第二話 山の向こうへ
こんにちは!
今回は、山を下りたリリアが初めて街を訪れるお話です。
師匠との思い出を振り返りながら、少しずつ新しい世界へ踏み出していきます。
山を下りるのは、思っていたよりも大変だった。
いつも師匠と歩いていた道なのに、今日は隣に師匠がいない。
背中には、師匠からもらった大きな剣。
私の背丈には少し大きいけれど、師匠がくれた大切な剣だ。
「……よし」
私は小さく頷いて、もう一度歩き出した。
山を下りながら、ふと師匠との日々を思い出す。
『リリア、剣を構えろ』
『はい、師匠!』
『腰が浮いている。足を踏ん張れ』
『こうですか?』
『そうだ。そこから振り下ろせ』
重たい剣を振るうのは、最初はとても大変だった。
腕が痛くなって、何度も休みたくなった。
けれど、師匠は決して妥協しなかった。
『剣は、ただ振ればいいというものではない』
『……はい』
『自分の力を知り、相手を見て、何を守るために振るうのか考えろ』
私はその言葉を、今でも覚えている。
師匠との特訓は厳しかった。
剣だけではなく、魔法も、体の動かし方も、山で生きるための知識も教えてくれた。
そして、いつも最後にはこう言っていた。
『よく頑張ったな』
その言葉が、私は好きだった。
「……師匠」
思わず呟いて、少しだけ立ち止まる。
でも、もう師匠はいない。
私は顔を上げて、山の向こうを見た。
「……行こう」
師匠が見てきた世界を、私も見てみたい。
そう思って、また歩き始めた。
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山を下りてしばらくすると、遠くに建物が見えてきた。
石造りの壁に囲まれた、大きな街。
「……あれが、街?」
師匠から話は聞いていたけれど、実際に見るのは初めてだった。
私は興味津々で、街へと歩いていく。
しかし、街の入口に近づいたところで、周囲の人たちがこちらを見ていることに気づいた。
「……あれ?」
一人の男性が、驚いた顔で声を上げる。
「おい、あの子……どこから来たんだ?」
「まさか、あの山からか?」
その言葉を聞いて、何人かの人が私の方へ集まってきた。
「お嬢ちゃん、一人なのか?」
「親御さんはどうした?」
「その剣……子供が持つには大きすぎるだろう」
私は少し困ってしまった。
「えっと……師匠は、もういません」
「……師匠?」
「はい。山で一緒に暮らしていました」
人々が顔を見合わせる。
「……あの山で?」
「一人で降りてきたのか?」
「とりあえず、街の中で保護してあげた方がいいんじゃないか」
どうやら、私は心配されているらしい。
「えっと……大丈夫です。私は元気ですよ?」
そう答えても、人々の心配はなくならなかった。
結局、私は街の人たちに連れられて、街の中へ入ることになった。
---
街の中は、山とはまるで違っていた。
人がたくさんいて、建物が並んでいて、あちこちから声が聞こえる。
「……すごい」
私は思わず足を止めた。
師匠から聞いていた街の話。
本当に、こんなに賑やかなんだ。
「お嬢ちゃん、どこか行きたいところはあるか?」
街の人が尋ねてくる。
「えっと……まだ、わかりません」
「そうか。じゃあ、まずは少し休んでいくといい」
私は頷いた。
そのとき、通りの先から金属を叩く音が聞こえてきた。
カン、カン、カン。
「……あれは?」
音のする方を見ると、店の前に大きな看板が掲げられていた。
鍛冶屋。
「剣を作るところですか?」
「そうだよ。武器や道具を作っている店だ」
私は興味を惹かれて、店の前へ歩いていった。
すると、店の中にいた大柄なドワーフのおじさんが、私の背中にある剣を見て目を細めた。
「……おい、嬢ちゃん」
「はい?」
「その剣、ちょっと見せてくれねえか」
「剣ですか?」
私は背中から剣を下ろした。
大きな剣を見たドワーフのおじさんは、しばらく黙っていた。
そして、柄や鞘をじっと眺める。
「……こいつは」
何かに気づいたように、眉をひそめた。
「嬢ちゃん。これ、どこで手に入れた?」
「師匠からもらいました!」
私は少しだけ胸を張って答えた。
「師匠が、私にくれた大切な剣です」
「……そうか」
ドワーフのおじさんは、もう一度剣を見た。
「大切にしろよ。そいつは……」
そこで言葉を止める。
「……いや。なんでもねえ」
「?」
私は首を傾げた。
「おじさん、この剣のこと知ってるんですか?」
「いや、まあ……剣を見りゃ、いろいろ分かることもあるってだけだ」
そう言って、おじさんは少しだけ笑った。
「嬢ちゃん。腹は減ってねえか?」
「……お腹?」
その言葉を聞いた途端、私は自分のお腹が空いていることに気づいた。
「……空いてます!」
「ははっ。そりゃそうだろうな。山を下りてきたんだ」
ドワーフのおじさんは店の奥を指差した。
「ちょっと待ってな。何か食わせてやる」
「いいんですか?」
「いいから、座ってろ」
私は頷いて、店の前に腰を下ろした。
街には、知らないものがたくさんある。
知らない人も、知らない食べ物も、知らない景色も。
師匠が見てきた世界。
私は、これからそれを知っていくんだ。
「……楽しみだな」
そう呟いて、私は街の景色を眺めた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
山の外へ出たリリア。これからどんな出会いや冒険が待っているのでしょうか。
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