第2話「目覚めたら、女の子だった件——アルカナ魔法学校・入学試験!」
皆様、初めまして。
Nauraa Vesi……こと、ベシさんです。
数ある作品の中から見つけていただき、本当にありがとうございます!
私は、仕事とサウナを愛しています。
「もし、医学知識を持つサウナ好きが異世界へ行ったら??」
という妄想(夢想)からこの物語が生まれました。
サウナへの愛を熱い蒸気と共にお伝えしますので、異世界での「ととのい」の旅をお楽しみください!
「トント!! 起きて!! 試験の日だよ!!」
リリの声で、目が覚めた。
天井が見えた。石造りの、見慣れた天井。リリの家の、小さな部屋だ。
「もう!! 何ぼーっとしてるの!! 遅刻するよ!!」
「……わかった。今起きる」
トントはゆっくりと起き上がった。
自分の手を見た。小さくて、白い手。
……転生して、三日が経った。
最初の一日は、混乱した。女の子の体。見知らぬ世界。
でも——なぜか言葉は理解できた。
そう。私の名前はトント。
トントの体に残っている記憶を、辿ると。中々お茶目な女の子のようだ
(三杉とは正反対の、君!)
何やら、魔法学校の入学試験が迫っている、この世界では、望めば魔法学校に入学できるのか!?!? 現世で目にしていた、転生ライフ。。的なやつなのかな。。。
二日目は、リリの家の周りを歩いた。
セルマ王国の小さな村。
石造りの家々。
緑の丘。
……悪くない村だ。自然豊かで健康にはもってこい、こんな所でのんびり過ごすのも悪くないなぁ。。。と思わせる。
そして今日——アルカナ魔法学校の入学試験だ。
「トント、ご飯食べた?」「まだだ」
「もう時間ないよ!! 走りながら食べて!!」
リリがパンを押しつけてきた。「……ありがとう」
「いいから早く!!」
トントは立ち上がった。
まあ——悪くない。
テストは現世でも得意だった!
今日も、なんとかなるだろう!!!
―――
道を走りながら、リリが言った。
「トント、魔法の練習、してきた?」
「していないよ!」
「え!? してないの!?」
「何をどうすればよいのか 、わからなかった」
「私、スモールファイヤの練習、毎日してたのに!!」
「そうか。リリは真面目だな」
「トントが不真面目すぎるんだよ!!」
「ぶっつけ本番でいく」
「それで大丈夫なの!?」
「わからない。でも——やってみなければわからない」
リリはため息をついた。
「……トントって、昔からそうだよね。落ち着きすぎてて」
「そうか」
「子供の頃から、大人みたいだったもん」
「……かもしれない(そうなんだ。。)」
―――
学院の前に着いた時、試験はすでに始まっていた。
「ギリギリだよ!!」
とリリが叫んだ。
「問題ない。間に合った!」
「間に合っただけで褒められると思ってるの!?」
「思っていません。。」
二人は列の後ろに並んだ。
前の受験生たちが、次々と魔法を披露していた。炎。風。雷。氷。水。色々あるなぁ。。
リリが緊張した顔で言った。
「……みんな、すごいね」
「そうだね」
「私のスモールファイヤ、ちゃんと評価されるかな」
「される。リリの炎は——安定している」
リリがぱっと顔を上げた。
「……本当に?」
「本当だ。小さくて安定した炎は
制御が難しい。でも、それができている」
「……ありがとう、トント」
「ホントの事、言っただけだよ。」
リリは嬉しそうに、微笑んでいる。
幼なじみのあの笑顔だ。
両親が逝って——ずっと、この子に世話になってきた。
今度は——俺が、守る番だ。記憶がそう、語りかけてくる。
その時。
「あんた、初めて?」
横から、声がかかった。
振り返ると——金髪の美少女が立っていた。
スレンダー。
目が大きい。
見た目は完璧に美人だ。
でも。
「ウチも初めてやねん! どこから来たん? セルマ王国? それとも違う国? ウチはなぁ、もともと大阪なんやけど——」
「……は?」
「あ、大阪ってわからへんか。まあそれはええねん。ウチ、テルメっていうねん。よろしゅう!」
矢継ぎ早に喋りながら、二人の間に割り込んできた。列を無視して。
リリが目を丸くした。
「え、え? 」
「……列は、後ろに並ぶものだが」
とトントが言った。
「細かいこと気にしたらあかんで! ウチ、タクシー回す時も、効率1番、いかにお客さん拾うか。を、1番に考えてたんや、ホンマにどこ行っても、せっかちが治らへんわ〜」
「……それはご愁傷様」
「でもお客さん、ウチのタクシー乗ったら絶対喜ぶやん。道知り尽くしてるし、話も面白いし——」
トントは静かに、テルメを観察した。
タクシー。大阪。この押しの強さ。
……まさか。
「テルメさん」
「なに?」
「……前の世界で、何をしていた」
テルメが、ぴたりと止まった。
「……なんで、そんなこと聞くん?」
「まさかとは思うが、だ」
テルメはじっとトントを見た。
金色の瞳が——少し、揺れた。
「……タクシーの運転手やった。大阪で。山田勝、五十歳」
「……そうか」
「あんたは?」
「……三杉整。四十六歳。脳外科医だ」
沈黙。テルメの目が、みるみる潤んだ。
「……日本人??」
「そうだ」
「「「うわぁぁぁぁぁ!!!!」」」
テルメが叫んだ。周囲の受験生が全員振り返った。
「日本人おったぁぁぁぁ!!!! 異世界で日本人に会えるとか、どんな確率やねん!! てか、あんた女の子やん!? 転生したら女の子になったん!?」
「そうだ」
「ウチもやぁぁぁ!!!!」
「見ればわかる。。に、しても。ギャップ!! すごい。」
リリが二人を見比べた。
「……え? 何の話? 日本人って何?」
「後で説明する」
「なんか、二人だけわかってる感じ!?」
「……テルメさん」
「なに?」
「試験、始まっているよ。」
「あ。。。」
―――
さぁ、入学試験だ!
テルメの番が来た。
「……ナビゲータースキルっていうのがあって。道案内ができるんですわ」
テルメが、何やら説明をしている。
審判が首を傾げた。
「ナビ。。ゲー。。?? それは魔法、ですか?」
「魔法みたいなもんです。ちょっとやってみますわ。
えーーっと。
あなたの後ろにある扉の先に、廊下があって、突き当たりを右に曲がると、審査員控え室がありますわ。そこの机の引き出しの中に、採点用の羊皮紙が——あれ、その隣にも何かありますね。えーと……これ、学院の女の子の似顔絵? しかも何枚も。一番上の子に、ハートマークまで書いてある」
「——合格!!!! もうよい!! テルメさん!! それ以上、喋らないで!!!次の方!!!!」
審判の顔が、耳まで真っ赤になった。
テルメが戻りながらトントに小声で言った。
「合格やって!!」
「視界がなくても位置がわかるスキルか。戦場では相当強いな」
「せやろ!!!!
タクシー運転手は勘が鋭いんや。この客急いどるな、近道いったろ、とか。この道いけるやろ!とかな。ナビに頼りっぱなしのヒヨッコ運転手とは違うんや、コチトラ! でな、ウチなんか一回走った道は全部頭に入っとるし、雨の日は渋滞のパターンまで読めるし、常連さんの行き先なんか乗った瞬間わかるし——」
その時。青色の髪、高貴な雰囲気を纏った少女の番が来た。これぞ魔法使い。と言った雰囲気。
トントは、テルメの話をサラッと聞き流し、彼女の観察を始めた。
彼女は的の前に立ち、右手をすっと前に伸ばす。
次の瞬間——轟音。
水の柱が、的を完全に消し飛ばした。会場が、どよめく。
レンは涼しい顔で髪をかき上げた。「これで足りるかしら」
本物だ。
トントは素直にそう思った。
テルメが口を開けたまま固まっていた。
「……ウチの話、全部吹き飛んだ」
「そうだな」
リリがぽかんとしていた。
「……すごい。あの人、誰?」
「わからない。でも——本物だ。水系の魔法。威力も抜群だな。なんか、仲良くなりたいなぁ。。」
―――
リリの番が来た。小さなファイヤが、手のひらに灯る。
スモールファイヤ——小さくて、安定していて、揺れない炎。
審判が首を傾げた。
「……火力が弱いですね」
リリの顔が曇った。
「……でも——制御は、精密ですね。
合格です」
リリがぱっと顔を上げた。「ほんとに!?」
「スモールファイヤは——使い方次第で、化ける魔法ですよ」
リリはトントを振り返った。
「トント!! 合格だって!!」
「ああ、よかった」
「あなたが言ってた通りだった!!」
「事実を言っただけだよ、ファイヤって、大きくなったり、消えたり、誰かが見ていないといけない。放っておくとととんでもないことになるからね、そして、リリのファイヤは、小さいけど、何かを灯したり、暖めたりすることができるんだよ。」
リリは嬉しそうに笑った。
―――
トントの番が来た。審判の前に立った。
……何もわからない。でも。
手術室で、何度も同じ状況があった。完璧な準備をして手術に臨んでも。イレギュラーはいつでも起こる、患者が目の前にいる。最後まで諦めずに、やれる事を最大限までやる!そう、やるしかないんだ!!!
トントは右手を前に伸ばした。
何かが—— できるはず。自分を信じて、よくなる事だけ信じて。
体の奥から、何かが湧き上がってくる感覚。魔力? 違う。もっと別の何か。
意志の力が——指先に集まった。「……!」
ジュッ——。
白い蒸気が、指先から溢れた。小さかった。でも——確かに、そこには、何かがある!
……蒸気?
俺は——蒸気が出せるのか。
初めて知った瞬間だった。
審判が目を細めた。
「……これは、なんの魔法ですか」
「蒸気?魔法?です!」
「攻撃魔法?」
「違いますね。。」
「回復魔法ですか?」
「自分でもわかりません。。」
長い沈黙があった。
「……合格。ただし、特例扱いです」
「ありがとうございます」
ぶっつけ本番魔法??
魔力なんて無いはずだが、強く念じる事で
何かが解き放たれた。この世界、可能性に満ちている!!
俺はフゥッ、と、息を吐いた。
列の後ろから、テルメの声が響いた。「やったぁぁぁ!!!! 三杉はん合格やぁぁぁ!!!!」
「三杉はんと呼ぶなよ!テルメさん!」
「三杉はん!!!!」
リリも飛び上がった。
「トント!! 合格だね!!」
「ありがとう、リリ。これでまた一緒に過ごせるね、これからもよろしくね!」
―――
合格して喜ぶもの、合格できずに、悔し涙を流すもの。。現世の受験生と同じだ、真剣に対応すると、感情が溢れ出す。
合格できなかった子達には、また頑張って!心の中で応援を!
試験が終わった後。掲示板に寮の振り分けが張り出された。
『優等生寮』そして。。
『第二寮』(落ちこぼれ寮と、陰で呼ばれているみたい)
「……落ちこぼれ寮、か」
「トント、私もここだよ!!」
リリが隣に来た。
「そうか」
「なんか自虐的な名前だけど——先輩が言ってたよ。中身はそんなに変わらないって!」
「気にしていないよ、リリも一緒で嬉しいよ」
「三杉はん!! ウチも落ちこぼれ寮やって!!」テルメが飛んできた。
「縁があるな、ウチら三人!!」
「……そうだな」
トントは寮の建物を見上げた。石造りの、古い建物。
なんか、良い雰囲気だな、石造り、耐熱性に優れているようだな*
この中でサウナ作ったら、良いサウナできそう。。
サウナ大好きの元医師は、ふと、思った。。
「トント、何見てるの?」
とリリが聞いた。
「風呂場を探している」
「え? なんで?」
「……考えていることがある」
「何を?」
「入ってみればわかる」
「何にはいるのよ?!」リリがトントの顔を凝視しながら聞いてくる?
テルメが首を傾げた。
「三杉はんって、ほんま謎やな」
「トントと呼んでよ!」
「三杉はん!!!!」
ふう。。テルメ。
マイペース!!!(羨ましいぜ!)
―――
その後、中庭でひと悶着があった。
「——うるさいわね」冷たい声がした。
振り返ると、一人の少女が立っていた。
青色の髪。整った顔立ち。背筋が、完璧に伸びていた。
「試験が終わったからって、はしゃぎすぎよ。みっともない」
テルメが言った。
「なんやねん、あんた。感じ悪いな」
「ラハティ国第一姫、レン・ラハティよ。あなたたちとは、住む世界が違うわ」
「姫?! うわ、ホンモノの姫や!!」
リリが目を丸くした。「……すごい人だ」
レンはトントを見た。青い目が——一瞬、止まった。
「……あなた、さっきの蒸気の魔法を使った子ね」
「そうだ」
「あれ——何? 聞いたことのない魔法だったけど」
「蒸気だ。分類できない」
「……役に立つの?」
「わからない。でも——いつか、理解する日が来る」
レンは眉をひそめた。
「……意味がわからないわ」
「そうだな」
レンはふんと鼻を鳴らして、歩きかけた。
その時。レンの後ろから、小さな気配が近づいてきた。
青みがかった白い髪。透き通るような肌。小さな妖精だった。
「……すみません」小さな声だった。
「どうしたの??」
「レン様が、失礼なことを言いました。代わりに謝ります」
「謝らなくていい。本人じゃないし」
「……でも」
「あなたのお名前は?」
妖精が自己紹介をする。
「私の名前は、キックルです。
レン様の従者であり、水の妖精でございます。これからよろしくお願いいたします。」
「それでか。レン様、と呼んでいたのはあなたが従者だったからなのね。」
「はいその通りです」
「そうか。レンといつも一緒なんだね。」
キックルは黙った
「はい、レン様ですが、ああ見えて——」
「孤独なんだろう」
キックルが、ぴたりと止まった。
「……なんで、わかるんですか」
「目を見ればわかる。強い人間の目は——孤独の色をしている」
キックルはしばらくトントを見ていた。
「……あなた、よく分かりましたね」
「なあに、目を見ればわかるよ。」
「……また、会えますか」
「この学院にいる間は、いつでも」
キックルはにこっとした。
「……よかった」
その時——レンが立ち止まっていた。こちらに背を向けたまま。
「……キックル」
「はい、レン様」
「行くわよ」
「はい!」
レンは歩き出した。でも——その耳が、わずかに赤かった。
聞こえていたんだろう。
リリが小声で言った。
「……あの姫様、耳赤くなってたね」
「そうだな、キックルに大事にされてるんだよ、きっと。」
「トント、何か言ったの?」
「事実を言っただけだ」
「……トントって、なんか不思議だよね」「そうかな。思ったまま。だよ」
テルメが言った。
「なんやねん、あの子。感じ悪いわ〜」
「そうでもないよ、テルメ。あの子は素晴らしい魔法使いだよ」
「え?」
「気になったんだろう?あの子のこと」
「……確かに、見た目はクールやけど、その実体は。。」
テルメはオッサンのような目で、レンの後ろ姿を見ている。。
「おいおい、テルメさん。。
この世界では、あなた女の子なんだからね。仲良くしていこうよ、皆んなと!」
テルメはしばらく黙った。
「……ここ、楽しそうやな」
「そうだね!」
「転生ライフ、エンジョイしようや!!」
「……エンジョイという言葉は、この世界にあるのか」
「ウチが持ってきた!!」
リリが首を傾げた。
「エンジョイ?」
「後で教える」
トントは少し——笑った。
まあ。悪くない始まりだ。
―――
その夜。落ちこぼれ寮の、小さな部屋。
トントは天井を見上げながら、今日一日を振り返った。
リリに起こされて、慌てて試験に来た。
ぶっつけ本番で蒸気が出た——初めて知った、自分のスキル。
同じ日本人の転生者に出会った。
高飛車な姫に絡まれた。
小さな水の妖精と、少しだけ話した。
……中々、濃い一日だった。
「トント!!」廊下からリリの声がした。
「晩御飯だよ!! テルメさんと一緒に食べよう!」
「……今行く」
廊下からテルメの声が続いた。
「三杉はん!! 早よ来ぃや!! 飯冷めるで!!」
「三杉はん言うな!」
「三杉はん!!!!」
リリが笑っていた。
トントは立ち上がった。
両親が逝って——ずっと、リリの家に世話になってきた。
ここでも——同じだ。
そして。俺が——この子を守る!
「トント、早く!!」
「今行く」
まあ。転生ライフ——楽しくなりそうだ。
―――
【次話予告】第3話「落ちこぼれ寮の風呂場を、サウナに改造してみた」
皆様、Nauraa Vesiです。
ベシさんと呼んでください。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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皆様の応援が、異世界サウナ夢想の最大のモチベーションになります!
次回もぜひお楽しみに。




