第十話 次の星を探して
初めての街で冒険者として過ごした日々。
たくさんの出会いと経験を胸に、リリアは次の街へと旅立ちます。
そして、彼女に付けられた意外な異名とは……?
冒険者になってから、いろいろなことがあった。
初めての街。
初めての依頼。
初めてのダンジョン。
そして、冒険者ランクもDからCへ。
……うん。
そろそろ、次の街へ行ってみようかな。
師匠の願いは、私が世界を旅すること。
この街での生活にも慣れてきたし、冒険者としても少しずつ経験を積めている。
なら、次の場所へ行くのもいいと思う。
「よし!」
私は荷物を確認して、街へ出た。
まずは、いつもお世話になっている鍛冶屋さんへ。
◇
「おう、嬢ちゃん。今日はどうした?」
鍛冶屋の扉を開けると、ドワーフのおじさんが出迎えてくれた。
「こんにちは! 実は、そろそろ旅に出ようと思って」
「ほう。次の街か?」
「はい。もっといろんなところを見てみたいんです」
「そうか。いいことだ」
おじさんは満足そうに頷いた。
私は腰に下げた剣に目を落とす。
無窮・導星。
師匠から受け継いだ、大切な剣。
「……そういえば」
ふと思い出した。
「おじさん、師匠のことって何か知ってますか?」
「師匠?」
「はい。私の剣を作った人です」
おじさんは少し目を細めた。
それから、工房の奥へと視線を向ける。
「……ああ。あの人か」
「知ってるんですか?」
「知ってるも何も、昔から有名な騎士だったぞ」
私は目を丸くした。
「えっ!?」
「腕の立つ剣士でな。剣の腕だけじゃなく、人柄も良かった。鍛冶屋の連中にも、あの人を慕う奴は多かったんだ」
師匠が騎士だったことは知っている。
でも、そんなに有名だったなんて。
「……師匠、そんなにすごい人だったんですね」
「すごい人だったさ。だが、ある時から姿を見なくなった。何があったかは、俺も詳しくは知らん」
おじさんは私の剣を見た。
「ただ、その剣を見れば分かる。あの人がどれだけお前を大切にしていたか」
私は剣の柄をそっと握った。
「……はい」
師匠。
私は、まだ知らないことがたくさんある。
師匠がどんな人だったのか。
どんな景色を見てきたのか。
どんな思いで、私に剣を教えてくれたのか。
旅を続けていけば、いつかもっと知ることができるかもしれない。
「……ありがとうございます、おじさん」
「おう。旅先で剣を粗末にするなよ」
「はい!」
私は鍛冶屋を後にした。
◇
次に向かったのは、冒険者ギルド。
旅に出る前に、受付のお姉さんにも挨拶しておこうと思ったのだ。
「こんにちは!」
「あら、リリアさん。いらっしゃい」
「実は、そろそろ次の街へ行こうと思って」
「そうなんですか。寂しくなりますね」
受付のお姉さんが少し残念そうに笑った。
「でも、リリアさんならどこへ行っても大丈夫そうですね」
「えへへ……」
私は照れくさくなって、頭を掻いた。
そのとき。
ギルドの奥から、冒険者たちの声が聞こえてきた。
「おい、戦姫が来てるぞ!」
「戦姫?」
私は首を傾げた。
……誰のことだろう?
周りの冒険者たちが、こちらを見ている。
「なあ、リリア。お前、自分の異名知らないのか?」
「異名?」
「戦姫だよ、戦姫!」
「……えっ?」
私は思わず自分を指差した。
「私ですか!?」
「そうだよ。あの模擬戦で訓練場の壁をぶっ壊しただろ?」
「うっ……」
思い出した。
あのときは、修理費のことしか頭になかった。
「最初の相手を一瞬で倒したと思ったら、最後は鎧をぶっ壊すし。あれだけ強けりゃ、戦姫って呼ばれてもおかしくないだろ!」
「いやいやいや! そんな大げさですよ!」
私は慌てて手を振った。
戦姫。
なんだか、すごく強そうな名前。
私には似合わないと思う。
だって、私はただの冒険者だし。
師匠に教えてもらった剣を使っているだけ。
でも、周りの冒険者たちは楽しそうに笑っていた。
「いいじゃねえか、戦姫!」
「次の街でも暴れてこいよ!」
「壁は壊すなよ!」
「うぅ……」
私は思わず頬を膨らませた。
……壁は、もう壊したくない。
◇
ギルドを出ると、街の人たちにも挨拶をした。
料理屋のおやじさんにも、旅に出ることを伝えた。
「そうか。もう行くのか」
「はい! いろんな街を見てみたいんです」
「なら、腹が減ったらいつでも食いに来い。旅先でも美味いもんを食えよ」
「ありがとうございます!」
私はお礼を言って、街の門へ向かった。
初めて山を下りて、この街に来たとき。
私は何も知らなかった。
街の人たちも、冒険者のことも、世界のことも。
でも、今は違う。
たくさんの人と出会って、いろいろなことを経験した。
この街で過ごした日々は、きっと忘れない。
私は門の前で立ち止まり、振り返った。
「……また来ますね!」
誰に向けた言葉かは、自分でも分からなかった。
でも、そう言いたかった。
そして、私は前を向いた。
次の街へ。
次の景色へ。
次の星を探して。
師匠が見せてくれた世界を、もっと知るために。
私は一歩、踏み出した。
今回は、リリアが初めての街を旅立つお話でした!
鍛冶屋のドワーフから聞いた師匠の過去。
そして、ギルドで付けられていた異名「戦姫」。
本人はまだまだ自覚がないようですが、少しずつ冒険者として有名になってきているようです(笑)。
これからもリリアの旅を見守っていただけると嬉しいです!
よければ感想やブックマークで応援していただけると嬉しいです!




