↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星追いの少女、世界を旅して無双する  作者: 宵月
星を失った騎士と、星を追う少女
PR
13/27

第十三話 窓辺の騎士と星を見る少女


町での日々を過ごすリリア。

子供たちと魔法を楽しみ、ギルドの冒険者たちと模擬戦をし、鍛冶屋では師匠の剣について新たな事実を知る。

そんな彼女の姿を、窓辺から見つめる騎士がいた。


 町に滞在して、数日が経った。


 私は今日も、町の中をのんびりと歩いていた。


 美味しいご飯を食べて、知らない場所を見て回って、気になったお店に立ち寄る。


 旅って、やっぱり楽しい。


 ……でも。


「リリアおねえちゃーん!」


「ん?」


 声がした方を振り向くと、数人の子供たちが駆け寄ってきた。


「ねえねえ、今日も魔法見せて!」


「星のやつ!」


「あれ、すっごく綺麗だった!」


 以前、子供たちに星を映し出す魔法を見せたことがある。


 星の位置を観測して、空に映し出す魔法。


 師匠に見せた、あの魔法だ。


「いいよ!」


 私は笑って答えた。


「じゃあ、広場に行こうか」


「やったー!」


 子供たちは嬉しそうに声を上げた。


 ◆


 町の広場。


 私は子供たちに囲まれながら、魔法を使った。


 空に、星々が浮かび上がる。


 昼間の空に、夜空が広がった。


「わあああ!」


「すごい!」


「星がいっぱい!」


 子供たちは目を輝かせながら、空を見上げていた。


 私は星座を動かしたり、流星を流したりしてみる。


「見て! あっちにも流れた!」


「こっちにも!」


 みんな楽しそうだ。


 私も、つい笑ってしまった。


 師匠に見せたときも、こんな風に喜んでくれた。


 ……師匠。


 私は少しだけ空を見上げた。


 でも、すぐに子供たちの声が聞こえてくる。


「リリアおねえちゃん! もっと見せて!」


「うん!」


 私はもう一度、魔法を使った。


 ◆


 その様子を、町の建物の窓から見ている人がいた。


 アリシアだ。


 彼女は部屋の窓辺に立ち、広場で楽しそうにしているリリアを見つめていた。


 子供たちに囲まれ、笑っている少女。


 あの少女も、大切な人を失ったと言っていた。


 それなのに。


 どうして、あんな風に笑えるのだろう。


 アリシアは、そっと窓枠に手を置いた。


 ◆


 夕方。


 私はギルドに顔を出した。


 すると、冒険者たちが私を見つけて声をかけてきた。


「おう、リリア!」


「今日も元気そうだな!」


「なあ、ちょっと模擬戦やらないか?」


「いいよ!」


 私は気軽に答えた。


 訓練場に移動すると、何人かの冒険者が待ち構えていた。


 私は剣を構える。


 相手も構えた。


 そして――


 あっという間に、勝負がついた。


「……やっぱり強えな」


「いや、今のは何が起きたんだ?」


「もう一回! もう一回やらせてくれ!」


 私は笑った。


「いいよ!」


 その後も何度か模擬戦をした。


 楽しかった。


――夢中になりすぎて何人倒したのかは覚えていない。


 ◆


 ギルドを出たあと、私は鍛冶屋に立ち寄った。


「こんにちはー!」


「おう、リリアか」


 店主が顔を上げる。


「今日はどうした?」


「ちょっと剣を見てもらいたくて」


 私は腰に差した剣を抜いた。


 師匠の剣。


 店主はそれを受け取ると、じっくりと眺め始めた。


 刃を確認し、柄を見て、強化魔法の痕跡を調べる。


 そして――


「……おい、リリア」


「なに?」


「これ、本当にお前の師匠が作った剣なのか?」


「うん。そうだよ」


 店主はしばらく黙っていた。


「……最上大業物クラスだな」


「そうなの?」


「しかも、何重にも強化魔法がかかっている。刃も最高級品だ。これほどの剣を人間が作ったとは……」


 店主は剣を見つめながら、感心したように息を吐いた。


「……その人は、本当に凄い人だったんだな」


「師匠は、凄いよ」


 私はそう答えた。


 店主は剣を返してくれた。


「大切にしろよ。お前の師匠が、長い年月をかけて作り上げた剣だ」


「うん。大切にする」


 私は剣を受け取り、鞘に収めた。


 ◆


 夜。


 私は食べ物を持って、アリシアの部屋を訪ねた。


 扉を叩く。


「アリシアさん。私です」


 少しして、扉が開いた。


「……リリアさん」


「こんばんは。ご飯、持ってきました」


「……ありがとうございます」


 アリシアはそう言って、部屋に通してくれた。


 私は持ってきた食べ物を机に置く。


「ちゃんと食べてますか?」


「……あまり」


「そっか」


 私は椅子に座った。


 アリシアは、少しだけ俯いていた。


「……どうして、私に構うのですか?」


「え?」


「私は……守るべき人を守れなかった騎士です」


 アリシアの声が、少し震えた。


「……騎士失格です」


 私は、すぐには答えなかった。


 そして、ゆっくりと口を開いた。


「……私も、師匠を亡くしたんです」


 アリシアが顔を上げた。


「師匠は、私を育ててくれた大切な人でした。ずっと一緒に暮らしていて……色々なことを教えてくれたんです」


「……」


「だから、アリシアさんの気持ち、少しだけわかる気がします」


 私は、アリシアを見つめた。


「……私も、もっと一緒にいたかったです」


 アリシアは、何も言わなかった。


 私は続けた。


「でも……後悔してばかりだと、アリシアさんの主様も悲しんでしまうと思います」


「……っ」


「私の師匠も、きっとそうです。私がずっと悲しんでいたら、心配すると思いますから」


 アリシアは、俯いた。


 しばらく、沈黙が続いた。


 やがて、彼女の目から涙がこぼれた。


「……私は」


 小さな声。


「……私は、どうすればいいのでしょうか」


 私は、少し考えた。


 そして、答えた。


「……今は、無理に元気にならなくてもいいと思います」


 アリシアは顔を上げた。


「悲しいなら、悲しいままでいいんです。泣きたいなら、泣いてもいいんです」


 私は少しだけ笑った。


「私も、そうでしたから」


 アリシアは、また俯いた。


 そして、静かに泣いた。


 私は何も言わず、そばにいた。


 ◆


 帰り道。


 私は夜空を見上げた。


 星が、綺麗だった。


 師匠。


 私は、あなたが見せてくれた世界を、少しずつ見ています。


 美味しいご飯も。


 楽しい場所も。


 優しい人たちも。


 そして――


 大切な人を失って、悲しんでいる人も。


 私は、空を見上げたまま歩いた。


 いつか。


 アリシアさんも、また笑えるようになるといいな。


 そう思いながら。



第13話を読んでいただき、ありがとうございます!


今回はリリアの日常と、アリシアとの交流を描きました。

大切な人を失った二人が、少しずつ心を通わせていくお話です。


よければ感想やブックマークで応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。