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ちゃんとしたご飯

 奏音ちゃんとともにリンリンに到着した俺。真っ先に言ったのが、


「お湯ください!」


 だった。


「?」


 深鈴ママは少し戸惑った様子だったが、マグカップに入ったお湯を持ってきてくれた。


「お湯になります。タダです」


 タダとは優しい。コンビニで買おうとしたら150円はかかるぞ。


「はあ~あったか~」


「コウにいちゃん、なんでおゆをたのんだの?」


「俺、ずっと飴と水しか飲んでなかっただろ?だから、まず喉を慣らそうと思って」


 あと、夏とはいえ薄着で野営したから体が冷えてんだよな……


「ほんとだ―コウにいちゃんよくみたらこきざみにふるえてるー」






「奏音ちゃんは何食べたい?深鈴のおごりだから、何でもいいぞ。あ、お酒はなしで」


「じゃあかのん、とりあえず、くあとろふぉるまっじがたべたい!」


「くあとろほる……え、何?」


「クアトロフォルマッジ。簡単に言うと、はちみつとチーズが乗ったピザの事ね」


 深鈴ママの解説が入った。なるほど。あの美味しいやつ、クアトロホルナッジっていうのか。


「それにしても奏音ちゃん、よくクアトロフォルマッジがあるってわかったね。ウチの裏メニューなのよ」






 数十分後。


「もぐもぐ、もぐもぐ」


「がつがつ、がつがつ」


 うんめー!このスパゲッティ超うんめー!くうっ、丸一日ご飯を食べてなかっただけで、ただでさえ美味しいリンリンの食事が高級レストラン並みに美味しいとはっ!


 すでに俺の目の前には、ざっと5枚ほどの皿が山積みになって置いてある。ちなみに、奏音ちゃんの目の前には、10枚ほどが置いてある。どこにそれだけ入る胃袋があるんだろう。


「すみませーん、そばめしください!」


「か、奏音ちゃん、なぜそんなに裏メニューを知ってるの!?あったら楽しいよね的な感じで、誰にも知られずに夫と作ったやつなのに!」


 それは奏音ちゃんが心を読めるからでございます深鈴ママ。

 そして奏音ちゃん、今日は裏メニューを全制覇する気だな。


「奏音ちゃん、そばめしって何?」


「ひょうごけんのきょうどりょうりでね、やきそばとごはんがまざってるの!めんがみじかくなってるから、たべやすいし、ごはんにそーすがからまっておいしいんだよ!」


「美味しそうだな、すみません、焼きそばご飯一つ追加で!」


「はーい。そ、ば、め、し一つ、入ります!!!」


 俺の言い間違いをさらっとスルーする、ように見せかけて、周りによく聞こえるようかなり大きな声でオーダーを入れる深鈴ママ。腹黒疑惑が浮上した。ちなみに俺たち以外の客はいないので、深鈴ママと深鈴パパがこそこそっと話している声も丸聞こえだ。


 ーーーちょっとお父さん、最近の売り上げ見て!こんなに大きな数字を見たの、久しぶりよ……!


 ーーーママ、よく見てみなさい。お金を出しているのは深鈴だ。


 ーーーっ!?つまり……。


 ーーーつまり、うちのお金はあまり動いていないということだ。うちはいまだにお小遣い制だからな。


 ーーー…………で、でも!よく見てお父さん!晃一君と深鈴が見たことのない子を連れてきているのよ、気づいてた!?あの子が、うちの事を友達とか親に宣伝してくれたら、リンリンの認知度も上がるってもんよお!あ、そばめしできたのね、ちょっとさりげなーく、お願いしてくるわ。


 ーーーあ、ちょっと待ちなさいママ!


 深鈴ママがこっちに向かってくる。


「お待たせいたしましたー!こちら、ご注文のそばめし二つになります!お熱いのでお気を付けください」


 一世一代の大勝負とばかりに鼻息荒く、テンション高く、お皿を置く音は小さく、の深鈴ママ。よく見ると手が震えているし、だいぶ気合が入ってるぞ。見てるこっちが緊張してくるほどの気合の入りようである。


「ありがとうございます!それと、」


 奏音ちゃんはうつむき、小さく、「ごめんなさい、ぬすみぎきして」とつぶやくと、前を向き、堂々ときっぱり言った。謝るところはそこなんだ。


「かのん、いまいえでちゅうでゃからこのおみせのことをせんでんできましぇん!」


 訂正、こちらも緊張していたようで、少々噛みながら言った。ああ顔をしかめている。痛そう。


「な、なぜ宣伝してほしいと思っていることが分かったの!?」


 客への対応中ということも忘れて素っ頓狂に叫ぶ深鈴ママ。


「まあまあ、落ち着きなさい」


 深鈴パパの登場である。低くゆったりとした声でなだめる彼の通称は、『ママの精神安定剤』。


「あの、ほんとうにごめんなさい!でも、だいどころでおしゃべりしているこえが、きこえてきちゃったんです」


「なるほど、そういうことか。料理しているところも見てほしい、と開放的なつくりにしたのが仇となったか」


「そう。でも!言いたいことが分かっているのなら話は早いわ。もう一度お願いします、リンリンを宣伝してください!」


 やっと落ち着いたところなのに、気持ちが盛り返してきたのか、ものすごい勢いで頭を下げる深鈴ママ。勢いあまって前転しそう。慌てふためいている深鈴パパがかわいそうになってくる。


「遅くなってごめんね。あれ?晃一、奏音ちゃん、ママ、どうしたの、そんなところで。……ってええ!パパがお客さんスペースにいるなんて!「俺は厨房の人間だ」とか言って、絶対に出てきたことがなかったのに!」

ネタが切れてまいりました。ッやばいぞ。

これから忙しいので次回の更新は6月の初めごろになるかと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで読みました! 先が全く予想できませんが一つ、ハッキリわかる良さがあります。 奏音ちゃんがかわいいことです! [一言] 思ったより深刻……?
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