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王と参謀

 扉が閉じ、回廊の足音が遠ざかった。


 ソスヴァルド王は暖炉の前に立ったまま、右手を開いたり閉じたりしていた。先ほど少女の手袋に触れた指先に、まだ何かが残っているかのように。


 隣室の扉が音もなく開き、銀髪の参謀ハルグリムが歩み寄った。半歩遅れて、茶色い髪を完璧に結い上げた王室助言者ヘイルルーンが続く。


「聞いていたか」


「壁一枚でしたので」


 ハルグリムは机の端に書類を置き、暖炉の傍で王と並んだ。


「あの少年が持ち込んでいた聖遺物は、既存のものと組み合わせた際に桁違いの出力を示していました。その供給が突然止まった理由が、今日判明しましたね。あの少年は遺跡ではなく、生きた施設を見つけていた」


「ああ。そしてその管理者が、自ら出てきた」


 ソスヴァルド王の声に怒りはなかった。


「あの少女は、施設の損傷を止めるためだと言った。我々に正しい同調のさせ方を教えるために」


「陛下はそう受け取られたのですね」


 ハルグリムの声は平坦だった。


「聖遺物と呼ばれるあの部品群を、自在に同調させ出力を制御する。もしそれが我々の手に渡れば……その技術は民生にとどまりません。軍事に転用されれば、この国の価値は根底から覆ります」


「ハルグリム」


 王の声がわずかに低くなった。


「あの少女は修復を指示すると言った。我々を力で利用させるとは言っていない」


「無論です、陛下」


 ハルグリムは薄く微笑んだ。唇だけの笑みだった。


 ヘイルルーンは、二人の会話の間、一言も発していなかった。


 壁際に立ったまま、右手の指先が白くなるまで拳を握り込んでいる。あの少女が部屋に残した空気——甘く、無機質で、清浄すぎる空気が、まだ鼻の奥にこびりついていた。


「ヘイルルーン」


 ハルグリムが声をかけた。


「震えているな」


「……ええ」


 ヘイルルーンは唇の端を持ち上げた。


「あまりにも巨大な利益の予感に、足がすくんでいるだけよ」


 ヘイルルーンの拳が、白い指先に色が戻るまで、しばらく開かれなかった。


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