第二十一話 星を追う二人
今回も読んでいただきありがとうございます!
宵月「今回は、リリアとアリシアがノエとの戦いに挑みます!」
リリア「はい! 頑張ります!」
宵月「……リリア、今回はかなり大変な戦いになるんだけど」
リリア「えへへ! でも、アリシアさんと一緒なら大丈夫です!」
宵月「そうですね。二人がどんな戦いを見せてくれるのか、ぜひお楽しみください!」
リリア「ノエさん、覚悟してくださいね!」
宵月「……いや、そこはもう少し緊張感を持とうよ(笑)」
リリア「えっ? そうですか?」
宵月「……まあ、リリアらしいか(笑)」
黒と紫の魔力が、ノエの身体を包み込んでいた。
先ほどまで少年の姿をしていた彼は、今や禍々しい魔力をまとった異形の存在へと変わっている。
その魔力は、周囲の空気を震わせるほど強大だった。
「……すごい魔力ですね」
私は剣を握りしめた。
隣では、アリシアさんも剣を構えている。
「リリア。油断しないで」
「はい!」
ノエは私たちを見つめていた。
その表情に、先ほどまでの無邪気な笑みはない。
「……さあ。続きをしようか」
次の瞬間。
ノエの姿が消えた。
「……っ!」
私は咄嗟に剣を振るう。
ガキンッ!
目の前で、剣と何かがぶつかった。
ノエの腕だ。
魔力をまとった腕が、私の剣を受け止めている。
「へえ。反応できるんだ」
「……っ!」
ノエが腕を振るう。
私は後ろへ跳んだ。
けれど、その直後。
「リリア!」
アリシアさんの声。
私は身体をひねり、横へ移動する。
そこへ、アリシアさんの剣が通った。
ノエはその一撃を避けるため、後ろへ下がる。
「……なるほど」
ノエが小さく呟いた。
「二人だと、少し面倒だね」
私は剣を構え直す。
……でも。
さっきより、動きが見える。
ノエの攻撃は速い。
けれど、アリシアさんが一緒にいることで、攻撃を避ける方向が少しずつ限られていく。
私が攻めれば、アリシアさんが追撃する。
アリシアさんが攻めれば、私が追撃する。
まるで、最初からそうすることが決まっていたみたいに。
「……アリシアさん!」
「分かっている!」
私たちは同時に踏み込んだ。
◆
剣が走る。
アリシアさんの一撃。
私の一撃。
ノエはそれを避け、反撃しようとする。
けれど。
「そこです!」
私はノエの動きを追い、剣を振るう。
ノエが身をひねる。
その先に、アリシアさんの剣が待っていた。
「……っ!」
ノエは魔力を放ち、私たちを押し返した。
地面が揺れる。
私は少し後ろへ下がった。
「……今の、危なかったですね」
「そうだな」
アリシアさんは剣を握り直した。
「だが、攻撃は通せる」
「はい!」
ノエは私たちを見つめていた。
そして、少しだけ首を傾げる。
「……ねえ。君たち、どうしてそんなに息が合うの?」
「え?」
私はアリシアさんを見る。
アリシアさんも、私を見た。
「……さあ?」
「えへへ。なんだか、自然に動けるんです」
「私もだ」
アリシアさんは少し不思議そうな顔をしていた。
私も不思議だ。
だって、アリシアさんと一緒に戦うのは、今日が初めて。
それなのに。
相手の動きが、なんとなく分かる。
次に何をするのか。
どこへ動くのか。
どうすれば攻撃がつながるのか。
考えるより先に、身体が動いていた。
「……まあ、いいや」
ノエが笑う。
「それなら、もっと楽しませてよ」
また魔力が膨れ上がった。
ノエが地面を蹴る。
速い。
先ほどより、さらに速くなっている。
私は剣を振るう。
ノエが避ける。
アリシアさんが追撃する。
ノエが反撃する。
私がその攻撃を受け流す。
そして、再び剣を振るう。
止まらない。
私たちは、息のつく間もないほどの連撃を繰り出した。
ノエが避ける。
避けた先へ、剣が飛ぶ。
その剣を避ければ、もう一人の剣が待っている。
攻撃を防ごうとすれば、次の一撃が来る。
反撃しようとすれば、さらに追撃される。
まるで、逃げ道を一つずつ塞いでいくように。
「……っ!」
ノエの表情から、余裕が消えていった。
私は剣を振るう。
アリシアさんも、剣を振るう。
何度も。
何度も。
ノエは魔力を使って攻撃を防いでいる。
けれど、その魔力が少しずつ削られているのが分かった。
……このままなら。
◆
「……いいね」
ノエが笑った。
その身体から、さらに魔力が溢れる。
「すごくいいよ。こんなに楽しいのは久しぶりだ」
魔力が広がり、周囲の魔物たちが一斉に動き出した。
「……っ!」
私は魔物たちの方を見た。
まだ、残っている。
街の方では、みんなが戦っているはず。
早く、終わらせないと。
「アリシアさん!」
「ああ!」
私たちは同時にノエへ向かった。
アリシアさんが正面から斬りかかる。
ノエはそれを防ぐ。
私は横から剣を振るう。
ノエが避ける。
そこへ、アリシアさんの追撃。
さらに、私の一撃。
ノエは魔力を放ち、私たちを押し返そうとした。
けれど。
「……させません!」
私は剣に魔力を込めた。
一閃。
ノエの魔力が揺らぐ。
その瞬間。
「今だ!」
アリシアさんの声。
私は思い切り踏み込んだ。
剣を振るう。
アリシアさんも、同時に剣を振るう。
二つの斬撃が、ノエへと迫った。
「……っ!」
ノエは両腕を交差させて防いだ。
けれど。
その身体が、大きく後ろへ吹き飛ぶ。
地面に足をつけ、なんとか踏みとどまった。
魔力が、揺れている。
ノエは自分の身体を見つめた。
「……あれ?」
そして、私たちを見る。
「……負けちゃった?」
私は剣を構えたまま、答えた。
「もう、終わりです」
ノエはしばらく黙っていた。
そして。
「……ふふっ」
小さく笑った。
「そっか。僕の負けか」
その身体を包んでいた魔力が、少しずつ消えていく。
禍々しい姿が、元の少年の姿へと戻っていった。
「楽しかったよ」
◆
ノエが倒れると、周囲の魔物たちも動きを止めた。
そして、次々と帰っていく。
眷属魔法による支配が解けたのだろう。
「……終わった、んですか?」
私は周囲を見渡した。
魔物の気配が、少しずつ薄れていく。
「……ああ。そうだな」
アリシアさんが剣を下ろした。
私はようやく、肩の力を抜いた。
「ふぅ……」
疲れた。
ものすごく疲れた。
でも。
「……よかった」
街のみんなを守れた。
それが、何より嬉しかった。
アリシアさんが私の方を向く。
「リリア」
「はい?」
「……ありがとう」
私は首を傾げた。
「どうしてですか?」
「君がいてくれたから、私は戦えた」
アリシアさんは、静かに笑った。
「一人だったら、きっとここまで来られなかった」
「……えへへ」
私は嬉しくなった。
「私も、アリシアさんがいてくれてよかったです!」
◆
街へ戻ると、みんなが私たちを迎えてくれた。
魔物たちが帰ったことで、街の防衛も終わったらしい。
冒険者たちも、街の人たちも、みんな無事だった。
「リリア!」
グレイヴさんが走ってきた。
「お前、無事だったか!」
「はい!」
「……まったく。心配させやがって」
グレイヴさんは、ほっとしたように笑った。
その隣では、フローラさんがアリシアさんに声をかけていた。
「アリシアさんも、お疲れさま」
「……はい」
アリシアさんは、街の人たちを見渡した。
みんな、笑っている。
誰かが誰かを助けて。
誰かが誰かを守って。
それぞれが、力を合わせていた。
アリシアさんは、そっと目を閉じた。
そして、空を見上げる。
「……エレノア様」
小さく呟いた。
私は隣で、空を見上げた。
夕暮れの空。
星が、一つだけ見え始めていた。
◆
その夜。
私はエレノアさんのお墓へ向かった。
アリシアさんも、一緒だった。
「……ここから、星がよく見えるんです」
「そうか」
私は空を見上げた。
空に広がる星々。
流星が一つ。
二つ。
アリシアさんは、静かに空を見上げていた。
「……綺麗だな」
「はい!」
私は笑った。
「師匠も、星が好きだったんです」
「……そうか」
アリシアさんは、少しだけ目を細めた。
「リリア」
「はい?」
「……私も、君と一緒に旅をしたい」
私は目を丸くした。
「……え?」
「君が見ている世界を、私も見てみたい」
アリシアさんは空を見上げたまま、続けた。
「私は、ずっと主様… エレノア様を守れなかったことを悔やんでいた」
「……」
「だが、君と出会って、もう一度誰かを守りたいと思った」
アリシアさんは私を見た。
「今度は、君を守りたい」
私は少し考えた。
そして。
「……えへへ」
笑った。
「じゃあ、一緒に行きましょう!」
「……いいのか?」
「もちろんです!」
私は大きく頷いた。
「一緒に、いろんなところを見に行きましょう!」
アリシアさんは、少しだけ笑った。
「……ああ」
私は空を見上げた。
星が、きらきらと輝いている。
師匠が見せてくれた星。
そして、これから出会う星。
私は、まだ知らない世界を見てみたい。
美しい景色も。
美味しい料理も。
優しい人たちも。
そして、時には醜いものも。
それでも。
私は旅を続ける。
隣には、アリシアさんがいる。
「……次は、どこへ行きましょうか?」
「そうだな……」
アリシアさんは、少し考えた。
「ご飯でも食べにいかないか」
「……はい!」
私は笑顔で頷いた。
星を追う旅は、まだ始まったばかり。
これから、どんな星に出会えるんだろう。
私は胸を弾ませながら、空を見上げた。
そして。
新しい星を探すために、再び歩き出した。
今回も読んでいただきありがとうございます!
リリア「アリシアさんと一緒に旅することになりました!」
アリシア「……よろしく頼む」
リリア「えへへ! これから楽しみですね!」
アリシア「そうだな」
リリア「はい!」
アリシア「……ところで、リリア」
リリア「なんですか?」
アリシア「さっきの連撃だが……」
リリア「はい?」
アリシア「どうして、あんなに息が合ったんだろうな」
リリア「……え?」
アリシア「初めて一緒に戦ったはずなのに」
リリア「……た、たしかに!」
アリシア「……不思議だな」
リリア「不思議ですね!」




