第十四話 賑やかな街と、少しの一歩
町で過ごす穏やかな一日。
少しずつ前を向き始めるアリシアと、いつも通り元気なリリア。
しかし、町の周辺では不穏な変化が起き始めていました。
朝。
私は、アリシアさんの部屋を訪ねていた。
「アリシアさん、おはようございます!」
「……リリアさん?」
扉を開けたアリシアさんは、少し驚いた顔をしていた。
「今日は一緒にお出かけしませんか?」
「お出かけ……ですか?」
「はい! せっかく町にいるんですから、色々見て回りましょう!」
私は笑顔でそう言った。
アリシアさんは、少し困ったように視線を落とした。
「……私は、あまり気分が」
「そうですか……」
私は少し考える。
無理に誘うのもよくない。
でも、ずっと家の中にいるのも、きっとつらいと思う。
「じゃあ、少しだけでも。すぐ帰ってきても大丈夫ですよ!」
「……」
アリシアさんはしばらく黙っていた。
そして。
「……分かりました。少しだけなら」
「やった!」
私は思わず声を上げた。
アリシアさんは、そんな私を見て小さく息を吐いた。
……よかった。
◆
町を歩いていると、色々な人に声をかけられた。
「リリアちゃん、おはよう!」
「おはようございます!」
「今日はお友達と一緒かい?」
「はい! アリシアさんです!」
私は隣にいるアリシアさんを紹介した。
町の人たちは、アリシアさんを見ると少しだけ表情を変えた。
でも、誰も無理に話しかけたりはしなかった。
「……アリシアさん、今日はいい天気ですね」
「……そうですね」
私は空を見上げた。
青い空。
白い雲。
風も気持ちいい。
こんな日は、外を歩くだけでも楽しい。
「ねえ、アリシアさん。あのお店、気になりませんか?」
「……あのお店ですか?」
私が指さしたのは、焼き菓子を売っているお店だった。
甘い匂いがする。
とっても美味しそう。
「ちょっと見ていきましょう!」
私はアリシアさんの返事を待たずに、お店へ向かった。
「いらっしゃい!」
店主のおじさんが笑顔で迎えてくれる。
「今日は何にするんだい?」
「えっと……おすすめはありますか?」
「そうだな。今日は焼きリンゴのパイがいいぞ」
「焼きリンゴ!」
私は目を輝かせた。
焼きリンゴのパイ。
絶対に美味しい。
「アリシアさんも食べませんか?」
「……私は」
「一緒に食べましょう!」
私は二つ注文した。
お店の前のベンチに座り、焼きたてのパイを食べる。
「いただきます!」
さくっ。
パイ生地は香ばしくて、口の中でほろほろと崩れる。
中のリンゴは甘く、少し酸味もあって、とっても美味しい。
「……美味しいです!」
私は思わず笑顔になった。
隣を見ると、アリシアさんもパイを食べていた。
「……美味しいですね」
「ですよね!」
アリシアさんの声は、まだ少し元気がなかった。
でも、さっきよりは柔らかくなった気がする。
私はそれが嬉しかった。
◆
その後、私たちは冒険者ギルドへ向かった。
今日も後で依頼を受けようと思っていたからだ。
ギルドの中では、冒険者たちが何やら話をしていた。
「最近、魔物が妙に少なくないか?」
「確かに。ここ数日、討伐依頼もほとんど出ていないな」
「山の方も静からしいぞ」
私はその話を聞いて、首を傾げた。
「……魔物が少ないんですか?」
近くにいた冒険者さんに尋ねる。
「ああ。いつもなら、もっと魔物の討伐依頼が出ているんだがな」
「そうなんですか?」
「まあ、魔物が少ないなら平和でいいんだが……」
冒険者さんは少し考えるように腕を組んだ。
「なんだか、妙な感じがするんだよな」
私は首を傾げた。
魔物が少ない。
それなら、平和でいいんじゃないだろうか。
……でも。
冒険者さんたちが気にしているのなら、何か理由があるのかもしれない。
「リリアさん」
隣からアリシアさんの声がした。
「そろそろ帰りましょうか」
「あ、はい!」
私は頷いた。
今日は、依頼を受けるのはやめておこう。
◆
夕方。
町の外を眺めながら、私はアリシアさんと歩いていた。
「アリシアさん、今日は楽しかったですか?」
「……そうですね」
アリシアさんは少しだけ考えた。
「少しだけ、楽しかったです」
「本当ですか?」
「はい」
私は嬉しくなった。
「また一緒にお出かけしましょう!」
「……そうですね」
アリシアさんは、ほんの少しだけ笑った。
私はその笑顔を見て、思った。
きっと、まだ大丈夫。
少しずつでも、前に進める。
◆
その頃。
町から離れた山の奥では、静かに何かが動いていた。
普段なら聞こえるはずの魔物の鳴き声は、ほとんどない。
けれど。
その静けさの中で、何かが近づいていた。
町の人たちは、まだ知らない。
この静かな時間が、長くは続かないことを。
今回も読んでいただき、ありがとうございます!
少しずつ前を向き始めるアリシア。リリアと過ごす時間が、彼女にとって小さな一歩になればいいですね。
そして、最近魔物が少ないという不穏な噂。次回もぜひお楽しみに!
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