↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星追いの少女、世界を旅して無双する  作者: 宵月
星を失った騎士と、星を追う少女
PR
12/31

第十二話 失われた星

新編『星を失った騎士と、星を追う少女』。


大切な人を失った騎士と、旅を続ける少女。


二人の出会いが、少しずつ新しい物語を紡いでいきます。


 「……大丈夫ですか?」


 私は、隣に座る女性に声をかけた。


 けれど、返事はなかった。


 女性は地面にへたり込んだまま、涙を流している。


 さっきまで崖の下に落ちそうになっていた人。


 私が助けた人。


 ……何があったんだろう。


 どうして、こんなに悲しそうなんだろう。


 気になったけれど、今は聞かない方がいい気がした。


 私はそのまま、彼女の隣に座っていた。


 川の流れる音が聞こえる。


 風が吹いて、木々の葉が揺れる。


 しばらくして、女性が小さく口を開いた。


「……私は」


 声が震えていた。


「守れなかった……」


 私は顔を向ける。


 女性は俯いたまま、手の中にあるアクセサリーを握りしめていた。


 ……大切なものなのかな。


 私は何も言わなかった。


 ただ、隣に座っていた。


     ◇


 しばらくして、私は女性に声をかけた。


「……街に戻りませんか?」


 女性は答えなかった。


「ここにずっといるのも、寒いですし……」


 少しだけ考えてから、私は続けた。


「歩けますか?」


 女性はゆっくりと頷いた。


 私は立ち上がり、手を差し出した。


 女性はその手を見つめる。


 そして、少し迷ったあと、私の手を取った。


 ……よかった。


 私は彼女を支えながら、街へ向かって歩き始めた。


     ◇


 街に戻ると、門の近くにいた人たちが私たちに気づいた。


「……アリシア様?」


 誰かが声を上げた。


 すると、周囲の人たちが一斉にこちらを向く。


「アリシア様!」


「ご無事だったのですね!」


 街の人たちが駆け寄ってきた。


 女性――アリシアさんは、俯いたまま何も言わない。


 その様子を見て、街の人たちも心配そうな顔をした。


「アリシア様……どうされたのですか?」


 そして、一人の女性が私を見た。


「……そちらの方は?」


 あ。


 そういえば、私のことを知らないよね。


「私はリリアです」


 そう答えると、街の人は少し驚いたような顔をした。


「リリア様……?」


「いえ、様はいらないです!」


 私は慌てて手を振った。


「ただの冒険者ですから!」


 街の人は少し困ったように笑った。


「そうでしたか……。アリシア様を助けてくださったのですね」


「……はい」


 私は頷いた。


 すると、街の人たちは深々と頭を下げた。


「ありがとうございます」


「アリシア様がご無事で、本当によかった……」


 そんな言葉が聞こえてくる。


 アリシアさんは、何も言わなかった。


 ただ、俯いていた。


     ◇


 街の人たちは、アリシアさんを休ませるために家へと案内してくれた。


 私はその後ろをついていく。


 街は、どこか温かい雰囲気だった。


 大きな建物が並んでいるわけでもない。


 お店も、豪華なものばかりじゃない。


 でも、街の人たちはみんな笑顔で、互いに声をかけ合っている。


 道端で荷物を運んでいる人を手伝う人。


 子どもたちにお菓子を分けている人。


 そんな光景が、あちこちにあった。


 ……いい街だなぁ。


 私はそう思った。


     ◇


 アリシアさんが休める場所に着くと、街の人たちが温かい飲み物を用意してくれた。


 私は椅子に座りながら、周囲を見回す。


 すると、一人の女性がアリシアさんに声をかけた。


「……アリシア様。エレノア様は?」


 その瞬間。


 アリシアさんの身体が、ぴくりと動いた。


 街の人たちも、静かになる。


 誰もが、アリシアさんの答えを待っていた。


 けれど、アリシアさんは何も言わなかった。


 ただ、俯いていた。


 ……エレノア様?


 私はその名前を、心の中で繰り返した。


 すると、別の人が小さく呟いた。


「……まさか」


 誰も、続きを言わなかった。


 アリシアさんの手が、震えている。


 握りしめていたアクセサリーが、かすかに音を立てた。


 私は、そっと彼女の隣に座った。


     ◇


 しばらくして、街の人たちが静かに話し始めた。


「エレノア様は、本当にお優しい方でした」


「貴族なのに、私たちと一緒に畑仕事をしてくださったこともありましたね」


「ドレスがお好きで……。でも、いつも私たちにも分けてくださって」


「困っている人がいれば、すぐに手を差し伸べてくださる方でした」


 私は、その話を聞いていた。


 エレノア様。


 アリシアさんが守ろうとしていた人。


 きっと、とても大切な人だったんだ。


 街の人たちは、誰もアリシアさんを責めなかった。


 むしろ、心配していた。


「アリシア様……どうか、ご自分を責めないでください」


 その言葉を聞いた瞬間、アリシアさんの目から、また涙がこぼれた。


「……私は」


 小さな声。


「私は……守れなかった」


 誰も、何も言えなかった。


 私はアリシアさんの隣に座ったまま、そっと声をかけた。


「……アリシアさん」


 彼女が、ゆっくりと顔を上げる。


「今は、泣いててもいいんですよ」


 私は、そう言った。


 アリシアさんは何も答えなかった。


 ただ、涙を流していた。


 私はその隣にいた。


 今は、それだけでいいと思った。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


今回は、リリアとアリシアの出会いの続きでした。


大切な人を失ったアリシアに、リリアはただ寄り添います。


次回もぜひお楽しみに!


よければ感想やブックマークで応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。