第十六話 迫りくる影
街の周囲に、少しずつ異変が起き始めていた。
いつもなら見かけるはずの魔物が減り、代わりに不穏な魔力が集まり始める。
その異変は、やがて街を巻き込む大きな出来事へと繋がっていく。
冒険者ギルド。
私は、受付のお姉さんから依頼の報告を受けていた。
「リリアさん、今回も薬草の採取ありがとうございます」
「はい! いっぱい採れました!」
私は袋から薬草を取り出し、カウンターに並べた。
これで依頼は完了。
今日は何をしようかな。
そう考えていたときだった。
「ギルドマスター! 緊急の報告です!」
慌てた様子の冒険者が、ギルドの中へ駆け込んできた。
その声に、周囲の冒険者たちも振り向く。
「どうした?」
ギルドマスターが尋ねる。
「街の周辺で、異常な魔力反応を確認しました!」
「……魔力反応?」
「はい。街の外に、かなりの数の魔力が集まっています」
冒険者は息を整えながら続けた。
「魔力探知を使っていたところ、偶然気づいたんです。最初は魔獣の群れかと思ったんですが……数が多すぎます」
「どのくらいだ?」
「正確には分かりません。ただ、街の周囲を囲むように集まっているようです」
ギルド内がざわつき始めた。
街の周囲に魔物が集まっている。
それも、かなりの数。
普通なら、魔物はそれぞれの生息域で暮らしている。
こんな風に、一か所に大量に集まることはほとんどない。
「……これは、ただ事ではないな」
ギルドマスターが険しい表情を浮かべた。
◆
ギルドでは、すぐに緊急の対応が始まった。
周辺の冒険者たちに警戒を呼びかけ、街の騎士団にも連絡が送られる。
魔力探知を使える冒険者たちは、街の外へ出て周囲の状況を確認することになった。
私は、その話を聞きながら首を傾げていた。
「魔物が集まっているんですか?」
「ああ。まだ詳しいことは分からないがな」
近くにいた冒険者さんが答えてくれた。
「魔獣だけじゃなく、ゴブリンやオーク、ゴーレムなんかもいるらしい」
「えっ? そんなに色々いるんですか?」
「そうらしい。しかも、上位種まで混ざっている可能性がある」
私は少し驚いた。
ゴブリンロードやジャイアントオーク。
それに、属性を持ったエレメントゴーレム。
そんな魔物がたくさん集まっているのなら、確かに大変そうだ。
「……何が目的なんでしょう?」
「それが分からないんだ」
冒険者さんは、困ったように頭を掻いた。
「ただ、街に近づいているのは確かだ」
◆
その頃、街の外。
魔力探知を使った冒険者たちが、森の近くで周囲を調べていた。
そこには、様々な魔物の姿があった。
ゴブリンの群れ。
大きな身体をしたジャイアントオーク。
岩の身体を持つゴーレム。
そして、丸い岩のような魔物。
ローリング。
その上位種であるクイックロックも混ざっていた。
クイックロックは、通常のローリングよりも身体が小さく、トゲトゲしている。
その分、転がる速度と体当たりの威力が高い。
さらに、ボマーロックの上位種であるブラストロックもいた。
ブラストロックは、身体の内部に強い魔力を蓄えている。
その魔力が限界に達すると、大きな爆発を起こす。
通常のボマーロックよりも、その威力ははるかに強い。
冒険者たちは、魔物の群れを見て息を呑んだ。
「……これは、まずいぞ」
誰かが呟く。
そのとき。
森の奥から、さらに強い魔力が感じられた。
冒険者たちは顔を見合わせる。
魔物の群れの中に、何か別の存在がいる。
それは、魔獣や魔物とは違う。
だが、正体までは分からなかった。
◆
ギルドへ戻った冒険者たちは、調査結果を報告した。
「魔物の数は、想定以上です」
「上位種も複数確認しました」
「それに、正体不明の魔力反応もあります」
ギルドマスターは、報告を聞いてしばらく黙っていた。
そして。
「……街の防衛準備を始めろ」
その言葉に、職員たちが動き出す。
冒険者たちは武器を整え、騎士団も街の門や防壁へと配置されていく。
私は、その様子を見ていた。
「……大変なことになりそうですね」
隣にいたアリシアさんが、静かに頷く。
「ええ。ですが、街の人たちを守らなければなりません」
その声は、いつもより少しだけ強かった。
私はアリシアさんを見た。
そして、笑顔で頷く。
「はい!」
◆
夕方。
街の外では、魔物たちが少しずつ動き始めていた。
森の奥から、魔獣の群れが姿を現す。
ゴブリンやオーク。
ゴーレムや、上位種たち。
その数は、まだ増え続けていた。
そして。
魔物たちの後ろに、何かがいる。
人のような形をした影。
その影は、魔物たちを眺めながら、楽しそうに笑っていた。
「……ふふ。いっぱい集まったね」
小さな声が、森の中に響く。
街の人たちは、まだ知らない。
これから始まる大きな騒ぎのことを。
そして。
その騒ぎを引き起こした存在のことを。
今回も読んでいただき、ありがとうございます!
街の周囲に集まり始めた魔物たち。ゴブリンロードやジャイアントオークなど、上位種も混ざっているようです。
そして、魔物たちの背後に現れた謎の影……。一体何が目的なのでしょうか?
次回はいよいよ、街を守るための戦いが始まります!
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