第45話「石の団長と、三勇者の咆哮」
どーも。
ベシさんです。
ありがとう、ありがとう、ありがとうございます!
では
「続きは——私たちが引き受けます」
オペッタ先生の声が、雲の上に響いた。
ルウルが翼を広げ、スタシスの前に立ちはだかった。
しかし——
スタシスは動じなかった。
無機質な鎧兜の奥から、感情のない目がオペッタ先生を見た。
(消えろ)
声が、頭の中に響く。
「……っ」
オペッタ先生の足が、止まった。
考えた瞬間に——体が固まる。
「オペッタ先生!!」
トントが叫んだ。しかし——叫ぼうとした瞬間、思考が重くなった。
駄目だ。考えるな。でも——考えるなと考えた瞬間に——
「ぐっ——」
全員が、再び固まっていく。
精霊たちも同じだった。
ザウルが風を起こそうとして——止まった。
ファビラの炎が、小さくなった。
キックルが水を集めようとして——動けなくなった。
スタシスが、ゆっくりと歩み寄ってくる。
一歩。
また一歩。
誰も——動けなかった。
ダッフル校長が、静かに目を閉じた。
「ふぉふぉ」
白い眉が、風にゆれた。
「やはり——手強い」
その時だった。
「そうじゃないんですよね〜」
声が、空から降ってきた。
全員が、空を見上げた。
銀髪が、風になびいていた。
サングラスが、光を反射していた。
タイカ・パラスが——腕を組んだまま、オーユバーラの城壁の上に立っていた。
「考えると動けなくなる敵に、皆さんで考え込んでどうするんですか。わかります?」
「タイカ先生!!」
レンが叫んだ。
「遅いですよ、団長!!」
タイカは、肩をすくめた。
「魔法騎士団の団長が颯爽と登場する、そういうタイミングってあるじゃないですか。
わかります?」
「今がそのタイミングじゃないんですよね〜!!」テルメが叫ぶ。
「まあ——そうじゃないんですよね〜」
タイカが、静かに右手を地面に向けた。
「ペトラ」
どっ、と地響きがした。
石が——動いた。
オーユバーラの床石が割れ、巨大な石の塊が次々と浮き上がった。
ペトラの力が、石造りの城全体に伝播していく。
「石は——考えませんから」
巨大な石の防壁が、スタシスを囲んだ。
スタシスが——初めて、動きを止めた。
マインド・フリーズは、思考を凍らせる力だ。しかし——思考しない存在には、効かない。
「なるほど」
トントは、その瞬間に理解した。
考えなければいい。
ただ——動けばいい。
「皆!!考えるな——感じろ!!」
全員が、一斉に動いた。
ザウルが風を巻き起こした。
ファビラの炎が膨れ上がった。
キックルが水を展開した。
シルヴァが木の根を伸ばした。
イグニスが溶岩を噴き出した。ヴァロが——全員の力を、増幅させた。
スタシスが、初めて——後退した。
「……ヴァンハ・テラ」
ダッフルが、静かに言った。
「行きますか」
ヴァンハ・テラが、目を細めた。
「百年ぶりだな」
三人が、並んだ。
ダッフル・オペッタ・ヴァンハ・テラ。
百年前、ストレッシと戦った三勇者が——再び、肩を並べた。
「タイカ」
ダッフルが言った。
「援護を頼みます」
「了解です。そうじゃないんですよね〜、ストレッシの部下ごときに手間取るなんて」
タイカがペトラに合図した。石の防壁が——一気に収縮した。
スタシスを、圧迫する。
「ダッフル!!」
ダッフルが、両手を広げた。
百年分の魔力が、解放された。
白い光が、オーユバーラ全体を包んだ。
「オペッタ!!」
オペッタ先生が、風を呼んだ。ルウルが翼を広げ、巨大な嵐を作り出した。
「ヴァンハ・テラ!!」
ヴァンハ・テラが——柄杓を手に取った。
「これで——終わりだ」
百年分の聖水が、スタシスに向かって——放たれた。
「ジュワアアアアアアアアアアアア!!!!」
熱波と嵐と石と光が——一点に収束した。
スタシスが——叫んだ。
いや、叫んだのではない。
無機質な鎧兜の奥から——何かが、漏れ出した。
(……ストレッシ様が、お待ちだ)
声が、遠くなっていく。
鎧兜が——砕けた。
破片が、風に溶けるように——消えていった。
誰も、動かなかった。
しばらく、全員が沈黙していた。
「……終わった」
リリが、呟いた。
「終わりましたね」エーアイが静かに言う。
「マジっすか——」ザウルが空を見上げる。
テルメが、へたり込んだ。
「もう、ええわ……整いたい……」
「今、整ったばかりだろ」
「それとこれとは話が別や!!」
その時——
大地が、揺れた。
いや、大地ではない。
湖だった。
眼下に広がるサイマ湖が——揺れていた。
暗い水面の奥から、光が漏れ始めた。
最初は小さかった。
しかし——それは、どんどん大きくなっていった。
水面が割れた。
泡が噴き出した。
そして——
巨大な何かが、湖の底から——浮上してきた。
石造りの城だった。
暗く、重く、古い——城だった。
オーユバーラとは全く違う、禍々しい気配を纏った城が、
ゆっくりと水面を割って姿を現した。
「……あれは」
トントが、息を呑んだ。
ヴァンハ・テラが、静かに呟いた。
「——トゥオネラ国だ」
百年間、湖の底に沈んでいたストレッシの城が——今、地上に現れた。
誰も、何も言えなかった。
風が——止んだ。
「……行くぞ」
トントは、城を見つめたまま言った。
「ああ」テルメが立ち上がる。
「はい」エーアイが頷く。
「もちろん」レンが胸を張る。
「……行ってやる」リリが唇を噛む。
「当然」フリギアが静かに言う。
「マジっすよ」ザウルが風を纏う。
「そうじゃないんですよね〜、躊躇う理由がない」タイカがサングラスを直す。
ヴァンハ・テラが、トントを見た。
「……医者」
「なんですか」
「百年、待っていた」
トントは、頷いた。
「——行きましょう」
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つづく
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