉱石の光は弱く、辺りには薄暗さが広がっている。
「……ここが最後の階層」
リリアが小さく呟いた。
そして、二人は奥へと進んでいく。
その途中、アリシアがふと足を止めた。
「リリア様」
「どうしたの?」
「こちらを見てください」
壁の隅に、何かが落ちていた。
拾い上げてみると、それは冒険者が使う道具の一部だった。
「これって……」
「冒険者の持ち物でしょうね」
アリシアは周囲を注意深く確認する。
しかし、他に人の姿はない。
ここまで進んできた道にも、冒険者の姿や遺体は一切なかった。
「やっぱり、ここに来た人たちのものなのかな……」
「その可能性は高いでしょう」
アリシアは道具を丁寧に置き直した。
それから二人は、さらに奥へと進んでいく。
やがて、巨大な扉が姿を現した。
今までのボス部屋とは比べものにならないほど大きい。
「……ここが、最後の部屋ですね」
「うん」
二人は扉の前に立った。
すると、リリアがわずかに眉を寄せる。
「……何か、焦げ臭くない?」
「確かに……」
扉の隙間から、微かに焦げたような臭いが漂っている。
アリシアは剣に手をかけ、慎重に扉を押し開いた。
ギィィ……。
重い音とともに、扉がゆっくりと開いていく。
その先に広がっていた光景を見て、二人は言葉を失った。
「……っ」
「これは……」
広大な部屋の隅。
そこには、いくつもの冒険者の装備が散乱していた。
そして、その周囲には黒く焼け焦げた遺体がいくつも残されている。
全て、このダンジョンに入ったまま戻らなかった冒険者たちのものだろう。
途中の階層では、遺体どころか争った痕跡すら見当たらなかった。
彼らはここまでたどり着き、そして――。
「……リリア様、警戒してください」
アリシアの声が低くなる。
部屋の奥。
そこには、巨大な何かがいた。
暗がりの中で、ゆっくりとこちらを向く。
その姿は、まさしく龍だった。
しかし、その魔力は不自然なほど静かだった。
目の前にいるのが龍であるにもかかわらず、リリアたちはその真の力を感じ取ることができない。
龍は二人を見つめていた。
まるで、観察するかのように。
そして、ゆっくりとその口を開いた。
――新たな獲物が来た、とでも言うように。
アリシア「今回はダンジョンの探索でしたね」
「リリア様と一緒に進める冒険は、私にとっても楽しいものです」
「ですが、あのダンジョンにはまだ何か秘密がありそうですね……」
「次回もリリア様をお守りします」
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