未来を変えるのは難しいのかもしれない……
エーデルワイスがいなくなって、あっという間に一ヶ月が経っていた。
この一ヶ月、王都のいたるところを探したが、まったく見つからない……
「本当にどこに行ってしまったのかしら……」
ここ最近は、エディがいなくなった影響か、
どことなく家の中もどんよりとしている。
たった数年一緒にいただけなのに、
エディがいなかった頃の生活が思い出せないくらいには、
大きな影響を与えてくれていたのだと、今になって感じる。
一人、窓際で外を見ながら考え事をしていると、
部屋をノックする音が聞こえた。
「フランチェスカ。今いいかしら?」
お母様が部屋に来るのは珍しいなと思いながら、扉を開ける。
「どうしたのですか?」
「そ、その……エディちゃんがいなくなってしまって寂しいのは分かるの……
でも、た、たまには気分転換にお茶でもどうかしら?」
いつも背筋を伸ばして話しているお母さまが、
珍しく下を向いて、少し自信がなさそうに話している。
その姿に、思わず少し笑ってしまう。
どれだけしっかりした人でも、自信がないことはあるのだろう。
気が弱い自分がいけないのだと思っていたけれど、
そんな当たり前のことにも気づけなかったなんて……
エディがいなかったら、今も気づけなかったのかもしれない。
私はお母さまの手を取って、目を見て話した。
「お母さま……誘ってくださりありがとうございます。
せっかくですから、一緒にお茶しましょう。
カトレアお義姉様もお誘いしていいですか?」
「も、もちろんよ!
天気もいいですし、お庭でお茶にしましょう」
もうすぐ昼になる時間ということで、
昼食後、お庭で会う約束をして、扉を閉める。
そして早速、お茶会の準備を始めた。
***
昼食を食べ終え、お庭に向かうと、
すでにお母様とカトレアお義姉様が二人で談笑していた。
「お母さま、カトレアお義姉様、
お待たせしてしまって申し訳ございません」
「全然待っていないわよ。ねえ……カトレア?」
「ええ……私も先ほど来たばかりです」
私は二人に「ありがとうございます」と一言伝えてから席に着いた。
皆、それぞれ近況報告をしていく。
ただ、その中にエーデルワイスの話はなかった……
きっとそれぞれが、エディのことを話さないようにしているのだろう。
家族の皆がエディを探していたのは知っている。
もうエディは、フランチェスカとしてではなく、
エーデルワイスとして家族の一員だったのだ。
お母様とカトレアお義姉様の話に相槌を打っていると、
不意にお母様が声をかけてきた。
「フランチェスカは最近どうなの?
貴族院とか……楽しく過ごせている?」
「えぇ。ダリアという女の子と仲良くなったのですが、
最近はいつも一緒に行動しています。
毎日いろいろお話しできるので、
以前よりも貴族院に行くのが楽しくなったんですよ」
それに、カルミアが卒業してからというもの、
学院には平和が訪れつつあった。
今まで男性たちは、
意識ここにあらずといった様子の者が多かったが、
最近はそういった人もほとんどいない。
おかげで、カルミアの名前も聞かなくなった。
卒業パーティーの時、
ほとんどの方が私とオルテンシア王太子、
カルミアとのやり取りを見ていたようだが、
それに対して何か言ってくる人はいない。
むしろ、すれ違うたびに――
「あの時の一言はとても気持ちがよかったわ!」
「あんな王太子、婚約破棄して正解よ」
「カルミアにはほとほとうんざりしていたの。ありがとう!」
と、声をかけていただけることが増えてきた。
そこから少しずつ話す機会も増えて、
ダリア以外の方とも話せるようになっている。
正直、周りの人たちは王太子との婚約が破棄されたと思っているだろうけれど……
実際はまだ、国王が首を縦に振っておらず、
成立しているわけではない。
できれば、学院にいる間に決着してほしいところだ。
「ふふ。よかったわ。
貴族院に通い始めたばかりのころは、
あまり元気がなかったから心配していたの。
でも今は大丈夫そうね。
貴族院に通うのもあと数ヶ月だもの……
お友達とたくさん話して楽しみなさいね」
「ありがとうございます!お母さま」
三人で談笑していると、
急に家の外が騒がしくなっていることに気づく。
私以外の二人も気づいたのだろう。
「お義母様、フランチェスカ。
外がなんだか騒がしくはないですか?」
「そうですね……何かあったのでしょうか……?」
カトレアお義姉様が外に目を向けるので、
私もそちらを見る。
お母さまは近くにいたメイドに、
様子を見てきてちょうだいと声をかけていた。
そして――
メイドが部屋を出ようとした、その瞬間。
外から大勢の騎士が中に押し寄せてきた。
そして一番前に立つ騎士――
恐らく騎士団長だろう。
「こちらにフランチェスカ・アマレッティ殿はご在宅か」
と声をかけてきた。
お母様とお義姉様が、心配そうにこちらを見る。
それを見て、私は笑顔を返した。
「はい、私ですが……
どのようなご用件でしょうか?」
「フランチェスカ・アマレッティ殿に国家反逆の罪がかかっている。
国王命令により、このまま貴殿を捕縛する」
その言葉を聞いて、
――とうとうこの時が来てしまったのか、と。
そう思う以外、何もできなかった。
やはり、未来を変えることは難しいのだろうか……
今ここで何を言っても、何も変わらない。
そう判断した私は、
今はいないエディが、きっとどうにかしてくれると信じて――
騎士団に連行されていった。




