表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

第4話「噂が広がる——『あの蒸気、なんか気持ちいい』」

皆様、初めまして。

Nauraaナウラ Vesiベシ……こと、ベシさんです。

数ある作品の中から見つけていただき、本当にありがとうございます!


私は、仕事とサウナを愛しています。

「もし、医学知識を持つサウナ好きが異世界へ行ったら??」

という妄想(夢想)からこの物語が生まれました。


サウナへの愛を熱い蒸気と共にお伝えしますので、異世界での「ととのい」の旅をお楽しみください!




朝のアルカナ学院は、いつもより騒がしかった。


「ねえ聞いた? 落ちこぼれ寮に、なんかすごい部屋ができたって」

「蒸気が出るやつでしょ? 入ったら頭がすっきりするって」

「魔法なの? それとも薬?」

「違うって、サウナっていうらしいよ」

「サウナ……? なにそれ」


廊下でも、食堂でも、中庭でも。どこへ行っても同じ話題が飛び交っていた。


トントはその様子を食堂の隅で聞きながら、朝ごはんを食べていた。


  思ったより、反響が早いなぁ。


隣でテルメが腕を組んで言った。「やっぱり整理券、配った方がええんちゃう?」


「まだ早い」

「でもこの調子やと今日中に——」

「テルメ」

「なに?」

「早くご飯食べてね。」

「……はい」


―――


その頃。アルカナ学院・優等生寮の三階。


レン・ラハティは窓の外を見ていた。


落ちこぼれ寮の入り口に、人だかりができている。昨日まで誰も近づかなかった、あの薄汚い寮の前に。


十人。二十人。いや、もっといる。


「……なに、あれ」レンは眉をひそめた。


面白くない。


何が面白くないのかと問われれば、うまく答えられない。ただ、面白くない。


ラハティ国の姫として、この学院で最高の魔力を持つ者と自負している。この私。そんな私の目から見て—あの落ちこぼれ寮の新入りが、なぜ注目を集めているのか、気になって仕方ない!


  昨日の、あの蒸気。


名前のない魔法。試験官が「合格」と言ったときの、困惑した顔。レンはその場面を、何度か思い出していた。


「レン様」後ろから、小さな声がした。


振り返ると、キックルが上目遣いでこちらを見ていた。「……見に行ってみませんか」

「は?」


「あの、落ちこぼれ寮です。サウナと、いうものを作ったみたいですよ」


「行くわけないでしょう」


「でも気になりませんか」

「気になってない」


「レン様、朝から三回、あちらの方向を見てます」

「…………」


レンは窓から目を逸らした。

「見ていない」

「見てました」


「キックル」

「はい」

「余計なことは言わない方がよくってよ」

「はい。——でも、行きましょうよ」


レンはため息をついた。この妖精は、こういうとき妙に引かない。


「……偵察よ。あくまで偵察」

キックルの顔が、ぱっと輝いた。

「はい! 偵察です!」


  なぜそんなに嬉しそうなのか。


レンは不機嫌な顔のまま、部屋を出た。


―――


落ちこぼれ寮の前は、すでに行列ができていた。


「なにこれ……」レンは人だかりを見て、思わず呟いた。


その時、列の前から声が聞こえた。


「はいはーい! 一回五分! 水風呂込みで十分やから! 次の人どうぞ!」


テルメが仕切っていた。整理券まで配り始めている。


  あいつ、仕切ってる。でも、流れができてるな。


レンは水魔法の流れを構築する事が上手い。

そんなレンがみても、テルメがさばいている人の列は、上手く流れているように見えた。


レンは列を無視して、まっすぐ入り口へ向かった。


「ちょっと! 並んでや!」テルメが声をかけてくる。


レンは振り返らずに言った。

「ラハティ国の、レン・ラハティよ。列に並ぶ必要はないわ」


テルメが一瞬固まった。

「……姫様でも、番号札は必要ですわ」


「は?」


「ここはサウナです。姫様も平民も関係おまへん。みんな平等に汗かきますねん」


レンの目が、細くなった。

「……あなた、私に指図するの?」

「指図やないですわ。ルールです」


テルメはにこっと笑って、整理券を差し出した。

「——十七番です、姫様」


レンは整理券を見た。キックルがそっと小声で言った。

「……受け取った方がいいと思います」


「……」

レンは整理券を

ひったくるように受け取った。


「覚えておきなさい」


「はいはい〜、毎度おおきに。ありがとうございます~~」


テルメはにっこりしたまま、次の客の対応に戻った。


キックルが小声で言った。

「……あの方、強いですね、魔力とかではなく、人として。。。」

「うるさいわよ、キックル!」


―――


寮の風呂場に入ると、トントがいた。壁にもたれて、

腕を組みながら考え事をしている

(このサウナの動線、改善できないかなぁ。 もっと、整うには。。 どうすれば、、、)

元医師として、この世界でできる最善の方法を考えて。。。。

真面目だな。。 真面目過ぎる。。。(だれかの声)


レンはトントをまっすぐ見た。

「昨日の子ね」

「そうだ。」


「これが、あなたの作ったサウナ?」

「皆んなで作ったんだ。」


トントは小さなサウナ室の扉を開けた。中から、じわりと熱気が漏れてくる。


レンはその熱を肌で感じて——少し目を細めた。


「……ラハティ国は雨が多く、蒸した気候だ。

真夏の熱気は知っている。でも、これは——」


「高湿だ。蒸気を含んだ熱。体への浸透が違う」

「……説明しなくていい。自分で確かめるわ」

「どうぞ」


レンは扉の前に立った。上段のベンチ。下段のベンチ。薪ストーブの上で熱を帯びたサウナストーン。じんわりと漂う白い蒸気。


「……入り方は?」


トントは手順を説明した。ベンチに座る時間。水をかけるタイミング。出た後の水風呂。


レンは黙って聞いていた。

「以上だ。あとは体で覚える」

「……ふん」


レンはサウナ室に入った。扉が、静かに閉まった。


―――


廊下でキックルが、そわそわしながら待っていた。


トントが出てきたので、キックルは小声で言った。

「あの……」

「どうしたの??」


「サウナ、私も……入っていいですか」

「もちろんよ、是非試してみて」


キックルは少し躊躇してから、言った。

「実は……前から気になっていたんです。レン様に言えなかっただけで」


「なぜ言えなかった」

「レン様は、熱いお風呂が苦手で。だから、私もずっと我慢していて」


「キックル」

「はい」

「サウナをどこかで見たことがあるの?」


キックルは一瞬、固まった。

「……なんで、そう思うんですか」


「最初に試験会場で会った時から、あなたの目が違った。蒸気を見たときの、表情とかね。」


キックルは黙った。長い沈黙の後、小さく言った。


「……夢で、見たことがあります。誰かが、蒸気の中に座っていて

 ——すごく、穏やかな顔をしていて」


「その誰かに、心当たりは」

「……わかりません。でも、知っている気がして」


キックルはそれだけ言って、視線を落とした。トントは何も言わなかった。


  翔太。


その名前が、脳裏をよぎった。


―――


十分後。サウナ室の扉が開いた。レンが出てきた。


顔が、少し赤い。髪が、少し乱れている。いつもの完璧に整った姿とは少し違う。


テルメが外から覗き込んだ。

「——どやった? 姫様」


「……」


レンは答えなかった。まっすぐ水風呂の桶へ歩いていって——足を浸けた。


「っ……」


小さく息を飲んだ。それでも出ていかない。


テルメがリリに小声で言った。

「……あの姫様、さっきと雰囲気全然ちゃうな」


「なんか、柔らかくなったよね」

とリリが言った。


一分後。レンは壁にもたれた。誰も喋らなかった。


三分が経った。キックルがそっと隣に座った。

「……レン様、顔が赤いですよ」

「……うるさい」

「気持ちよかったですか」

「……聞くな」

「教えてくださいよ~」

「……聞くなと言っている」


キックルはにこっと笑った。


テルメはその様子を遠目に見ながら、トントに小声で言った。


「……さっきはあんなに偉そうやったのに」


「整ったからだ」


「姫様でも、平民でも、おんなじやな」


「そう。サウナに入れば——みんな平等だ」


テルメはしばらく黙った。それから、静かに言った。


「……それ、ええな。サウナに入れば、みんな平等」


「そうだ」


「番号札渡してよかったわ」

「そうだな」


テルメはにやっと笑った。

「ウチ、正解やったやん」

「ああ、テルメのやった事、素晴らしいよ。」




―――


その夜、学院の屋根の上。一つの影が、落ちこぼれ寮を見下ろしていた。


黒いローブ。顔は見えない。ただ、その目だけが——暗闇の中で光っていた。


手元のデバイスに、何かを記録している。


「……サウナ、か」低い声が、風にまぎれた。


「ストレスを消す。不快を癒す。孤独を埋める——」影は立ち上がった。


「……面白くない。実に、面白くない」


それだけ言って、闇の中に消えた。


魔王軍の斥候——ノイズの、最初の観測記録だった。


―――


【次話予告】第5話「魔法の授業、でも結果はサウナ——そして体育祭のお知らせ」


皆様、Nauraaナウラ Vesiベシです。

ベシさんと呼んでください。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


この作品を「面白い」「続きが気になる」と思ってくださった方は、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】をクリックして評価をいただけると嬉しいです。


皆様の応援が、異世界サウナ夢想の最大のモチベーションになります!

次回もぜひお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ