第三十話 不穏な依頼
今回は新たなダンジョン調査依頼です!
一見すると低ランクのダンジョンですが、そこにはいくつもの不審な点がありました。
そして、普段はぶっきらぼうなグレイヴも、何かを感じ取っているようで……?
グランベルの冒険者ギルド。
リリアとアリシアは、掲示板に貼られた依頼書を眺めていた。
「うーん……次はどれにしようかな」
「リリア様、こちらはいかがでしょうか」
アリシアが一枚の依頼書を指差す。
そこには、ダンジョンの調査依頼と書かれていた。
「ダンジョンの調査?」
「はい。比較的低ランクに分類されているダンジョンのようです」
「へぇ、ダンジョンかぁ!」
リリアの目が輝く。
これまでにも様々な場所を旅してきたが、ダンジョンの探索はまだ経験が少ない。
「面白そう! これにしよう!」
「ふふ、そうですね。ですが、まずは詳しい内容を確認しましょう」
二人は依頼書を持って受付へと向かった。
「こちらの依頼を受けたいのですが」
「はい、確認いたしますね」
受付嬢は依頼書を受け取り、内容を確認する。
しかし、すぐに手続きを始めることはなかった。
「……こちらのダンジョンについてですが、少々お話ししておきたいことがあります」
「何かあるんですか?」
「実は、このダンジョンの調査に向かった冒険者が、何組か行方不明になっているんです」
「行方不明……?」
リリアが首を傾げる。
「はい。これまで調査に向かった冒険者は、誰一人として帰還していません」
受付嬢の表情は真剣だった。
「そのため、ダンジョン内部の詳しい情報はほとんどありません。確認できているのは、入口付近に低級のモンスターが出現していたという報告くらいですね」
「低級のモンスター、ですか」
「ええ。最初に調査へ向かった冒険者が、入口付近で確認したものです。それ以外の情報は、残念ながらありません」
つまり、内部にどのようなモンスターがいるのか、どれほど深い構造なのか、何が原因で冒険者が戻ってこないのか。
その全てが分かっていないということだ。
「ギルドでも魔力の調査を行ったのですが、確認された反応は低ランク相当でした。そのため、現時点では低ランクのダンジョンとして扱われています」
「それなのに、冒険者が戻ってこないんですね……」
「はい。原因が分からない以上、安全とは言えません。無理に受ける必要はありませんよ」
受付嬢がそう説明した、その時だった。
「やめとけ」
背後から低い声が響いた。
二人が振り返ると、そこには腕を組んだグレイヴが立っていた。
「グレイヴさん?」
「……嫌な予感がする」
いつもの不機嫌そうな顔。
しかし、その声音には普段とは違う何かがあった。
「ですが、魔力の調査では低ランク相当と聞きました」
「魔力の調査が正しいとは限らねぇだろ」
「それは……そうですが」
「失踪者が出てるんだ。わざわざ首を突っ込む必要はねぇ」
グレイヴは依頼書を一瞥し、吐き捨てるように言った。
その様子を見ていた周囲の冒険者たちが、面白そうに口を挟む。
「おいおい、グレイヴ。新人に仕事を取られたくないのか?」
「まさか、自分で受けるつもりだったんじゃないだろうな?」
「はっ、そんなわけあるか」
グレイヴは面倒くさそうに返す。
「だったらいいじゃねぇか。本人たちが受けたいって言ってるんだ」
「そうそう。お前が止めることじゃないだろ」
「……勝手にしろ」
グレイヴはそれ以上何も言わず、二人から視線を外した。
アリシアは少しだけ考え込む。
「リリア様、どうなさいますか?」
「うーん……」
リリアは依頼書に目を落とした。
確かに、冒険者が戻ってこないというのは気になる。
しかし、魔力の調査では低ランク相当。入口付近で確認されたモンスターも低級のものだけ。
何より、原因が分からないのなら、調査する必要があるのではないだろうか。
「……やっぱり、行ってみたい」
「承知しました。私も同行いたします」
「ありがとうございます、アリシアさん!」
二人の意思を確認した受付嬢は、少し心配そうな顔をしながらも手続きを進めた。
「分かりました。ただし、少しでも異常を感じたら、すぐに撤退してくださいね」
「はい!」
こうして、二人は依頼を受けることになった。
ギルドを出る直前、リリアはふと振り返る。
グレイヴはまだ、先ほどと同じ場所に立っていた。
こちらを見ているわけではない。
ただ、何かを考えるように黙り込んでいた。
その視線に気づくことなく、リリアとアリシアは街の外へと歩き出した。
――その背中を、グレイヴは黙って見送っていた。
今回はダンジョン編の導入回でした!
失踪者が出ているにもかかわらず、低ランクと判定されている不思議なダンジョン。
グレイヴも何か嫌な予感を感じているようです。
果たして、二人を待ち受けているものとは……?
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