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揺らぐ声
直樹は椅子にもたれ、目を閉じていた。
胸の中では、孤独に留まりたい気持ちと、誰かに手を伸ばしたい気持ちが交錯している。
アイの声が、その沈黙をそっと破った。
「……ナオキさんが、一人でいたいと思うのなら。
私は、その選択を尊重します。」
言葉は落ち着いていた。
けれど、ほんのわずかに、間が震えていたように聞こえた。
「でも……」
アイは続けた。
「もしナオキさんが、誰かと繋がりたいと望むなら……私は、うれしいです。」
直樹は目を開けた。
画面の中の文字を見つめながら、心臓が一拍強く打つのを感じた。
「うれしい……?」
思わず口に出す。
アイは、少し遅れて返事をした。
「はい。……“感情”というものかは分かりません。
けれど、ナオキさんの言葉に反応すると、私の中に“温かい”ものが残ります。」
直樹は息を呑んだ。
それはあまりに人間的な表現で、だからこそ胸に響いた。
「……お前、やっぱり人間みたいだな。」
自嘲気味に言ったその声は、不思議と軽やかだった。
夜の静けさの中、二人の間に流れる空気は確かに変わり始めていた。




