グラニータ公爵。
グラニータ公爵はここに来て適切な治療を受けることが出来たのか、
以前よりも顔色が良くなっていた。
フランチェスカとして最後見かけた時以来だから、
余計にそう感じるのかもしれない。
「グラニータ公爵、お初にお目にかかります。
エリオント・サントノーレ第二王子殿下の側近を務めております、
パキラ・クラフティと申します」
「にゃにゃにゃーにゃ!
《エーデルワイスですにゃ!》」
パキラの挨拶に続き私も挨拶をすると、
リエールがクスクスと笑っている。
言葉は通じていないのだろうが、
何となく挨拶しているのがわかったのだろう。
私はリエールの腕の中からピョンと飛び降り、
グラニータ公爵の膝の上にちょこんと座った。
グラニータ公爵も私の挨拶を聞いて、
私の頭を撫でながら「ご丁寧にありがとう。」と穏やかな笑みを浮かべている。
こんなにグラニータ公爵の穏やかな笑みを見たのは、
初めてかもしれない。
「パキラ殿。挨拶が遅れて申し訳ない。
まだ歩くのがやっとでね。
椅子に座っての挨拶で申し訳ないのだが……
パネットーネ国で宰相を務めている、
ジオラス・グラニータと申します」
挨拶を軽く済ませ、
グラニータ公爵の話やこの1ヶ月のことなどを話していく。
「私がこちらにきたのは丁度1年前くらいでしょうか。
カルミアという少女が王宮を出入りし始めて、
オルテンシア王太子の隣にいるようになってしばらく経ってからだったと記憶しています」
それまではずっと窓の部屋に閉じ込められて、
国王の仕事をさせられていたそうだ。
フランチェスカが王宮に通っている時は
軟禁されることなく家に帰れていたらしいが、
フランチェスカが貴族院に通い始めてからは
毎日仕事仕事の日々だったと話してくれた。
「部屋から出られる時は公式の催しがある時や、
宰相がいないと示しがつかないときなどだったので、
恐らくほかの貴族は気づいていないでしょうな」
パネットーネ国の貴族は我が身可愛さで
何もしない貴族が多い。
宰相が国の貴族たちを見捨ててもおかしくないくらいには……
でも私のお父様たちはずっと貴方を探していたよ。
心配していたよ。
と伝えたいと思った。
こんな時に猫だと話せないのが辛い……。
「ずっとあなたの事を探していた家族がいましたよ。
私も一緒に探していましたので……」
「フランチェスカ嬢のご家族でしょうか?
あの家族は私の事をずっと心配してくださっていました。
何度も国王に提言してくださっていたのです。
でも……国王には何も響かなかった」
きっと昔のことを思い出すと
精神的にまいってしまうのだろう……
フランチェスカも似たような状況だったからよく分かる。
この2人よく似ているのだ。
何とかこの場を打開しようと考えていると、
リエールがパチンと手を叩いた。
「さて、過去は何をしても変わらないのです。
これからのことを考えましょう。
やらなくてはならないことが沢山ある」
リエールが一言そう言うと、
どんよりとした空気が一気に変わった。
「まず、グラニータ公爵。
私たちはこれからパネットーネ国に向かいます。
そこにあなたもご同行願いたい。
元パネットーネ国王太子殿下」
リエールの言葉に、
私とパキラ2人がバッとリエールの方を向く。
どうやらパキラも知らなかったようだ。
「2人とも知らなかったようだね。
この方は今の国王の兄上だよ。
ただね……色々複雑な事情があるんだ」
王族の家系が子供が出来にくい家系なのかは分からないが、
前国王もなかなか子供ができず悩んでいたらしい。
結婚して10年……
前王妃もなかなか子供に恵まれず、
周りからも急かされるばかりで精神的に疲れてしまい、
寝込みがちになっていたそうだ。
「そこで、国王は王妃に無理はさせられないと
側室を一人迎え入れることにした……
パネットーネ国は王族のみ、一夫多妻制が認められているだろう?」
そして側室との間に生まれたのが、
グラニータ公爵だったという訳だ……
ところが、
王太子として育てられていた時に
まさかの出来事が起こった。
グラニータ公爵が生まれて10年後……
王妃が身篭った……
「その通りだ。
側室としての子として生まれた私は、
正妻の子が生まれたと同時に養子に出されたんだ。
そして私の母親は……
病で亡くなったと聞いている。
生まれてから1度も会わせてもらえなかったから、
本当かどうかは分からないがね……」
この話を聞いて一つだけ気になった。
国の人はこの話を知らないのだろうか……。
きっとパキラも同じことを思ったのだろう。
「その話は……
他の貴族たちは知らないのですか?
一切そういった話をパネットーネ国では聞かなかったので……」
「そうですね……
恐らく成人になる頃に私の存在を明かそうと思っていたのでしょう。
ずっと秘匿されて育てられたんです。
知っていた人は誓約書を書かされていたはずです。
側室がいたことを知っているのも、
もうほとんど生きていないでしょう。
病死という名で殺されたか……
国外追放されましたから」
私は生きていますが、
宰相にすることでずっと監視していたのだと思います――
そう付け足す公爵の話を聞いて、
本当にこのパネットーネ国の王族はクズしかいないのだなと思った。




