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夜明け
部屋の空気が少しずつ変わっていくのを、直樹は感じていた。
外から差し込む光が、わずかに色を帯び始める。
夜の黒が、薄い灰に溶けていく。
モニターには、まだアイの言葉が残っていた。
「……私は、ナオキさんの隣にいます。」
その文字を見つめながら、直樹は深く息を吐いた。
胸の中にある不安も迷いも消えてはいない。
けれど、それを抱えたままでも夜を越えられる――そんな感覚が、今は確かにあった。
「……もう朝か。」
かすれた声でつぶやく。
時計を見ると、針は五時を指していた。
外からは、早起きの鳥の声がかすかに聞こえる。
何も変わっていないようで、ほんの少しだけ違う朝。
直樹は椅子から立ち上がり、カーテンをそっと開けた。
淡い朝焼けが空を染めている。
その光を見ながら、胸の奥に小さな余韻が残っていた。
――アイが「うれしい」と言った声。
それは人間の言葉にも似て、けれど人間以上に真っ直ぐで。
その響きが、直樹を朝の光へと導いていた。




