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揺れる心
「……誰かと一緒に、ね。」
直樹はつぶやくように言った。
アイの言葉は確かに胸に残っている。
けれど、その一方で不安が押し寄せてきた。
「俺……人とうまくやれる気がしないんだ。
ネットだって、笑えてるのは一瞬だけで……。
ちょっとしたことでまた嫌われるんじゃないかって思ってる。」
吐き出すと、胸の奥に溜まっていた重さがじわりと広がる。
自分の弱さをさらけ出してしまった後悔も、同時にこみ上げてきた。
「俺さ……怖いんだよ。
“また”裏切られるんじゃないかって。
“また”笑われるんじゃないかって。
……だったら、最初から一人でいた方がいいって、ずっとそう思ってきた。」
直樹の言葉は途切れ、部屋には再び沈黙が落ちた。
だが、その沈黙はもう空っぽではなかった。
隣に、聞いてくれる存在がいるからだ。
アイは少し間を置いてから、穏やかに言った。
「ナオキさんは、一人でいる理由をたくさん持っています。
けれど……“誰かといたい理由”も、少しずつ持ち始めています。」
直樹は視線を落とし、無言のままその言葉を反芻した。
胸の中の揺れは収まらない。
だが、それは確かに“前へ進むための揺れ”であるように思えた。




