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夏休みの終わり

 きーんこーんかーんこーん。

 朝である。太陽の光が眩しい。そして。


「遅刻するうううっ!」


 俺の走りっぱなしの足はガクガクしている。が、止まってはいられない。足よりも俺の無遅刻無欠席の記録の保持が大事だ。


「はあ、はあ、はあ、はあ」


 とにかく走る。走って走って、信号ではきちんと止まって、青になったら走って。


「はあ、はあ、ちゃ、チャイムが鳴るまであと……3分!?」


 腕時計を一瞥して絶望する。ちなみに学校までの距離はそこまで遠くはない(走って2分ほど)のだが、階段が多い校舎なのである。もう、きっつい。


「はあ、はあ、ラスト、スパー、トぉ!」


 そうだった、忘れていたよ地獄ののぼり坂。角度がでかすぎるんだって……!




「ふう、なんとか、上りきった……!」


 門にたどり着いた俺は昇降口に駆け込み上履きは後で履こうと手にぶら下げ地獄の階段をフラフラと登りすっ転びそうになりながら教室に滑り込む。


「せええええふっ!先生、これセーフ、ですよね!!」


 それと同時にチャイムが……鳴らなかった。しかも、先生もいなかったし、HRも始まっていなかった。


「あ……あれ?」


 すると、哀れなものでも見るかのように近づいてきた人影が一人。

 小学校からの親友の阿波野(あわの)智司(さとし)である。


「晃一格好良く入ってきたところ悪いが、2学期から始業は10分遅くなったんだ。プリント配られただろ」


「あ、そうだった。ええ!?俺、恥っず!全然間に合う時間にセーフって滑り込むって、恥ずかし!!」


 赤面する俺。方をぽんぽんと叩く智司。そして皆の、「見なかったふりしたほうがいいんだろうけどちょっと面白かったから他のクラスの人にまーわそ」みたいな雰囲気。ああっ!いそいそとスマホを取り出して猛スピードでなにかを打ち込んでるやつがいる!


「とにかく、あと10分で始業だから、早く準備しろよセーフ君」


 そう言って去っていく智司。変なあだ名までつけやがって。俺はその後ろ姿を恨めしげに眺めていたが。智司の言う通り、始業まであと10分なので準備を始めた。




「ほら朝の会始めるぞー」


 始業式後、朝の会が始まった。


「今日は転校生を紹介する」


 そう先生が言うと、とたんに教室内は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。


「転校生だって」


「可愛い子だといいなーデュフフ」


「えーイケメンのほうがいいーあとお前キモイ」


「話が合えばそれでいい」


「転校生かー」


「久しぶりだねえ」


「というか、高校入って初めてでは?」


「ねー」




「静かにしろー。じゃあ入ってきてもらうぞーおーい紫野、入ってこーい」


 扉は開かない。


「あ?多分そこにいるはずなんだが。おーい?入ってこーい」


 がたがたと扉を開け、廊下を覗く先生。




 数分後。


「寝てた。寝てたぞこいつ、転校初日に……!」


 やけにげっそりした顔の先生と、ボサボサの髪の毛をツインテールにした女子が入ってきた。


「紹介する。今日から転校してきた、紫野(しの)美雷(みらい)だ。皆、仲良くしてやってくれ。それじゃ紫野、自己紹介を……って寝てる!?」


 どうやら転校生はよく寝る性格のようだ。


「おーい紫野、起きろー」


 ゆさゆさと紫野さんを揺さぶる先生。さっきもこうやって起こしてたのかな。


「……ふあぁ、おはようございますぅ」


 目覚めた彼女の第一声。意外にハスキーボイスでちょっとかっこいい。声はな。


「ほら紫野、自己紹介」


「はぁい。紫野美雷ですぅ。趣味は寝ること、特技も寝ること、増やしてほしい科目はお昼寝ですぅ。よろしくお願いしますぅ」


 それだけいうと紫野さんは寝てしまった。立ったまま。すげえ。


「それじゃあ紫野の席は……あそこだ」


 そう言って先生が指さしたのは、俺の隣の席だった。


「おおーい一ノ瀬、紫野寝てるからお前引っ張っていけー俺は起こすのに嫌気が差した。もう何回起こしたかすら覚えてない」


「はあ……」


 仕方ないので、紫野さんを迎えに行く。引っ張っていくのは流石に失礼かと思い、さっき先生がやっていたように揺さぶってみる。


 ゆさゆさゆさ。

 ゆさゆさゆさ。

 ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ(337拍子)。


 かなりの時間揺さぶるが、起きない。声も加えてみた。


「起きろー飯だぞー」


 たくさん寝る系の人はご飯が好き(自己統計)なので、とりあえず「飯」というワードをとなえてみた。先生の口調に似せて。

 跳ね起きた。いや跳ねてはいないけど。勢いよく、目がパチっと開いて、


「ご飯!?ご飯どこ!?ご飯!」


 わお。俺の統計は間違っていなかった。でもまだ朝である。必死にご飯を探しているのがちょっとかわいそうになったので、ネタばらし。


「うそうそ。はい、席行くよ」


「嘘かぁ。じゃおやすみ」


 そういうと寝てしまった。

 ええ?どうしたらいいんだ?

 助けを求めて先生を見ると、「引っ張ってけ」みたいな動作をしていた。

 ……引っ張るか。


 うん?あれ?なんかちょっと引っ張っただけで歩いてくんだが?

 まあいっか。席に座らせれば、このクラスメイトたちの視線からも開放されるだろう。




 無事紫野さんが席に座ったのを見届けると、俺も座る。

 HRが始まった。

 すると、机に突っ伏して寝ていたはずの紫野さんがこちらを見ていた。


「ねえねえ君、超能力って知ってる?」


 はああ!?

新キャラ登場です。

美雷ちゃんです。かわいがってやってください。

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