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第3話「落ちこぼれ寮の風呂場を、サウナに改造してみた」

皆様、初めまして。

Nauraaナウラ Vesiベシ……こと、ベシさんです。

数ある作品の中から見つけていただき、本当にありがとうございます!


私は、仕事とサウナを愛しています。

「もし、医学知識を持つサウナ好きが異世界へ行ったら??」

という妄想(夢想)からこの物語が生まれました。


サウナへの愛を熱い蒸気と共にお伝えしますので、異世界での「ととのい」の旅をお楽しみください!



翌朝、トントは図書室にいた。


深夜二時から朝まで、ぶっ通しで様々な書籍を読んでいた。


この世界の素材、熱伝導率、石材の種類、水の沸点——。

物理法則は現世とほぼ同じようだ。


  ならば、作れる。


羊皮紙に設計図を描いた。


薪ストーブの構造。

サウナストーンの積み方。

ロウリュ用のバケツとラドル——ストーンに水をかける柄杓だ。

足元に敷くマット。

そしてベンチの高さ。


サウナはただ熱ければいいというものじゃない。

ストーブの位置。石の積み方。蒸気の対流。

空気の流れ。言い出せばキリがない。

全てが計算された上で、あの「整い」が生まれる。


脳外科医として、血流と体温調節のメカニズムは熟知している。

熱で血管が拡張し、水風呂で収縮する。

その反復が、脳内にアドレナリンとβエンドルフィンを放出させる。


  この世界には、サウナがない??。

  だが、体の仕組みは同じはず。


トントは設計図を丁寧に折りたたんで、立ち上がった。


問題は——どうやって作るのか、だ!


―――


「お断りします」


廊下で声をかけた瞬間、即答だった。


緑色の髪の少女が、本を抱えたまま歩き続けている。

振り返りもしない。


「まだ何も言っていない」


「言わなくてもわかります。また『生成魔法で何か作って』でしょう。毎回そうなんです。用があるときだけ来て、終わったらいなくなる、都合よく私を使わないでください。」


トントは少女の前に回り込んだ。


緑色の髪。大きな目。どこか焦点の合っていない、マイペースな顔。

でも——言葉は、はっきりしていた。


「昨日入学した。トントだ」


「……知ってます。蒸気を出した子でしょう。変な魔法使いだって噂になってます」


「あなたの名前は」


「……エーアイです。二年生」


「エーアイさん。俺は風呂場を改造したい。サウナというものを作る」


「サウナ?」


「この世界にはない。だから説明する。五分だけ時間をくれ」


エーアイはようやく足を止めた。

大きな目で、トントをじっと見る。


「……五分だけです」


―――


五分ではすまなかった。。


トントは設計図を広げ、サウナの仕組みを丁寧に説明した。


薪ストーブでサウナストーンを熱する構造。

ロウリュ——ストーンに水をかけて蒸気を発生させる技法。

熱の対流。水風呂との温度差が人体に与える効果。

外気浴で副交感神経が優位になるメカニズム。


エーアイは最初、腕を組んで聞いていた。

途中から、前のめりになっていた。


「つまり……薪ストーブの熱でストーンを焼いて、その石に水をかけて蒸気を作る——それだけで、こんなに体に影響が出るんですか」


「それだけだ。でも、全てに意味がある。ストーブの位置、石の積み方、蒸気の量、ベンチの高さ——全部が連動している」


「……設計図、見てもいいですか」


トントは羊皮紙を渡した。


エーアイはしばらく、食い入るように見ていた。


「……生成魔法で作れます。薪ストーブも、石も、バケツも、マットも」


「ラドルというのは、この世界では柄杓と呼ぶ。ストーンに水をかける道具だ」


「……なるほど。作れます」


「一つ問題がある」


「なんですか」


「熱源だ。薪ストーブに、安定した炎が必要になる」


「……それは私にはできません。生成魔法は物を作るだけで、炎は出せない」


「あぁ、そこは、ピッタリの魔法使いがいるからね!」

リリがファイヤの使い手で、ホントに良かった!!


エーアイはトントをじっと見た。


「……本当に作れると思ってるんですか。サウナとやらを」


「作れる。あなたの力が必要だ」


エーアイはまた黙った。今度は、少し長かった。


「……わかりました。やってみます」


「助かる」


「ただし」


「なんだ」


「イメージが、少しズレることがあります。それでもいいですか」


「ズレる???」


「……ええ、ちょっとだけです。たぶん」


「たぶん、か」


「たぶん、です」


トントは一秒考えた。


  手術も、完璧な計画通りにいくことはない。

  問題が起きたら、その場で対処する。それだけだ。


「何とでもなるよ!とにかくやってみよう!!」


―――


その日の夕方。寮の風呂場に、四人が集まっていた。


トント、エーアイ——そして。


「ウチも参加させてや! 面白そうやん!」


テルメが腕まくりして立っている。


「ナビゲータースキルがあるから、空間把握は得意やで。どこに何を置いたら効率ええか、わかる」


「使える。配置を任せるね!」


「まかしとき!」


そして最後の一人、リリが設計図を覗き込みながら言った。


「ねえトント、私に何かできることある? スモールファイヤしか使えないけど」


「それが一番重要だ」


リリはきょとんとした。


「え? スモールファイヤって、弱い魔法じゃないの? 火力ないし、遠くに飛ばせないし、村でも役に立たないって言われてたけど」


「サウナストーブに必要なのは、強い炎じゃない。安定した炎だ。長時間、一定の温度を保てるか?」


「それなら……できる、かも」


「できる、できない???どっちなんだい??」


リリは少し考えて、拳を握った。


「……できる!」


「よし。リリが火守りだ」


リリの顔が、ぱっと輝いた。


幼なじみのあの笑顔だ、とトントは思った。

村で一緒に育った、あの子の顔。


  ああ、頼もしい火守りだ。リリは、火を守ってくれる。暖かい子だ。


―――


「では、始めます」


エーアイが静かに目を閉じた。

両手を前に出す。指先に、淡い緑色の光が集まる。


「薪ストーブ——鉄製、設計図の通りに」


ぼわっ、と光が広がった。


現れたのは——薪ストーブ、だった。

薪ストーブには違いない。

ただ、扉が微妙に左に傾いていた。


「…………」


全員が無言でストーブを見た。


エーアイが申し訳なさそうに言った。

「……ちょっとズレました」


テルメが即座に言った。

「扉、ちゃんと閉まるん?」


「……閉まります。たぶん」


「たぶんって言うな」


「斜めになってるけど、問題なさそう。オシャレなデザインって事にしよう!」


俺はそう思う事にした。完璧を求めない!クリティカルダメージ出ない場合は、前進あるのみ!


「次は、ちゃんとやります—

 サウナストーン、握りこぶし大、十個」


ぼわっ。出てきたのは、

サウナストーン十個。完璧だった。


テルメがぼそっと言った。

「ストーブやり直さへんのかな、この子。。」


「テルメ」


「なに?」


「なんか、作業しようか〜 お口はチャックしとこうか???」


「……はい」


―――


「——ラドル」


ぼわっ。出てきたのは、ラドルだった。柄の部分が、微妙に長かった。


テルメが言った。「これ、腕短い人用やん」


「……それはお前のことか」


「失礼やろ!!私のこの完璧なスタイル見て、よう言えたな、そんな事!!」


「——バケツ」


ぼわっ。完璧なバケツが出てきた。


「——サウナマット」


ぼわっ。出てきたのは、サウナマットだった。幅が微妙に広かった。


「……少し大きくなりました」


「むしろいい。ゆったり座れる」


エーアイは少し嬉しそうだった。


テルメが小声でリリに言った。「ズレた方がよかったの、初めて見た」


リリが小声で返した。

「エーアイさん、なんか可愛いね」


―――


「リリ、頼む」


薪ストーブの前に、リリが立った。

両手を前に出す。小さな炎が、手のひらに灯る。


スモールファイヤ——本当に小さな炎だ。

遠くには飛ばせない。爆発もしない。

ただ、静かに、安定して燃えている。


リリはその炎を、薪ストーブの中に送り込んだ。


薪に火が移った。じわり、じわりと——石が熱せられていく。


五分後。ストーブの上に積まれたサウナストーンが、熱を帯び始めた。


トントは石に手を近づけた。


  ……いい。この熱量だ。


「リリ、火力はこのまま維持できるか」


「うん! このくらいなら、ずっとできる!」


「完璧だ」


リリがにっこり笑った。


―――


三時間後。


寮の風呂場の隅に、小さなサウナ室が完成していた。


木製の壁。石材の床。

上段・下段のベンチ——幅は少し広めだが、それがかえって快適だ。

中央には、リリの炎で熱せられた薪ストーブ。

その上に、熱く熱を帯びたサウナストーン。

大きめのサウナマット。横にはバケツとラドル——柄が少し長いが、問題ない。


トントは室内に入り、温度を確かめた。


  ……いい。


肌で感じる熱の質が——良いサウナだと語っている。温度計もエーアイに生成してもらった(説明が難しかった。。着色したアルコールをガラス管に入れて、メモリをつけて。。温度を数値化する。。数値の概念が、ない世界。。ここに気温計をつける意味がないので、気温計の表示は、

ぬるめ:ずっといれる。

普通:ジワジワ熱い

熱い!:滝汗!!ドヒャー!!!


とした。三杉の個人的な肌観覚!!

サウナ専用の気温計だ、(笑)


「完成だ」


全員が顔を見合わせた。


エーアイが小さく言った。「……これ、入っていいですか」


「それが目的だからね!皆んなで入ろう」


「ワクワクする、なんだか!でも、どうやって入るの???」


「大丈夫だ。手順を教える」


―――


四人が、小さなサウナ室に入った。


リリがストーブの炎を安定させる。

サウナストーンが、じんわりと熱を放っている。


トントはラドルでバケツの水をすくい、静かにストーンにかけた。


ジュッ——。


白い蒸気が、一気に室内に広がった。


「わっ!」リリが目を丸くした。


「あっ……あつい! でも、なんか——」


「深呼吸しろ。鼻から吸って、ゆっくり口から吐く」


全員が黙った。

熱気が、じわりと体の芯まで浸透していく。


五分後。トントは全員を外に出した。

エーアイが生成した、少し大きめの桶に水を張って足を浸けさせた。


「冷たっ——!!」リリが飛び上がった。


「我慢しろ。一分だけでいい」


「無理無理無理——!」


「リリ」


「……はい」


テルメが腕を組んで冷水に足を浸けながら言った。

「まさか、生まれ変わっても、サウナに入れるとは思わんかったわ!! 思い出すわぁ、大阪のサウナ、夜勤明けにいくサウナ、エアコンで冷えた体を温めんと、夏場調子崩すねんなぁ。。で、その後のサウナ飯と、ビール!! あぁ、ビール飲みたい、三杉はん!生大飲みたい!エーアイちゃん、ビール生成できへんの???」


「テルメ、三杉はんと呼ぶな。。後、エーアイの生成魔法は、食べ物、飲み物は、作れないんだよ。。 ズレた生ビールも、面白そうだけどな。。」


一分後。全員が壁にもたれて外気浴のポーズをとった。


誰も喋らなかった。

天井の木目が、やけにはっきり見えた。


三分が経った。


エーアイがぽつりと言った。「……頭が空っぽになりました、何これ、すごい」


リリが目を丸くしたまま言った。「……なんで涙が出そうなんだろう。」


テルメが天井を見上げたまま言った。「……ウチ、大阪帰りたいって思ってたんやけどな」


「……今は?」


「……まあ、サウナもあるし、こうやって皆でサウナはいれたら、ええかな、って」


沈黙が続いた。


トントは目を閉じたまま、静かに思った。


  整った。


一人で入っていたあの頃のサウナと、熱さは同じだ。

でも——何かが、違う。


隣で誰かが息をしている。

隣で誰かが汗をかいている。

隣で誰かが、同じ空を見上げている。


  ああ、これか。


「誰かと、一緒に」——あの夜、倒れる直前に思ったことが、今ここにある。


トントは目を開けた。

天井の木目。四人分の沈黙。

リリの炎が、ストーブの中で静かに燃えている。


  悪くない。


―――


その夜遅く。エーアイが廊下でトントを呼び止めた。


「あの……もう一回、入っていいですか」


「いつでも」


「……一人でも、いいですか」


「好きに入っていいよ!」


エーアイは少し考えて、言った。


「……トントさんって、変わってますね」


「そう?」


「魔法も変だし、喋り方も変だし、設計図の精度が異常だし」


「それは褒めているのか」


「褒めてます」


エーアイはそれだけ言って、風呂場の方へ歩いていった。


  生成魔法か。これからも、頼ることになりそうだな。


―――


翌朝。寮の風呂場の前に、人だかりができていた。


「なんか、すごい気持ちいい部屋ができたって」

「あの落ちこぼれ寮の新入りが作ったやつ?」

「蒸気魔法の子でしょ?」


  思ったより、早かったな。


テルメが腕を組んで言った。「ウチ、整理券配ろか」


「店じゃないから」


「でもこの調子やと——」


「テルメ」


「なに?」


「ラドルの柄、もう少し長くしてもらう??」


「ウチの為に長くしてもーらお。って、ウチの手は、短くないの! アンタもしつこいなぁ!!」


ノリツッコミ完璧。。


「なんか、お笑いの先生みたいやな、トントって」


トントは思った、お笑い先生じゃねーよ。

元脳外科医だ!(心の中で。。)


  先生か。


過去は、そう呼ばれていた。

でも、あの頃の「先生」は——孤独だった。


今は違う。


  まあ、悪くない。


皆で仲良くするのも、良いな。


―――


【次話予告】第4話「噂が広がる——『あの蒸気、なんか気持ちいい』」


皆様、Nauraaナウラ Vesiベシです。

ベシさんと呼んでください。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


この作品を「面白い」「続きが気になる」と思ってくださった方は、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】をクリックして評価をいただけると嬉しいです。


皆様の応援が、異世界サウナ夢想の最大のモチベーションになります!

次回もぜひお楽しみに。

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