第46話「整いの城。オーユバーラ、復活」
皆様。
ベシさんです。
ありがとうございます。
休息は大事ですね。
では。
「——行きましょう」
トントが言った瞬間、全員が立ち上がった。
トゥオネラ国が、湖の上に鎮座している。暗く、重く、禍々しい城が——そこにあった。
「よし、行くぞ」
「あわてない、あわてない」
ダッフルの声が、静かに響いた。
全員が振り返った。
ダッフルは、白い眉をゆらしながら、穏やかに笑っていた。
「まず——整いましょう」
「「「え???」」」
全員の声が、揃った。
「今ですか」トントが言う。
「あの城、目の前にありますよ」レンが指差す。
「ふぉふぉ。だからこそ、ですよ」
ダッフルは、オーユバーラの奥へと歩き始めた。
「整った状態で戦う者と、整っていない状態で戦う者——どちらが強いか。わかりますね?」
「そうじゃないんですよね〜、整った方が強いに決まってますよね」タイカが続く。
「わかります?」とタイカが言った瞬間、全員が「それはこっちの台詞だ」という顔をした。
「……行くか」
トントは、ため息をついた。
———
オーユバーラの施設が——目覚めた。
百年間、眠り続けていた施設が、精霊たちの力を受けて、一つずつ、灯りを取り戻していく。
石造りの壁に、魔法の灯りが灯った。
蒸気が、通路を満たした。
湯舟に、透き通った湯が満ちていった。
「……すごい」
トントは、立ち止まった。
改めて見ると——この施設の設計は、完璧だった。
サウナ室から水風呂までの動線。
温度と湿度のバランス。
休憩スペースの配置。
トトノイ難民が発生しない設計。
全てが、人が「整う」ために計算されている。
「これ……本当に完璧な設計だ」
トントは呟いた。
「血流促進→冷却→外気浴の流れが、完璧に設計されている。
自律神経の切り替えを最大化するために——全ての配置が計算されている。
これは——」
「全くわからんかったわ」テルメが言う。
「俺もっすよ」ザウルが続く。
トントは、ため息をついた。
「要するに——最高のスパ銭。いや、本格サウナ施設。だ」
「最初からそう言えよ!!」
———
施設の奥、倉庫の扉が開いた。
埃をかぶった棚に——アイテムが並んでいた。
「……これは」
トントは、手を伸ばした。
棚の上に、丁寧に折りたたまれた布があった。
手に取ると——軽かった。
「紙糸生地のサウナハット」
エーアイが、横から覗き込んだ。
「これって、以前私が作った物とほぼ同じです。
素材を分析しました。
紙でできた糸を極細に紡いだもので——熱を通しにくく、頭部を高温か
ら守る構造になっています」
「これを被れば、高温のサウナ室でも頭部への負担が減る」
トントは、ハットを手に取った。シンプルで、美しい形だった。
「それだけじゃない」
棚の奥から——黒い生地のポンチョが出てきた。
ブラックシリカ。
「……これ、リリとエーアイが作ったやつと同じ素材だ」
「はい」エーアイが頷く。
「ブラックシリカは遠赤外線を放出します。体の芯から温め——魔素の循環を最大化する」
トントが続けた。
「体表温度を均一に保ちながら、深部体温を上げる。これは——ただのサウナ装備じゃない」
「全くわからんかったわ」テルメが言う。
「俺もっすよ」ザウルが続く。
「要するに——最強の戦闘装備だ」
「最初からそう言えよ!!」
全員に、ハットとポンチョが配られた。
被った瞬間、体が——温かくなった。
魔素が、全身に巡る感覚があった。
「……これ、いい」リリが目を細める。
「確かに。このハット、あの時のハットと同じ。」レンが頷く。
「似合いますよ、皆さん」エーアイが静かに言う。
タイカがサングラスを直しながら
「そうじゃないんですよね〜、これは戦いの準備なんです。わかります?」と呟いた。
———
倉庫からアイテムを手に入れた後——ダッフルが、奥の扉を開けた。
「さあ。本題です」
扉の向こうに——それはあった。
天井が高かった。
石造りの壁に、白樺の木材が贅沢に張られていた。
中央に、巨大なサウナストーブが鎮座している。
百年分の魔力を溜め込んだストーブは、近づくだけで熱を感じた。
「……でかい」
トントは、思わず呟いた。
50人以上が余裕で入れる広さだった。
二段・三段の木製ベンチが、ゆったりと配置されている。
窓からは、外の景色が眺められる。
「オーユバーラのメインサウナです」
ダッフルが、白い眉をゆらした。
「百年前——ここで、何百人もの人が整いました。
王族も、農民も、戦士も——サウナの中では、皆平等だった」
「サウナに入れば——みんな平等だ」
トントは、静かに呟いた。
「ふぉふぉ。そうですよ」
全員が、水着に着替えを済ませた。
紙糸のハットを被り、ブラックシリカのポンチョを脱いで、サウナ室へと入った。
扉が、重い音を立てて閉まった。
「……あつい」
リリが、最初に声を上げた。
「でも——気持ちいい」
じわじわと、熱が体を包んでいく。
石造りの壁から、白樺の木材から、ストーブの石から——均一な熱が、全身を覆っていく。
「ヴァンハ・テラ」
トントが言った。
「ロウリュ、お願いできますか」
ヴァンハ・テラは、無言で頷いた。
柄杓を手に取った。
百年間、ひとりでやり続けてきた動作。
しかし——今日は違った。
横に、仲間がいる。
聖水が——ストーブの石の上に、注がれた。
「ジュワアアアアアアアアアアア——」
熱波が、一気に広がった。
「ギャァーーーー!!」テルメが叫ぶ。
「マジっすかこれ!!」ザウルが叫ぶ。
しかし——熱波が引いた後、不思議な静けさが訪れた。
全員が、目を閉じた。
体の奥から、何かが——溶け出していく。
緊張が。疲労が。恐怖が。
今まで抱えてきた全てのものが——蒸気と共に、外に出ていく。
「……トントはん」
テルメが、静かに言った。
「なんだ」
「ウチな——この異世界、来てよかったと思ってるで」
トントは、何も言わなかった。
しばらくして——
「……俺も」
短く、答えた。
ヴァンハ・テラが、目を閉じたまま——かすかに、口の端を上げた。
もう一度、聖水がストーブに注がれた。
「ジュワアアアアアアアアアアア——」
二度目の熱波が、全員を包んだ。
ーーーーーーー
次に——スチームサウナへと移った。
メインサウナの隣にある、石造りの部屋。
魔法の蒸気管から、絶え間なく蒸気が噴き出している。
湿度が、全く違った。
「……これ」
レンが、目を丸くした。
「全身が——包まれる感じがします」
「スチームサウナだ」トントが言う。
「ドライサウナより温度は低いが、湿度が高い。
皮膚への浸透が全く違う。粘膜が潤い、呼吸が深くなる」
「全くわからんかったわ」テルメが言う。
「俺もっすよ」ザウルが続く。
「要するに——体の外側から、深く、温まる」
「最初からそういいや!!」
蒸気が、全身を包んだ。
肌が、しっとりと潤っていく。
呼吸が——深くなった。
白樺の香りが、鼻腔を満たした。
「……気持ちいい」
フリギアが、静かに呟いた。
「ええな、これ」テルメが目を細める。
タイカが「そうじゃないんですよね〜、これは——」と言いかけて、止まった。
言葉が、要らなかった。
全員が、静かに——蒸気の中にいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
スチームサウナから外にでると
プール???
テルメが
「トントはん!これ!もしかして??!!」
テルメが、飛び込む!!
ざっばっーーーーーんーーー!!!
「あひゃあ!
気持ちeeeeeeeeeeee!!!」
扉を開けたそこにはプール水風呂が。
「これは。アトラクションサウナ、として
最高の設計だ!」
トントが頭から水風呂に突っ込んだ。
「きゃあーー!」
リリが叫びながら、水風呂へ
レンも、エーアイもタイカも飛び込んでいく!
「「心地eeeeeeeeeeee!」」
皆で放心状態に。
プカプカ水風呂
見上げると、空しか見えない。
あぁ、空が青い。
深い青。
紺碧の空。
皆で見上げると
吸い込まれていきそうだ。
————————————
そして。
食堂に、火が入った。
リリが、エプロンをつけていた。
「……任せてください」
まずは!
水分補給です!
酵素ドリンクが振る舞われる。
まるで食前酒の様だ
渇いた体に、酵素が染み渡り
食欲をジワジワと、向上させていく。
オーユバーラの食材庫には、百年前の食材が揃っていた。
ファビラの炎が、竈に灯った。
リリの手が、動き始めた。
やがて——香りが漂い始めた。
バターと、香草と、肉の焼ける香り。
野菜が煮える甘い香り。
スープが沸く、温かい香り。
全員が、食堂に引き寄せられた。
テーブルに並んだのは——
骨付き肉のロースト。
皮がパリパリに焼かれ、肉汁が滴る。
香草とニンニクの香りが、食欲を刺激する。
根菜のスープ。
百年の聖水で炊かれた澄んだスープは、一口飲むと体の芯から温まる。
焼きたてのパン。
外はカリカリ、中はふわふわ。
バターが染み込んで、黄金色に輝いている。
そして——デザート。
オーユバーラの中庭で採れたビルベリーのパイ。
バニラカスタードをたっぷり添えて。
「……いただきます」
誰かが、静かに言った。
全員が、無言で食べ始めた。
しばらく、誰も何も言わなかった。
言葉が——要らなかった。
「……うまい」
トントが、呟いた。
「うまいな」
テルメが恍惚とした表情で言った。
「……はい、ありがとう。」
リリが、静かに微笑んだ。
———
食事の後、全員が思い思いの場所で——整い始めた。
サウナ室では、ヴァンハ・テラがロウリュを続けていた。百年ぶりに、皆んなの為に。
水風呂では、レンが目を閉じていた。キックルが、嬉しそうに水面を泳いでいた。
露天の整いスペースでは、タイカがサングラスをかけたまま、空を見上げていた。
「そうじゃないんですよね〜」
誰もいない空に向かって、タイカが呟いた。
「……整うって、こういうことですか。わかります?」
返事は、なかった。
風が、答えた。
テルメとザウルは、外気浴スペースで漫才をしていた。
「なあザウル、ウチって整ったと思う?」
「テルメさん、整いって自分で言うもんじゃないっすよ」
「なんで?」
「雰囲気っすよ、雰囲気」
「それ、この前も言ってたやん」
「整いも雰囲気っすよ」
「全然わからんわ!!」
トントが一言。「お前ら、うるさい」
「「すみません」」
「テルメさん.僕たちのコンビ名
トコトントトノウ。を略して
トコノウ、にしませんか?」
「いや、言いにくいし、面白んないし
ウチが考えるわ」
「せやなぁ。。
トコトントトノウ。
トが、四つ。
トトトト。
ト✖️ト。
バツグーーン!
でとうや?」
「既存の、コンビ名は
NGだ!」
トントが鋭く突っ込んだ。
「トントはん、よぅ知ってるやん。
あんた、お笑い好きなんやろ?
トリオにするか??」
「絶対に嫌だな。
サウナ兄弟。
みたいなの、絶対に嫌だね。」
おおお!!
テルメとザウルが手を叩く!
「コンビ名、それや!!」
ふう。。バカバカしい。。
———
その時だった。
ダッフルが、サウナ室から出てきた。
オペッタ先生が続いた。
そして——ヴァンハ・テラが。
三人が、整いスペースに現れた瞬間——全員が、気づいた。
「……校長」
タイカが、サングラスを外した。
「……少し、若くなりましたよね。わかります?」
ダッフルの顔の皺が——少し、薄くなっていた。
オペッタ先生の髪に——艶が戻っていた。
ヴァンハ・テラは——明らかに、体が軽そうだった。百年分の疲労が、溶け出したように。
「ふぉふぉ」
ダッフルが、白い眉をゆらした。
「オーユバーラの本来の力ですよ」
トントは、三人を見つめた。
脳外科医として——俺は理解していた。
「テロメアの修復だ」
「全くわからんかったわ」テルメが言う。
「俺もっすよ」ザウルが続く。
「染色体の末端にある構造が——整いによって修復される。
細胞レベルで若返っている。これが——本物の整いの力だ」
「要するに?」
「——本物のアンチエイジングだ」
「最初からそういいや!!」
ヴァンハ・テラが、自分の手を見つめた。
しわが減っていた。
百年間、ロウリュを続けてきた手が——少しだけ、若い手になっていた。
「……百年ぶりだ」
静かな一言だった。
しかし——その一言に、全員が黙った。
百年間。
ひとりで。
この場所で。
整うことも、誰かと笑うことも、食事をすることも——できなかった男が。
今、ここにいる。
「……よかった」
リリが、呟いた。
誰も、何も言わなかった。
風が、優しく吹いた。
———
「——さあ」
トントが、立ち上がった。
ブラックシリカのポンチョを纏い、紙糸のハットを被った。
「整ったぁ〜」
テルメが、立ち上がった。「——行くで」
「はい」エーアイが頷く。
「もちろん」レンが胸を張る。
「……行ってやる」リリが唇を噛む。
「当然」フリギアが静かに言う。
「マジっすよ」ザウルが風を纏う。
「そうじゃないんですよね〜、整った状態で戦う——これが最強ですよ。わかります?」
タイカがサングラスを直す。
三勇者が、並んだ。
ダッフル。オペッタ。ヴァンハ・テラ。
三人とも——少しだけ、若かった。
「行きましょう」
ダッフルが、静かに言った。
トゥオネラ国が——目の前にあった。
暗く、重く、禍々しい城が。
しかし——今の俺たちには、怖くなかった。
整った体で。
仲間と共に。
「——行くぞ」
——————————————————————————
つづく
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
どうでしたか?天空のサウナ。。。
ああ、行ってみたい!
皆様にお願いがあります。
ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を、どこでも良いのでポチッとしてください!
皆様のポチッ。で、物語は続いてまいります!
夢想の最大のモチベーションになります!
次回もぜひお楽しみに。




