第十五話 騎士の小さな一歩
今回は、リリアとアリシアが薬草採取へ。
少しずつ前を向き始めたアリシアですが、森では何やら不穏な動きが……。
次回もぜひお楽しみください!
朝。
私は、いつものようにアリシアさんの家を訪ねていた。
「アリシアさん、おはようございます!」
「……リリアさん。おはようございます」
扉を開けたアリシアさんは、少しだけ微笑んだ。
「今日は、何か予定がありますか?」
「はい! 今日は採取依頼を受けようと思っているんです!」
「採取依頼……ですか?」
「森に薬草を採りに行くんです。よかったら一緒にどうですか?」
アリシアさんは少し考えた。
そして。
「……そうですね。私も一緒に行きましょう」
「本当ですか!?」
「はい。少し、外を歩きたいと思っていたので」
私は嬉しくなった。
アリシアさんが、自分から外へ出たいと言ってくれた。
それだけでも、なんだか嬉しい。
◆
冒険者ギルドへ向かうと、受付のお姉さんが笑顔で迎えてくれた。
「おはようございます、リリアさん。今日はどの依頼を受けますか?」
「えっと……薬草採取の依頼はありますか?」
「はい。森の奥で採れる薬草が不足しているので、ちょうど募集していますよ」
私は依頼書を受け取った。
森の奥に生える薬草を、指定された量だけ採取する依頼。
魔物の討伐は必要ない。
これなら、アリシアさんと一緒にのんびり歩けそうだ。
「これにします!」
「分かりました。気をつけて行ってきてくださいね」
依頼を受けて、私たちは町を出た。
◆
森の中。
木々の間から日差しが差し込み、風が葉を揺らしている。
「わあ……気持ちいいですね!」
「……そうですね」
アリシアさんは周囲を見回していた。
その姿を見て、私は少し不思議に思った。
「アリシアさん、森に来るのは久しぶりですか?」
「いえ。騎士だった頃は、森での任務もありました」
「そうなんですか!」
「はい。……ただ、最近はこうしてゆっくり歩くこともありませんでした」
アリシアさんは、少しだけ空を見上げた。
「……悪くないですね」
「ですよね!」
私は笑顔で頷いた。
森は、歩いているだけでも楽しい。
知らない植物を見つけたり、鳥の声を聞いたり。
師匠と暮らしていた山でも、よくこうして歩いていた。
◆
「……あ、ありました!」
私は地面に生えている薬草を見つけた。
依頼書に描かれていたものと同じだ。
「これを採ればいいんですね!」
「ええ。根を傷つけないように採るといいでしょう」
「分かりました!」
私はしゃがみ込んで、薬草を採取した。
その後も、森の中を歩きながら薬草を集めていく。
途中、少し大きな木の根元に、珍しい花が咲いていた。
「わあ! 綺麗な花!」
「……本当ですね」
アリシアさんも足を止めた。
しばらく二人で、その花を眺めていた。
◆
そのとき。
「……あれ?」
私はふと、周囲を見回した。
いつもなら、森の中には魔物がいる。
でも、今日はほとんど見かけない。
「アリシアさん。最近、この森って魔物が少ないんですか?」
「……そういえば、そうですね」
アリシアさんも周囲を見た。
「以前は、もっと魔物の気配があったように思います」
「ですよね?」
私は首を傾げた。
魔物が少ないなら、依頼も楽になる。
でも、どうしてだろう。
少しだけ、不思議な感じがした。
◆
森の奥。
私たちが薬草を採っている場所から、少し離れたところ。
木々の陰に、小さな影がいくつか動いていた。
その影たちは、魔物の群れを眺めている。
「ねえねえ、もっと集めようよ!」
「えー? もうこんなにいるじゃん!」
「もっともっと! いっぱい集めた方が面白いよ!」
楽しそうな声。
まるで遊びの相談をしているようだった。
その近くでは、魔物たちが次々と集まっていた。
彼らにとっては、ただのいたずら。
けれど。
その遊びが、どれほど大きな騒ぎを引き起こすことになるのか。
まだ、誰も知らなかった。
◆
「リリアさん」
アリシアさんの声で、私は顔を上げた。
「そろそろ戻りましょう。薬草も十分に集まりました」
「あ、はい!」
私は採取した薬草を袋に入れた。
そして、アリシアさんと一緒に町へ戻る。
「今日はありがとうございました、アリシアさん!」
「……いえ。こちらこそ」
アリシアさんは、少しだけ笑った。
その表情を見て、私は嬉しくなった。
少しずつ。
本当に少しずつだけど。
アリシアさんは、前を向き始めている。
私はそう思った。
……けれど。
森の奥では、魔物たちが静かに集まり続けていた。
今回も読んでいただき、ありがとうございます!
少しずつ前を向き始めたアリシアと、森で感じた不思議な違和感。
町の周辺で何が起きているのか……?
次回もぜひお楽しみください!
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