3.
「おじいさん!!!」
灰色の防波堤の上から大声を出したウィルバーは、老人のいる海辺まで一気に駆け下りた。
「……はて?」
あまりの出来事に目を丸くする老人。
しかしウィルバーは構うことなく息を切らしながら問いかけた。
「あのっ! ……ぜえ、さっき、あっちの上から……はあはあ、見かけて!」
「まあ落ち着きましょうかねえ」
優しい笑みを浮かべた老人が、ウィルバーの大きく動く背中をゆっくりと撫でてくれた。
おかげでウィルバーは少しゆとりが持てた。
「ごめんなさい、急に。ウィルバーと言います。さっき、部屋で寝てたら天井に虹色の光が見えて、それで」
「そうかい、そうかい。君の目には色彩が見えたのかい」
「色彩?」
「そう」
老人は静かにうなづくと、灰色のコートのポケットから赤、青、緑などの色を持った鉱石を見せてくれた。
「――!!」
――色がっ!
ウィルバーは灰色の海辺では眩しいほどの色を含んだ鉱石に、目を細めた。
「これは“レーア・エルツ”という鉱石だ」
「“空の鉱石”?」
「そう」
老人が鉱石の一つを、空も海もわからない灰色の世界へ突き出した。
ウィルバーは老人と同じようにその鉱石を眺める。
「これはここから北に行った国で見かけたライムという果実の色だ」
「ライム……緑……」
――色が……見える‥…!
ウィルバーは口をあんぐりと開けてその色を見ていると、老人から何かを手にぽんっと置かれた。
手のひらには老人が持っていた色とりどりの鉱石と形は同じだが、色を持っていなかった。
無色透明。
「レーア・エルツ……?」
「そう」
老人がにっこり微笑んだ。
「君は七つの色が見える。でもこの世の中はもっともっと色にあふれている。願えばそれを取り込むことができるんだよ、この鉱石は」
「だから“空の鉱石”」
「そう」
老人は深くうなずいた。
「からっぽの鉱石だ」




