きゅうけいさんは予想が外れることもある
地下二階? へと降りていく。
クエスチョンマークなのは、これが本当に二階なのかわかんないからである。
当たり前だけど、坂道のどこを一階二階と定義するかなんてわかんないからね。あるのかもしれないけど!
ただ、レーダーの魔法はその影響を受けていた。
言うまでもなく、上の階が見えなくなっていたのだ。
ここはもう現実系ファンタジーとゲーム仕様の境目という感じがするので受け入れるとして。
「どこが階段かも分からないのは困りものだなあ……」
独り言とともに、ぴたっと止まった蟻の魔物を眺める。
こっちの実力を見てなのか分からないけど、意外と警戒心が強いあたり頭がいいのかもしれない。
「こんにちは。下ってどっちか分かる?」
私が声をかけてみると、腕を売り上げて襲ってきた……ので懐に潜って首をカット。
うーん、さすがに会話はできないか。
独り言で蟻に話しかける魔王、実に間抜け。
そんなのは、虫の王様でもなくちゃ無理。
そういや私も何か使役できるのかな?
ベルフェゴール、ベルフェゴール……。
うーん、ナマケモノかな!
なんちゃって……いや、実際にナマケモノだった気がしてきた。
まあいや、私の元にはセクシーで気の利くチョーいい女のパオラさんがいるので問題ありません!
最近ベルさんに取られちゃってるけど。
ま、パオラさんが幸せそうなのでOKです。(サムズアップ)
とはいえこの階もなんもなさそう。
「こういうダンジョンの低い方へと潜っていくの、竜族の集落以来な気がする」
あの時は……そう、マーメイドのビーチェさんがいたんだったね。
結構潜った気がする。
「そう考えると……どれぐらい深いかは考えないとなあ」
さすがに、外と中で時間の流れが違う『置き去りのダンジョン』みたいなヤバそうな感覚はないけど、あんまり時間もかけてられない。
ちゃちゃっと攻略していきますかね。
第二階層、一気に時間を止めて蟻部隊を全て倒す。
下り坂は壁の中。
第三階層、変わり映えしない蟻部隊を全部倒す。
下り坂は中央の地面。(何かルールがあるのか、ダンジョンの壁は殴って壊れるタイプじゃなさそう)
第四、蟻がちょっと強くなってるけど誤差。
下り坂は再び壁の中。
第五、蟻。下り坂は壁の中。
第六、蟻、下り坂は細い隙間の先。
第七、蟻、下り坂は隠れてない。
第八、蟻と犬。
「……犬?」
具体的に言うと、犬の姿をした魔物である。口から火とか吹くやつ。
なんていうか、勢い良く噛みついてくるタイプのやつ。
ゲーム画面上だと小さい敵なんだけど、こいつが実に厄介でございまして。
というのも、実際の人間ならまだしもゲームの上だと全てはステータスのもの。
体が大きければ筋肉が大きいということはなく、何だったらノッポのホブゴブリンより空中飛んでる虫の方が十倍ぐらい体力あるなんてザラなのである。
だから小型犬に回避されると、とにかく攻撃が当たらないの何の。
これが狼ならまだいいってぐらい、小型の魔物は厄介。
あとボスと一緒に大量発生されると、プレイヤーキャラが動かなくなる。
所謂ハメ技である。
それがボスのデーモンと一緒に出たものだから、ついたあだ名が小型犬のデーモン。
本体の大型ボスはオマケ扱いと、実に哀れであった。
「なつかしいなー」
いや懐かしんでる場合じゃないんですけどね。
懇切丁寧に説明したけど、今の私が苦労する相手ではないんだよね。
もちろんそれは肉体レベル的な意味でもあり、プレイヤー的な意味でもあり。
さくさくっと倒していきます。
ちなみに魔物だと判断した理由は、『蟻が犬を襲っていない』から。
モンスター同士は別種族でも殺し合わない、これゲーム世界の常識ね。
草食動物タイプの魔物と肉食動物タイプの魔物は、仲良く人間だけを襲うのです。
改めてそう考えると、ゲームのモンスターバトルって不思議だ。
下り坂はもう全く隠れていないっていうか、普通に階段でした。
あれ、ここ蟻の巣……?
次、九階層。
当然いるのは蟻のモンスターで……。
「————全然違うじゃん!!」
私のツッコミに、一斉に魔物が振り向きます。
目の前に現れたのはですね。
オークでした。
「なんか、こいつ見るのすげえ懐かしい気がする」
あれはそう、エッダちゃんの集落に行った時のこと。
集落の北側にやってきたデーモンが引き連れていたのでした。
人間にとっちゃ結構厄介なレベルだけど、村のみんなにとっては余裕の相手だったね。
でも、危機には違いなかったと思う。
「それに……」
この場所、もうなんていうか普通に『お部屋』って感じだ。
しっかり石で作られた壁と、まっすぐの地面。
……ってことは。
「何か、いる?」
自然発生的な魔物だとは思えない。
……。
何か、こう、妙な予感がある。
蟻の魔物。虫。
小型犬のデーモン。狼。
久々に見たオーク。
オークは確か————。
私は、こんな地下に飛んでいた蝿の方をしっかり見て、声をかけた。
「まさか、そういうことなの?」
私は第九階層の魔物を全て薙ぎ払うと、真っ直ぐ真ん中の道を降りていった。
第十階層。
これが最後の場所だろう。
部屋の奥には、予想通り——
——とは程遠い光景だった。
小さく丸まって頭を抱えていた黄色いデーモンの子供と。
「ど、どうしよどうしよ、来ちゃったよお……!?」
「うう、そっち行ってよ。私嫌だよ」
「無理無理無理! 見てたでしょ。絶対勝てないって!」
なんか、女の子が三人いた。
……どういうこと?






