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第5話「魔法の授業、結果はサウナで。。そして体育祭のお知らせ」

皆様、初めまして。

Nauraaナウラ Vesiベシ……こと、ベシさんです。

数ある作品の中から見つけていただき、本当にありがとうございます!


私は、仕事とサウナを愛しています。

「もし、医学知識を持つサウナ好きが異世界へ行ったら??」

という妄想(夢想)からこの物語が生まれました。


サウナへの愛を熱い蒸気と共にお伝えしますので、異世界での「ととのい」の旅をお楽しみください!



魔法実技の授業は、週三回ある。


場所は学院の中庭。

生徒たちが横一列に並び、正面の的に向かって魔法を放つ。


担当教師のガルド先生は、四十代の男性だ。

短く刈り込んだ白髪。鋭い目。

口数が少なく、容赦がない。


「では始めろ。一人ずつ的に向かって最大魔力を放て」


号令とともに、生徒たちが次々と魔法を放つ。

炎。風。雷。水。氷。


それぞれの魔法が的を叩くたびに、ガルド先生は無言で手元の羊皮紙に何かを記録していく。


レンの番が来た。


レンは一歩前に出た。静かに右手を上げる。


次の瞬間——轟音。


水の柱が、的を完全に吹き飛ばした。


ガルドが珍しく口を開いた。

「……魔力制御、最高評価。的の残骸を確認する必要もない」


レンは涼しい顔で列に戻った。


キックルが小声で言った。

「すごいですよ、レン様」


「当然よ」


レンはそれだけ言って、横目でトントたちの方を見た。


―――


トントの番が来た。


一歩前に出る。


  魔力はほぼゼロ。だが、蒸気は出せる。


手を前に伸ばした。じわり、と熱が集まる。


的に向けて——蒸気を放った。


ジュッ。


白い霧が的を包んだ。的は溶けも吹き飛びもしない。

ただ、表面がじんわりと濡れている。


ガルドが眉をひそめた。


「……これは魔法か?」


「蒸気魔法??です。」


「攻撃力は?」


「ないですね。」


長い沈黙があった。


「……記録に困る魔法だな」


「申し訳ないです。。」


ガルドは羊皮紙に何か書いた。

おそらく「特殊・評価保留」とでも書いたのだろう。


列の後ろでテルメが小声で言った。

「先生、困らせてどうすんの」


「仕方がない。これしか出ないんだから!」


「……まあ、しゃーないよな、ウチも人の事言えへんしな。」


―――


テルメの番が来た。


一歩前に出て、目を閉じる。


しばらく何も起きない。


ガルドが言った。

「どうした」


「ちょっと待っとき——」


テルメの周囲に、淡い光が広がった。


「……的の後ろに、隠し通路がありますね、その先に、先生の私室があって、机の引き出しの中に——なんや、これ……うわ、エロ——」


「もうよい! テルメ!」


ガルドの顔が、真っ赤になった。


テルメが列に戻りながらトントに小声で言った。

「先生、なかなかなコレクション持っとるで!」


「テルメ、聞こえているぞ」ガルドの怒声が響く。。


「す、すんません!!ナビも大概にしとかんとね!!余計な物が見えても

 お口チャックやな!」


―――


授業の後半は、実践形式だ。

二人一組になり、互いに魔法を当て合う模擬戦だ。


ガルドが言った。

「目的は攻撃ではなく、相手の魔力を消耗させることだ。最後まで動ける者が勝ち」


組み合わせが発表された。


トント対レン。


会場がざわめいた。


レンは表情を変えなかった。トントを一瞥して、言った。


「……あなたと当たるとは、運が悪い」


「そうか」


「あの蒸気で私に勝てると思っているの?」


「思っていない」


「……では、どうするつもり」


「お前の魔力を使い果たさせる。俺は逃げ続ける。疲れ切ったところで——」


「……まさか」


「ロウリュだ」


レンは眉をひそめた。


「何?ロウリュウ??蒸気で、戦うつもり?」


「戦わない。癒す」


「意味がわからないわ」


「やってみればわかる」


―――


模擬戦が始まった。


レンが水魔法を放つ。トントは横に動いてかわす。


もう一発。また、かわす。


レンが前に出る。トントは後ろに下がる。


「……逃げているだけ?」


「違う。観察している」


「何を」


「お前の魔力の消耗パターンだ」


レンの手が、一瞬止まった。


トントが続けた。


「三発で小休止。五発で呼吸が乱れる。十発で——」


「うるさい!」


レンが大きく水魔法を放った。トントはぎりぎりでかわした。


  あと三発で呼吸が乱れる。


脳外科医として、人体の限界は熟知している。

魔法は筋肉と同じだ。使えば疲れる。パターンがある。


七発目。レンの呼吸が、わずかに乱れた。


八発目。九発目。


十発目を放とうとした瞬間——レンの膝が、少し揺れた。


その瞬間、トントは動いた。


右手に、熱が集まる。

ラドルで水をすくうような所作で、空中に蒸気を放った。


ジュッ——。


白い蒸気がレンを包んだ。


熱くない。

攻撃!! でも、ない。。。。

ただ——じわりと、体の力が抜けるような、あの感覚。


「っ……なに、これ……」


レンの体から、力が抜けた。

膝をついた。


ガルドが声を上げた。


「——そこまで。判定、トント」



会場が、静まり返った。


レンは膝をついたまま、トントを見上げた。


「……何をしたの?」


「……蒸気で、癒された。だから、力が抜けた——そういうこと?」


「整ったんだよ。戦意が消えただけだね」


レンは何も言わなかった。


ただ——その目の奥に、何かが灯ったのを、キックルだけが見ていた。


  ……レン様が、負けた。


  でも——なぜか、嬉しそうな顔をしている。


キックルは小さく、微笑んだ。


―――


「はあ……」


授業が終わった後、キックルがそっとレンの隣に寄った。


レンは木陰のベンチに座って、腕を組んでいる。不機嫌な顔だ。


「レン様」


「……なに」


「あの、サウナ——また行きますか」


「行かない」


「昨日、一人でこっそり行ってましたよね」


「……行っていない」


「エーアイさんに聞きました」


長い沈黙。


「……偵察よ」


「三回目の偵察ですね」


「キックル」


「はい」


「次そういうことを言ったら、水風呂に沈めるわ、あなたのこと」


「……レン様、水風呂の場所、知ってるんですね」


「っ——!」


キックルはくすっと笑った。

レンは盛大にため息をついた。


―――


その午後。全校集会が招集された。


広い中庭に全生徒が集まる中、演壇に一人の人物が現れた。


アルカナ学院校長——ダッフル。


小柄な老人だった。

白いひげ。ぼさぼさの白髪。

着ているローブが、なぜか左右で色が違う。


生徒たちがざわめく。


「皆さん、こんにちは! いい天気ですね! 今日のお昼、何食べましたか!?」


静寂。誰も答えない。


「……そうですか。まあいいです。ではお知らせがあります」


ダッフルはにこにこしながら、羊皮紙を取り出した。


「今年も体育祭の季節がやってまいりました!」


どよめきが起きた。


「全国の魔法学校から選手が集まります。観客も大勢来ます。屋台も出ます。楽しいですよ!」


テルメが小声で言った。「なんか、校長うきうきしてない?」


「毎年楽しみにされています。」とエーアイが静かに言った。


「体育祭って、何するん?」


「魔法と体力を組み合わせた競技です。去年は優等生チームが圧倒的に強かった」


テルメが遠い目をした。


「……ということは」


「落ちこぼれ寮は毎年、最下位です」


テルメがさらに遠い目をした。


―――


ダッフルが続けた。


「ただし! 今年はルールが少し変わります」


会場が静まり返った。


「魔力の大きさだけで勝敗を決めるのは——やめます」


レンの眉が、ぴくりと動いた。


「魔法で攻撃するだけが、強さではない」


ダッフルはにこにこしたまま言った。


「仲間と連携する力。状況を読む力。そして——」


老人の目が、一瞬だけ鋭くなった。


「心を整える力」


会場がざわめく。


「心を整える……?」

「なにそれ」

「意味がわからない」


トントだけは、黙っていた。


  心を整える力。

  ……整える。


トントの頭の中で、何かが繋がった。


ダッフルが演壇から降りながら、ふと足を止めた。


そして——会場の隅に立つトントの方を見た。


一瞬だけ。


にっこりと、笑った。


  ……この老人、何かを知っている。


トントは静かに確信した。


―――


寮へ戻る道。テルメが腕を組んで言った。


「心を整える力って、まさかサウナのことちゃうよな」


「わからない」


「でも、校長がトントの方、見てたで。絶対気づいてるって」


「かもしれない」


「体育祭、どうすんの」


トントは少し考えた。


「私なりのやり方で勝つ」


テルメが固まった。


「……は?」


「体育祭で、私のできることで勝つ、それだけよ」


テルメはしばらく黙った。それから、深く息を吸った。


「——ウチ、意味わからんけど、なんか信じるわ、それ」


「でしょ!」


「なんでやろ」


「心が整ってるからじゃない?」


テルメは少し笑った。


  整ったから、か。

  確かに、整ったあとは

  ——なぜか、信じられる気がする。


―――


その夜。ダッフル校長室。


老人は一人、窓の外を見ていた。

手の中に、古びた羊皮紙がある。

そこに描かれているのは——大きな建物の図。


「オーユバーラ。。。」


ダッフルは静かに呟いた。


「……封印が、解けるかもしれんな」


にこにこした顔のまま——その目だけが、深い色をしていた。


―――


【次話予告】「第6話『初めての整い——学院中に広がる謎の幸福感』」


皆様、Nauraaナウラ Vesiベシです。

ベシさんと呼んでください。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


この作品を「面白い」「続きが気になる」と思ってくださった方は、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】をクリックして評価をいただけると嬉しいです。


皆様の応援が、異世界サウナ夢想の最大のモチベーションになります!

次回もぜひお楽しみに。

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