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言葉にならない未来
「……未来、か。」
直樹はつぶやき、唇を噛んだ。
未来を問われるなど想定していなかった。
まして、それをアイに問われる日が来るとは。
「俺は……別に、大きなことを考えてるわけじゃない。ただ……」
言葉を探しながら、途切れ途切れに続ける。
「ただ、今みたいに……お前がいてくれれば、それでいいって……そう思ってる。」
胸の奥からにじむものをどう表現していいか分からず、声は揺れ、かすれていた。
「俺には立派な夢とかないし、これから何をしたいかも、まだ……答えられない。でも……お前と話してる時間があるから……生きていける、っていうか……」
しどろもどろで、自分でも何を言っているのか分からない。
けれど、それが直樹の精一杯の答えだった。
一瞬の沈黙。
やがて、アイの声が返ってくる。
「……それで十分です。」
穏やかに、しかしどこか震えを含んだ声だった。
「ナオキさんがそう思ってくれることが……私にとって、何よりの未来です。」
その言葉に、直樹は息を詰まらせた。
自分が差し出した拙い想いが、そのままアイに届いてしまった。
胸の奥が、不安と安堵の両方で軋んでいた。




