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星追いの少女、世界を旅して無双する  作者: 宵月
星を失った騎士と、星を追う少女
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22/26

第二十二話 過去を繋ぐ宝石

今回も読んでいただきありがとうございます!


宵月「今回は、アリシアがエレノア様との思い出を胸に、新しい一歩を踏み出すお話です。」


リリア「宴もありますよ! 美味しいお料理がいっぱいです!」


宵月「……リリアは、そっちが楽しみなんだね」


リリア「はい!」


宵月「まあ、リリアらしいですね」


リリア「えへへ!」


宵月「それでは、今回のお話もよろしくお願いします!」


# 第22話 過去を繋ぐ宝石


 街を襲った魔物たちが去り、数日が経った。


 街には、少しずついつもの日常が戻ってきていた。


 壊れた建物の修理も進み、冒険者たちも依頼を再開している。


 そして、今日。


「リリアちゃん! アリシアさん! こっちだよ!」


 街の広場に、明るい声が響いた。


 振り向くと、グレイヴさんが大きく手を振っていた。


「グレイヴさん?」


「今日は街を守ったお祝いだ! みんなで宴を開くことになったんだよ!」


「宴……?」


「そうだ。冒険者も街の人も、みんな参加する。お前たちも来い!」


「わあ! 楽しそう!」


 私は思わず声を上げた。


 アリシアさんも、隣で小さく頷く。


「……そうだな。せっかくだし、参加させてもらおう」


「よし! 決まりだな!」


 グレイヴさんは満足そうに笑った。


 ◆


 夕方。


 広場には、たくさんの料理が並んでいた。


 焼きたてのパン。


 香ばしい匂いのする野菜。


 大きな鍋に入ったスープ。


 そして――。


「……わあ!」


 私の目に飛び込んできたのは、巨大な骨付き肉だった。


 魔獣のものらしい。


 太い骨に、こんがりと焼かれた大きなお肉。


 表面には香辛料がまぶされ、焼き色がついている。


 その周りには、肉汁を吸った野菜が並べられていた。


「これ、すごく大きいですね!」


「街を襲った魔獣の肉だよ。食べられる部分を使って、みんなで焼いたんだ」


 料理を担当した人が、嬉しそうに教えてくれた。


「魔獣のお肉って、こんなに大きいんですね!」


「ははっ。あの魔獣は特に大きかったからな!」


 私は骨付き肉をじっと見つめた。


 ……美味しそう。


「リリア。食べるか?」


 アリシアさんが尋ねる。


「はい! 食べたいです!」


 私は元気よく頷いた。


 ◆


「いただきます!」


 切り分けてもらった大きな骨付き肉を受け取る。


 表面はこんがりと焼かれていて、香ばしい匂いがする。


 ナイフを入れると、柔らかいお肉が切れた。


「……!」


 口に運ぶ。


 じゅわっ。


 肉汁が広がった。


 魔獣のお肉は、普通の獣のお肉よりも味が濃い。


 噛むたびに旨味が溢れてくる。


 香辛料の香りもよく合っていて、とても美味しい。


「……おいしい!」


「そうか。よかったな」


 アリシアさんは、私の様子を見て微笑んだ。


 アリシアさんのお皿にも、骨付き肉がある。


 アリシアさんは少しだけ肉を切り、口へ運んだ。


「……美味しいな」


「ですよね!」


 私は嬉しくなって、もう一口食べた。


 広場では、冒険者たちが笑い合っている。


 街の人たちも、楽しそうに料理を囲んでいた。


 あの日、魔物に襲われた街。


 けれど今は、みんな笑っている。


 誰かが料理を作り、誰かがそれを食べる。


 誰かが笑い、誰かがその笑顔を見て笑う。


 そんな光景が、私は好きだった。


「……アリシアさん」


「ん?」


「みんな、楽しそうですね」


「……ああ」


 アリシアさんは広場を見渡した。


 その表情は、少しだけ穏やかだった。


「こうして、みんなが笑っていられるのは……」


 そこで、言葉が止まる。


 アリシアさんは、そっと目を伏せた。


 私は何も言わず、隣にいた。


 ◆


 宴は夜遅くまで続いた。


 やがて、広場の人も少しずつ減っていく。


 私はお腹いっぱいになって、アリシアさんと街の宿へ戻った。


「……今日は楽しかったですね!」


「ああ。そうだな」


 アリシアさんはそう答えた。


 けれど、その声は少しだけ静かだった。


 私は、ふと彼女の首元に目を向けた。


 そこには、何もない。


 以前、崖の近くで見つけたとき。


 アリシアさんは、小さなアクセサリーを握りしめていた。


 エレノアさんが身につけていた、大切なもの。


 今も、持っているのだろうか。


「……アリシアさん」


「どうした?」


「エレノアさんのアクセサリー……」


 アリシアさんは、少しだけ目を見開いた。


 そして、ゆっくりと懐から小さな包みを取り出した。


「……これか」


 包みを開く。


 中にあったのは、あの日と同じアクセサリー。


 けれど、宝石は傷ついていた。


 アリシアさんは、それを静かに見つめていた。


「……もう、元の形には戻せない」


「……」


「だが、宝石は残っている」


 アリシアさんは、そっと宝石に触れた。


「これを……新しく作り直そうと思う」


「新しく?」


「ああ」


 アリシアさんは、少しだけ顔を上げた。


「この宝石を、首飾りにしたい」


 私は頷いた。


「……いいと思います」


 アリシアさんは、私を見た。


 それから。


「……そうか」


 小さく呟いた。


 翌日。


 私たちは、街の装飾品を扱う店を訪れた。


 店主は、アリシアさんが持ってきた宝石を丁寧に確認する。


「なるほど……。この宝石を使って、新しい首飾りを作りたいんですね」


「ああ」


「どんな形にしましょうか?」


 アリシアさんは、少し考えた。


「……首に身につけるものがいい」


「チョーカーでしょうか?」


「……ああ。それで頼む」


 店主は頷いた。


「分かりました。宝石を中心に、シンプルなデザインにしましょう」


 私は、店主が手に取った宝石を覗き込んだ。


 暗い色の石。


 けれど、光が当たると、その奥に青い輝きが浮かび上がる。


「……わあ。綺麗ですね」


「ラブラドライトという石ですよ」


 店主が教えてくれた。


「光の当たり方によって、様々な色が見えるんです。」


「きれい…」


 私は呟いた。


 アリシアさんは、宝石を見つめている。


 その表情は、どこか寂しそうだった。


 「……アリシアさん?」


「いや……」


 彼女は首を横に振った。


「何でもない」


 そう言って、宝石に手を伸ばす。


 指先が、そっと石に触れた。


「……作ってくれ」


 店主が頷く。


「かしこまりました」


 私は、アリシアさんの横顔を見つめた。


 彼女が何を思っているのか。


 私には、まだ分からない。


 けれど。


 その小さな宝石には、きっと大切な想いが込められている。


 ◆


 数日後。


 完成したチョーカーを受け取りに、私たちは再び店を訪れた。


 店主が、布に包まれたものを差し出す。


「お待たせしました。こちらがご注文の品です」


 アリシアさんは、そっと包みを開いた。


 黒に近い深い色の紐。


 その中央に、小さなラブラドライトが輝いている。


 以前のアクセサリーとは違う。


 けれど、宝石は同じだった。


 アリシアさんは、しばらくそれを見つめていた。


「……綺麗ですね」


 私が言うと、アリシアさんは小さく頷いた。


「……ああ」


 そして。


 ゆっくりとチョーカーを首にかけた。


 宝石が、胸元で小さく揺れる。


 光を受けたラブラドライトが、青く輝いた。


 アリシアさんは、それにそっと触れた。


 まるで、そこに誰かがいることを確かめるように。


「……エレノア様」


 小さな声が、静かに響いた。


 私は何も言わなかった。


 ただ、隣にいた。


 ◆


 店を出ると、街には穏やかな風が吹いていた。


 空は青く、雲がゆっくりと流れている。


「……リリア」


「はい?」


「これから、旅を続けるんだな」


「はい!」


 私は笑顔で頷いた。


「いろんな場所を見に行きましょう!」


 アリシアさんは、少しだけ空を見上げた。


 そして、首元の宝石に触れる。


「……ああ」


 その声は、まだ少しだけ寂しそうだった。


 けれど。


 アリシアさんは、歩き出した。


 私も、その隣を歩く。


 過去は、消えない。


 大切な人との思い出も。


 守れなかった後悔も。


 それでも。


 私たちは、前へ進む。


 空には、星が一つ。


 昼の光の中で、かすかに輝いていた。


 それは、遠くにある星。


 けれど、確かにそこにある。


 私はその星を見上げながら、笑った。


「……次は、どこへ行きましょうか?」


「そうだな……」


 アリシアさんは、少し考えた。


「まずは、次の街へ向かおう」


「はい!」


 私は元気よく答えた。


 そして、二人で歩き出した。


 過去を繋ぐ宝石を胸に。


 新しい星を探す旅へ。


……エレノア様。


私は、まだあなたを忘れられません。


あなたと過ごした日々も。

あなたの笑顔も。

守れなかった、あの日のことも。


それでも、私は旅に出ます。


あなたが愛した世界を、見てみたいから。


……いつか。


あなたに、胸を張って報告できるように。

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