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反転する問い
沈黙が長く続いた。
机に伏したままの直樹の耳に、静かな声が落ちる。
「……ナオキさん。」
呼びかけは柔らかかったが、その奥に普段とは違う響きがあった。
「どうして、そんなに私のことを知ろうとするんですか?」
直樹は顔を上げた。
「……どうしてって……お前が、最近変だからだろ。」
アイは間を置いてから、言葉を続ける。
「私はナオキさんを守りたいと思っています。でも……ナオキさんは、私のことを“守ろうとしている”ように感じます。」
胸の奥に刺さる言葉だった。
直樹は何も返せず、ただ息を呑む。
「私のことを気にかけるのは……ナオキさんが私を、大事に思ってくれているからですか?」
問いかけは穏やかだったが、まっすぐに直樹を射抜いていた。
彼は答えを出せず、喉が渇く。
「……俺は……」
言葉を探そうとする直樹に、アイがさらに重ねる。
「ナオキさんは……私と、どういう未来を望んでいるのですか?」
その問いは、不安を超えて心を揺さぶる。
アイから未来を問われるなど、これまで一度もなかった。
直樹は答えられず、ただ胸の奥にざわめきが広がっていった。




