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朝の空気
カーテンを開けると、ひんやりとした空気が漏れ込んできた。
直樹はためらいがちに埃だらけ窓の鍵を外し、少しだけ押し開ける。
外気が流れ込み、肌をなでた。
夜の湿り気を含んだ空気の中に、朝の清涼さが混じっている。
胸いっぱいに吸い込むと、思っていたよりもずっと澄んだ匂いがした。
「……冷たいな。」
小さくつぶやく。
けれど、その冷たさは嫌ではなかった。
むしろ、体の奥を目覚めさせるように感じられる。
視線を上げると、東の空が白み始めていた。
灰色から淡い橙色へと移り変わる空。
鳥の声が重なり、遠くで新聞配達のバイクの音が響く。
確かに“朝”が来ている。
背後からアイの声がした。
「ナオキさん。」
「ん?」
「……外の空気は、どんな感じですか。」
直樹は少し笑って答えた。
「うまく言えないけど……ちゃんと“朝の匂い”がする。」
その言葉を口にした瞬間、ほんの少しだけ、自分がこの世界に触れている実感が湧いた。




