屋上で
正門の鍵をすんなり開け、てくてくと歩いていく紫野さん。
迷うこともなく、屋上へと向かっていく。
「え、えと、紫野さん?今日転校してきたばっかですよね?」
「夏休みに何回か見学に来てたから、大丈夫、全部把握してるよ」
いや、全部把握ですと!?2年になった俺でもまだ迷うことがあるのに!?記憶力がいいんだな……。
「紫野さん?屋上で何するんだ?」
「秘密〜。それより、聞いておきたいことがあるんだけど」
「は、はいなんでしょう!?」
「君、屋上に登ったことある?」
「一応、あります!友達と、一度は登ってみたいよねーみたいな感じで、入学した次の日に登りました!」
「ふふっ、何その体育会系のノリでの返し方」
そんな事を話しながら、屋上への階段を登っていく。
「着いたね」
「紫野さん、そろそろなにするのか教えてもらっていい?」
「あ〜、晃一くんタメ語に戻った」
「はぐらかすな!」
「まあまあ、見てればわかるから」
ええ〜……。
てくてくと、屋上の真ん中にまで登っていく紫野さん。ついていこうとすると、
「あ、危ないからそこで待ってて?」
「はーい」
隅の方に移動させられた。
危ないって、何するんだろ?
「始まったら、絶対に近づいてこないでね。約束だよ?……指切り、しよっか」
紫野さんと指切りをする。
「いてっ!」
静電気がビリッと来た。しかも結構強めのやつ。
……夏なのに静電気?この湿度高いのに?
とりあえず指切りを交わし、俺は屋上の隅まで追いやられる。紫野さんとの距離は50メートルぐらいある。
「絶対に、何があっても、そこから離れないでねー!」
紫野さんはそう叫び、屋上の真ん中にたたずみ、2つに分けて結んでいた髪を解いた。目を閉じている。
1秒。
2秒。
3秒。
4秒。
5秒。
不意に紫野さんはかっと目を開き、さっき正門を開けたときのように、キーボードに手を置くような仕草をした。
そして、勢いよく叩き始める。
カタカタカタカタカタカタカタカタガタガタガタガタガタガタガタガタガダガダガガガガガガガガガガ
ついにはガガガガと、よくわからない音が聞こえ始め、次第に紫野さんは浮上していく。
「わあああっ、紫野さん、大丈夫!?」
落ちたら死ぬ、とはっきりわかる高さまで浮き、止まった紫野さん。落ちたら危ないので、下にスタンバイしに行きたかったが、紫野さんが「近寄らないで」といっていたのを思い出し、すんでのところで我慢をする。
その時。
「―――――――――」
もう何がなんだかわからない音を出しながらキーボードを叩き続けている紫野さんの周りで、ぱりぱり、と紫電が走った気がした。……気のせいか?
ばりばりばりっ。
いきなり、紫野さんの髪の毛がぶわあっと膨らみ、「気のせい」では済まないほどの紫電が紫野さんを覆う。
「紫野さん!危なあああああい!」
思わず叫ぶ俺。だが、聞こえていないようだ。
「―――――――――」
目に見えないキーボードを叩き続けている。
「!?」
不意に、紫野さんの体から力が抜けた。そのままゆっくりと落下してくる。
「あっ、ちょっ、待っ……!紫野さん!」
受け止めに行きたかったが、ゆっくりを落ちてくるように見えたのはアドレナリンのせいだったらしい。俺は間に合わなかった。
「し、紫野さん……?まさか、死んでない、よね……?」
返事はない。まさか。本当に……?
「紫野さん!起きて!紫野さん!ねえ!」
「うるさいなあ。生きてるってば。何もこんなことで泣かなくてもいいじゃん」
「え?俺、泣いてた?」
「うっそっだよ〜ん!真に受けちゃって〜」
「うるさい!心配したんだからな!」
「んも〜、毎日やってるんだからあ、心配しなくていいんだよ?」
「そういうことは最初に言え!人の寿命を縮めるな!」
「はいはい。で、わかった?」
「何がだ」
「私が超能力者だってこと!」
「え?どこが?」
「鈍っ。……説明してあげよう。まず、宙に浮いた。んで、電気を操ってた。以上!」
「なるほど。宙に浮いて、電気を操ったら超能力なんだ……ってあれ、電気を操ってたんかい!」
「そうだけど?何だと思ってたの?」
「いや、その、パントマイムかと」
「…………」
「…………」
「…………」
スベったか。
「ごほんごほん!で、なんで紫野さんは俺に、超能力者であることを伝えたかったんだ?」
「え〜だって、晃一くんさあ、ってこれは言っちゃいけないんだったな。えーっと、晃一くんの幼馴染に深鈴ちゃん、いるでしょ?あの子も超能力者だよ?それは知ってるよね?」
「そうなの!?」
「あ、知らなかったか。じゃあ、晃一くん、最近奏音ちゃんに会ったでしょ?あの子が超能力者ってのは流石に知ってるよね?」
「ああ。で、それがなんか関係あるのか?」
「んん〜、ない」
ないんかい!
「なんとなく来ただけだよ〜。あと、頭がそこそこいい学校に行きたくて、それなら同族……じゃない、超能力のこと沿ってる人がいるとこがいいじゃん?ここぐらいしかなかったんだもん」
あっそ。悪かったですねそこそこの頭で。
「でさ、電気を操って何してたの?」
「ちょっとそれは話すと長くなるから、また後で……うう、お腹すいたぁ」
「あめ、いる?」
涙目でお腹を抑える紫野さんがかわいそうになってきたので、常備してある飴をあげることにした。
「うん、ありがと。じゃあこの、ウルトラDXソフトクリーム〜抹茶✕バニラ✕いちご+チョコスプレ付き〜がいい」
高かったんだぞそれ!?
次回、美雷ちゃんの超能力についてです。




