深鈴からの挑戦状(?)
「いや、それにしてもパパがお客さんスペースに出てくるとはね」
深鈴何回目だそれ言うの。奏音ちゃん数えてたりするかな。
「みいちゃんいまのせりふ、もう12かいもいってるよ」
数えてた。
「12回も言っていたのか。あと1回言うと不吉だな……。今日は13日の金曜日だし。ここに来るときに黒猫が目の前を横切ったし。カラスが大合唱していたし。よしもう言わないぞ」
そうだったのか。というか俺は深鈴が不吉とかを気にする性格だったことに驚きだ。「神様なんて信じないよ」とか言いそうなのに。
「それにしてもパパがお客さんスペースに出てくるとはね」
「あ」
「あ」
「ああああっ!」
その後深鈴は運気が上がるとされる15回まで同じ言葉を繰り返した。
「ところで深鈴、パンフレットを読むのに頭を使って糖分がを摂りたいのは分かるけど、そろそろパンフレットの内容とかを話してほしいんだが」
「え」
「コウにいちゃん……」
二人からじとーっとした目で見られた。な、何だよ。
「コウ。私は2つ言いたいことがある。一つ目は、私はパンフレットを読むのには全くと言っていいほど頭を使わなかったということ、そしてコウ、」
一息置いてから深鈴はきっぱりと告げた。
「帰りの電車の時に、読む時間たっぷりあったよね?なんで読まなかったの?当然読んでいると思って、パンフレットウチに置いてきちゃったのだけれど」
そうだそうだ、とでも言うように大きく頷く奏音ちゃん。
「ね、眠かったんだよ!ほ、ほら俺、自分の枕じゃないと寝られないからさ」
とてもじゃないが、読むのが嫌だからパンフレットはカバンの底に封印してミニゲーム機でゲームしていたなんて言えない……!
奏音ちゃんが生温かい目でこちらを見ている。頼む、頼むから告げ口しないでくれ!
俺の必死の思いが伝わったのか、奏音ちゃんはニマニマとした顔で黙っている。くっ、弱みを作ってしまった。だがまあ深鈴にばれなければいい……。
「でもコウさ、この間の期末テストが終わった日に、『テスト勉強疲れたー』って、リンリンで熟睡していたじゃん」
ぐは。
「あと、私よくコウのお母さんから勉強について相談を受けるのだけど、その時聞いたのが、『うちの子、授業中によく居眠りをするって通知表に書いてあるんです』だったよ?」
うぐ!?
「それと、コウはキャンプ大好きだよね?まさかまさか、野宿一泊くらいで寝不足なんて、コウに限ってないよ、ね?」
「で。自分の枕じゃないと眠れないのに、なんで電車では眠れたの?矛盾しているよ」
K.О.である。深鈴の記憶力がいいのは前々から重々承知しているが、まさかここまで覚えているとは。俺は、何も言えずに机に突っ伏した。
「さ、コウ。嘘をついたらどうするの?」
「…………」
「ごめんなさいっていうのー!」
「偉いねー奏音ちゃんはよく知っているねー!さてコウ、幼稚園児でも分かる事を知らないとは言わせないよ?」
「…………」
「みいちゃん、実はね……」
何やらごにょごにょしている奏音ちゃん。もしかしてさっき俺の心を読んだ内容を話してるんじゃ……?
「ふんふん。へえー?コウ、そんな事していたのに隠していたんだ?うんうん、コウがその気ならこっちもその気になっちゃうよ?今日のご飯代がまたまたコウの借金になっちゃうねえ―」
「すいませんごめんなさい俺が悪かったですので借金だけは勘弁してくださいお願いしますぅっ!」
今日は深鈴のおごりだからと目いっぱい食べたのだ。俺の借金になったら大変なことになる。くっ、またも弱みを作ってしまった。これから一か月はこれでいじられて、深鈴の言うことを聞くことになってしまう自分の未来が見えるようだ。
「よろしい。ではコウは私のうちに行って、パンフレットを取って来なさい。私はもう少し食べていくから」
まだまだ食べるんすね深鈴さん。
「深鈴、パンフレットってどこにあるの?」
「私の部屋のマル秘と書いてある箱の中。鍵がかかっているから、探して。ワタシモドコニヤッタカワカラナクナッチャッタナ―」
かなり棒読みで非常に怪しいが、まあ本人が分からないのなら俺が探すしかないか。
ということで、俺はパンフレットを探すべく深鈴の家に向かって歩き出したのであった。
完全復活いたしました、藤田ルミナです。
次回、晃一の謎解きです。




